悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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今ある分全部投稿しときます。ストックなくなるので、しばらく投稿はなくなると思います。


Memory31

  

「そんな………私は………force level3なのに……どうして負けたんっすか………」

 

地面には、メイド服の少女、クロコが倒れ伏しており、それをユカリが見下ろしている。

メイド服の少女、クロコの服はところどころ破れており、激しい戦闘があったのだと連想させるかのような姿になっている。

 

対するユカリの服装は、戦闘前となんら変わりはないように見える。

戦闘を行なったため、多少は汚れているのだが、戦闘前と戦闘後の姿を並べてみて初めてはっきりとわかるくらいの微々たる差だ。

 

ユカリとの戦闘に、クロコが負けたのだ。

 

「貴方が弱いんじゃない?」

 

魔族と戦ったにも関わらず、ユカリはピンピンしている。

 

魔法少女のforce levelは基本的に1であるはずだ。にも関わらず、ユカリは苦戦することなくforce level3であるクロコに勝利したのだ。

 

「言ってくれますね…………」

 

「とりあえず、お姉ちゃんは返してもらうからね」

 

そう言いながら、ユカリは倒れ伏すクロコを通り過ぎてクロの元へ向かおうとする。

 

「………殺さないんすか?」

 

ユカリがクロコを通り過ぎる寸前、クロコがそう尋ねる。

 

「お姉ちゃんとの約束だから」

 

ユカリはその言葉に、さも当然であるかのように、そう返した。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

「無様ねぇ、アスモデウス」

 

アスモデウスはリリスとの戦闘に持ち込み、途中までは優勢だったのだが、途中から突然ゴブリンが参戦してきたのもあって、リリス達との戦闘に負けていた。

 

ゴブリンが参戦してきた際、鷹型の異形は『ゴブリンとは性格的に相性が悪い』と言って散麗達と共に戦線から離脱したのだが、force level4の鷹型の異形よりも、force level5の組織の幹部の一人の方が脅威としては高かったのだ。

 

「馬鹿だなぁ! あんなクソロリのために命を捨てる真似をするとはなぁ………」

 

「殺すのか?」

 

「えぇ。顔馴染みだから、一度は見逃してあげたけれど、邪魔してくれるようなら、始末しないとね」

 

リリスの剣が、アスモデウスに振り下ろされる。

 

(ユカリ………クロを頼んだ………)

 

もはや生き残れる道はないだろう。

そう思ったアスモデウスは、心の中でそう呟き、覚悟を決め、目を瞑って俯く。

 

「じゃあ! 死ねぇ!!!!」

 

アスモデウスの命はここで断たれる

 

 

 

 

 

 

 

 

かのように思われたが、いつまで経ってもアスモデウスに剣が届くことはない。

 

アスモデウスが顔を上げると、目の前には組織の幹部の二人がいた。

 

一人は、少し性格の悪い女、ルサールカ。

 

もう一人は、全身が炎に包まれており、人の形をしているが、どう見ても怪人としか思えないような見た目をした、イフリートという男だ。

 

彼女らはクロに興味があるわけではないし、昔馴染みではあるものの、アスモデウスと深い関係というわけでもない。

 

ただ、アスモデウスが組織の運営をしなかった場合、組織が解体されるか、アスモデウスの分も自分達で組織を運営していかなければならなくなる。

 

ルサールカもイフリートも、自分の好きなように動きたいタイプだ。

アスモデウスには欠けてもらっては困るのだ。

 

「仮にも組織の幹部なんだから、自分の命をもう少し大事にしてほしいものね」

 

「俺は単純に暴れたいだけだ!」

 

3vs2。

 

ルサールカとイフリートのforce levelは5であり、リリスのforce levelは4だ。

いくらアスモデウスが消耗しているとはいえ、それはリリスやゴブリンも同じであるし、force level的に考えてもアスモデウス側が有利だろう。

 

「そう………皆私の邪魔をするのね………」

 

「俺はイフリートの相手はしたくねぇ。悪いが離脱させてもらうぜ」

 

さらにはゴブリンもそう言って戦場から撤退していく。

もはやリリスに勝ち目はない。

 

「ルサールカ、イフリート、頼みたいことがある。俺のことは放っておいていい。ゴブリンの後を追ってくれ」

 

しかし、アスモデウスは数的有利を自ら手放す。

元々、リリスと戦闘していたのは足止めのためだ。

 

ユカリは魔法少女でありながら、force level3に勝てるほどの実力を手に入れているのだが、それでもforce level4と戦闘するとなれば互角の戦いになるし、force level5との戦闘には勝てない。

 

ゴブリンが途中参戦してきた時点で、鷹型の異形や他の魔法少女がアジトに帰っていったのはまだユカリでも対応できるかもしれないが、ゴブリンが相手となればユカリが勝つのは難しくなる。

 

だからこそ、ルサールカとイフリートの二人を向かわせたいと考えたのだ。

 

「俺に指図すんな」

 

「別にいいけど」

 

二人はこう言いながらも、素直にアスモデウスの指示に従い、ゴブリンの後を追う。

 

二人がゴブリンを追いかけていくのを見届けた後、アスモデウスはリリスに話しかける。

 

不思議にも、アスモデウスが話しかけてくるまで、リリスが攻撃を仕掛けてくることはなかった。ゴブリンを追いかけていくルサールカとイフリートを追いかけたいが、アスモデウスを放っていくのは難しいため、動くに動けなかったのだろう。

 

「一騎討ちといこうか、リリス」

 

「いいのかしら? いくら貴方が相手と言っても、仮にも私だって組織の元幹部。そう簡単にいくとは思わないんだけれど」

 

アスモデウスは再び、リリスとの戦闘を始める。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

 

「今、何か聞こえなかった!?」

 

「ここのセキュリティは結構厳しめだったと思いますが……」

 

「誰だ!!」

 

「櫻! 気をつけて! 敵かもしれないわ!!」

 

「(辰樹の声だったような……?)」

 

 

(やっべっ! やらかした!)

 

(おい辰樹!! 何やってるんだ!?)

 

辰樹と朝太の二人は焦る。

 

確かに、魔法少女4人+1人は困惑こそしているものの、辰樹と朝太がどこにいるのか、そもそも誰がこの場にいるのかは気づいていない(真白は少し勘付いているかもしれないが)。

 

透明マントを被っているのだから、二人は少し冷静になって、そっとこの場を去るべきだったのかもしれない。

 

だが、二人は少々焦りすぎた。

もう既に透明マントが少し取れかけていることにも気づかずに二人はどうすればいいかとモタモタしている。

 

「あの二人って………」

 

「辰樹………朝太………」

 

茜と真白が辰樹と朝太の存在に気がついてしまうが、それでもまだ二人はバレていないと思い込んでいる。

 

それを見かねたのか、来夏が二人に声をかける。

 

「おい! お前ら何やってんだ!」

 

「「バレたぁぁぁーーーー!!!!」」

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん。久しぶり」

 

「ユカリ……? 助けに来てくれたの?」

 

「うん。お姉ちゃんが捕まえられてるって聞いて、心配だったから」

 

「殺しは…‥やってないよね?」

 

「うん。お姉ちゃんと約束したから、ちゃんとそこは守ってるよ。だから、行こう。アパートに戻るのは少し難しいかもしれないけど、組織になら帰れるから」

 

クロはユカリの手をとる。

 

久しぶりに触ったユカリの手は、どこか温かかった。

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

「リリスというのと、アスモデウスっていうのが戦ってるのね。ふ〜ん」

 

暗闇の中で一人、プラチナブロンドの髪に深紅の瞳を持った、八重歯がとても尖っている少女が呟く。

周りに人が何人かいるが、皆揃って正座しており、明らかに少女よりも下であることがわかる。

 

「クロっていう子を取りあってるのね。なるほど〜。ちょっと興味あるなぁ」

 

「あの…」

 

少女が独り言を言っていると、二十代ほどの社会人女性が畏まりながら少女に話しかける。気は強そうな顔をしているが、今の彼女には覇気がない。その目には、怯えさえも浮かんでいる。

 

「何?」

 

「私達は………いつ……開放されるんでしょうか……?」

 

「今私、考え事してるんだよね。お前、最近私の眷属になった人間だっけ?」

 

「あ、はい………」

 

「そっか。最近なのになんで眷属にしたのか覚えてないや。もういいよ、お前いらない」

 

「え…?」

 

少女が『いらない』と、そう一言発した瞬間、女性の血管という血管が膨らんでいく。

 

「あ………やだ………ぁ…………」

 

次の瞬間には、女性の体は破裂し、そこら中に赤色の液体が飛び散っている。

 

「「「「ひぃ!!」」」」

 

「お前達もこうなりたくなかったら、話しかけるタイミングには気をつけてね」

 

周りにいる人々は皆声を上げ、目の前の惨状に驚き、恐怖している。中には嘔吐し始めている者までいる。

そんな中で、少女は、何事もなかったかのように独り言を続ける。

 

「とりあえず、クロって子はちょっと興味あるし、欲しいなぁ。その上で障害になりそうなのが、『ノースミソロジー連合』と、政府側のあの二人、後はアスモデウスくらいか。リリスとかいう女は、大したことなさそうだし。ドラゴも政府にハメられて身動きが取れないみたいだしね」

 

でもやっぱり私の敵ではないかな、と軽い調子で少女は続ける。

 

「だって私は『吸血姫(ヴァンパイア・ロード)』。奴らが崇める魔王と同格の、最強の魔族なんだから」

 

吸血姫は動く。

ただ欲望のままに。

 

自分が手に入れたいと思うものを手に入れるために。

自分勝手に、自己中心的に行動する。

 

その姿は、まさしく独裁者。

 

絶対的な王とも言える存在が、表舞台に姿を表そうとしていた。

 

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