悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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『シロと模擬戦をしていた時は、黒い弾だけで戦えていたのだが』

こちらの部分がMemory2にあった描写と矛盾しているとのご指摘があったので、修正させていただきました。
ご指摘ありがとうございました。


Memory7

 

「それで? 無様に帰ってきたのか?」

 

「ごめんなさい……マジカレイドブルーが予想以上に強くて……」

 

八重に負けた後、クロは幹部の男に状況を説明して、叱られている最中だった。

 

「お前は馬鹿だから魔法少女が誰か分からないんだろう? せっかく魔法少女と戦闘したのに負けては意味がないじゃないか。ノートもあまり積極的に書いていないようだし、これはお仕置きが必要か?」

 

「それは……あの、魔法少女達は…強いんです…だから、仕方なくて…」

 

「お前の技のレパートリーが少なかったのが敗因だろう。マジカレイドブルーにも指摘されたのだろう? 経験不足だと」

 

この流れはまずいーーーそう漠然と思うクロだったが、こうなってしまってはもはやどうしようもない。素直にお仕置きを受けるべきか‥‥そう考えていたのだが、

 

「実戦経験が少ないから負けたらしいな。ならば積めばいいだけのこと」

 

そう言って男は奥の部屋から1人の少女を連れてきた。長い髪をサイドアップに結んだ、紫色の髪を持つ14歳くらいの少女だ。

 

「あっ、初めましてー! 私ユカリって言います。先輩のでーた? を元に造られた人造人間? らしいです。なので、先輩の妹になりますね!」

 

唐突に自己紹介を始められて困惑する。今人造人間と言ったか?

組織は魔法少女の人造人間を創れるほどの技術を持っているというのだろうか。

よくよく考えてみれば、怪人なんてものを生み出しているわけだし、人造人間を創れてもおかしくないのかもしれない。

 

「こいつは失敗作のお前と違って成功作だ。前に言ったお前の代わりもこいつのことだ。お前にはこいつと実践形式の訓練をして経験を積んでもらう。まあお前の戦闘経験というより、こいつの戦闘経験を積むための訓練だが」

 

結局どこまでも必要とされていないんだな、とクロはそう思うが、ふと気になったことがあり、幹部の男に問いかける。

 

「あの……失敗作とは……どういうことでしょうか…」

 

初めは役に立たない、出来損ないという意味で捉えていたのだが、どうにも男の言い方を見るに違うような気がする。そう思ったクロは、なんとなく男に尋ねてみたのだ。

 

「あぁ、言ってなかったか? お前もシロを元にして造られた人造人間だ。お前はシロのことを妹だと思っていたようだったが、そうじゃない。お前が妹なんだよ」

 

衝撃の事実に眩暈がする。

そんなわけがない……

 

俺は人間だった。

 

前世でも

 

今世だって………シロと一緒に育ってきたはずだ。

 

シロにだってその記憶はある。

 

でも母親は? 父親もわからない。

 

生まれた時のことは記憶にない……一番古い記憶はシロと一緒に生活感のない部屋に入れられたこと……

そういえばあの時点ではシロと双子だということは知らなかった。

 

じゃあ……俺は今まで自分のことを人間だと思って育ってきた人造人間だったということか……?

 

そういえばユカリも俺のデータを基にして造られたって……

 

闇属性の魔法が使えるのも…人造人間だから…?

 

でも闇属性の魔法が使えるようになったのは……脳をいじられてから。

 

「せんぱ……お姉ちゃん…?」

 

目の前にユカリーーー人造人間の少女の顔が映る。

 

違うーーーお前の姉じゃない

人造人間とは違う………

 

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う

 

 

「ぅ……ぁ………ああああああああ!!」

 

辺りに闇の弾が撒き散らされる……が一瞬にして周囲から闇の弾が消えてしまった。

クロが消したわけじゃない。

 

ユカリだ。ユカリが一瞬で闇の弾全てを自身の魔力に変換し、吸収したのだ。

 

「せんぱ……お姉ちゃんのでーたを基にしてるから私も闇属性の魔法使いなんだ♪」

 

クロが最後に見たのは、そう言いながらこちらに微笑みかけてくる、人造人間(いもうと)の姿だった。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

目を覚ますと、目の前にはユカリの姿があった。

 

「大丈夫? お姉ちゃん」

 

「ユ……カリ……?」

 

「そうだよ! 名前覚えててくれたんだね」

 

「その……お姉ちゃんっていうのは……?」

 

クロからすると姉と呼ばれる事自体に不快感を感じることはない。

ただ、先程は人造人間であるユカリに「お姉ちゃん」と呼ばれたことから、自分も人造人間であるという事実を目の前に突きつけられたような気がしてならなかったからだ。

 

「だってお母さんって感じしないもん」

 

ユカリはそう答える。

クロとしてはシロが母親で同じ人造人間であるクロは姉だとかそんな感じで思っているのかと思ったが、どうやらそういうわけではないらしい。

 

「幹部の男の人に聞いたけど、お姉ちゃんは自分が人造人間だってこと知らなくて、そのことがショックだったんだよね?」

 

「そうだね…」

 

「んーでもそこまでショックを受けることはないと思うよ。人造人間っていってもくろーんにんげん? みたいなものらしいし、生まれ方が違うだけで、人間であることには変わりないから」

 

自分はシロから造られた偽物の存在。本当の人間ではなく、シロと違って組織のために生み出された存在。人造人間であるということよりもそれらのことの方がクロにとってはショックだった、が人造人間であるということに対してショックを受けていることには変わらない。

 

「ありがとう。ユカリ。ちょっと元気出た」

 

「よかった。私はお姉ちゃんが元気な方が嬉しいもん」

 

クロのことを精一杯元気づけようとしてくれるユカリの様子を見て、クロは段々と落ち着きを取り戻していった。

 

(ていうか……お姉ちゃん呼びで固定なんだ…)

 

見た感じユカリには悪意を感じられない。それに14歳の子供にしては少し幼い気もする。

実はもう少し年齢が低いのだろうか。

 

「ユカリって何歳?」

 

「私? さあ? んー身体の年齢は14歳になるように調整されてるらしいから14歳かな?」

 

身体の年齢?

 

「どういうこと?」

 

「えーと、何が?」

 

「その、身体の年齢って…?」

 

「んー私もよくわかんないだけど、一気に14歳に無理矢理成長させたらしいよ。だから一応私は14歳」

 

無理矢理成長……

 

「それってどういう……」

 

「いつまで話している。起きたのなら戦闘訓練に入れ。元々そのためにこいつを連れてきたわけだしな」

 

ユカリのことについてもう少し深掘りしたかったのだが、幹部の男によってそれは遮られてしまう。

とりあえず男の言う通りにユカリと戦闘訓練に入ることにした。

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

 

ユカリと模擬戦を行ったのだが、結果だけ言うとクロは敗北した。

クロの主な攻撃手段である黒い弾は全てユカリに通用しなかったし、“ブラックホール”も相手の魔力を吸収する技である為、攻撃手段にはならない。

結局クロはユカリに手も足も出せずに大敗した。

 

(マジカレイドブルーの言った通りだな……)

 

先日八重に言われた通り、クロは黒い弾以外に攻撃手段がなく、手数が少ない。

黒い弾が通用しない相手が出てくると、途端にクロは何もできなくなってしまう。来夏との戦闘の時だって、来夏が早々に切り札を繰り出してきたから“ブラックホール”を使って勝つことができたのだ。

 

「んーお姉ちゃんはもうちょっと技のれぱーとりー増やしたほうがいい気がする」

 

「そうだね。でも……」

 

「私の技真似してみる?」

 

「いい。私には真似できないからね」

 

ユカリがそう提案してくるが、ユカリの技はクロには再現することができない。

ユカリの方がクロよりも技術力が上なのだ。

もちろんクロだって黒い弾を操る技術や“ブラックホール”を扱う技術はとても高い。が、それ以外に闇属性の魔法の使い方を知らないせいで、闇魔法を他のことに使おうとしてもどうしても素人同様の出力になってしまう。

 

「新しい技考えないと……」

 

「じゃあ私も一緒に考える!」

 

ユカリはそう言ってクロの新技を一緒に考えてくれることになった。

一応幹部の男はユカリのための訓練だと言っていたが、忙しいのか現在ここにはいない。そこに関しては気にしなくてもいいだろう。ただ何も訓練をしていないと、すぐそこで見張っている怪人型の見張りが幹部の男に告げ口してしまうというのはあるが。

 

「まずお姉ちゃんはあんまり体力がないから、私みたいにこんな風に闇の剣を作って動き回るのは難しいと思う」

 

「確かに」

 

ユカリは戦闘の中で、クロのことをよく観察していたようだ。今日会ったばかりなのにクロのことをまるで昔から知っていたかのように親しく接してくれている。

クロは少し、昔一緒にシロと模擬戦をしていた頃と今の状況を重ねて見ていた。

シロと模擬戦を行った時も、お互いの技について評価し合ったりしていた。

クロは少し懐かしい気分になる。

 

「だから、私としては遠距離から攻撃するのがいいと思うんだけど」

 

「結局それって黒い弾にならない?」

 

「う〜ん」

 

クロとユカリは一緒に悩む。

 

(ユカリは……そんなに悪い子じゃなさそうだな…)

 

今日一日ユカリと過ごしてみて、クロはユカリに対してそう感じた。

模擬戦でクロが何もないところでつまづいてこけてしまった時、慌てて攻撃を中断して心配そうな顔で大丈夫? と何度も聞いてきたくらいだ。

今だって、クロの新技を一緒に考えてくれたりしている。

本当は自分の訓練をしていきたいはずなのにだ。

まあ、クロが弱いから訓練にならない、だから特訓させようとかそんな風に思っている場合は別だが、ユカリはそんな風に考えている様子はない。

 

「ありがとうユカリ」

 

自然と口からそう溢れた。

 

ユカリはよく分からないという顔をしているが、

クロ自身も何に対してありがとうと言ったのかよく分からない。

人造人間である事実にショックを受けているクロに寄り添ってくれていたことに対してか、

一緒に新技を考えてくれていることに対してか、

はたまた、クロに対して優しく接してくれていることに対してか、

それは本人にも分からない。

 

ただ一つ確かなことがある。

それは、

 

 

この時ありがとうと呟いたクロの顔が、シロがいなくなった後では今までで一番穏やかな顔をしていたということだ。




クロのクローン登場()

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