リリィバーンズレッド   作:ハルホープ

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タイトルを変更、あらすじも少し手直ししました。


コラボ先との小さな共通点はとことん拡大解釈するべき

 次の日。身体検査を受け終えた月歌たち31Aは、与えられた部屋に戻って話し込んでいた。

 

「なんちゅーか随分本格的やったな。入隊前に色々検査とかされたのを思い出したわ」

 

「しかし安藤はああ言ってたが大丈夫か? 調べた感じリリィは普通の人間とは少し違うらしい。身体検査で異常な数値とか出したら問い詰められるかもな」

 

「その時はその時よ。なるべく正体を明かすなとは言われてるけど、本当にいざとなったら異世界転生したって正直に言いましょう」

 

「ラノベの読みすぎか、異世界ではあるかもしれないけど転生はしてねーわ」

 

「転生したらナービィだった件……これは流行る!!」

 

「色んな意味で止めろ」

 

「なんにせよ、身体検査の結果が出るまでは待機ですね!」

 

 百合ヶ丘に正式に保護されたわけではなく、怪しい集団を軟禁しているという体で休ませてもらっているのが月歌たちの現状である。

 しかし月歌はそこで大人しく潜伏するような性格をしていない。

 

「よっしゃ! それじゃあバンドの練習しようぜ、練習!」

 

「いやだからスパイと疑われないように大人しくしとこうって昨日話したじゃないか」

 

「スパイと思われるような真似がダメなら、いっそ目立ちまくる!」

 

「流石よ月歌さん! 諜報員たる私と同じ考えに至るなんて!!」

 

「私も賛成。部屋で何をしてるか分からないよりは、向こうも安心すると思うし……なによりワシもそろそろ演りたーーい!!」

 

「同じ鉤括弧の中で変わるなよ、初対面の時はもっと勿体ぶって変わってただろ」

 

「はっ、ええで! パラレルワールドに来たっちゅうんに部屋にこもりっぱなしで退屈してたとこや!」

 

「やったりましょう!」

 

「りーりーに頼んで音楽室使わせてもらおうぜ! 身体検査も済んだし大丈夫だろ!」

 

「あーもう、まーたあたしだけ反対派なのかよ! どうなっても知らないからな!!」

 

 

 

 

 

 

 

「さて、一体何用かな、百由くん」

 

「案の定と言いますか、例の6人組の検査結果について少々気になることがあったので報告をばー、と思いまして」

 

「やはり、何か異常な数値があったか」

 

 百合ヶ丘の理事長室で、百由と理事長代行である高松がデータを広げて会議をしていた。

 

「数値が異常……という言い方はそうとも言えるしそうでないとも言えますね。彼女たちのDNAデータは揃って平均的な『ヒト』と同じでした」

 

 百由の持って回った言い回しを咀嚼するのに一拍置いてから、高松は確認するように問いかける。

 

「リリィではなく、『ヒト』?」

 

「ええ、彼女らのスキラー数値ではどう考えてもCHARMを振るえません。となると彼女たちの持つ武器は果たしてCHARMなのか……いえ、確実にCHARMではありませんね」

 

「リリィ以外の新たな戦力……ということか」

 

 スキラー数値の問題で、戦う意思を持ちながらもリリィになれない者は多くいる。軍人やマディックとしての支援だけではなく、もっと本格的な戦いをリリィでなくとも……そう考える少女は決して少なくない。そしてその純情を利用しようとする勢力もまた多い。

 

「それだけじゃありません。彼女たちのDNAの数値は、平均的過ぎるんです」

 

「平均的過ぎる? それではまるで……」

 

「ええ、この違和感は結梨ちゃんの時とそっくりです」

 

 一柳結梨。ヒュージの体組織を元に生み出された人造リリィ。一時は人型のヒュージだとしてゲヘナに引き渡しかけ……最終的に人間と認められた直後の戦いで戦死した。

 

 彼女のDNAは自然に産まれてきたにしてはあまりにも偏りがなさすぎて平均的過ぎたことから、ヒュージ由来の人造リリィではないという疑いが強まったのだ。

 

 月歌たちの数値もまた、まるで『何か』が人間を模倣して生まれてきたかのように、一律して平均的なデータをしていた。身長や体重といった表向きの見せかけのデータにはバラつきがあるように見えても、その内側の根本的な体組織が統一化されすぎているのだ。

 

 

「人造リリィの次は人造人間か……しかしあの時と違い、今のところゲヘナから返還要求は届いていない」

 

「はてさて、今回ばかりは彼らもシロなのか……だとしたら彼女らは一体何者なのか……謎は深まりますねぇ」

 

 

 

 難しげに眉をひそめて考え込む高松。その時、コンコンと控えめにドアがノックされる。

 

「理事長代行、お話中失礼します」

 

 入ってきたのは生徒会の一人である秦祀。

 

「例の6人組について話があります」

 

「話? 何か問題でも起こしたのかね?」

 

「その、問題と言いますか、騒ぎと言いますか……」

 

 

 珍しく語気を濁す祀に、高松を眉をひそめた。

 

 

 

 

 

「月歌さんたち、大丈夫でしょうか」

 

「今は身体検査の結果待ちだけど、彼女たちが普通のリリィじゃないのは確かでしょうね」

 

 食堂。一柳隊の面々が昼食を取っていた。話題はもちろん、月歌たち謎の6人組のことである。

 

「ラボにいる強化リリィにしては、なんというか検がないし能天気な奴らだったけど」

 

「明るい奴ばっかだったもんな!」

 

 

 

 自らも実験体だった鶴紗は彼女らを特に気にかけていたが、どうにも自分と同じ境遇とはまた少し違う気もした。

 

 

「でも……めぐみは、ちょっとだけ苦しそうだった」

 

 雨嘉が思わず口に出す、といった風にポツリと溢した言葉に、一柳隊の面々は不思議そうな顔を雨嘉に向ける。雨嘉も意識して言ったわけではなかったのか、注目されていることに気づいて少し顔を赤くする。

 

「あの関西弁のやかましい奴か? 月歌の次くらいに元気に見えたがのう」

 

「その、多分、本当になんとなくなんだけど……めぐみだけはたまに、なんだか辛そうな表情をしてるように見えて」

 

「雨嘉さんがそう感じたなら、そうなのでしょうが」

 

「い、いや、本当になんとなく、たまたまそう見えただけだから!」

 

 その後も月歌たちに関しての話を続ける一柳隊の面々。だが夢結は、梨璃にどことなく元気がなさそうに見えた。

 

「梨璃、大丈夫? なんだか元気がなさそうだけど」

 

「お姉さま……えへへ、お姉さまには、やっぱりバレちゃうんですね」

 

 スッ、と自然に席を夢結の方に近づける梨璃。

 

「なんだか……この空気、結梨ちゃんのことを思い出しちゃって」

 

「……ええ、そうね」

 

 突然現れた謎の少女、という点で、梨璃が……否、無意識のうちに夢結も、月歌たちを結梨と重ねてしまっていたのだ。

 

 

 普段なら「きぃいい!!! いつのまにか夢結様が梨璃さんと肩を寄せ合ってますわぁああ!!!」とか言い出しそうな楓も、しんみりとした空気を感じて静かにしている。

 

 楓と結梨が実質的な同室だったのいいよね……。

 

 

 

 と、その時。ザワザワとにわかに食堂がざわめきだす。

 かと思えばいつのまにか人の流れができていて、多くの人が食堂の中心へ向けて歩きだしていた。

 

「なんじゃ? なにかイベントでもやっておるのかのう?」

 

「いえ、そんな予定はなかったはずです。皆さん、見に行ってみましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いてくれ!! Burn My Soul !」

 

 

 

 

 

 

 

「あれは、月歌さんたち!?」

 

「あの方たちは自分たちの立場がセンシティブだというのを分かってらっしゃらないんですの!?」

 

「あわわ、ひょっとして私が音楽室の使用許可を出してもらったからですか!?」

 

「梨璃、お主も大概よな……」

 

 

 

 

 

 

 

「あーれー!? 練習のはずが食堂でゲリラライブしてるーー!? 大人しくしとこうって話はどこ行ったーー!?」

 

「諦めーや和泉、練習始めた時点でこうなることは薄々分かってたはずやで」

 

「くっ、アタシとしたことが……もうどうにでもなれだ! 今さら目立つ真似控えたってどうせ意味ねぇしな!」

 

「キヒャヒャ……こっちで思ったより戦えなくてウズウズしておるわぁ! 早くこのパッションを解放させろぉ!!」

 

「それに、物珍しさもあるだろうけど結構注目されてるわね」

 

「普段はどうしても大体同じ人にしか聞いてもらえないので、なんだか新鮮ですね!」

 

「よし……みんな、改めて行くぜ!! Burn My Soul!」

 

 

 そうして始まった月歌たち31A……否、She Is Legendのゲリラライブ。

 

 

 その歌は、まさに……魂が燃え上がるような曲だった。

 

 

 

 ──特に才能なんかなくても、どんなに辛い人生でも、大切な人と一緒にいれるならそれでいい。こんな滅びかけの世界でも、前を向いて生きていこう……そんな気持ちにさせる歌だった。

 

 

 

 ワァアァアアア!!! 

 

 

「す、すごいです! 感動ですぅ!!」

 

「確かに、かなりの迫力だったな!」

 

「うん……なんだか歌詞が、私に刺さった。特に才能もないし……ってところとか」

 

「ただ、生きて、前を向く……それが意外と難しいということを、改めて思い知りました」

 

 魂の籠もった歌声と演奏に、胸を打たれしんみりしている者と、魂を揺さぶられて熱狂している者……反応は様々だったが、食堂でゲリラライブを聞いていた者はみな、心を動かされていた。

 

 

「アンコール!! アンコール!!」

 

 そして誰からともなく、アンコールの呼び声がかかる。

 

「おいおいマジか!? 絶対怒られると思ってたのにアンコール!?」

 

「よし、まだまだ行くぜ! 聞いてくれ! ありふれたBattle Song〜いつも戦闘は面倒だ〜」

 

 てっきり怒られて止められると思っていた中での予想だにしない好反応に、月歌たちもテンションを上げてファン対応する。普段はあまり長くライブに時間を取れないのもあって、何曲も演奏できて彼女らもまた昂っているのだ。

 

 

 

 ワァアァアアア!!! ワァアァアアア!!! 

 

 

次々と繰り出される聞いたこともないけど心を揺さぶられる曲に、会場のボルテージは最高潮だ。

 

「これは、洋楽直系のスクリーモ……? 随分と大胆なアレンジですこと」

 

「次のリリィ新聞の記事は決まりです! 『謎のリリィ集団、その正体はガールズバンド!?』 これでいきましょう!」

 

 

 興奮気味に鼻血を出しながら語る二水。騒ぎを聞きつけて人がさらに集まり、最早She Is Legendのゲリラライブは一大イベントと化していた。

 

 

 

「あの、一応彼女らは軟禁という体で秘密裏に匿っているのだけど」

 

 夢結の小さなツッコミは、ライブの熱狂の前ではあまりにも小さかった。

 

 

 

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