時は多少遡り、31Aがニードルバードと戦っている一柳隊の援護に行く前。
自室に戻っていた月歌たちの前に百由が現れた。
「はーいガールズバンドたち、検査の時にちょっと会ったの覚えてる? 真島百由よ」
「やー、どーもどーも。ガールズバンドですー、ガルバンですー」
「どこぞの戦車アニメみたいな略し方すんな」*1
「甘いなユッキー、最近はなんでもかんでも4字くらいに略さないと不便なんだぜ。スマホゲームでもそうだろ?」
「アハハッ! 聞いてた通り、面白い子たちね!」
いつも通りヘラヘラしてる月歌とツッコミを入れるユキ。そんな彼女らを面白そうに見てから、百由はモニターを引っ張り出してくる。
「ちょっと見てもらいたいのよ、さっきの放送のヒュージの映像なんだけど」
そうして百由が見せてきた映像には……ニードルバードが写っていた。
「あれ? どうしてニードルバーモガァ!!?」
迂闊なことを言いそうなタマの口を塞ぐユキ。
「私は必要以上に詮索する気はないけど、このヒュージが現れた時のケイブ反応が似てるのよ……貴女たちが突然現れた時にあったケイブ反応と」
「ちょ、ちょっとストップ! えーと、誰がどっから説明する!?」
「慌てるのも分かるけど落ち着け月歌」
月歌がふざけてるのか本気で慌ててるのか分からない態度で混乱しているせいで、ユキは却って冷静になった。
「別に全部説明してってわけじゃないの。ただ、未確認ヒュージとの戦闘は危険だから、なにか知ってるならこのヒュージについてだけでも説明して欲しいの」
「月歌さん、どうする? ……面倒なら殺ってしま……」
「カレンちゃんストップストップ!! えーと、どうしたもんかねぇ」
困ったように自分の頭を撫でる月歌。そんな月歌に、つかさが意を決したような表情で提案する。
「月歌さん、私に説明させてもらえないかしら? その、上手く言えないけど、上手く説明できると思うの」
「つかさっち?」
「いや上手く言えへんけど上手く説明できるってどういうこっちゃねん」
「まぁまぁめぐみん、ここはつかさっちを信じてみようぜ?」
「でもその、急にキャラが変わるかもしれないから、気にしないで欲しいわ」
「うちには約一名、似たようなのがいるから今さらだろ」
「モガァ!!! ユキさん!! そろそろ袖で口抑えるの止めてください! まるで咳エチケット! 咳してないのに咳エチケット!!」
「おいタマァ!!」
「はっ、はぃい!!」
「咳よりクシャミの方がエチケット大事や」
「そりゃ飛沫の量が違うからな……とにかく東城、頼むから変なこと言うなよ?」
「そうね……それじゃ、いくわよ」
直後、つかさの目つきが変わる。
「真島さん、だったわね……ええ、私たちはその敵について知っているわ」
「つかさっち?」
「待て月歌、どうも様子がおかしい……邪魔しない方がいい」
「一柳さんたちなら別に倒せない相手じゃないけど、戦い方を知らないと無駄に消耗するでしょうね」
「……へぇ?」
突然雰囲気の変わったつかさに、百由も興味深そうに眼鏡の位置を直す。
「とはいえ、こんな口だけの説明じゃ説得力に欠けるわよね」
「私個人としては信じるけど、ね。知ってると思ったから聞いたんだし」
「そう……貴女、詐欺とか気をつけた方がいいかもね」
「なんや東城、急にムカつく奴になりおったな……」
ふん、と馬鹿にしたように鼻を鳴らしたつかさは、一瞬だけめぐみに流し目をしてから百由に向き直る。
「まずは私たちがあの敵について詳しいことを証明するわ、一柳さんたちの援護に行って、すぐ倒してくるわね」
「そりゃあぐろっぴたちが無事ならそれが一番だから、私はそれで構わないわ。理事長代行には適当に誤魔化しとくわね」
◆ ◆ ◆
出撃許可を貰ってから、月歌たちが梨璃たちの後を追っている道中。月歌が歩きながらユキに話しかける。
「なぁ、なんでこっちにキャンサーがいるんだ?」
「アタシが聞きたいくらいだよ。まさか司令官が……いや、司令官より上の人間が追加で実験したのか?」
「バカじゃないの? そんなことも分からないのかしら?」
「つかささん?」
「私も推測しかできてないけど、少なくとも貴女たちよりは現実が見えてるわ」
「なんというイキリ!」
「は?」
「ぴぇっ!! ごめんなさいごめんなさい!!」
「つかさっち、話してくれ。周りに人がいない今なら話せるだろ?」
月歌の要望を受けてつかさが唇の端を釣り上げながら説明する。
「私たちの他にもキャンサーを調べている勢力がいるのよ。丸山さんの臨時部隊の件は覚えているかしら?」
「丸ちゃんの?」
「ええ、廃棄された施設に実験体のキャンサーがいた。そしてそれを司令官は把握していなかった……それだけで十分『推測』できると思うけど?」
わざわざ推測、の部分を強調しながら言うつかさ。お前クラピカか何か? ってくらい煽るな。
「つまり、そいつらがキャンサーをこっちに送ったっちゅーんかいな」
「司令官の考え……自分たちの緊急避難とは違い、キャンサーをパラレルワールドに飛ばす実験、といったところかしら?」
「でもそれじゃこっちの世界に!」
「ええ、こっちの世界への転移は一時しのぎにしかならない……その上ワームホール使用の手間を考えたら、あまり有用な実験とは言えないでしょうね」
「そうじゃなくて! そんなことしたらこっちの人が襲われるじゃんか!」
「彼らにとっても私たちにとっても、ヒュージに襲われるのもキャンサーに襲われるのも大差ないわ。そういう意味では同じような世界に飛ばされてよかったかもね」
「セラフでヒュージを倒せるってことは、CHARMでもキャンサーを倒せる……?」
「正解よ朝倉さん。そういえばカレンちゃん、あなたは逃げ腰のこの実験を批判していたわよね。どうかしら? 同じ手段で多少は攻撃的な実験をしているのを知って?」
「ふん!! 知るか! キャンサーだろうとヒュージだろうと、目の前にいるなら殺すのみよぉ!!!」
「カレンちゃんの言う通りだ、今はりーりーたちを助けに行こう」
「キャンサー……いえ、未確認ヒュージとの戦い方を知ってるっていうのを彼女たちに示すのが目的よ。出し惜しみはナシでいくわ」
◆ ◆ ◆
そして現在。ニードルバードを撃破した後。
31Aのメンバーは百合ヶ丘女学院にて高松や百由、夢結と向き合っていた。
「……つまり、君たちは既にヒュージに占拠されてる地域の生き残りであり、あの特型は陥落地域でよく発見されていたヒュージ、だと?」
「そうね、その認識で大きな間違いはないわ」
つかさは口八丁でパラレルワールドのことまでは話さず、陥落地域の出身であるかのように誤認させるような言い方をした。
「たしかに連絡の取れないレジスタンスがいても不思議ではないが、彼らがケイブに似たワープや別種のCHARMの開発に成功した、と?」
「実働部隊に兵器のことを聞かれても分からないわよ? なんなら私たちの武器も調べてみる? 何も分からないと思うけど、ね」
「おい東城……」
あまりに挑発的な態度にユキが思わず止めかけるが、つかさは手を上げて制する。
「別にウソはついてないでしょう。私たちはある意味住む世界が違うし……彼らと違って、既に敗北しているようなものだし」
不敵に笑ったつかさは、月歌たちを振り返る。
「みんな、しばらく外してくれる? 特に月歌さんがいると話が無駄に長くなるし」
「おっほ、辛辣」
「……行こう月歌、今の東城に任せとけば間違いはないはずだ」
「そっか……そうだな、つかさっち、よろしく頼む」
ゾロゾロと部屋を出ていくつかさ以外の31A。
「仲間には、言いにくいことでもあるのかしら?」
彼女たちが出払ってから、夢結が訪ねる。
「ええ、今はまだ伝えるべきではないことが、ね」
不敵に笑ってつかさは続ける。
「みんなはまだ知らないのよ。自分たちが、人間じゃないってことを」*2
つかさの言葉を聞いて、百合ヶ丘勢は思わず押し黙る。もちろん、検査の結果からある程度予想できたことではあったが……
「そう、か。やはり、普通の人間ではないのだな」
「普通、なんて曖昧な言い方は嫌いだけど、貴方の知ってるような人間じゃないのは確かね、お爺さん?」
再び黙ってしまう面々。それをみてつかさは内心でほくそ笑む。
いくら覚醒状態のつかさとて、老獪な相手を騙しきる自信はない。自分たちが人間ではないとバレている、というのを逆手に取り相手の良心を利用して、必要以上の追求を避けたのだ。
「……分かった、今はそれだけ聞ければ十分だ。戻ってよろしい」
「ええ、どうもありがとう、理事長代行さん」
警戒自体はまだされているだろうが、無理に聞き出されることもない。何よりパラレルワールドというのを言っていないだけで、つかさたちが「謎の生命体に敗れた場所」から来たのも、ニードルバードはそこでよく見た敵なのも、れっきとした事実である。
「……ぐっ!」
その時。突然つかさは頭を抑えて苦しみだす。
「東城くん、大丈夫か? 急に顔色が悪くなったが」
「ええ……」
(そろそろ限界ね……本当は真島百由辺りに私に興味を抱かせ、CHARMについても聞き出したかったけど……また覚醒できるのを期待するしかない、わね)
「う、ううん……頭、いたい……」
「つかさっちー、話終わったー? ……つかさっち?」
その時、ちょうど退屈を持て余した月歌が扉を開けて様子を見に来た。
「月歌、さん……」
「ちょうど良かったわ。話も終わったし、東城さんの体調が悪いようだから、部屋に帰してあげてちょうだい」
「わ、分かった! つかさっち大丈夫か、知恵熱?」
こうして、陥落地域出身であるというつかさの言い分を全面的に信じたわけではないものの……百合ヶ丘は月歌たちがゲヘナとは無関係の、完全なる外部の人間だと認識した。
そしてそれは、ただでさえあってないようなものだった月歌たちの軟禁扱いが、正式に解かれることでもあった。
自分でコラボ妄想書いて改めて分かる、コラボシナリオの面白さ
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