リリィバーンズレッド   作:ハルホープ

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コラボなのに同作キャラとばっか喋る状況は避けられないこともある

 

「えっと、所属は言えない、ってことですか?」

 

「ああ、申し訳ないがあたしらも上から口止めされててな。縄張りから出てけっていうなら出てくさ」

 

「い、いえいえ、そんな追い出すようなことしませんよ! 同じように人々の為に闘う、リリィじゃないですか!」

 

「ねーねーユッキー、つまんなーい。難しい話終わったー?」

 

「子供か、頼むから大人しくしててくれ」

 

 あれから月歌では色んな意味で話にならないとして、ユキが梨璃と話していた。ここでユキが選んだのは嘘をつかないこと。言えないことは言えないとハッキリ言うことだった。あとは「リリィ」や「CHARM」、「セラフ部隊」といった固有名詞を避けた曖昧な言い回しを選んでいる。

 

 

「いい? 美容のコツはね……」

 

「なるほど、参考になります」

 

 そんなユキの横ではつかさがなぜかすっごいドヤ顔で神琳に美容の蘊蓄を語っていた。

 なんでハッカーが交渉して諜報員が交渉相手の一人と美肌について話しているのか、甚だツッコミたい所だったがこれ以上ボケツッコミを続けると本気で話が進まないからと、グッと抑えるユキ。

 

「さっきはええとこ取りされたからな、うちの実力ってもんをハッキリ見せたる……うぉらぁあ!! うちのサイキック見てみぃや!」

 

「えっ、と、あの……それ、どんなタネなの?」

 

「手品ちゃうわボケーー!!」

 

 

 

「カレンちゃんから聞いたわ。さっきは前に出すぎた私を止めてくれてありがとう」

 

「えっ、貴女さっきの鎌型CHRAMを使ってた方ですの……? 変わりすぎじゃありませんこと?」

 

 

 

「梅さんの喋り方って、ネットで見たあの男の人と似てます! 私の好きなスラングと少し時期はズレてますが!」

 

「スラング? なんかよく分からないが、タマはそういうのが好きなんだな!」

 

「梅様、多分だけどここは怒るべきところだと思う」

 

 

 つかさ以外の面々もすっかりリラックスして一柳隊の面々と話し込んでいる。

 

 つまらなそうにしててもちゃんとユキの隣にいる月歌がまともに思える。もういっそ別に気を使わないでノリで接してればいいんじゃないか? と投げやりになれないのがユキの性分であった。

 

 

「怪しいもんじゃない……ってのは厳しいが、あんたらとやり合うつもりはないんだ」

 

「……梨璃、ちょっとこっちへ。みんなもいいかしら?」

 

 話を聞いていた夢結が梨璃や他のメンバーを呼び寄せ、一柳隊の面々だけで話すことにする。

 

 

「ふっふっふ、さっすがユッキー、かんっぺきに誤魔化せたな! ナーイスハッキーング!!」

 

「いやどう見ても怪しまれてるし仮に誤魔化せてたとしても今のお前の発言で台無しだからな? それとハッキングしてねーわ」

 

 

 

 グッダグダの面々を見ながら、楓が呆れたようにため息をつく。

 

「で、どうするんですの? 百合ヶ丘の担当地域から出ていくとは言ってますが、正直、怪しすぎてさっさとしょっぴいた方がいいと思うのですが」

 

「一体何者なんでしょうね、あの方たち」

 

 悪い人間には見えないが、それはそれとして怪しいなんてレベルじゃないくらいに不審な6人組に、一柳隊も対応を決めかねていた。

 

「おそらくはどこかの親ゲヘナのガーデンかゲヘナラボの者じゃろうな。見たことのないCHRAM、異質なレアスキル、反ゲヘナの百合ヶ丘には明かせない素性……まだ公にできないような新兵器の実戦テスト部隊が秘密裏に送り込まれてきたと考えれば辻褄は合うわい」

 

「スパイだとしたらあまりにもお粗末過ぎますし、その線が濃厚ですわね……むしろ戦闘データの収集しか考えられてないからこそ、あのお粗末な対応になっているのかもしれません」

 

「G.E.H.E.N.A……」

 

 G.E.H.E.N.Aに改造された過去のある鶴紗は苦虫を噛み潰したような顔をする。そんな彼女を見かねたように、梅がことさらに明るい声を出す! 

 

「まぁあくまで推測だ。それにアイツらはそんな悪い奴じゃなさそうだゾ! 特にあの月歌って奴、すっごい面白いしな!」

 

「……ほんの一瞬だけど一緒に闘った相手を、拘束したくない」

 

 雨嘉も小さな、それでも芯のある声で言う。それを聞いたからかは分からないが、神琳が頷きながら発言する。

 

「彼女たち自身に害意はなさそうですが、身分を明かせないような事情があるのは間違いありません。藪をつついて蛇を出すよりは、不干渉が一番穏当かつ適当かと」

 

「見なかったことにする、ね」

 

「でもあの人たち、行く所あるんでしょうか? あの、戦闘の直後で疲れてそうですし、少し休憩させてあげるくらい……」

 

「心配なのは分かりますが、触れられたくない事情のある相手に世話を焼きすぎるのは却って迷惑ですわ」

 

「ん、待て、百由様から連絡じゃ。もしもし百由様? ワシじゃ。うむ、うむ……なにっ、そうなのか? うーむ、こちらは少々立て込んでいてのう……うむ、また連絡するのじゃ」

 

 とりあえず見なかったことにしようという話で固まりかけた時、ミリアムに百由から連絡が入る。

 

「ミリアムさん、百由様はなんと?」

 

「数分前……厳密に言えばワシらがヒュージと戦うあいつらを見つける直前、また特殊なケイブ反応が一瞬あったらしい、しかもワシらのすぐ近くでな」

 

「それってつまり」

 

「彼女らが例の特殊なケイブ反応と関係があるのが、確定になってしまったということね」

 

「うーむ、これは見逃すというわけにはいかなくなったぞい」

 

「まぁ、あれだけ怪しいんですもの、正直全く意外ではないですわ」

 

 リリィを捕まえるような真似はしたくないが、調査中であったケイブ反応に関連すると確定してしまった以上見逃すわけにもいかない。

 

「本当にゲヘナの実験部隊だとして、ケイブも関係があるとなると一体……」

 

「そもそも、どうしてわざわざ敵対している百合ヶ丘の担当地域でテストする必要がありますの? しかもこんな山奥で……」

 

「あの、ゲヘナは前にヒュージに鶴紗さんと同じ回復能力を持たせたことがありますよね? ひょっとしたらその逆……リリィやCHARMをケイブでどこかへ送る実験をしてるのかも」

 

「荒唐無稽……とも言えないね 」

 

 鶴紗は言葉少なだったが、実際にゲヘナの実験台にされていた彼女の言葉は色々な意味で重い。

 

 

「どちらにせよ今は推測しかできません。それにもし推測が当たっていたとしても、彼女らに聞いて素直に答えるとは思えませんね」

 

「そうかの? 誰かしらがポロッと答えてあのユキという苦労してそうなのがツッコミ入れる姿が容易に想像できるのじゃが」

 

「……確かに」

 

 会ってから短い時間しか経ってないが、月歌たちの破天荒さはよく伝わっていた。

 

「なんにせよ、多少強引にでも百合ヶ丘に連れていくしかないでしょうね」

 

 夢結の言葉に複雑そうな表情を浮かべる梨璃。

 

「梨璃、共闘したとはいえ会ったばかりのリリィに心を許しすぎるのは止めなさい……なんて言っても、貴女は変わらないんでしょうね」

 

「それが梨璃さんのいいところですわ♪」

 

 互いに頷き合う夢結と楓。なんだかんだでレギオンの仲間として互いに信頼しているし仲はいいのだ。

 

「そうね、あちらが喜ぶかは分からないけど、実質的な軟禁……という体で、学園でしばらく休ませてあげましょう。理事長代行には私が上手く説明するわ」

 

「お姉さま!」

 

「理事長代行はリリィ個人には学園の対立を押し付けるような人ではないしね、心配ないわ」

 

 

 

 

 

 

 

「さっきはああ言ったが、下手するともっと怪しまれた方がいいかもな」

 

「どういうこと?」

 

「この世界について調べるにも、ただ生き抜くのにも拠点は必要だ。キャンサーみたいな化け物がいるのにあてもなく徘徊してたら、すぐに力尽きちまう……拘束されようがどこか安全な場所に連れていってもらう方がいいってことだ」

 

「つまり、食いっぱぐれないように軽犯罪でわざと刑務所に捕まったろ! ちゅーことかいな」

 

「有り体に言えばそういうことだな」

 

「やっぱりさっきの人たちのお世話になるしかないのでしょうか? なら今からいい感じに怪しいことしてきます!」

 

「ふっふっふ、敢えて怪しまれるなんて、諜報員の腕の見せどころね!」

 

「待て待て、だからって正体について詰問されるのも問題だからな……どうしたんもんか」

 

「あれ、あのカッコいい人がこっちに来るよ」

 

 可憐の言葉に目線を一柳隊の方に向けると、夢結が31Aの方に歩いてきていた。

 

「なんだか久しぶりにいい予感! きっと何かこう上手いこといくさ」

 

「はっ……確かに久しぶりだな、お前のいい予感は」

 

レッドクリムゾンとの闘い以降、滅多に言わなくなった月歌の「いい予感」。それをもう一度聞けたユキが感慨深そうにしている間に、夢結がすぐ近くに来た。

 

「どうしたのゆーゆー?」

 

「……それは私のことかしら?」

 

「うん、白井夢結だからゆーゆー」

 

「おい、頼むからキレさすなよマジで」

 

「……まぁいいわ」

 

 相変わらずすぐ変なあだ名を付ける月歌に頭を抱えるユキ。だが夢結の方は特に気にしていないようだ。

 

「敢えて聞きはしないけど、貴女たちの事情はおおよそ見当がついてるわ。だから今は大人しく百合ヶ丘について着てくれないかしら? 悪いようにはしないつもりよ」

 

 

「ますます良い予感! もちろんついてくついてく!」

 

「おいマジかよ!? 久しぶりだけどやっぱりすげぇなお前のいい予感!」

 

 なんかあだ名とか良い予感悪い予感とかはヘブバンループ説の根拠だった気もする*1が、そんなん気にしてたら何も書けないのでご都合でいかせていただく。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ 

 

 

 

そして、百合ヶ丘女学院の、理事長室。そこには理事長代行である高松と、生徒会の面々がいた。

 

 

「所属不明のリリィ?」

 

「はい、特殊なケイブ反応の調査をしていた一柳隊が発見したとのこと。ゲヘナに送り込まれた実験部隊の可能性が高いそうですが、詳しいことは未だ不明とのことです」

 

「そう、か……結梨くんの時のことを思い出すな」

 

 百合ヶ丘は反G.E.H.E.N.Aではあるが……否、だからこそ彼らに改造された強化リリィへの保護には積極的だ。

 

「彼女らが特殊なケイブ反応に関係していると見て『確保』したとのことです」

 

「百由くんの報告にあったケイブ反応か……たしかに所属不明ならゲヘナからの『保護』ではないな」

 

 G.E.H.E.N.Aの実験台にされているリリィを保護するのにも、色々と面倒な外交が必要になる。だが相手があくまで『所属不明』なら、本当にG.E.H.E.N.Aの関係者だろうとそうでなかろうとこちらの自由にできる。

 

 高松はリリィの保護に積極的な人道派である。たとえ後から各所から圧力に苦労することになろうとも、一人でも多くのリリィにせめてもの安らぎを与えたかった。

 

「『確保』後しばらくしてから、事情を聞くことにしよう……あくまでも丁重にな」

 

 

 こうして31Aの面々は、しばらくの間百合ヶ丘女学院に滞在することになった。

 

 

 

 

*1
チュートリアルガチャのひぐみんの台詞や4章前半の予言者の存在的に筆者はループじゃなくて未来予知だと思ってる

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