悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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ルサールカ様に“調整”してもらったおかげか、俺の頭の中はとてもスッキリしていた。

 

組織のために奉仕する喜び、魔法少女の身でありながら、組織に属することができる喜び。

 

昔は、組織にいることが物凄く嫌だったはずなのに。

今では、この組織に居させてもらえることが、嬉しくて仕方がない。

 

ルサールカ様が言うには、シロも“調整”してもらったようで、きっと俺と同じ気持ちになっているんだろう。

 

愛は、俺のためを考えて、自分を人質として使ってまで俺とシロを組織に連れ戻したのかもしれない。そう考えると、愛には感謝しなければいけない。

 

今は本当に、幸せだ。

だって、俺は早速、ルサールカ様から仕事を貰えたのだから。

 

「嘘でしょ……何で……!」

 

そう、魔法少女の殺害、という重大な任務を、だ。

 

俺は、シロと共に組織の新幹部となったロキ様や鬼の魔族のノーメド様と戦闘をしている茜や束を殺しにやって来ていた。もし、成功すれば、ルサールカ様から『ご褒美』が頂ける。

 

ここに来る前に、事前の報酬として、頭を撫でてもらった。もし、殺害に成功すれば、より組織のことが好きになれるように、もっと深い”調整“をしてもらえるらしい。

 

より深い”調整“をしてもらうことで、組織から一生離れられない。本当に組織のためにしか働けない、組織の奴隷にさせてもらえるのだ。……こんなに嬉しいことはない。

 

俺の一生が、組織のために使い潰される。その未来を想像しただけで、俺の脳は幸せな感情で満たされていく。

 

 

 

 

そして今、茜の相手を俺がし、束の相手をシロがしている。

ロキ様やノーメド様は、ルサールカ様から俺やシロがきちんと“調整”されているのか確認するために、俺達に茜を殺させようと言われているため、戦闘には参加していない。

 

「ルサールカ様に“調整”してもらったから。だから、茜には悪いけど、死んでもらうね」

 

俺はそう言って、茜に黒い大鎌を振りかざす。

だが、茜の全身はメラメラと炎に燃えており、俺の大鎌はすぐに茜の炎によって塵にされてしまう。

 

………厄介だな。

 

「なっ、そんなこともできるの? ………わかったわ、お願い、イフリート」

 

また、イフリート。

確か、前に組織の幹部だった奴にも、イフリートっていうのがいた気がする。

何でイフリートの名を………。

 

『おい、クロ。聞こえるか?』

 

「……?」

 

何だ、この声。

まさか、これがイフリート……?

 

『今から、お前の中に入り込む。お前の“調整”、俺が解いてやる!』

 

なんだ、茜の炎が、俺の体に。

 

「お願い、クロ。目を覚まして」

 

俺の中で、何かが動いている。

 

何をしているんだ。

 

やめろ、やめろやめろやめろ。

 

俺の心に、土足で踏み込もうとするな。

 

せっかく、“調整”してもらったのに。

せっかく、今、幸せなのに。

 

「出て行け………」

 

「クロ…?」

 

「出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け出て行け」

 

お前には、俺の心の中は覗けやしない。覗けてたまるか。

 

 

 

 

 

………ああ、そうだ。

 

分かった。お前の追い出し方。

 

俺には前世がある。”クロ“は、俺の二度目の人生だ。

 

つまり、俺は、一度死んでいる。

ということは、無意識ながらに、俺の記憶の中には、『死の記憶』があるはずだ。

 

『死の記憶』、そんなものを覗いてしまえば、いくら組織の元幹部とはいえ、ただでは済まないはずだ。

 

どんな生命体にも訪れる、『終焉』。

 

それを今、経験させてやる。

 

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

 

クロと茜が戦闘を繰り広げる最中、真白と束もまた、互いに戦闘を繰り広げる…………。

 

……というわけではなく。

 

いや、実際には、ロキやノーメドに勘付かれないよう、戦っているフリをしてはいるのだが、互いに殺し合うつもりもなければ、傷つけ合うつもりもない。

 

2人は、戦闘をするフリをしながら、小声で会話を交わしていた。

 

(一体、どういうことなんですか?)

 

(クロが、組織に洗脳された。私は、組織に居た来夏の妹の子とか、あと、ユカリにも助けられて、洗脳されずに済んだ)

 

(待ってください。生きてたんですか? ユカリさんって)

 

(まあ、生きてたっていうか、生き返ったっていうか……。とりあえず、私は組織の内部から、クロの洗脳を解く方法を探ってみる)

 

真白は、ルサールカによってクロが洗脳されてしまったことや、ミリューの裏切りがバレてしまったこと。今は、ルサールカによって束達を殺すことを命じられてしまったこと。そして、ルサールカが真白のことを洗脳していると思い込んでいる状況を利用して、組織の内部からクロの洗脳を解く方法を探ることを束に伝えた。

 

(しかし、どうしますか。組織の幹部が2人後ろで控えている以上、私達が逃げることは難しそうですが………)

 

(とりあえず、今アストリッドと戦ってる櫻や来夏が来るまで、耐えてもらうしかないかも。まあ、私は手を抜いて戦うから、心配なのは茜の方なんだけど……)

 

(今の茜さんはかなり強くなってるみたいなので、多分大丈夫かと。しかし、クロさんを洗脳して、無理矢理従わせるなんて………許せないです。せっかく、仲良くなれたのに)

 

(……絶対、私がクロのこと、助けるから)

 

(…………何か、私にできることはないですか?)

 

(魔衣に連絡を取って、クロの洗脳をどう解くか、相談してみてもいいかも。クロの爆弾を取り除いてくれたのも、魔衣だから)

 

(分かりました。絶対に、クロさんの洗脳を解きましょう)

 

(うん。絶対に、元のクロを取り戻す)

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

 

『っ! まずい!』

 

どうやら、俺の作戦は成功したようだ。

イフリートは、おそらく俺の『死の記憶』に触れることを恐れてか、俺の体から出ていき、茜の元へと戻っていく。

 

『すまん。追い出された。心の中に入り込むことすらできなかった』

 

「仕方ないわ。クロ………“調整”って何? 一体、何をされたのよ?」

 

「“調整”は“調整”だよ。それに、茜はそんなこと気にする必要はない。だって、今から私に殺されるんだから!!」

 

「なんで、こんな風になっちゃったのよ…………あーもう!」

 

茜は、イライラしつつも俺の攻撃を交わしている。

 

「神なんてものがいるなら、訴えてやりたいわ。何でクロをいつまでも組織に縛りつけようとするのかって!」

 

俺もまた、茜の攻撃を交わすが………これ、手加減されてるな。

俺のことは攻撃できないってことかな。甘いんだね。

 

「上手く行ってたじゃない………爆弾も取り除けて、生命維持装置も何とかなって……今日だって、皆で遊園地に行って………」

 

そう話す茜の目からは、涙が流れている。

 

でも、悲しいかな。俺は、茜のそんな姿を見ても、何も感じない。

いや、何も感じないわけじゃない。

 

滑稽だなって。

 

俺はもう、茜のことも、束のことも、櫻のことも、みーんなどうでもいいのに。

 

こいつら皆、俺のことまだ友達だと思ってるんだなって、そう思うと……。

 

「馬鹿だね」

 

「何よ……」

 

「私のこと、倒すなんて簡単な癖に。変な情に流されて、手加減しちゃってる。せっかくだし、言ってあげよっか? 私は、お前らのこと別に友達だとか思ってないから」

 

「……嘘よ、嘘に決まってる……」

 

「嘘じゃないよ。あっ、シロは別ね? だって、私と同じで、組織のために働いてくれるから」

 

「嘘だって、本当は違うって、言ってよ…………お願い………。一緒に、怪人も倒したじゃない……」

 

そういえば、まだ組織の素晴らしさが分からず、愚かにも組織を裏切って櫻達と行動を共にしていた時は、シロや茜と共に街に現れた怪人を討伐してた時期もあったかな。

 

「そうだね……。確かに、嘘ではないよ。あの時は、本当に櫻達のこと友達だと思ってた。もちろん、茜のことも。でもね、今はどうでもいい。むしろ、組織の邪魔をするくらいなら、死んでしまえばいいって、そう思ってるから」

 

茜は俺の言葉を聞いて、悲しそうな表情をしている。

 

「クロ、私は、諦めないわ。私はまだ、貴方のこと友達だって…………大事な仲間だって思ってるから」

 

「うるさいな。死んでよ。鬱陶しいから………」

 

「っ! 絶対、助ける。貴方が”調整“ってものを受けて、そうなってしまったっていうなら………。私が、クロ、貴方を”調整“して、元に戻してあげる!」

 

やっぱり、甘い。

 

まあ、いい。手加減してくれるというのなら、それで。

こっちはこっちで、全力で行かせてもらう。

 

手加減はしない。

絶対に殺す。

 

全ては、

 

組織のために。

 

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