悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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Memory67

「皆ぁー! 盛り上がってるぅ〜!?」

 

「「「うぉおおおおおおおおおお!!」」」 「「きゃぁあああああああ!!」」

 

現在、櫻と美鈴、そして人と鬼の子、メナは、とあるアイドルのライブ会場へやってきていた。

アイドルの名は、朝霧 千夏(あさぎり ちか)。来夏の妹で、魔法少女でもある少女だ。

 

「先輩先輩! 生千夏ちゃんですよ!! もっとテンションあげていきましょうよ!! せっかくチケット3枚分取れたんですから!!」

 

「テンションあげてこー!」

 

「って言われても………私アイドルとかそんなに詳しくないんだよね………」

 

もちろん、櫻は千夏のことは知っている。来夏の妹でもあり、同時に流行りのアイドルでもあるからだ。

 

魔法少女アイドルという、魔法少女でありながらアイドル活動も行う新ジャンルを開拓した先駆者とも呼べる存在であるため、彼女(千夏)の名前を知らないという人の方が少ないだろう。

 

だが、櫻はそこまでアイドルに興味があるわけではない。

というより、アイドルを応援するのに割く時間がない、という方が正しいだろう。

 

彼女はここ二年間、ずっと魔法少女として修行を積み重ねてきたのだ。魔族から人々を守るために。

そして現在も、人知れず魔法少女を葬ろうとする魔族達を密かに退治し、戦闘不能に追い込む活動を行っているし、さらに言えば、美鈴の特訓やメナの監視まで行わなければいけない。

 

そんな彼女には、娯楽に触れる機会など滅多になかったのだ。

 

「先輩……。千夏ちゃん目の前にして騒がないとか、今時の女の子として終わってますよ。千夏ちゃんは皆の憧れなんですから!」

 

「終わってる!」

 

「って言われても……」

 

そんな櫻だが、美鈴やメナについてきたのには、ちゃんとした理由(わけ)がある。

というのも、先日、後輩である深緑束から、『ノースミソロジー連合』という魔族の連合が、そろそろ暴れ出すという情報を得たのだ。

 

しかし、いつどこで暴れるというのか、そこまでの情報はなかった。

そこで櫻なりに、彼らが暴れ出すとしたらどんなタイミングなのだろうかと、そう考えた際、人の多く集まる場所、それもできるだけ魔法少女を多く殺せるような場所を選ぶのではないかと、そう踏んだのだ。

 

その条件に当てはまる場所を考えてみれば、1番最初に思い浮かぶのは学校だ。

しかし、櫻は学校に攻めてくることはないだろうと踏んでいる。

 

というのも、2年前、リリスという魔族によってとある中学校が襲われた事件があったのだが、それ以降各学校の警備はかなり上がっており、さらに、櫻の兄や来夏の姉がどこかしらの学校に潜伏しているという情報もあるため、魔族は迂闊に学校を攻めることができない。

 

そして、次に考えたのが、ここ、魔法少女アイドル朝霧千夏のライブ会場だ。

ここなら、多くの人が集まるという条件も満たしているし、さらに言えば、朝霧千夏に憧れている女の子は多く、魔法少女も多くこの会場に来ていることだろう。

 

つまり、『ノースミソロジー連合』が暴れるとすれば、この会場しかないと、櫻はそう結論づけた。

 

「先輩、見てください! 生千夏ちゃんの踊りですよ!!」

 

「生の踊りー!」

 

後輩のはしゃぐ姿を見て、櫻は思う。できれば穏便に済ませたい、彼女達の楽しみを、消したくはないと。

 

「ごめん、ちょっと忘れ物!」

 

「え? ちょっと先輩!」

 

櫻はすぐに美鈴達と距離を取り、会場内を探る。

幸い人が多く、皆朝霧千夏のライブに夢中なため、櫻のことを見ているものは誰もいない。

 

(この会場のどこかに潜んでいるはず………早く見つけ出して、とっ捕まえなきゃ!)

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

髑髏の仮面をつけた少女は、ルサールカに呼ばれて、組織のアジトの地下室、それも、許可なしでは立ち入れない秘密の部屋へとやってきていた。

そこで見たものは………。

 

「初めまして先輩。私はミリュー。貴方と同じ、人工で作られた魔法少女です」

 

紫色の長い髪をツインテールにしてまとめた、ユカリによく似た顔の少女が、いた。

 

「顔合わせ、ってところよ。私は暫く席を外すわ。2人でゆっくり話しなさい。クロ、貴方も仮面を外したらどう? 自分だけ素顔を晒さないのは、ずるいでしょう?」

 

そう言ってルサールカは、地下室から地上へと出ていく。

残されたのは、『死神』クロと、ミリューと言う名の少女だけだ。

 

「えっと………」

 

クロとしては、いきなり登場した新たな魔法少女に、動揺を隠せず、何を話せばいいか分からない。

 

「ミリューでいいですよ、先輩。そうですね、まずは親睦を深めるところから、ですよね。では、私の話をしましょうか」

 

「あ、うん」

 

クロは、少し動揺してうまく話すことができない。とりあえず、会話の主導権はミリューに握らせることにした。

 

「私が造られたのは、実は2年前からなんですよ。ちなみに製造ナンバーは85000。ユカリの遺体から遺伝子を解析して、そのデータを元に造られたのが私です。まあ、私自身の経歴はこのくらいです。()()()()()()()()()

 

「?」

 

ミリューは、最後の言葉をやけに強調してそう発言する。

クロとしては、何を伝えたいのか分からなかった。

 

「先輩、実は私には、まだ組織の誰にも言っていない、秘密があるんです」

 

ミリューはそう言うが、組織に生み出された彼女が、組織の人間に隠し事をすることなど、できるのだろうか。

そもそも、クロより後に生み出された人工魔法少女は、組織に忠実になるように設定されてしまうはずだ。そのため、組織に隠し事をしようなど、そんな発想には至らない。

 

しかし、例外はある。

これは組織の話ではないが、例えば愛なんかは、アストリッドに造られた存在でありながら、アストリッドに逆らう選択をした。それは、愛が前世の記憶を持ったイレギュラーな存在であることが関係している。

 

つまり…‥。

 

()()()()()。私には、組織の誰にも言っていない、前世の記憶があるんですよ。ね、()()()()()

 

聞き覚えのある、『お姉ちゃん』呼び。

 

その呼び方に、クロは。

 

「は………はは………」

 

脳の処理が追いつかず、ただ乾いた笑いをこぼすことしかできなかった。

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

朝霧千夏のライブ会場の外では、たくさんの魔法少女が、血だらけになりながら、戦っている姿があった。

 

「なんなのこいつら! 怪人ってわけじゃなさそうだし……。でも、ただの人間でもない………一体……」

 

次々と倒れていく仲間達。

対して魔族達は、魔法少女達を、楽しみながら痛ぶっている。

 

「おい、このガキどもはまだ殺さなくていいのかよ」

 

「ああ、いいんだよ。マスコミがやってくるまで待つんだ。そこで知らしめてやるんだよ、俺達の圧倒的な強さをな」

 

魔法少女達の数は相当なもので、その数は100を上回る。

対して魔族の数は30ほどであり、数だけでみれば圧倒的に魔法少女の方が優勢のはずなのだが……。

 

「あっ……ぐ……」

 

魔法少女達はすでに半分以上が血だらけで地面に伏しており、残り半分も、ほとんどが魔族の攻撃でボコボコにされている真っ最中だ。

 

「クソ………。好き勝手しやがってー!」

 

「うちらじゃ絶対勝てなさそうだよ……。どうする?」

 

「さ、櫻さん達に連絡しないと………」

 

燃えるような赤髪が特徴的な少女、 福怒氏 焔(フクヌシ ホムラ)、ギャルで金髪の少女 魏阿流 美希(ギアル ミキ)、青色の髪をおさげにした、少し気弱そうな少女、佐藤 笑深李(サトウ エミリ)の3人もまた、この戦場にいる魔法少女であった。

 

彼女らは攻撃こそ魔族に加えられなかったものの、完全に守りに徹し、半数以上が倒れた中でも、まだ立つことのできている数少ない魔法少女だ。

 

3人は現状を打開するため、それぞれ他の魔法少女に電話で連絡を取ることにしたようだ。

 

「もしもし、なんか、強い奴が出てきたから、手伝って!」

 

『分かったわ。増援を送るから、それまで耐えて』

 

焔は津井羽 茜(ついばね あかね)という、同じ火属性使いの魔法少女に。

 

「お願いします、うちらじゃとても太刀打ちできなくて」

 

美希は、来夏に。

 

「櫻さん、そ、外がやばいです!」

 

そして笑深李は、櫻に。

 

しかし、彼女らが連絡を終えた時、すでにこの場には他の魔法少女達は残っておらず。

 

「おっ、あとはあそこの3人組だけみたいだなぁ。もういっそのこと、マスコミが来る前に魔法少女どもを殺しちまってもいいんじゃねーか。一緒だろ、どうせ負けてんだから」

 

すでにこの場で立っていられたのは、3人組の魔法少女(焔と美希と笑深李)だけだった。

 




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