悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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Memory91

「頼んでおいたものはできたかしら?」

 

そう尋ねるのは、組織の幹部、ルサールカ。

彼女は以前、Dr.白川にある物を製作するよう頼んでいた。

 

それは………。

 

「一応作っておいたんですけどねぇ。でもよろしいんですか? 『特別個体(オリジナル)』の怪人を素材に使ってしまって。はっきり言って、もう『特別個体(オリジナル)』の怪人を作るのは不可能ですから」

 

「構わないわ。いくら特別といっても、結局私達よりも弱いもの」

 

そう言ってDr.白川が出したのは、10本の注射器。怪人強化剤(ファントムグレーダー)だ。

それも、普通の怪人強化剤(ファントムグレーダー)ではない。

 

特別個体(オリジナル)』と呼ばれる怪人を素材とした、特殊な怪人強化剤(ファントムグレーダー)だ。

本来怪人は、闇属性の魔法しか扱えないし、一般的に魔法少女も怪人も、扱える属性は原則一つとされている。だが、『特別個体(オリジナル)』だけは例外だ。

 

闇以外にもう一つ別の属性の魔法を扱うことのできる、他とは一線を画す特殊な怪人、それが『特別個体(オリジナル)』だ。

 

「しかし、こんなもの、いったい何に使うつもりなんです? 自分用ですか?」

 

「そんなわけないじゃない。どうして私が怪人なんかの成分を体に入れなきゃいけないのかしら。これは私のものじゃないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロに使わせる、そうでしょ?」

 

研究室に突然入り、そう告げたのは、ミリューの見た目をした、別の誰かだ。

彼女は、そのままDr.白川を縄で縛り付けていく。

 

「何を……」

 

「もう用済みだってさ」

 

「それは構いませんが………しかし、解放してくれないのですか。あ、そうそう。先程の怪人強化剤(ファントムグレーダー)ですが、クロに使わせるのはやめて頂きたい。アレを多用すれば、クロの体は完全に怪人に………」

 

組織から見捨てられると宣言されたにも関わらず、特に臆することなく、饒舌に話しかけるDr.白川だが、クロに怪人強化剤(ファントムグレーダー)を使わせることに対しては、難色を示している。彼程の図太さを持っていても、やはり許容できるものではないらしい。

 

「ええ、理解しているわ」

 

「では何故…」

 

「だって、そっちの方が面白いでしょう?」

 

そんなDr.白川に対し、ルサールカは何てことのないように、そう告げた。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

「アストリッド、大人しく降伏すれば、お前の命までは取らない」

 

正直、2年前のことをまだ許せているわけじゃない。けど、結果としてユカリは今こうして生きているし、魔法少女は誰1人として欠けることもなかった。残念ながら、アストリッドの部下は犠牲になってしまったようだが。

 

復讐なんてよくない、なんてのは建前で、実際にはアストリッドに復讐をする意味が薄くなってしまったから、かもしれない。

 

けど、一先ずこれで騒動は落ち着いた。

またアストリッドが収容施設から脱走する可能性がないとは言い切れないが、その時はまた俺とシロ、ユカリに、他の魔法少女も加えて対処すればいい。

 

そう思っていたのだが…………。

 

「私をそう簡単に捕まえられると思うな」

 

アストリッドの目が怪しく光る。

そのまま彼女はユカリの方に向き……。

 

「ユカリ! 避け……」

 

俺がユカリに忠告しようとした時には、既にアストリッドの魔法はユカリのいる場所まで辿り着いていて。

 

()()()

 

そのまま、ユカリの全身から血が吹き出し、ユカリはそのまま地面に倒れ伏してしまった。

 

「理解していなかったみたいだね、クロ。何故君が私に有利に動けていたのか。私はさ、本気を出していなかったんだよ。どうしてか分かる? だって本気を出してしまったら、勢い余って殺してしまうじゃないか。私は君達を手に入れたい。だから殺すわけにはいかなかった。けど、追い詰められたら、それだけ手加減するのは難しくなってくるんだ。分かるだろう?」

 

アストリッドは、少しイライラとしているような口調で、俺にそう話しかけてくる。

 

ユカリのことは心配だが、とりあえずさっきのアストリッドの攻撃については、知ることができた。

アストリッドがあの攻撃を行う時、その場所には必ず事前に魔力の流れが発生する。それにさえ気をつければ、あの攻撃は対処可能だろう。

 

やることは変わらない。ユカリは倒れてしまったが、こちらには来夏もいる。さっきと同じように、遠距離攻撃は俺の“ブラックホール”で。近接攻撃はシロの防御魔法で対処すればいい。後は、ユカリに行ったあの攻撃にさえ気をつければ、アストリッドの魔力を消耗させて、持久戦に持ち込めるはずだ。幸い、ユカリの毒は現在もアストリッドの体を蝕み続けている。

 

だがまあ、とりあえずはユカリの治療を優先したい。

となると、一旦来夏にユカリを預けて、雪達のところに連れて行ってもらった方がいいかもしれない。

 

となると、しばらくは俺とシロでこの場をもたせる必要があるな。

 

まあでも、大丈夫だ。

 

「来夏、ユカリをおねが………い………」

 

俺は来夏にユカリのことを頼もうと思って、シロと来夏のいる方向へ首を傾ける。

だが……。

 

「来夏、何で……シロのこと……」

 

気絶してしまっているシロと、来夏の姿。

アストリッドがやったわけではない。アストリッドから魔力の流れは感じることはできなかったし、何より、地面に倒れ込んでいるシロを見下しながら、来夏は笑っているのだ。

 

彼女がシロに何かしたのは明白だった。

 

まさか、アストリッドに何かされたのだろうか、そう思い、アストリッドの様子を伺うが、彼女自身もまた、来夏の行動に困惑している。

 

「さっきまでの余裕はどこ行ったんだ? クロ。残念だったな、私は、いや、俺は来夏じゃない」

 

来夏の姿が霧に包まれ、再び霧が晴れると、そこには、来夏とは全く異なる、組織の幹部の男が立っていた。

 

ロキ。

確か、他人に化ける能力を持っていたんだったか。

 

確かに、突然来夏がおかしくなったと言われるよりも、納得のいく展開ではある。が、何故彼が俺の邪魔をするんだろうか。アストリッドの存在は、組織としても邪魔だと思うのだが……。

 

「何で、邪魔を」

 

「さぁ? あの人の考えることは俺もよく分からないよ。ああ。それと、アストリッド、残念だけどタイムオーバーだ。今からここに朝霧去夏と、本物の朝霧来夏がやってくる。毒をくらった状態じゃ、2人の相手は難しいだろ? 今回はクロを手に入れるのは諦めるんだな」

 

ここでアストリッドを逃して、下手に体制を整えられてしまうとまずい。

 

「逃すか……!」

 

俺はステッキを取り出し、アストリッドに向かって魔法を放とうとする。が。

 

「やめとけ」

 

ロキの手によって、それを止められてしまう。

本当に意味がわからない。何故アストリッドに協力を……。

 

「んじゃ、俺はこれで」

 

そう言って、ロキはアストリッドごと、白い霧に身を包み、この場から消えていく。

 

逃げられた、か。

何故組織がアストリッドに手を貸すのか、疑問に残るが、今はいい。

 

ユカリは………。

 

「よかった。傷はそんなに深くない」

 

アストリッドは自信満々にユカリに向かって魔法を放っていたが、アストリッドの体が毒に侵されていたからか、思ったよりも魔法の威力は低めに済んでいたらしい。

 

これぐらいの傷なら、ちゃんと治療すれば、命に別状はないはずだ。

 

よかった。流石に二度もユカリの死に直面するのは、精神的に来る。

せっかく再開できたのに、またすぐにお別れなんてのは酷だ。本当に良かった。

 

とりあえず、できるだけの応急処置は済ましておいて。

 

「よし、とりあえずこれでユカリは安全なはず。後はシロの方だけど…」

 

俺は周囲を見渡して、シロの倒れている場所を探る。

 

ん?

 

シロの倒れている場所って、どこだったっけ。

 

「あれ? 俺、うっかり忘れちゃったっぽい? 脳を弄られた影響、まだ残ってたのかなぁ」

 

そんな風にぼやきながら、周りを見渡すが。

 

「いない?」

 

見当たらない。

どこを探しても、シロの姿が。

 

さっきまではいた。それは確実だ。

 

いなくなったとすれば、ロキが霧を出したあの時。

 

つまり、シロは………。

 

「連れ去られた?」

 

いや、違う。シロは一応今、組織に所属する魔法少女だ。

気絶してしまっていたから、組織の幹部であるロキが組織にのアジトに連れて行ったに違いない。

 

そのはず、だ。

 

 

その可能性が、高い。

 

だから、何も心配する必要などないはず、なのだけど。

 

妙な胸騒ぎがして、落ち着かなかった。

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