悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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「どうしよう……」

 

クロは、櫻の家の前で悩んでいた。

 

組織を裏切ってしまうか、どうか。

別に組織に忠誠を誓っているわけではないし、愛も千夏も、望んで組織に所属しているので、彼女達の心配をする必要もない。

 

ただ、この前櫻や辰樹に説得された際、それを跳ね除けてしまっていることもあってか、中々素直に櫻達の仲間になるのも難しい。

 

「あれ? 先輩に何か用でもあるんですか?」

 

「用があるのー?」

 

悩んでいたクロに、横から声をかける少女が2人。

茶髪で人懐っこそうな少女真野尾 美鈴(まのび みすず)と、人間と鬼のハーフ龍宮(たつみや) メナだ。

 

「あ、いや、私は……」

 

「クロちゃん、来たんだね」

 

美鈴とメナに遭遇し、その場から逃げようとするクロだったが、ちょうどその時にドアを開けて家から出てきた櫻に声をかけられたことで、逃走することが難しくなってしまう。

 

「ちょ、ちょっと用事を思い出したかもー………」

 

「逃がさないよ、クロ」

 

どうでも良い、逃げ出してしまえ! クロはそう思って、美鈴とメナのいない方向へ逃げようとするも、タイミング良く真白がやってきたことにより、そちらへの逃走も不可能になってしまう。

 

真白は、クロが櫻の家に来るとの連絡を受け、ここへやって来ていたのだ。

 

「クロ、2年ぶりね」

 

「受験生なのにわざわざ来てあげたんですから、今更組織に戻るとかナシですよ、クロさん」

 

「……こんなにゾロゾロ来る必要あったか?」

 

「ちょっとイフリート、黙っててくれない? 周りの声が全然聞こえないんだけど」

 

「私もお邪魔させてもらうでー」

 

真白に続いて、八重、束、来夏、茜、さらに照虎までもが、櫻の家へとやって来ている。

 

「な、なんだこの集団は……」

 

クロは、次々とやってくる魔法少女達に囲まれ。

完全に、逃走が不可能な状況に陥ってしまった。

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

 

「いや……死にたくない……助けて………」

 

アスモデウスが組織へと帰ってきた時、そこには、ルサールカによって拘束されたクロの姿があった。

クロの首元には、ナイフが当てられており、今にもクロの首を引き裂いてしまいそうだった。

 

「これは一体、どういう冗談だ?」

 

「ええ、アスモデウスにはもう消えてもらおうと思って、でも、貴方って強いでしょう? だから、人質を取らせてもらったの」

 

「ルサールカ、お前っ……」

 

「今までありがとう、アスモデウス」

 

そう言って、ルサールカはアスモデウスに銃口を向ける。

隣には、アスモデウスの代わりに新たに組織の幹部になったであろう、鬼の魔族の男が突っ立っている。

 

「…俺がいなくなった後、組織の運営をどうしていくつもりだ?」

 

「ふふっ。よっぽど自分の仕事ぶりに自信があったみたいね。でも残念。貴方の代わりなら見つかったの」

 

やはり、鬼の魔族はアスモデウスの代わりらしく、アスモデウスが今までこなしていた仕事をこなせる人材であるらしい。アスモデウスとしては、鬼の魔族は力仕事しかしないイメージがあったのだが、何事にも例外は存在するらしい。

 

「そういえば、パリカーはどうしたんだ?」

 

「ああそうね。それなら………」

 

ルサールカが言葉を紡ごうとした時、部屋の扉から2人の少女が部屋に入ってくる。

クロやユカリと同じ人工の魔法少女、ミリューと、素性不明の組織の新幹部、シークレットだ。

 

そして、ミリューの手には……。

 

「パリカー…?」

 

パリカーの生首。

目には正気は宿っておらず、当然、それが意味するのは、パリカーの死。

 

「ルサールカ、貴様……一体何がしたいんだ…?」

 

表向きは平静を保っているアスモデウスだったが、内心ではかなり動揺している。それもそうだろう。自分が面倒を見ていた少女は拘束され、幼馴染は殺されて生首だけになってしまったのだ。無理もない。

 

「ルサールカ、殺すのは芸がないから、アスモデウスは生かして置かない? パリカーの方は殺したんだし、こういうのは、片方は生かしておいた方が面白いと思うんだけど」

 

紫色の髪をツインテールにした少女、ミリューはルサールカにそう提案する。ルサールカはミリューの提案に一瞬怪訝そうな顔をするが、すぐに取り繕う。

 

「………そうね。まあ、これを使えば、あのアスモデウスでも私に手出しはできないでしょうし」

 

ルサールカが鬼の魔族に視線を向けると、鬼の魔族は、『首輪』と呼ばれている魔族の魔法を封じるブレスレット型の機械を、アスモデウスの手首に装着させる。

 

(これで反逆のチャンスは失われたか………だが、クロを人質に取られている以上は……)

 

「くふっ、あっはは!」

 

アスモデウスは、何の抵抗もなくルサールカの『首輪』を受け入れる。その様子を見て、突然クロが吹き出す。ルサールカに拘束され、絶望的な状況にも関わらず、だ。

 

「クロ……?」

 

「っあー! おかしくてたまらないなぁ…こういうのは。まあ、仕方ないよな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

瞬間、クロの体が霧に包まれる。

霧の中から出てきたのは………。

 

「流石の変装ね、ロキ」

 

『ノースミソロジー連合』の魔族、ロキだ。

 

ロキは最初から『ノースミソロジー連合』に所属しているつもりなどなかった。『ノースミソロジー連合』のリーダーであるオーディンにスカウトされた時点で、ロキは既に裏でルサールカと繋がっていたのだ。

 

「安心しろよアスモデウス。組織の幹部の役目は、これから俺達が担っていくからさ」

 

ロキは、アスモデウスのことを小馬鹿にしたような口調でそう言う。

 

アスモデウスは俯いている。

ロキは、アスモデウスが精神的に参ってるのだと思い、自分からアスモデウスに近付いて、精神的に打ちのめされてしまっているその顔を見ようとする。

 

が。

 

 

 

 

 

「ああ、そうだな。今から1人欠けることになるがな!!」

 

そう言ってアスモデウスは、こっそり隠し持っていた対魔族用の銃を取り出し、その銃口をロキに向ける。

 

「なっ」

 

ロキは目に見えたように動揺しており、ルサールカもアスモデウスの行動に勘づくことができず、驚いている。

アスモデウスは、元々自身の命にそこまでの執着はない。

 

クロが人質に取られているわけではないということと、パリカーが死んでしまっているということ。そのことから、クロが組織に所属する上での後ろ盾がいない状態になってしまうことが予測される。

 

そうなった時のことを考え、1人でも組織の幹部を減らしておいた方が、クロのためになると考えたのだ。

 

 

 

だが、アスモデウスがロキを銃殺することはなかった。

 

アスモデウスが引き金を引かなかったわけではない。アスモデウスはしっかり銃の引き金を引いた。

では、弾は? 

 

当然、入っている。じゃあ何故?

 

答えは簡単。

 

銃が破壊されてしまったからだ。

 

先程から後ろで一言も喋らず、ずっと黙り込んでいた組織の新幹部、シークレットの手によって。

シークレットの手には、大きな鎌のようなものが握られており、おそらくそれでアスモデウスの手に持っていた銃を切り裂き破壊したのだろう。

 

結局、アスモデウスは、何も抵抗することができないまま、ルサールカの罠にかかってしまったのだった。

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

「ねぇミリュー。貴方、どういうつもりなのかしら?」

 

ルサールカはアスモデウスを拘束し終えた後、シークレットと共にその場を去ろうとするミリューのことを呼び止めていた。

 

「どういうつもりって何の話?」

 

「とぼけないでくれる? どうしてアスモデウスのことを生かそうだなんて言い出したのか、その理由を聴きたいのよ。わざわざ私の方針を曲げて、何がしたいの?」

 

そう言うルサールカの口調は、少し苛立っているようにも思える。

ルサールカとしては、アスモデウスは今日で()()してしまうつもりだった。しかし、ミリューがアスモデウスを生かす提案をしてしまった。つまり、アスモデウスを生かそうというのが、ミリューの意見だ。

 

別に、ミリューの意見はあくまでただの意見であるため、ルサールカも跳ね除けることは可能だ。だが、ミリューの意見には、幹部の1人であるシークレットが同意してしまう。一応、ルサールカの意見にはロキも味方してくれるが、同じ組織内で対立するのはあまり良いことではない。そのため、ルサールカは食い下がることにしたのだ。

 

ルサールカは、ミリューを自身の都合の良い手駒として扱うつもりだった。しかし、思った以上に自分の都合通りに動いてくれないため、少々ミリューに苛立ちを覚えているのかもしれない。

 

「あー。どうでも良いじゃんそんなこと」

 

そんなルサールカに対して、ミリューは爪をいじりながら面倒臭そうにそう返す。

 

「貴方、立場ってものがわかってないみたいね。貴方は私が造ってあげた存在なのよ?」

 

「出生なんて関係ないと思うなー。だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「随分生意気ね……。そんな風に造った覚えはないのだけれど」

 

「反抗期ってやつかもね。まあ、そういうわけだから。これからは対等に接してね、ルサールカ。さ、行こう、シークレット」

 

困惑するルサールカをよそに、ミリューはシークレットを引き連れてその場を去っていった。

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