悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

64 / 172
〜2年後〜 迷い
Memory62


魔法少女。

無・火・水・風・地・雷・心・光・闇の9つの属性の魔法を使い、怪人と戦う少女達だ。

 

そんな魔法少女の1人である真野尾 美鈴(まのび みすず)は、一体の巨大な怪人に苦戦していた。

 

『ズギャギャギャギャ!!!』

 

「ひっ! 来ないで!」

 

美鈴はがむしゃらに魔法を撃ち続けるが、怪人には全く効いている様子がない。

美鈴は怪人から距離を取るために、逃げ続ける。

 

しかし、距離は段々縮まってきている。

このままでは、怪人に追いつかれ、美鈴はやられてしまうだろう。

 

「グギャ!?」

 

しかし、美鈴が怪人にやられることはなかった。

美鈴のことを追いかけ回していた怪人が倒されたからだ。

 

誰が怪人を討伐してくれたのだろうと、美鈴は後ろを振り返る。

彼女の眼前には、紫色の桜の花弁の髪飾りが特徴的な、ピンクの髪を長く伸ばした少女の姿があった。

彼女はその手に桜模様の刀を持っており、おそらくその刀で先程の怪人を討伐したのであろうことが伺える。

 

「大丈夫? 怪我とかないかな?」

 

「あの、助けてくれてありがとうございます。貴方は……」

 

百山 櫻(ももやま さくら)。貴方と同じ魔法少女で、無属性の使い手。多分、君の先輩かな。よろしくね」

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

「え!? じゃあ櫻先輩って、2年前にあの鯨型の怪物を討伐したっていう……」

 

「私だけの力じゃないけどね。他の子達の力も借りて、やっとって感じ」

 

「はへぇ………す、すごい人と出会っちゃった………」

 

櫻と美鈴は、適当な店に入り、2人で話していた。

魔法少女でありながら怪人に襲われていた美鈴を見て、櫻は彼女を少し訓練してやった方がいいと、そう判断した。そのため、こうやって美鈴を店に連れ込み、話をすることにしたのだ。

 

「で、美鈴ちゃんに提案なんだけど」

 

「はい、なんですか?」

 

「よかったら、私と魔法少女の特訓でもしない? ほら、最近何かと物騒だし」

 

「ほ、ほんとにですか!? た、助かります! 私、今のままじゃ絶対にダメだって、強くなりたいってずっと思ってたんです。『死神』のこともありますし…………」

 

「『死神』?」

 

「あれ? 知らないんですか? 『死神』の少女のこと。なんでも、髑髏の仮面をかぶっていて、その手には、真っ黒な大鎌を持っていて、出会ってしまったが最後。その真っ黒な大鎌で、首元を裂かれて………ひ、ひぃ! そ、想像しただけでも恐ろしいです………」

 

「その話、詳しく聞かせて」

 

「え? いえ、単なる噂話で………」

 

美鈴の『死神』の話に、深刻な表情をしながらその詳細を聞こうとしてくる櫻。そんな櫻の様子を見て、ただの噂話に、何故そこまで聞きたがるのか、少し不思議に思う美鈴であったが、美鈴が『死神』の話を詳しく知らないと知ると、すぐに櫻はその話題を切り上げた。

 

「まあ、いっか。それじゃ美鈴ちゃん。早速特訓に入るけど、準備はいい?」

 

「えぇ!? 今からですか!?」

 

「善は急げって言うでしょ? ほら、はやくはやく」

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

「それで、この子の調子を見てほしいってこと?」

 

「うん。八重ちゃんなら、観察眼に長けてるって言うか、人のことよく見れる気がするから。とりあえず一旦美鈴ちゃんの状態を見て、そこから鍛えていこうかなって」

 

櫻に連れられて、美鈴がやってきた場所は、地下にあるちょっとした訓練場のような場所だ。そこには、青色でショートボブの、パーマがかかっている髪を持っていて、眼鏡をかけている、理知的な雰囲気を持っている少女がいた。

 

「えっと、はじめまして、真野尾 美鈴って言います」

 

「初めまして、美鈴。私は蒼井 八重(あおい やえ)。普段はここで、櫻のサポート役として動いているわ。よろしくね」

 

「はい! こちらこそよろしくお願いします。えっと、八重さんは魔法少女ではないんですか?」

 

「ええ、魔法少女ではないわ。まあ、厳密に言えば、魔法少女じゃなくなった、っていうのが正しいのだけれど」

 

そう言った八重は、どこか懐かしい目をしていた。おそらく、魔法少女として活動していた頃のことを思い出しているのだろう。

 

「それってどういう……」

 

「そこまで複雑な事情はないわ。あることがきっかけで、魔法を使えなくなったってだけよ。さて、貴方の魔法の属性とか、これから調べていくんだけれど、その前に聞きたいことがあるの」

 

「は、はい。何ですか?」

 

八重は少しずつ、柔らかい口調から、重苦しく、真面目な口調へと変化させていく。

そうして、問い詰めるかのように、美鈴に質問を投げかける。

 

「貴方には、魔法少女として戦う覚悟があるのかってことよ」

 

「それは………魔法少女は、私の憧れだったので……魔法少女として戦えたら、きっと私も…」

 

「覚悟はあるの?」

 

「それは……」

 

八重に魔法少女として戦っていく覚悟はあるのかと、そう唐突に尋ねられるも、美鈴は言葉を返すことができなかった。考えたことがなかったのだ。戦う覚悟がどうこうとか、そんなもの。

美鈴は、魔法少女になれそうだからなってみた。戦ってみようと、何となくそう思ったから戦った。ただそれだけの少女なのだ。

 

思い出すのは、さっき怪人に襲われていた時の記憶。

自分の魔法は全く歯が立たず、逆に襲われてしまっていたあの場面。

思い出せば思い出すほど、自分に魔法少女として戦えるだけのものがあるのか、考え込んでしまう。

 

「ないならやめておいた方がいいわ。朝霧 千夏(あさぎり ちか)って知ってる?」

 

「はい。最近巷で人気のアイドル系魔法少女、ですよね? 私、あの子のファンで……」

 

「アレを推しているような子なら、魔法少女は向いていないわ。櫻、この子、魔法少女として戦わせるのはやめなさい。きっと、この子に魔法少女は向いていないわ」

 

「そんな……!」

 

「事実を言ったまでよ。魔法少女に憧れを抱いてなった、ましてや、アイドルを見てそれに憧れただなんて。そんな軽い理由で魔法少女になったって、貴方はきっと失敗するわ。だから、これは私からの忠告。魔法少女なんてやめて、真っ当に生きなさい。それが貴方にとって、1番良い道のはずよ」

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

「八重ちゃん、あの子のこと、心配してくれたのは分かるけど……でも……」

 

「私にあれくらいのことを言われただけで折れるようなら、最初から魔法少女なんてやらない方がいいわ。私はもう、これ以上犠牲者を出したくはないの」

 

「そっか。でもね、私、何となくわかるんだ。あの子は多分、明日もここに来る」

 

「根拠はあるの?」

 

「うーん。強いて言うなら、勘、かな」

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

「たのもー!」

 

朝8:00。

土曜日で学校も休日の今日この頃、地下室で資料の整理をしていた八重の耳に、1人の少女の声が届く。

入ってきたのは、腰まで伸ばした茶髪の髪を持った人懐っこそうな少女で、名を真野尾 美鈴(まのび みすず)

 

「貴方、昨日の……………。覚悟は、決まったのかしら?」

 

「昨日一日中考えてみたんです。でも正直、覚悟とか、そんなの全っ然わかんなくて」

 

「そう。ならやめておいたほうが…」

 

「でも、私思ったんです。魔法少女は向いてないとか、そんなの魔法少女でもない八重先輩に言われたくはないです。私は、魔法少女になって、怪人と戦いたい。それで、町の皆を守って、『美鈴ちゃんありがとう』って、そう言われたいんです。だから………」

 

少女は、八重の目をまっすぐ見据え、明るい笑顔で告げる。

 

「私は魔法少女になります。貴方に何と言われようが、絶対に」

 

(この子、絶対頑固な子だわ……。きっと、何を言っても聞かないでしょうね……)

 

高らかに宣言する後輩(美鈴)の姿を見て、随分生意気な奴がいたもんだと、そう思わざるを得ない八重だった。




死神……一体何者なんだ……(すっとぼけ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。