悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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キャラ出過ぎてるし、そろそろスッキリさせた方がいいよね。


魔族なんて………
Memory41


 

 

 

鯨型の怪物が、粒子となって消えていく。

 

それに従って、渦巻きから出てきた人面魚達も、光の粒となって分解されていっている。

 

「やった! やったよ私達! クロちゃんのおかげだよ。ありがとう!」

 

「え、うん? ど、どういたしまして?」

 

櫻からの感謝に、クロは少し戸惑いながらも返事をする。

櫻からすれば、既にクロは共に戦った仲間(ともだち)という認識でいる。だが、クロにとってまだ櫻は戦うべき相手(てき)であり、どうも櫻と馴れ合うことができないでいるのだ。

 

「焔のやつ、気絶してるって思ってたらぐっすり寝てるんだけど…………」

 

「すぴーっ」

 

美希が先程気を失った焔の様子を見ると、なんと鼻提灯まで出してぐっすりと寝ている。

 

「束…………」

 

焔、美希、笑深李の3人組のすぐ近くで佇む束に対して、住民の避難をし終えてビーチに戻ってきた茜が声をかける。

 

「茜さん、ですか。決着は後にしてもらえませんか? 私は散麗を回収してはやく美麗様と合流したいので。それに、相手にするには流石に数も多いですしね」

 

茜は何とか束を呼び止めようとするが、どう呼び止めればいいのか、言葉が思いつかない。

 

「ユカリ、私達もそろそろ帰ろう」

 

「うん、わかった」

 

そうこうしているうちに、クロをはじめとした他の魔法少女達も、解散の雰囲気を醸し出しはじめている。

 

各々が帰るために戦闘体制を解こうとしていたその時。

 

「いやぁ見事見事。まさかアレを倒すとはね」

 

突如、頭上から男の声が発せられる。

 

声を発したのは、金髪で、ポケットに手を突っ込み、いかにも軽薄そうな見た目をした男だ。

 

耳にはピアスを開けており、服もヘソが見えるほどに露出度が高く、いかにも遊んでいそうな印象を受ける。

 

「浮いてる…………?」

 

金髪の男は先程頭上から声を発したと述べたが、それは空中に浮いているからだ。

 

「俺らの目的ってさ、別に魔法少女じゃないんだけどー」

 

ケラケラ笑いながら、金髪の男は告げる。

 

「ちょっと調子に乗ってるガキにはお仕置きが必要かなって思ってさ、お高く止まってる人間さんに、魔族様が直々に出向いてあげたってわけ」

 

「魔族………なら、容赦なしだ!」

 

来夏が高速で移動し、男に電撃を浴びせる。

それに合わせて、美希も遠隔から電撃を男に飛ばす、が。

 

来夏と美希が放った電撃は、男の目の前で止まり、来夏と美希、それぞれ電撃を発生させた方へと方向を転換させて向かってきたのだ。

 

「っ!」

 

来夏は直感で避け、美希の方は焔を庇っていたせいで動けなかったが、束が死体人形を使ってガードすることによって電撃を喰らわずに済んだ。

 

「雷属性の使い手としては俺の方が格上なんだからさ、君達の攻撃は上書きされて当然だよね」

 

「笑深李、焔を。うちはあいつと戦う」

 

「え、でも………」

 

「いいから」

 

美希は笑深李に熟睡中の焔を預け、金髪の男に向き合う。

 

「櫻! 茜! 私はこいつの相手をする! 辰樹と真白を連れて逃げろ! あと猿姉呼んでこい!! 私らじゃこいつに歯が立たない、けど猿姉ならこいつを倒せる!」

 

来夏は猿姉なら倒せる、とそう断言した。

つまり、少なくとも来夏の中では、金髪の男は去夏の実力には遠く及ばない、ということだろう。

 

それならば、去夏を連れてきさえすれば、櫻達の勝利は決定する。

 

「わかった!」

 

「りょーかい!」

 

櫻は辰樹、茜は真白に肩を貸しながら、それぞれビーチから去っていく。

 

そして、それぞれが戦線離脱したビーチでは既に、電撃による激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

「なぁ……そういえばクロはどこに行ったんだ?」

 

櫻に肩を貸してもらいながら、辰樹は櫻達に尋ねる。

 

「そういえば、ユカリ……だっけ? その子もいつの間にか居なくなってたわね………」

 

茜がそう言う。

 

「クロのことだから、私達の隙をついて逃げたんじゃないかな………。クロって、実は割と頭がいいから、そういう立ち回りとかも、上手な気がする………」

 

真白がそう言うが、茜はどこか腑に落ちない。

 

(逃げた………って感じじゃなかった気がするのよね………)

 

茜は、戦場から離れつつも1人思考を巡らせる。

 

(大体、魔族が私達の前に現れた時点で、クロとしては真白のことは放っておけないはず………だって大切な妹だもの。怪人なら戦場から逃げ出せても、魔族なら殺されるかもしれない。そんな状況でクロが真白をおいていくとはおもえないわ)

 

嫌な予感がする。

 

茜は誰にも聞こえないほどの呟きを漏らした。

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

「まさかここまで上手くいくとは………運が良いなぁ」

 

アストリッドは鯨型の怪物が粒子となって消えていくのを確認した後、片手に荷物を持って帰ろうとする。

 

「待て!」

 

しかし、そんなアストリッドを呼び止める少女がいた。

 

紫色の髪を持ち、周囲に毒を放ちながらアストリッドを睨むその少女の名はユカリ。

 

「お姉ちゃんを……返せ!」

 

彼女は、アストリッドが肩に担いでいる姉、すなわちクロを助けるためにアストリッドに立ち向かったのだ。

 

「金髪の魔族に注目がいってる間に、どさくさに紛れて回収できないかなぁって思ってたんだけど、やっぱり見られてたか」

 

「返せ」

 

アストリッドが言葉を発するが、それには目もくれず、ユカリはアストリッドにだけ効くような毒を作り出し、アストリッドに向かって放つ。

 

だが

 

「毒、かぁ。でも残念。私は吸血鬼だから、血液を介して解毒するくらい朝飯前なんだよね」

 

あっさりと、ユカリの毒は破られる。

死体にすら効く毒なのに。

 

「邪魔するなら殺すけど、どうする? 死にたい? それとも生きたい? 10秒あげる。その間に、私の視界から消えるか、私に立ち向かって無様に死ぬか、好きな方を選べ」

 

「無様な目に合うのはお前の方だ!」

 

ユカリはクロが使っているものとそっくりな紫色の大鎌を生成する。

その大鎌で、アストリッドを攻撃するが、

 

「くだらないね」

 

アストリッドが大鎌を指で突いた瞬間、鯨型の怪物が消えたのと同じように、ユカリの大鎌は粒子となって消えてしまった。

 

「あーあ。私に歯向かうからこうなるんだよ。あーでも、どっちにしろちょうど良かったかもね。妹なんて大切な存在がいると、私に依存してくれなくなるし」

 

アストリッドは自身の指を噛み、そこから出た血から細長い剣を生成する。

その剣先が、ユカリの喉元に突き立てられる。

 

「あっ…………」

 

「じゃあ、死ね」

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

「まさかアレを倒すとは…………。魔法少女も中々侮れないみたいだな………」

 

青い髪を持ち、右眼に眼帯をつけた男、オーディンがつぶやく。

 

「お前が思っているほど、クロは弱くはない」

 

「あー、ダメだ。ボクもクロがアレに勝ったって分かったらなんだか嬉しくなってきちゃった。完全にアスモデウスの親バカがうつっちゃったよ………」

 

「お前ら夫婦だったのか?」

 

「「絶対にない(ね)!」」

 

「まあいいか。しかし、オレの作戦もパーだな。元々はアレで魔法少女を叩きのめし、人類に勝ち目がないことを知らしめたかったのだが…………」

 

「なら、お前が出ればよかった話だろう」

 

「それをすると意味がない。肝心なのは、怪人に敵わないってことを認知させることだ。魔法少女じゃ、人々を怪人の魔の手から守ることはできない、そう人類に思わせることが目的だった。それに、貴様(アスモデウス)の相手もしなければならなかったしな」

 

「ペラペラとそんなことを話していいのか?」

 

「別に構わん。計画が知られたところで、特に支障はない。なぜなら、お前らはここで終わるんだからな」

 

オーディンが話し終えた途端、アスモデウス達の周囲にオーディンの部下と思われる魔族が複数人現れる。

 

「勿論オレは手を出さないでおいてやる。だが、その数を相手にして無事で済むかな?」

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

「『 特別召喚(オーダーメイド)・桜王命銘斬』!!」

 

アストリッドがユカリに剣を突き立て、その剣先を喉元に刺そうとしたその時、櫻の桜王命銘斬によって、アストリッドの血の剣が横へ弾き飛ばされる。

 

「あ?」

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そして、アストリッドが櫻に気を取られている間に、後ろから辰樹がタックルをかまし、その衝撃で、肩に担がれていたクロがアストリッドの手から離れていく。

 

「なっ、しま……!」

 

そして、投げ出されたクロを、横から茜と真白がキャッチし、救い出す。

 

「ふぅ。よかったわ、間に合って」

 

4人の手によって、クロ、そしてユカリを助け出すことに成功した。

 

だが

 

「…………あー。キレた。完っ全にキレた。決めたわ。全員ぶち殺す」

 

それは、開けてはいけない蓋を、開けてしまったことを意味していた。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんは、ずっと私と一緒にいてくれる?」

 

 

「結婚とかもあるし、ずっと一緒にってわけにはいかないかな。ただ、絶対に幸せだって思えるような人生を送らせてあげたいなとは思ってるし、生涯守っていこうって思ってるよ」

 

 

「なにそれ。お兄ちゃんよく恥ずかしげもなくそんなセリフ吐けるよね〜。まあ、そんなこと言われたら私も嬉しいけど」

 

 

ああ。そうだ。

 

 

俺は、(この子)をまもるためなら。

 

 

殺しだって躊躇しない。

 

 

 

 

 

 

 

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