謎のケイブから現れた、宇宙からの来訪者……キャンサー、ニードルバード。それが月歌たちと同じ世界から来たと知るはずもない百合ヶ丘は、ニードルバードを新手のヒュージとして扱い、一柳隊を迎撃に出した。
「発見しました! 目標は、鳥型のヒュージです! まもなく目視可能距離まで接近します!」
「鳥型か、翼でここまで飛んできたのかのう? しかしケイブ反応はあったと言っていたか……」
アルトラ級を撃破して以降、百合ヶ丘付近に大きなケイブが発生することは減った。
もちろん散発的な襲撃はあるものの、今回のような未確認のヒュージが現れるのは久しぶりのことだった。
「完全にデータにないヒュージ……みんな、気を引き締めていくわよ」
「最近は遠征先に特型がいるパターンばっかだから、ネストを破壊する前みたいで懐かしいな!」
「未確認ヒュージとの戦闘はもう慣れっこです! いきましょう!」
なんか設定上は百合ヶ丘には一柳隊より強いのがアールヴヘイム以外にもウジャウジャいるみたいだけど、少なくとも特殊な個体と戦ってる回数は流石に主人公チームが一番やろ……。
閑話休題。
梨璃はCHARMをブレードモードにして、ニードルバードに向かっていく。
「やぁあああああ!!!」
「キュゥオァアアア!!!」
ニードルバードは叫びをあげて翼を広げると、立ち向かってきた梨璃に風を飛ばす。
「きゃあっ!?」
「梨璃っ、下がりなさい!」
「風起こしっ!? 梨璃さんのスカートが捲れてその眩しい太腿が白日の下に晒され……ゲフンゲフン! 翼が武器なら左右から挟撃ですわ!」
「……それ、後半だけでよかったよね」
両側面からの攻撃で、翼を一翼ずつしか使えないようにする形で鶴紗と夢結が抑え込む。
「くっ、固いなこいつ!」
「鶴紗さん、叩きつける攻撃は効果が薄いわ! 切り裂くようにCHARMを振るいなさい!」
「残りの皆様! ガラ空きの中央をたたっ斬ってくださいましー!!」
そして二人が抑えている間に、残りの面々が次々と攻撃を叩き込む。
ニードルバードは翼を打ち付けたりビームを放ったりと反撃してくるが、明らかに手数が足りていない。9人の連携にジワジワとダメージが重なっていく。
「そこっ!」
「キュオオァア!!」
中でも、雨嘉の狙撃を受けた時は特に大きくのけ反っている。
「射撃が効いてる……?」
「ならば、シューティングモードメインで立ち回ってくださいまし!」
射撃に弱いと見た一柳隊の面々は、狙撃を得意とする雨嘉を中心に射撃を繰り返す。ニードルバードは鳴き声のようなものをあげながら、ジリジリと後退を繰り返している。
「ふぅ、特型と聞いた時は焦りましたが、なんとかなりそうですね!」
「油断は感心しませんわよ二水さん。追い詰められた獣はなんとやら、ですわ」
「キュオオオァオオオオオ!!」
まるで二水と楓のやり取りを合図にしたかのように、ニードルバードは翼を広げながら顔を天に向けて上げる。そして胸部周辺に、赤黒いエネルギーを溜め始めた。
「なんだ、力を溜めてるゾ?」
「一時防御態勢を! 特に攻撃の要の雨嘉さんは守ってくださいまし!」
楓の指示を受けて、雨嘉を守るような陣形を取る一柳隊。
「雨嘉さん!!」
「えっ……?」
他のリリィが壁になっていても、無理やりニードルバードは銃撃の要である雨嘉を狙った。放たれた光線から雨嘉を守るべく、神琳はCHARMを盾にするが……
「きゃあぁああああ!!!?」
「神琳っ!!?」
「そんな、マギの防御結界を一撃で!?」
しっかりと防いだにも関わらず、神琳の防御結界が一撃で消し飛んだ。
ニードルバードの溜め攻撃は、一撃で相手の防御を削り取る技なのである。実のところこれは戦い慣れたセラフ部隊員たちにとってはむしろ隙でしかないのだが、初見のリリィたちにとっては恐ろしいものだった。
「くっ、このぉ!!」
今度は自分が守ると言わんばかりに、神琳の前に出た雨嘉による再びの銃撃。
苦しげに呻くニードルバードだが、負けじと溜め攻撃の姿勢に入る。
「むむむっ、根比べというわけじゃな」
「力押しでも勝てるだろうけど、あの光線だけは厄介だね……すぐ回復できる私が前に出るよ」
「梅も行くゾ! 縮地なら避けられそうだしな!」
回復力のある鶴紗と機動力のある梅が前に出て一撃必殺の光線に対処。素早く対応を考えて陣形を変える一柳隊。
「神琳さんは私と司令塔役を交代して下がっていてくださいまし!」
「いいえ、逆よ」
楓と位置を交代しようとした時、ドン! と背中を押された神琳。
「えっ?」
直後、ニードルバードの溜め攻撃が無防備に前に出てしまった神琳に当たり……光線は何事もなく霧散した。
「マギ……やはりデフレクタと同質の存在のようね」
「あ、あなたは……!?」
神琳の背中を押したのは……いつの間にか彼女の背後にいた東城つかさであった。
「つかささん!? なにを……」
「あら、思っていたより鈍いのね。二度も自分で喰らって気づかなかったの? あの攻撃は防御を剥がすことに特化してる。逆に生身への影響はほとんどないわ」
そう言うつかさはとても冷たい目をしていた。
「え……?」
慣れたセラフ部隊員にとってニードルバードがカモな理由がそれだ。一度力を溜めてから、生身には影響のない攻撃をしてくる。避け方……否、わざと受ける方法さえ分かっていれば、これほど戦いやすい相手はいない。防御を剥がされた者がそのまま喰らい続ければノーリスクなのだから。
「遅いわね。次は下がりなさい」
つかさは今度は乱暴に神琳の手を引いて自らの後ろに下げる。溜め攻撃ではない通常の攻撃は、防御結界のない状態では致命傷だからだろう。
(いえ、それより……背後を取られたのに気付かなかった?)
神琳は優秀なリリィである。意識がニードルバードに向いていたとはいえ、簡単に背後を取られて背中を後ろから押されるなどあり得ない。相手が彼女と同等以上に優秀かつ、気配を消すのが得意な……たとえば、諜報員でもない限り。
「貴女……つかささん、ですよね?」
つい先日会ったばかりだが明らかに雰囲気が違う。あの得意げに美容について語っていた彼女と同一人物とは思えない。
「ええそうよ、郭神琳さん」
「あ、あの、つかささんはどうしてここに?」
梨璃がつかさの高圧的な態度に少し萎縮しながらも質問する。
「状況が流れるのを静観するのは好きじゃないの。私たちの持ってるカードで交渉するには、貴女たちにとって未知の敵との戦い方を知っていることを示すのが効率的よ」
「えーっと、どういうことですか?」
「つかささんは……いえ、月歌さんたちは、あの特型のヒュージについて知っているのね?」
「ええ、そうよ」
夢結の確認に対してフッ、とつかさが馬鹿にしたように笑いながら答える。その背後で、再びニードルバードが動き出した。
「危ない!」
「大丈夫よ、みんなアレでも精鋭部隊だから」
直後、横合いから月歌たちが現れる。
「おねんねの時間や……ほなっ、おやすみ!!」
「めぐみっ!」
「秘伝の濃厚ヒール!」
「っ、防御結界が……?」
めぐみが巨大な光の斬撃を放ってニードルバードの動きを無理矢理止め、タマは神琳を回復させる。
「派手なのいくから後は頼んだぜ!!」
「斬り刻ーむ斬り刻ーむ、斬り刻ぁぁむ!!」
スタンしている間にユキの砲撃でニードルバードの外殻を破壊し、カレンちゃんが切り刻んで傷を付ける。
「終わりにしようぜっ!!」
カレンちゃんが付けた傷を上からなぞって追い打ちするように、月歌が二刀流で滅多斬りにする。
「つかさっち! トドメを!」
「……はい、ばーん」
つかさが低いアンニュイな声で呟いてから指を鳴らして、炎の弾丸を発射する。
「キュゥォァァアオァアアア!!!」
バリィイン!! という音と共にニードルバードは四散した。
「へっ、お前はもう狩り飽きたぜ! 水着つかさっちが来たらまた狩ってやるからな!」
「バカじゃないの?」
「ヒャヒャ!! 久しぶりに暴れられたのはいいが、こんな慣れた相手じゃ、カレンちゃんは満足できなーーい!!! あのヒュージとかいうのを殺らせろぉ!!」
「やった!回復の出番があった!ディス・イズ・名誉挽回!!」
「……まっ、ウチは救世主様やからな」
「あのっ、みなさん、ありがとうございます! 助かりました!!」
ニードルバードを撃破して、思い思いに好き勝手叫んでいる31Aの面々に、梨璃は声をかけた。
「別に貴女たちの為じゃなくて、私たちの有用性を示しただけだからいいわ」
「……つかささん、あの特型ヒュージについて、説明してくれるかしら」
いくら害がないのを分かって行ったとはいえ、神琳の背中を押して盾にしたつかさを、夢結は険しい目つきで見ている。
「まぁまぁゆーゆー、そんなに怒んないでよ。今はちょっとキャラ変してるけど、つかさっちはみんなを助けようとしてたんだよ」
「月歌さん……」
「そうね、とりあえず百合ヶ丘に戻りましょう。理事長代行さんや真島さんにも最低限の説明しかしてないから、纏めて説明するわ」
「おっ、おい東城っ」
「心配しないでいいわ和泉さん。説明はするけど全部話すつもりもないから」
「つかささん……」
明らかに雰囲気の違うつかさを、神琳は複雑そうに見つめていた。
覚醒つかさっち便利キャラ過ぎる…
2章と3章の間くらいのイメージで書いてたけど思わず解禁。まぁコラボ特有の不思議時空ということでお願いします。