リリィバーンズレッド   作:ハルホープ

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ヘブバンやってからラスバレの歴戦乙女イベを改めて見る機会があった人間はおそらくこう思ったでしょう。
「ヘブバンだったら死んでた」と。



※注意 ヘブバンでダンジョンサボった時にある感じのバッドエンドイメージです。死ネタあります。ぶっちゃけ読まなくても支障ないです。


BAD END〜悪い夢〜

 

『月城ちゃん……これで、アンタの夢が、叶うよ……』

 

『違う……そんなもの、夢ではない!!』

 

 

 

 

「くぅ、まだ倒れないのかよ!!」

 

 ヒュージとキャンサーの融合した特型ヒュージ「レヴォルヴ」。特型の中でも特に未知のデータだらけなのを見て百由が「革命よー! レヴォリューションよー!」と適当に付けた名前だ。

 しかしエヴォルヴとレッドクリムゾン。月歌たちと梨璃たちそれぞれの因縁のある相手が合わさったような見た目の敵に、たまたま名前も合わさったのは因果を感じずにはいられない。

 

 激闘の末、31Aが注意を逸らした上で一柳隊が渾身のノインヴェルト戦術を打ち込んだが……レヴォルヴは倒れなかった。

 

「ノインヴェルト戦術でも倒れないとは、これは手詰まりじゃぞ」

 

「で、でも弱ってはいます! このまま攻撃を与え続ければきっと……!」

 

「その前にあのでけぇビームで全員薙ぎ払われるぞ! 今すぐに火力を叩き込まないと無理だ!」

 

 エヴォルヴが街を破壊したビームにもレッドクリムゾンが蒼井を殺したビームにも見える光線を放つ砲塔が、レヴォルヴには備わっていた。

 

「ぬべっち!! 百合ヶ丘の人たちは応援に来れないのかよ!」

 

「長距離砲を警戒して迂遠せざるをえないんです! 私たちだってたまたま近くにいたから近寄れただけなのをお忘れですか!?」

 

「……仕方ない、わね」

 

「ゆーゆー?」

 

「私がルナティックトランサーを使うわ」

 

「お姉さまっ!?」

 

「なんだよ、それ」

 

「……狂気に取り憑かれる代わりに莫大な力を得る、夢結のレアスキルだゾ」

 

「その中でも私のものは特に強力で、私はすぐに神宿りというトランス状態に入ってしまう」

 

「そんなの、危険なんじゃないのかよ!」

 

「……ええ、危険よ。我を忘れて戦うから、近寄らない方がいいわ」

 

「そうじゃなくて!! ゆーゆーはどうなるんだよ!?」

 

「月歌、やめろ!」

 

 突っかかる月歌の肩を掴むユキ。

 

「嫌な予感……」

 

「え?」

 

「あの時と同じだ。こっちに来てからはずっと、良い予感しかしてこなかったのに……嫌な予感がする」

 

「月歌……」

 

「月歌さん、私たちは部外者よ。たとえ無茶でも、守りたいものの為に戦う彼女たちを止める資格はないわ」

 

「そうかもしれないけどさっ!」

 

「言い争っている暇はないわ。ノインヴェルト戦術で弱っている今がチャンスよ」

 

 長い髪をたなびかせながら、夢結が前に出る。

 

「梨璃、梅。もしもの時は、頼むわね」

 

「夢結……」

 

「お姉さまっ、お気をつけて!」

 

 不安そうな顔をする梅と、努めて明るく振る舞って夢結を鼓舞する梨璃。フッ、とクールに微笑んだ夢結は、青眼にCHARMを構え、マギを放出させる。

 

 

「いくわ……ルナティックトランサー!!!」

 

 

 直後、夢結の髪が白く染まり、瞳は紅くなる。

 

 

「うがぁああああああああ!!!!」

 

 

 レヴォルヴも凄まじい気迫に危機感を覚えたのか、その巨大な砲塔を夢結に向けるが、巨大故に遅い。

 

 弾丸の如き速度でレヴォルヴに一瞬で肉薄した夢結は、砲塔を力任せに横薙ぎに払って無理矢理軌道を変える。あらぬ方向に飛んでいったビームが海に直撃し、大量の水飛沫をあげる。

 

 その間にも夢結はレヴォルヴの巨体を縦横無尽に飛び周り、凄まじい攻撃を叩き込んでいく。

 

 

「す、すげぇ……ゆーゆーはめっちゃ強いとは聞いてたけど、ここまでとは」

 

「クククッ、ただただ純粋な殺意! 美学はないが、それ故に無垢で美しい!! 是非ともあの状態の白井と殺し合いたいものよ!!」

 

「いや、なにかがおかしいゾ! 今の夢結がこんなすぐ神宿りになるはずがないっ!」

 

「えっ?」

 

 鬼神の如き夢結の活躍に見入っていた月歌だが、付き合いの深い者にとっては不安があるようだ。

 

「それに、神宿りになったお姉さまは何回嘉見ていますが、今日はなんだか」

 

 巨大な砲塔では一人の相手には小回りが効かないと察したレヴォルヴは小さなビームをいくつも発射するが、夢結は力任せに振るったCHARMで弾き飛ばし、受け流し、無視していいようなものは受ける。

 

 紅く光る瞳からは……瞳と同色の、血の涙が溢れてきていた。

 

「なんだか……切なそう?」

 

 天国が燃えた世界の、地獄のような負の感情。記憶を植え付けられて闘い続ける少女たちの、最上の切なさの残滓。

 

 それを感じ取った夢結は、以前暴走した時以上に強いトランス状態に陥っていた。

 

「あの百由様が革命とまで称するような、未知の負のマギの影響じゃろうな」

 

「夢結様、大丈夫でしょうか」

 

 

 そんな心配をよそに、夢結とレヴォルヴの戦いは続く。

 

 

「うるぅうがぁああああ!!!! がぁあああああああ!!!!!」

 

 先ほどのノインヴェルト戦術で破壊された外殻を庇うような動きをするレヴォルヴ。それに対して、斬るというより殴るような挙動で、破壊されていないレヴォルヴの外殻を攻撃して破壊し続ける夢結。

 

 庇わなければならない部分がどんどん増えて、追い詰められていくレヴォルヴ。

 

「キヒッ、キヒャハハ!! 美しい……美しいぞ白井!!」

 

「カレンちゃんさん? 確かにお姉さまはお美しいですが」

 

「容姿の話ではないっ!! まぁ確かにぃ? 美少女の方が絵になるがなぁ!」

 

 レヴォルヴは一か八かで再び砲塔にエネルギーを溜め出したが、そのエネルギーの濁流に向けて、特攻染みた突撃を果敢する夢結。

 

「し、ね……」

 

「そうだ白井ぃ!! 殺意を解放しろぉ! それこそが人間の……貴様の、最も美しい姿!!」

 

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!! 死ぃいいねえぇええええええええ!!!!!!」

 

 

 全力の、そして狂気の一閃。

 

 

 

 エネルギーを溜めていた発射口を直接攻撃され……レヴォルヴは大爆発を起こす。

 

 

「があぁああああ!!!!」

 

「お姉さまぁあああああ!!!!!」

 

 爆発に巻き込まれてボロボロになりながら吹っ飛んでいく夢結。思わず駆け寄ろうとした梨璃の肩を、梅が掴んで止めた。

 

 

「よせ、今回の夢結は特に危険だ…… 梨璃は下がってろ」

 

 そう。レヴォルヴを倒してなお、夢結は立ち上がり、CHARMを梨璃たちに向ける。

 

「そんなっ、梅様!」

 

「みんな疲れてるだろ、今の夢結とやり合えるのは……多分、梅だけだ」

 

「ひっひゃーーー!! ワシもいるぞおおおお!!」

 

 神宿りになった夢結を放置すると精神が崩壊してしまう。だからマギを使い果たすまで戦い続けなければならないのだが……一人で戦うつもりだった梅を遮るように、カレンちゃんが大声を上げた。

 

「元気じゃのうあやつは」

 

「奇跡的な口調被り!」

 

「吉村ぁ!! あんな極上の相手との死合い、独り占めはさせんぞぉ!」

 

「分かった!! 一緒に戦おう、カレンちゃん!」

 

「う、が、がああぁああっ!!」

 

「来るぞっ!! 動けない怪我人共は下がっていろぉ!」

 

 こうして、梅とカレンちゃんが即席の連携で、ルナティックトランサー中の夢結と切り結ぶ。

 

「夢結っ! 梅が、お前を止めてやる!!」

 

「があぁあ!!!」

 

 激しくCHARMをぶつけ合う梅と夢結。ギャリギャリと火花が散り、ズン、と互いの足元の地面が沈む。

 

「くっ、重いっ!!」

 

「後ろががら空きじゃぞ白井ぃ!」

 

 鍔迫り合いの最中に後ろに回り込んだカレンちゃんがセラフを背中に突き立てようとするが、それを察知した夢結は梅を強引に吹き飛ばしてから、振り向きもせずに後ろ回し蹴りを放つ。

 

「うあっ!」

「ぐはっ!」

 

 それぞれ別方向に吹き飛ばされた二人だが、すぐに体勢を立て直して構え直す。

 

「おいカレンちゃん! 夢結を殺す気か!? 本気の殺気を感じたゾ!」

 

「ふん!! 殺す気でやらねば、今の白井相手には時間稼ぎすらできんぞ!!」

 

「くっ……ああ、その通りだな!」

 

 カレンちゃんの言う通り、今の夢結を止めるには手加減などと言ってはいられない。

 一撃一撃が途轍もなく速く、そして重い。

 

 少しでも油断すれば攻撃を受けたCHARMが弾き飛ばされ、そのまま体を切り裂かれてしまうだろう。

 

「があぁああああああ!!」

 

 夢結は今度はカレンちゃんの方に向かっていき、激しく切り結ぶ。

 

「いい、いいぞぉ白井!!! キヒャハハ!!」

 

「夢結っ! いい加減、疲れたろ!!」

 

 少しでも息を入れるタイミングが欲しい梅は、悪いと思いながらも夢結を遠くへ蹴り飛ばす。だが息つく暇もなく、すぐに体勢を立て直した夢結が突っ込んでくる。

 

「クククっ、知っておるか? 鎌というのは本来、引っ掛けて切り裂くための道具ということを!!」

 

 カレンちゃんはセラフをぶつけるのではなく引っ掛けるようにして、向かってきた夢結のCHRAMを抑え込んで地面に叩きつける。

 

「今だ吉村ぁ!!! 殺せぇええ!!」

 

「カレンちゃん、ダメだ! 逃げろ!!」

 

 夢結はCHARMが抑えられているのを見ると……敢えてCHARMを離し、素手でカレンちゃんを殴り飛ばした。

 

「ぶおっ!?」

 

「ぐうルウぁあああああ!!」

 

 身軽になって逆に強くなったのではないかと思うような凄まじいラッシュがカレンちゃんを襲う。デンプシーロールじみた動きによる高速ワンツー。反撃に振るわれたセラフをジャンプして避けたと思うと、空中でクルクルと回転して勢いをつけた回転蹴り。その一発一発がカレンちゃんの華奢な体に深くめり込んでいく。

 

「キヒャ、良いぞ白井ぃ……ごふっ!! が、あぁっ!! それが、それが貴様の、殺しの美学か!」

 

 蹴り飛ばされてカレンちゃんが凄まじい勢いで地面をゴロゴロと転がる。それを見もせずに夢結は先ほど手放したCHRAMを拾う。

 

(強がってるけど、カレンちゃんももう限界だ……なら!)

 

 マギの残量は心許ないがやるしかないと決意した梅は、レアスキルを発動させる。

 

「縮地っ!!」

 

 瞬間、地面が爆ぜた。

 

「は、速いっ!? 馬鹿な、ワシの目でも追えんとは……ぐはっ!!」

 

 夢結と梅の高速戦闘の余波で再び吹き飛ばされるカレンちゃん。

 

「カレンちゃん、下がってろ。ここからは……縮地を使える梅にしか無理だ!!」

 

「フザ、けっ……!」

 

 立ちあがろうとするカレンちゃんだが、完全に膝が笑っていて倒れ込む。

 

 梅はカレンちゃんから離れるように夢結を誘導しながら戦う。

 

「がああぁあああ!!!」

 

「おい、お客さんたちの前でそんな姿見せてないで、戻ってこい! 夢結!!」

 

 おそらくほとんどのラスバレユーザーがギガントやレジェバトでお世話になったであろう縮地による攻撃。カレンちゃんですら目で追うのがやっとの高速移動をしながら激しくぶつかり合う。

 

「う、お、ねぇ、さま……があぁああああ!!!」

 

「あんまり聞き分けが悪いやつには、こうだ!!」

 

 梅のマギも残り少ない。これで戻らなかったら手詰まりだと、最後の力を振り絞って無理矢理押し倒す。が、凄まじい力で足掻かれ、倒れた姿勢のままの前蹴りが梅の腹部を蹴り上げた。

 

「ぐぅうあっ!!」

 

 勢いよく近くの岩に叩きつけられる梅。なんとか体勢を立て直すが、既に夢結のCHRAMは近くに迫っていた。

 

「いいんだ、夢結……お前が私を見てくれなくても、私がそばにいられなくなっても……お前が笑ってくれるなら」

 

 マギが切れた。CHRAMを握る手にも、もう力が入らない。諦観したような表情で、梅は両手を広げる。

 

 

 

「うがあぁああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 夢結が最初に感じたのは、ヌチャ、という湿った水音。次いで鉄のような匂い。

 

 決して忘れることのできない感覚。人を斬った時の感覚。

 

「あ、れ、わた、し……梅っ!?」

 

 夢結が最後に覚えているのは、自分を止めようとする梅やカレンちゃんの姿。まさか彼女たちを斬ってしまったのではないかと青ざめる夢結。

 

 

 

 

「夢結っ!!!」

 

「ま、い……?」

 

 いや、梅は無事だ。所々傷ついてはいるけど元気そうだ。近くにはカレンちゃんも横になっているが大事なさそうだ。

 

 

 

 

 なら、この、血は……

 

 

 

 

「ご、ぷっ……!!」

 

「り、り……?」

 

 

 夢結のCHARMは、リリの腹部を貫いていた。

 

 

「あっ、ああぁ、ああ、あぁあああああああああああ!!!!!」

 

 全てを理解した瞬間、勝手にガタガタと震える夢結の手。それが梨璃のお腹を余計に傷つけていることに気づいて止めようとするのに、手が止まらない。

 

「と、とま、とめ、わたっ、ちがっ、ぬっ、ぬいっ」

 

「おねえ、さま……」

 

 震える夢結の手を梨璃が優しく包む。なのに、いつも触れ合っている時の暖かさが感じられない。梨璃の手がどんどん冷たくなっていく。

 

「や、った……私、まに、あったん、ですね」

 

「梨璃ぃ!」

 

「わたし……お姉さまに……まい、さま、を……傷つけ、させたく、な……ゴボッ!! ゴホッ!!」

 

「梨璃! 梨璃!!!」

 

「喋るなっ、梨璃!!」

 

「いや……わた、し、わたしは、また……!」

 

「しっかりしろ夢結!! みんな、みんな来てくれ!! 梨璃が、梨璃がっ!!!」

 

 

 

「いや……いやよ梨璃、私は、貴女まで失いたくないのに!!」

 

「私……おねえ、さまに……追いつけ、ましたか?」

 

「えっ?」

 

「梅様と、お姉様……私なんかじゃ追いつけないって思ってたけど……間に合った、ってことは、追いつけたんです、よね?」

 

「梨璃……違うっ、違うわ! 貴女は、とっくに、追いついていたのよ! 何度貴女が私のことを助けてくれたか、貴女が隣にいてくれることが、どれだけ心強かったかっ!!」

 

「お姉、さま……えへへ、やったぁ。お姉さまに、褒められ、ちゃ、った」

 

「何度だって褒めてあげる! いつだって一緒にいてあげる!! だから……だから死なないでよ、梨璃……貴女までいなくなったら、私、私はっ!!」

 

「ごめんなさい、お姉さま……もう、だめみたい、です……こんなに近くにいるのに……声が、遠く、に」

 

「あ、あ、ああああぁっ」

 

「結梨ちゃん……ごめんね、こんなに早く、会い、に、は……」

 

 夢結の手を握っていた手が、ダラリと垂れ下がる。

 

「梨璃さんっ!!!」

 

「梨璃!」

 

「梨璃っ!!」

 

 

 

 一柳隊や31Aの面々が追いついた時には、もう、遅かった。

 

 

 

「こ、こんなのってねぇよ……」

 

 

 

 

 

「り、梨璃……? 梨璃、梨璃っ!!! い、いやっ……い゛や゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

 

 

 

 

 

「こんなの嫌だあぁああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

「悪い夢を見たみたいだね。でも、キミにはまだできることがあるはずだ」

 

 

 

 




正直すまんかった
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