悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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どうしてこうなってしまったのだろうか。

 

 

最初は、ただ自分の弱さを嘆いていただけだった。

魔法少女として、タッグを組んで戦っていた時には感じなかったが、相方がいなければ、自分はこうも弱いのかと、そう思わされることがあった。

 

それは、相方が骨折をして入院していた時の話だった。

 

いつものように怪人と対峙する。

しかし、その怪人は前にも戦ったことがあるタイプの怪人であったにも関わらず、手も足も出なかったのだ。

 

初めて実感する、自分の無力さ。

今まで怪人に勝てていたのは、相方がいたからだと気付かされた。

 

そして同時に、その時初めて、憧れる存在ができた。

 

蒼井八重という、魔法少女だ。

 

彼女は圧倒的な力で、怪人を瞬殺していた。

 

初めて出会った時、その強さに憧れた。

隣に立ちたいと思った。

超えたいと思った。

 

そう、思ってしまったのだ。

 

超えたいと、勝ちたいと。

 

いや、思うこと自体は間違いじゃなかったのかもしれない。

そのおかげで、強い魔法少女を目指して努力できたのだから。

 

けれど、そのせいで大切な存在を失うことになった。

 

もう取り返せない。

 

その始まりは、赤江美麗と名乗る女と出会ったことからだった。

 

強くなる方法を教えてやる。

 

そう言われて、ノコノコと彼女について行ってしまったのだ。

 

彼女について行くと、そこには二人の少女の死体が並べてあった。

最近見ないかと思えば、どうやら怪人によって殺されてしまっていたらしい。

 

少し悲しい気持ちが湧いてくるも、それよりも強くなれるということだけに頭を働かせていたせいか、涙は溢れることはなかった。

 

『もし、死んでしまった魔法少女の魔法を扱えるとしたらーーーどうする?』

 

もし、そんなことができるなら。

 

 

超えられるかもしれない。

最強になれるかもしれない。

 

 

なんて魅力的なんだ。

 

 

彼女達はどうせ死んでしまっているんだ。

 

なら、有効活用できるに越したことないじゃないか。

 

欲しい。

 

素直にそう答えた。

 

赤江美麗と名乗る女は、その言葉を聞いてニヤリと不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

結果的には、二人の魔法少女の力を取り込んだことによって、格段に強くなった。

 

けれどまだ、足りなかった。

 

やっぱりまだ、相方の力が必要だった。

相方がいたら、最強だと呼べるほどに強くなれたが、相方がいないと、最高のパフォーマンスができない。

 

それが現状だった。

 

でも、そこで気づいた。

相方がいれば最強。なら、相方の力も取り込んでしまえばいいじゃないかって。

名案だ。天才だ。

 

そう思いついた時には、すでに赤江美麗という女の元へ走っていた。

 

相方を連れて。

 

 

相方は何の疑いもなく、いつもと同じ顔でついてきてくれている。

これなら、いける。

 

『また、強くなりたいの?』

 

彼女はそう問いかけてくる。

 

そして、何の躊躇いもなく。

 

相方は、その場で絶命した。

 

相方の力を取り込んですぐ、怪人討伐に勤しんだ。

確かに、前よりも格段に強くなっている。だって、4つの属性を扱える魔法少女になったのだから。

 

けど、何かが足りない。

 

何か、決定的な何かが、欠如している気がする。

 

何が足りない?

 

そんなはずはない。今の状態が完璧なはずだ。

間違いない。

 

相方の力を取り込んで正解だったはずだ。正しかったはずだ。

 

だって、二人でいる時は間違いなく最強だったじゃないか。

なら、二人が一つになれば、それもまた最強のはずじゃないのか。

 

 

 

 

本当は、きづいていた。

 

 

でも、今更認められなくて、認められるわけがなくて。

 

自分の手で、相方を殺してしまった。その事実に向き合いたくなくて。

 

結局、『最強』って称号に縛られたまま、生きていくことになる。

 

政府公認という肩書きも、何だか嫌になって、取り消しに行った。

その時、末田ミツルとかいう男が、疲れた顔をしていますねだとか、貴方も魔法少女をやめたかったんですねだとか、見当違いなことを言っていたが、気にすることはないだろう。

 

どうせ今更、後戻りなんてできない。

 

今はもう、最初の目標であった、蒼井八重を超える。そのことしか頭にない。

相方を、相棒を殺してしまった。そんな事実に、目を背けるかのように。

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

アストリッドは、クロがいる洞穴から出て行こうとするが、その先には青髪の少女、蒼井八重がいた。

 

「どうしたのかな?」

 

アストリッドは八重に尋ねる。

 

「クロの様子を見にきただけです」

 

八重はアストリッドの言葉に、冷たい口調でそう返す。

一応敬語を使ってはいるものの、八重からのアストリッドに対する印象は良くない。

 

何なら嫌っている。

 

「そうかい」

 

そんな八重の様子を、アストリッドは特に気にすることなくその場を去る。

 

八重も、アストリッドの動向には目も向けず、ずけずけと洞穴の中へ入っていく。

しばらく歩いていると、そこでは天井から吊るされた鎖に、手が拘束されている、(クロ)の姿があった。

 

「クロ…………ごめんなさい……こんなことになって。でも、絶対、絶対助けるから………」

 

「八重………」

 

八重はクロの姿を確認した後、すぐに腰を上げ、この洞窟から出ようとするが、クロは八重の袖を掴んで離そうとしない。

 

「クロ……?」

 

クロは八重の袖を一向に離そうとしない。

よくよく耳を澄ましてみると、ボソボソとした声で、行かないで欲しいと訴えかけていた。

 

「最近…‥前からそうだったんだけど、物忘れが激しくなってきて……それに……おかしくて………」

 

「おかしい……?」

 

「あんなに恨んでたのに………あんなに殺してやりたいと思ってたのに……なのに、なのに……最近は、なんだか……悪く思えないっていうか…‥むしろ……アストリッド()のこと……良い風に思うことがあったり………好きになって行ってる気がして……あんなに………あんなに憎かったのに……こんな気持ちを持ってるのが……怖くて………記憶もなくなってきて、自分が、自分じゃなくなっていく気がして…………」

 

(まさか…………洗脳でもしてるっていうの…!?)

 

八重は拳を握りしめる。

どこまで人をコケにすれば気が済むのだろうか。

妹を二人も殺され、挙げ句の果てに生き残った一人にはこの仕打ち。

 

本人に至ってはアストリッド()と敬称をつけて呼んでいることに気づいてすらいない。

 

………絶対に許せない。

 

「最近、皆の名前すら思い出せない。今覚えてるのも、八重の名前だけで……もうどうすればいいのかわからない。でも、死にたくはないし………ごめん。感情がごちゃごちゃしてて、全然整理できない」

 

「大丈夫……私が何とかする………大丈夫だから……」

 

「本当に……? 八重がなんとかしてくれるの?」

 

クロはまるで捨て犬かのように八重のことを見つめる。

その目には不安が現れており、精神的に不安定であることが読み取れるようだった。

 

失ったものがあることには気づきつつも、それが何であるのかは気づけない。

そして、生きていられる時間が、残りわずかであること。

記憶に残っている情報も、数少なく。

 

クロにとって頼れるのは、もはや八重しかいないのかもしれない。

 

クロは元々、精神的が強いわけではない。

 

むしろ精神的な面で言えば、他のどの魔法少女よりも弱く、脆いのだ。

櫻や茜が単純に少女にしては精神的に強く成長し過ぎている、というのもあるが……。

 

しかしそれでも、比較的一般人寄りのメンタルをしている魔法少女と比べても、少し精神的な面で弱い部分がある。

 

それは前世の記憶というアイデンティティを欠如している影響もあるのかもしれない。

 

「うん。私がなんとかする。だから、クロは何も心配しなくて良い。大丈夫、だって私は、お姉ちゃんだから」

 

八重は、一人決心する。

 

たとえ、自分がどんな目に遭おうとも、(クロ)のことを守ろうと。

 

(絶対に、(アストリッド)の好きになんかさせないわ)

 

 

 

 

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