悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました 作:布団から出られない
『ーデーター』
『“人工的魔法少女製造計画”第1被験体 白川八重 水属性の適性があったため、氷属性の付与を試みるも、本人が拒否。氷属性が扱えていたとしてもforce level1であるため、失敗作と言える』
(force level………強さの指標になる基準みたいなものね。まあ、気にしなくてもいいか)
八重はDr.白川から受け取ったチップに入っているデータの確認をしていた。
彼女は淡々とデータを読み取っていく。
『第2被験体 白川千鶴 光属性の付与に成功。force levelは1であるが、魔法少女の素質がない状態から魔法少女への転身に至ったため、実験は成功と言えるだろう』
白川千鶴。
八重の妹だ。八重は妹は実験によって死んだと聞いていたのだが、このデータを見る限りそのような情報はない。
不審に思って少し下にスクロールしてみると、一人の少女の画像が載っていた。
そこに載っていたのは、八重と共に魔法少女として活動していた少女、双山真白の姿だった。
「う……そ………これって…………」
写真に真白が載っている。
そしてその写真は、第2実験体、白川千鶴の解説欄のすぐ下にある。
つまりーーー
「ーーー真白が、私の妹だったってこと……?」
八重は元々、他人に冷たい性格だった。しかし、それは櫻達によって多少は緩和されたのだが、それでも、真白に対して、すぐに優しくできるような性格ではなかったはずだ。
にもかかわらず、八重は真白が組織を裏切って仲間になった際、すぐに彼女を受け入れることができた。
今思えば、それも真白が妹であったからなのかもしれない。
「ていうことはつまりーーー」
八重は画面をどんどん下へスクロールしていく。
『第19999被験体ークローンー 失敗』
下へ。
『第40001被験体ークローンー 失敗』
さらに下へ。
『第70380被験体ークローンー 失敗』
さらにさらに下へ。
そしてようやく、見つけた。
『第84290被験体ークローンー 成功 魔法少女としての素質を持った個体を生み出すことに成功。意思の疎通も可能。 被験体の固有名を【クロ】とし、急成長装置を用いて第2被験体白川千鶴と同じ年齢に引き上げ、経過を観察することとする』
「ははっ………やっぱり………」
この説明文を読めば、“白川千鶴”が実験の成功体になったからこそ、“白川千鶴”のクローンを用いて人工的な魔法少女の製造を試みたことはわかる。
つまり、“クロ”は“白川千鶴”のクローン。すなわち真白のクローンであることは確定しているのだ。
そして、真白のクローンであるということは、クロは八重の妹と呼んでも過言ではないだろう。
おそらく、八重が今まで敵対していたにも関わらず、クロに甘かったのは、クロと自身の血の繋がりを無意識のうちに理解していたからではないだろうか。
(まさかクロが、私の妹だったなんてね………どうりで気にかけちゃうわけだわ)
しかし、資料はそこで終わりではない。
どうやらさらに下があるようだ。八重は、さらに下に画面をスクロールしていく。
『第84291被験体ークローンー 失敗』
このデータの日付を見ると、大体真白が組織を裏切った時期と重なっている。クロという成功体ができたのにも関わらず、実験体を作っているのはおそらく真白が組織を裏切ったからだろう。
『第84400被験体ークローンー 失敗』
引き続き資料を見ていくも、一向に成功の文字が見えることはない。
(結局、成功したのは真白とクロだけってことね)
心の中でそう結論づけようとする八重だったが、ピタリとスクロールする手が止まる。
『第84999被験体ークローンー 成功 【クロ】と同様、魔法少女としての素質を持った個体を生み出すことに成功。意思の疎通も可能な上、データを参照するに、force level5に至れるほどの魔力量を保有している可能性大。第84999被験体ークローンーの固有名を【ユカリ】とし、急成長装置を用いて【クロ】と同様の年齢にまで成長させ、運用を試みることとする。これを以って、“人工的魔法少女製造計画”は終了とし、次回からは“門”についての研究を主軸に進めていくこととする』
(ユカリ……? そんな存在真白からは…………いえ、真白が組織を裏切った後に造られたんだから、知らなくて当然ね。ユカリ……ねぇ。このデータを見る限り、その子も私の妹になるのかしら? まったく、知らないうちにウチの家族が大所帯になってきてるじゃない。でも、真白とクロが妹、ね。悪く……ないかも)
八重はそう思いながら画面をさらにスクロールしていく。
すると、気になる情報を見つけた。
「“魔族に匹敵する怪人製造について”? 魔族……? 一体何のこと?」
画面をスクロールしても、『force level3以上の怪人を作るためにはー』だとか、『今までの怪人のデータを参照するにー』など、魔族についての説明がなされているような描写はない。
(魔族ーーーそんなものがいるなら、それについても調べていく必要があるわね。どんなに強大でも、私が相手をしなくちゃならないわ)
八重は心の中で、大切な存在を思い浮かべる。
(私の、妹達のために)
☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★
「ふぅ。これがここ数日間で集めた、近辺の魔法少女の情報ね〜」
ホテルの一室で『
「魔法少女を眷属になんてしたことないし、“クロ”を眷属にする前にお試しで誰か一人眷属にしておきたいんだけど、手頃なのいないかな〜」
そう言いながら、『
「
けど、
『
「
うん。決めた。この三人の中から一人眷属にする。んで、その後に本命の”クロ“を眷属にして………………ふふっ。あはぁ。興奮してきた。早く眷属にしてあげたいなぁ」
『
しかし、その笑みはどことなく不気味な雰囲気を醸し出している。
魔法少女達は、まだ知らない。
強大な王が、自分達の首元を狙っていることを。