リリィバーンズレッド   作:ハルホープ

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そうそうこういうのが書きたかったんだよこういうのが


交流〜カレンちゃんとゆーゆーの模擬戦〜

「なんかつかさっちには隠された力があって、それが上手いこと覚醒して百合ヶ丘の人たちを説得してくれたんだって」

 

「ええ、私も、なんとなくしか覚えてないけど」

 

「よく分からんが、あの時の東条はたしかにそんぐらいできそうな気迫があったな」

 

「なんにせよFREE TIMEだやっほーい!」

 

 覚醒つかさの活躍によって、元々あってないようなものだった軟禁という扱いが正式に解除された月歌たち31A。

 

 改めて散策をしようということで解散して一人でしばらく散歩していた月歌は、先ほど別れたばかりの見覚えのある姿を発見した。

 

(かれりん……いや、フードの形的にカレンちゃんかな? 話しかけてみよう)

 

「く、くきき……手が、手が疼いてたまらぬぅ……!」

 

「やっほーカレンちゃん、自由満喫してる?」

 

「茅森か……ちょうどいい、ちょっと殺させてくれぬか?」

 

「ちょっと100円貸して的なノリで殺害されようとしている!? やめて!?」

 

 ソシャゲだったら交流するかどうかの選択肢が出てそうな流れの中、カレンちゃんは続ける。

 

「そもそもなぜワシが向こうの基地では大人しくしていたか、忘れてはおらぬか?」

 

「たしか、人を殺しそうになると埋め込まれたチップが爆発するように監視……あ」

 

「気づいたか! そう、今のワシは司令部の監視の目を逃れておる! つまりは、殺り放題の殺し放題ぃいい!!!」

 

「いやいやマズイってカレンちゃん!!」

 

「なんじゃイカンのか? ならばやはり茅森、貴様の血でワシの渇きを癒やしてもらうしかないのぉ!」

 

「ギャース!! ほ、ほらカレンちゃんまたゲーセン行こうゲーセン! こっちのゲームとか気にならない?」

 

「いつまでもゲームなんぞでワシの殺人衝動を抑えられると思うでないわぁ!! やはり生身の人間と殺し合わねば……!」

 

「相変わらず、騒々しいのね」

 

 騒いでいる月歌とカレンちゃんの前に現れたのは、白井夢結。

 

「確か、白井とか言ったな……クククッ、ちょうどいい! おい、殺らせろ」

 

「……はい?」

 

「も、模擬戦!! カレンちゃんはゆーゆーと模擬戦がしたいんだって! ゆーゆーってめっちゃ強いんでしょ?」

 

 慌ててフォローする月歌。月歌ってふざけてるように見えてガチでやべー奴相手には常識的な反応するよね。

 

 

「模擬戦……たしかに私たちとは似て非なるCHARMの戦い方には興味があるわ」

 

「カレンちゃんもいいよね? 模擬戦!」

 

「クククッ、いいぞ、ワシらは直接の模擬戦は禁止されていたからのぉ……人間相手に武器を振るえるとは僥倖!! ワシの殺意の鎌の、錆にしてくれるわぁ!!」

 

「……他の5人はともかく、貴女を自由にしてよかったのかしら」

 

「それじゃあアリーナ、っじゃなくて訓練場に行こう!!」

 

 そうして歩き出す月歌、カレンちゃん、夢結の3人。

 

「ゆーゆー、りーりーは一緒じゃなくていいの?」

 

「シュッツエンゲルとはいえ、いつも一緒にいるわけではないわ」

 

「ふん、あのお子様は呼ばん方がいい……ワシの闘い方は刺激が強いかもしれんからなぁ!!」

 

「闘い方というか闘ってる途中の掛け声だよね」

 

「なにか言ったか茅森? 白井ではなく貴様と闘ってもいいのだぞ?」

 

「なにも言ってません!」

 

 

 そうして話しているうちに、お馴染みの訓練場に着いた一行。

 カレンちゃんは待ちきれないとばかりにセラフを取り出し、夢結もゆっくりとCHARMを構える。

 

 

「えー、では僭越ながら私、茅森月歌めが開始の掛け声を……はじめ!」

 

 

 月歌の掛け声と同時に動いたのは、やはりというべきかカレンちゃん。

 

「行くぞ白井ぃ!殺す殺す殺す殺す殺ーーす!!」

 

 カレンちゃんはセラフを構えたかと思うと、目にも留まらぬ速さで夢結に接近する。

 

「速い! さすがカレンちゃん!!」

 

「ふっ!!」

 

 その勢いのまま振り下ろされたカレンちゃんの鎌を、夢結はCHARMで受け止める。

 

「ゆーゆーも受け止めた! やるぅ!」

 

「いいぞ、一撃で終わっては面白くないからのぉ!」

 

「お喋りする余裕が、いつまであるかしら!」

 

「おお! ゆーゆーの反撃だ!」

 

 返す刀でカレンちゃんのセラフをかち上げる夢結。

 

 体勢が崩れたカレンちゃんへさらに追撃を加えようとする夢結だったが、カレンちゃんは素早く後退して距離を取る。

 

「むぅ、まっっったく隙がないぞ、この女……だがだからこそ殺しがいがあるというもの!! キヒャハハハ!!」

 

「伊達にエースと呼ばれてはいないわ」

 

 そう言いながら、今度は夢結から仕掛けていく。カレンちゃんもまた、真っ向から迎え撃つべく走り出す。

 

「はぁああああっ!!!」

 

「殺してやる……殺してやるぞ白井夢結ぅううううう!!!!」

 

 激しくCHRAMとセラフを交錯させる二人。火花を散らしながら、何度も刃をぶつけ合う。

 

 

 

「野性的な勘と迷いのなさ……それが貴女の強さなのね、可憐さん」

 

「可憐さんではない! ワシはぁ……サイコキラーのぉ、カレンちゃん、でーーーす!!!」

 

 スキーのバックフリップめいたジャンプで夢結の攻撃を避けながら彼女の真上を通過するカレンちゃん。

 

「死ねぇい!!!」

 

 すれ違いざま、空中で大きく体を捻りながら放ったセラフが夢結を襲う。しかし、その攻撃も難なく受け流す夢結。

 

「でも、それ故に雑ね、カレンちゃんさん」

 

 そのまま流れるような動きでカウンターを仕掛ける。

 

「ぬぐぅ!?」

 

 カレンちゃんはなんとかガードに間に合うものの、空中では衝撃を逃せずに吹っ飛んでいってしまう。

 

「ば、馬鹿なぁ!! このワシがぁ!! ファーーーック!!!」

 

「放送禁止用語を叫びながらカレンちゃんが壁に激突した!? けど、こんなんじゃカレンちゃんの闘志は消えないぜ!」

 

 月歌の実況を聞いてか聞かずか、夢結からしてもこれで終わるとは思っていないようだ。

 CHARMを青眼に構えた後、壁に寄りかかって立ち上がったばかりのカレンちゃんに向けて突撃する。

 

「さぁ、これを躱せるかしら!?」

 

「甘いわぁ!!」

 

 叩きつけられた壁を足場に、パルクールめいた動きで壁上りをするカレンちゃん。そのまま今度は先ほどよりも大きく跳躍し、悠々と夢結の攻撃を避ける。

 

「うおっ、マツチロ並のアクロバティックな動き!!」

 

「そして再び重力を味方につけた一撃ぃ!!!」

 

「くっ!?」

 

 空中から繰り出される鎌による攻撃を防ごうとする夢結だったが、先ほどのそれより増した勢いを完全には勢いを殺しきれずに、押し切られてしまう。

 

「キヒャハハハ!! 一度守られた攻撃だからこそ、テクニックを加えてリベンジする!! これぞ美学ぅ!!!」

 

「やるわね、流石は過酷な環境で生きぬいてきただけあるわ」

 

「東城のやつからどこまで聞いたのかはしらんが、ワシは対人戦なら特に最強よぉ!! なぜならワシはぁ」

 

「サイコキラー、ね。貴女たちの環境に口を出すつもりはないねど……あまり公言しない方がいいわよ」

 

「すげぇ、正論過ぎてなんも言えねぇ!」

 

「そんなことはどうでもよい! 白井よ、レアスキルとやらはどうした? 使わんのか?」

 

「……使わないわ。模擬戦如きで負のマギを溜めたくないし……なにより、貴女を殺してしまう」

 

「フッ、クキッ、ヒーヒャッヒャッヒャッヒャ!!! 殺すぅ? このワシを? 貴様如きがかぁ!!」

 

「完全に悪役の笑い方だよカレンちゃん!」

 

 舌を出してなんか初登場の時とか4章でガチで殺しに来た時みたいな顔をするカレンちゃん。

 

「面白い、ならば何が何でもレアスキルを使わせたくなってきたわい」

 

「いや悟飯を怒らせるセルかよ! か、カレンちゃんもゆーゆーも、そろそろ終わりにした方がいいんじゃない?」

 

「馬鹿を言うでないわぁ!! カレンちゃんはぁ、これっぽっちじゃ満足できないぃいいい!!!」

 

 She Is Legendの活動でますますシャウトに磨きがかかったカレンちゃんの叫び。

 

「……そうね、少し熱くなりすぎたわ」

 

 

 しかし夢結は、CHARMを下ろしてしまった。

 

 

「あ゛? なんのつもりじゃ貴様ぁ!! 逃げるな卑怯者!! 戦えぇええ!!!」

 

「言ったでしょう、レアスキルを使ったら貴女を殺してしまう」

 

「ふん!! ならば無理矢理にでも貴様の本気を引き出してくれる!!」

 

「やめておきなさい。私は……既に一度、大切な人を殺してしまったかもしれないの」

 

「なにぃ?」

 

「ゆーゆー?」

 

 夢結の小さな呟きに、カレンちゃんも武器を下ろして聞き入る体制になる。

 

 

「梨璃は私が殺したはずはないと言ってくれたし、私もそう信じている。でも致命傷に近い傷を負わせたのは事実よ。だから私は……ルナティックトランサーを封印した。よほどの時以外には使う気はないわ」

 

 

 

 

 

「いや暗いわぁ!!!!!」

 

 黙って話を聞いていたカレンちゃんの突然の叫びに、夢結は驚いたような顔になる。

 

「殺したかもしれない? 笑わせるな! ワシは知っておるぞ、人を殺め、血で汚れた人間の手がどうなるかを! そして同類の匂いというものを!!」

 

 ズンズンと夢結に近づいたカレンちゃんは夢結の手を掴むと、無理矢理自らの首を握らせた。夢結が少し力を込めれば、カレンちゃんの細い首は簡単に折れるだろう。

 

「こんな人も殺したことがないような手でワシを、誰かを殺すことなど、白井、貴様にはできぬ」

 

 夢結はしばらく驚いたように目を丸くしていたが……やがてフッ、とクールに笑う。

 

 

「……殺人鬼に慰められるなんて、奇妙なこともあったものね」

 

「ふん。まぁ朝倉のように嫌なことをワシに押し付けるタイプじゃないだけ貴様はマシじゃ。暗いのは気にくわんがな」

 

 乱暴に夢結の手を離すカレンちゃん。

 

「うんうん、やっぱりカレンちゃんはいい奴だな」

 

「ちっ、興が削がれた……朝倉に体を返すぞ」

 

 目を閉じるカレンちゃん。直後、彼女の雰囲気が変わり、なぜかフードの角もなくなる。

 

 

 

「あ、カッコいい人」

 

「カレンちゃんさん……いえ、可憐さんね」

 

「カレンちゃんと遊んでくれてたんですか? ありがとうございます」

 

「いえ……むしろ私の方が気遣われたわ」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、カレンちゃんさんにお礼を言っておいて。それと可憐さん」

 

「……はい?」

 

 

『朝倉のように嫌なことをワシに押し付けるタイプじゃないだけ貴様はマシじゃ』

 

 

 二重人格だろうと彼女は彼女、カレンちゃんもまた朝倉可憐だし、朝倉可憐もまたカレンちゃんだ。ルナティックトランサーで暴走していても、夢結が夢結であるのも同じように。

 

 別の人格だろうと、朝倉可憐が人を殺したのは変わらないし、嫌でもいつかそれを受け入れる日が来る。どんな理由で人を殺したのかは知らないが、その罪を受け入れなければならない時が必ずくる。

 

 彼女らはいつか一つになる。けれどそれは今ではないし、夢結が言ってどうこうするものでもない。

 

 その時にそばにいるべきは、月歌たちなのだろう。

 

 

 

「……いえ、なんでもないわ」

 

 だから夢結は今は、何も言わなかった。

 




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