とある喫茶店に雇われる話 作:ハッピーエンドは素晴らしい
あと、前々からちょっと気になっていたことをアンケートにしました。お気に入り登録者が200人超えましたので丁度いいかなと。
それから、毎度のことですがお気に入り登録、誤字報告ともにありがとうございます。
前回の後日談のようなオリジナル話となります。それでは、READY FIGHT
とある日のリコリコにて、千束とたきなは一室に集い、頭を突き合わせて暗い顔をしていた。
原因は、先日水族館で見た蓮士の様子。
ビルの上の人影を見たときの蓮士の動揺は、けしてただごとには見えなかった。
「どうしちゃったんだろ。レン。」
あれからというもの、蓮士が纏う空気は常にピリついている。話しかけたりすれば普通に返してはくれるが、二人はその姿にどこか違和感を感じていた。
「気のせい、なのでしょうか。」
「先生あたりは気がついてそうだけど。」
二人の顔が更に曇る。蓮士の変化はほんとうに微々たるものだ。クルミは全く気がついていないようだし、ミズキも気のせいだと言う。ミカだけは何やら難しい顔をしていたが、特に何か言う様子もない。しかし、二人にはどうしてもその変化は気のせいとは思えなかった。
「あの人影のことも、なんにも教えてくんないし。」
「頼りないんですかね。私達は。」
シュン、と小さくなるたきな。千束はそんなことないぞと励まそうとするが、喉まででかけた言葉が口から出てこない。彼女もまた、胸の内では同じようなことを考えていたのだ。
リコリスの最高戦力であると自他ともに認める千束。異常なまでの洞察力で銃弾の軌道を予測し、避けるという前代未聞の能力で数多くの死線を潜り抜けてきた。
自分は最強である。そんなうぬぼれたことを考えたことはないが、自分が簡単に負けるようなことはないだろうと、そう、思っていた。
それを真正面から叩き潰してきたのが蓮士だ。自分が培ってきた技術を、力を、磨き上げた才能を、その全てをことごとく上回り、挙句の果てには銃弾を見てから弾き返すなんて芸当までやってのける。
始めて手合わせをしたとき、左手一本とナイフだけで赤子の手でもひねるかのようにボロボロに負けたのは今でも記憶に新しい。今手合わせをしたとしても……きっと結果は同じだろう。ハンデこそなくなるかもしれないが、余計に勝てるヴィジョンはこれっぽっちも浮かばない。
そんな蓮士が、あそこまで警戒するあの人影。仮に自分たちが対峙したとして、と対抗する術はあるだろうか。
「頼り無い……かぁ……。」
悔しい。そんなことはないと、そう言えない自分自身が。
「……よし。」
だがしかし、この錦木千束。そんなことでへこたれるような女ではない。自分たちが頼りないと言うなら、そんな考えが吹っ飛ぶほど強くなってやろうじゃないか。
とんでもない脳筋思考だが、千束はそんなに悪くない考えだと割と思っている。人影のことを教えてくれるかもしれないし、そもそも強くなって損はない。
「特訓しようぜ!たきな!」
「特訓……ですか?」
「頼りないなんて思われないように!」
うん!と首を縦に振る千束。たきなも少し考えるが、自身ではそれ以上のものは思いつかないと、千束の言葉にうなずいた。
「やりましょう。千束。」
「よーs「何やってんだお前ら。」
気合を入れようとしたところで突然部屋のふすまが開く。そこには今まで二人の話題だった蓮士の姿。
「いや、別に、その……!」
「あの、えっと、これは……!」
「あん?」
二人の慌てように首を傾げる蓮士だったが、まあいつものことか、とスルーして要件を伝えることにする。
「シフト、交代だぞ。」
俺はしばらく出かけるから。そう言うと、二人はブンブンと首を縦に振る。見るからに二人の様子はおかしいが、まあ大したことではないだろう。乳弄くりあっていたわけでもあるまいと、蓮士は襖を閉めた。
蓮士の足音が遠ざかっていく。千束とたきなはその間微動だにすることなく視線でそれを追い、完全に足音が消えたところでヘナヘナと座り込み揃ってため息をついた。
「「ハアァァァア…!」」
「心臓止まるかと思った……。」
胸をなでおろし、二人はもう一度作戦会議を始める。
「まず私達に足りてないのは……」
「やはり基礎となる体力、筋力でしょうか。」
走るにせよ銃を撃つにせよなんにせよ、この2つはどうしたって必要になる。無論これだけを鍛えたところで蓮士の化け物じみた強さに追いつけるとは思っていないが、これから先より難易度の高いトレーニングをすると考えればこの2つは鍛えておくべきだろう。
「そうと決まれば!」
「はい!」
スパン!
二人で意気込もうとしたとき、またもや襖が勢いよく開かれる。そこには、額に青筋を浮かべた蓮士が左手を握りしめながら立っており、額に冷や汗をかく二人を睨みつけながらすうっ、と大きく息を吸い込んでいた。
「さっさと行けェ!!」
「「ごめんなさ~い!」」
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次の日
「よっしゃ。早速始めるか!」
リコリコ地下の射撃訓練場にて、千束とたきなは特訓に備えて軽いストレッチをしていた。
「しかし、何をするつもりですか?」
昨日、千束に「任せとけ!」と言われて何も用意してきていないが、何をするつもりなのだろうか。映画見て飯食って寝る、とか言われたら一発ぶん殴って自分で考えるが。とたきなが思っていると、千束はカバンからおもむろに一枚のクリアファイルを取り出した。
「じゃ~ん!先生特製特訓メニュー!」
はい、と千束にそれを渡され、たきなは中の紙を取り出して一通り目を通す。
「これは……!」
そして目を見開いた。そこに書き記されていたのは、トレーニングメニューや細かなアドバイス、食事に関する注意点や生活習慣に関することまで。特訓に必要なありとあらゆるものがそこにはあった。
「流石は店長。素晴らしいですね。」
感嘆の声を漏らすたきな。ほんとうに素晴らしいの一言しかない。これを続けていけば、基礎体力はもちろん体の各部位の能力向上も見込めるだろう。
「では、何から始めましょうか。」
「とりまメジャーどころの腹筋とか?」
特訓開始からしばらく経ち、たきなは俗に言う腹筋というものをしていた。
「千束。一つ、聞きたいことが……フッあるのですが……フッ。」
「なになに?スリーサイズ以外なら何でも答えちゃうよ。」
千束はたきなの足を動かないように押さえ、茶化しながらたきなに続きを促す。
「レンさんとは……フッどれくらいの、付き合いなんですか?……フッ。」
「え?んーと……5年くらいかな。」
急に何を?と千束が首を傾げると、たきなは体を起こしたところで動きを止める。そして、少し俯いて暗い顔をしながらポツリと零した。
「よく考えたら私、レンさんのこと何も知らないな、と。」
リコリコに転属となりはや数ヶ月。蓮士と共に任務に出たり、リコリコで一緒に働いたり。少しずつ互いの距離は縮まり、今やさん付けではあるが下の名前で呼ぶようにもなった。
しかし、蓮士の過去や義手についてこと。そういう蓮士という人物について、たきなはあまり良く知らない。
「千束なら、そういうことも知っているかと思って。」
「あぁ……。」
千束はポリポリと人差し指で頬を掻き、実はねぇ、と前置きをする。
「私もレンのこと、あんま良く知らないんだよねぇ。」
「そうなんですか?」
たきなは千束の言葉に、意外そうな顔をする。二人の距離感の近さを見て、蓮士のことはよく知っているものだと思っていたのだ。
千束が続ける。
「5年前にね、先生が急に一枚写真を持ってきて、『この男を連れてきてほしい』って言ってきた。」
「それがレンさん、ですか?」
「そう。」
千束は懐かしそうに目を閉じ、当時のことを思い出す。出会ったその場で刀を抜かれかけたり、すぐに意気投合して肩車をしてもらったり。そしてそのままリコリコに戻れば、困惑した様子のミズキとなにか決意を固めたようなミカの姿。
「えーっと……あったあった。」
千束はポケットから取り出したスマホを操作して、画面をたきなに見せる。そこには、今よりも少し幼さの残る顔立ちをした蓮士の姿が写っていた。
「これが、当時の?」
「先生に見せられた写真。今見るとちょっと可愛いかもなぁ。」
なーんて本人に言ったら怒られそうだけど。ウシシ、と千束は笑う。たきなはスマホから千束に視線を戻しながら尋ねる。
「それで、その後どうなったんですか?」
「次の日からしれっとここで働いてた。」
「ええ……?」
たきなはそんなバカな、とでもいいたげな表情だが、千束の知る限りではそうなのだ。蓮士を店に連れて帰るなり、ミカは蓮士を連れて店の奥へ。千束もついていこうとしたのだが、ミズキに捕まり車で自宅へと送り届けられた。はてなんだったのだろうかと次の日出勤してみれば、そこには当たり前のようにリコリコの制服を着た蓮士の姿があった。当時、それはもう驚いたものである。
「だってさ、お店に入ったらずっとここで働いてましたよー。みたいな感じでしれーっとお店の準備してるんだもん。そりゃびっくりするでしょ。」
たきなの目にはまだ疑いの色が残っているが、実際にそうなのだからそうとしか言えない。
たきなは念を押すように千束に尋ねる。
「ほんとうに何も知らないんですか?」
「いや、ほんとになんにも……ん?……あ!」
千束の脳裏に一つの単語がよぎる。ここ数年間使ってこなかった為忘れていたが、一度だけ、ミカから教えられた単語が一つあった。
「そういえば『
「イレイザー……。」
たきなの頭に白い四角いゴムが現れる。流石にないかと首を降って頭の外にそれを追いやり、どこかで聞いたことはないかと記憶を洗い出す。
「聞いたこと、ありませんね。」
結果何も出てくることはなく、たきなは釈然としない様子で首を傾げた。あそこまでの戦闘能力を持つ人物が所属していた組織を、DAが放置しておくだろうか?よほど規模が小さいか、それともDAが捕捉できないほど隠密に活動しているのか。
「余計にわからなくなりました。」
「でしょ?」
こんなところで首をひねっていても仕方がない。そんなことより続きをやろう。千束がそう言ってたきなにトレーニングの続きを促すが、当人は呆れた顔でその顔を見返す。
「次、千束の番ですよ。」
話に夢中でカウントを忘れていたらしい。千束はアハハハ、と愛想笑いを浮かべながらマットの上に寝転がり、今度はたきながその足を抑える。
またしばらく経ち、今度は千束がたきなに尋ねる。
「私からもさ……よっ。聞いてもいい?」
「構いません。」
「レンのことって……ホッ。どう思ってんの?……んしょっ。」
千束の問に、たきなは天井を見上げて考える。一人の人間に対する感情。それを言葉にしようとすると存外難しいものだ。
時間にして15秒ほど。たきなは自分の考えをまとめるように話し始めた。
「そう、ですね。優しい人だと思います。ここへ来てからずっと私のことを心配してくださっていますし、任務のときも、何時も私達のことを優先して立ち回ってくれています。」
DAに戻りたい一心で暴走していたあの頃から、蓮士はずっと自身の身を案じ、寄り添ってくれている。相談をすれば余程のことがない限り応じてくれるし、任務中も自身のことより自分たちのことを考えて立ち回ってくれる。
まあ戦闘面で気を遣われているということは、自分には肩を並べて戦えるほどの強さはないと暗に言われているようなもの。故にそこを素直に喜ぶことはできないのだが。
ともかく、たきなの蓮士に対する評価は、「優しくて頼りになる人」である。
「怒ると怖いですけど。」
「それは、確かに。」
付け足した一言で昨日の一件を思い出し、二人は揃って苦笑いを浮かべた。
あれ、二度目だったから怒鳴られるだけで済んだが、三度目に同じことを言わせると右の拳が飛んで来る。仏の顔も三度まで。蓮士の拳は三度目に。ただ、殴られても後に引くような傷が残らないあたり、怒っていようともどこか優しさが垣間見える気がする。
「他にはないの?」
「他、とは?」
「ほら、こういうのとか。」
千束は左の小指を立ててたきなに見せる。以前千束と一緒に見た映画でそんなシーンがあったような。確か、その指は恋愛面において重要な意味があるものだったはずだ。
たきなは少し考え、きっぱりと首を横に振る。
「ないですね。」
「ありゃ。そうなの。」
思った以上にはっきりと否定され、千束は驚いた様子を見せた。色々と褒めちぎるものだから、そういう感情の一つ持っているものかと思っていた。
「恋愛というより……親愛に近いかもしれません。」
「もしかして、お兄ちゃんみたいってこと?!」
「そう、なのかもしれません。あの、恥ずかしいので本人に言わないでくださいよ。」
うほ〜!と目を輝かせる千束に少し顔を赤くしながら念を押すたきな。テンションのボルテージが上がり、特訓のことも忘れてはしゃぎ始める千束。たきなはまだ少し赤い頬を隠し、ジトッとした目をしながら口を開いた。
「ち、千束はどうなんですか。」
「えぇ?私?そうだねぇ……。」
ゴロンとマットの上に寝転がり、天井を眺める千束。
「色々口うるさいし、しょっちゅうイジってくるし、自分のことなんにも教えてけれないし……」
不貞腐れたような顔で蓮士に対する不満を並べていく千束。色々と出てくるが、半分くらいは千束の自業自得では、とたきなは思う。しかしここは空気を読んで突っ込まないことにした。たきなは空気が読める子なのである。
色々と吐き出してスッキリした顔になる千束。そして首を持ち上げ、たきなの方を見る。その顔には、優しい笑みが浮かんでいた。
「でも、本当に頼りになる。確かに素性はよくわかんないけど、そんなことどうだっていい。」
「レンのこと、家族みたいって思ってるのはたきなだけじゃないぜ。」
本人には言わないでよね。そう言って恥ずかしそうにはにかむ千束。それを見て、たきなはフッと微笑む。千束のそんな表情はあまり見たことがなかったから。
蓮士は千束にとって、とても大きな存在なのだろう。そしてそれは、自分自身にも言えること。
「レンさんには、人を引き付ける魅力があるのかもしれませんね。」
「おお。たきな、いいこと言うじゃん。」
顔を見合わせ、笑い合う二人。いつかは守ってもらうだけでなく、蓮士と肩を並べられるように。
「よし、ますます頑張らなきゃね。」
「はい。」
互いに拳を合わせ、意気込みを新たにする二人。……と、その時、ジリリ、と携帯のアラームが鳴り響いた。
「やっべ。もうこんな時間!」
「そろそろ戻りましょうか。」
マットやらなにやらを片付け、そそくさと部屋をあとにする二人。また蓮士にどやされるのはゴメンである。
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「え〜!いーじゃんいーじゃん!」
「駄目です。」
ある日のリコリコにて、千束とたきなが何やら言い争っていた。二人の目の前には、きつね色の丸い生地にたっぷりのクリームが入ったシュークリームが大皿の上に並び立っていた。
「あと一個!あと一個だけ!その端っこの抹茶クリームが私を呼んでるんだよ!」
「さっき3つも食べたでしょ。」
このシュークリーム、一つ一つはそこまで大きくはないが、3つも食べればそれなりのカロリーになる。更にそれをもう一つ、と手を伸ばしたところでたきなに止められた形だ。
「なにさー!たきなだって食べてたじゃん!」
「私は2つしか食べてません。」
食べたい食べたいと駄々をこねる千束に正論を吹っ掛けて行くたきな。そんないつもの様子を見ながらその他3人はそれぞれシュークリームを頬張っていた。
「こんなものまで作れるのか。」
クルミが感心したように今しがた齧りついたそれの断面を見る。中には黄色いカスタードクリームが入っている。
「ほーんと。あんなもの振り回してる手で作ったとは思えないわ。ん、おいしっ。」
ミズキも口周りについてしまった抹茶のクリームを舐め取り、顔をほころばせる。
「こういう変わり種もありだな。流石だ。」
ミカはクリームの代わりにあんこが包まれたシュークリームの最後のひとくちを放り込み、うむ、と頷く。
そして、それぞれの反応を見た蓮士は満足そうに笑った。
「良かった良かった。もう少し煮詰めたら新メニューとして出せそうだな。」
そう言って皿の上からシュークリームを2つ取ると、未だに押し問答をしている千束とたきな、それぞれの口に突っ込んだ。
「もがっ」
「もごっ」
一瞬驚いた顔をする二人。千束は直ぐに幸せそうな顔で口の中に広がる香ばしさとクリームを堪能する。対してたきなは、ジトッとした目で蓮士に苦言を呈した。
「レンさん。あまり甘やかさないでください。」
「いや、残る方が困るしなァ。それに、美味かったろ?」
「美味しかったですけど……。そういうことではなくて、えっと……とにかくだめなんです!」
たきなはそう言うと、5個目に伸ばした千束の手を掴み、二人分の鞄を引っ手繰るように持ってずんずんと店の中を歩いていく。
「わぁあ?!ストップ!」
「駄目です。ほら、行きますよ。」
行ってきます。残る四人にそう言うと、たきなとその手に引きずられた千束は店から出ていった。今日は英語教室の講師をやるらしい。
二人を見送り、蓮士は不思議そうに呟いた。
「最近どうした?あいつら。」
なんだか、最近様子がおかしい気がする。二人共休み時間になると地下にこもってしまうし、本当にどうしたのだろうか。
蓮士が首を傾げていると、大皿に手を伸ばしながらミズキが口を開いた。
「なんか特訓だとかなんとか言ってたわよ。……ん、いちごもイケるわね。」
「特訓?なんでまた。」
蓮士の疑問の声に、今度はクルミがそういえば、と思い出したように話し始める。
「なんか、お前がずっとピリピリしてるって言ってたぞ。」
「え、マジで?」
俺そんなピリついてたか……?と蓮士はペタペタと自分の顔を触る。全く自覚がなかったようで、ミカの方を見ると呆れたように小さくため息をつかれた。
「気がついてなかったのか……。」
そして、ミカは事の顛末を蓮士に語って聞かせるのだった。
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「それじゃあみなさん!シィーユー!」
「Thanks for studying hard.お疲れさまでした。」
英語教室が終わり、千束はバイバーイと大きく手を振り、たきなは小さく顔の横で手を振りながら教室をあとにする。
「さあ、帰りましょう。」
「うん!」
二人が建物から出ると、側から聞き慣れたバイクのエンジン音が聞こえてきた。二人がその音が聞こえた方へと視線を向けると、そこには蓮士が壁にもたれて立っている。
「おつかれさん。」
「
顔の横で手をスナップさせ、二人に声をかける。千束とたきなは嬉しそうに駆け寄るが、直ぐに不思議そうな表情を浮かべた。
「どしたの?わざわざ。」
「いや、色々な。」
帰りながら話でもしようや。そう言ってバイクを引いて歩き始める蓮士。残された二人は顔を合わせて首を傾げるが、「置いてくぞ」という蓮士の言葉に慌てて後を追いかける。
道すがら、今日の教室であったことを話して聞かせてくれる千束とたきな。暫くそのまま話を聞いていた蓮士だったが、二人の話が途切れたところで今度は逆に話を切り出した。
「ミカさんから聞いたぜ?特訓のこと。」
「ぅえ?」
「あ……。」
二人共すっと蓮士から目をそらす。別に隠していたわけではないが、なんというかやはり気まずさはある。
二人がどうしようかと目配せをしていると、蓮士がまた口を開く。
「あー、悪かった。」
その口から出てきたのは謝罪の言葉。それを聞いた二人は目をパチパチとさせて蓮士のことを見る。片手で頭をガリガリと掻き、その顔はとても気まずそうだった。
「ずっとピリピリしてたのは完全に無意識だった。その、気をつけるわ。」
未だぽかんとしている二人に、「それと」と付け足す。
「俺にも、話しにくい過去の一つや二つある。」
あのときみた人影もその一つだ。蓮士はため息を付き、前を見据える。つくづく自分という男は、面倒くさい人間だと思う。
「別に、お前らが頼りないなんて思ったことはねェよ。」
その言葉にはっとした顔をする千束とたきな。
「ほんとに?」
と念を押せば、
「もちろん。」
と返してくれる。その顔には嘘という字は見当たらず、本当に自分たちのことをそんなふうに思ったことはないのだろうと二人はホッとした表情を浮かべた。
蓮士はその様子を見て「当たり前だろ」と言って、少し照れくさそうにしながらそっぽを向く。その頬は、少し赤く見えた。
「まあ?前までのたきなに話したら問答無用で銃突きつけられそうだったしな。」
「そ、そんなこと……ある、かもしれませんね。」
蓮士の言葉にうっ、と声が詰まるたきな。確かに前までの自分であれば、怪しいと見れば即座に銃を抜いていたかもしれない。
過去の自分を鑑みて、ダメージを受けるたきなを慰めつつ、千束は蓮士に尋ねる。
「じゃあ、いつか話してくれる?」
「ああ。そのうちな。」
そう遠くないうちに。蓮士はそう約束をする。じゃあ許したげる、と言う千束を調子に乗るなと軽く小突き、互いに声を上げて笑う。立ち直ったたきなもそれを見てつられて笑い、気づけば三人はリコリコの前に立っていた。
「体術の訓練くらいなら付き合うぞ。」
「げ、手加減してよ?」
「訓練で怪我したら元も子もねェだろ。」
「是非お願いします。」
そんなことを話しながら三人はリコリコの店内へと消えていく。
折れた電波塔が見守る喫茶店は、ひと悶着あったものの今は平和である。
・シュークリーム
リコリコの新作として出す予定の試作品。軽く食べられるように大きさは握りこぶしほどもなく、クリームは生地の上側を切って挟み込むような形で入れられている。味はプレーン、いちご、ラムネ、抹茶、カスタード、あんこの6つ。
個で楽しむのもあり。セットで楽しむのもあり。その味はもちろんとても美味い。
・話にくい過去
蓮士が抱える自分の過去の話。抹消者のことや義手のこと、その他にも自分がしてきたことの数々。
彼は恐れた。自分の本性を知られることを。仲間たちから拒絶されることを。それを受け入れたとき、彼は本当の意味で仲間となることができる。
この作品に感想を書かない理由
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そもそも面白くもねぇんだよバーカ!
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何を書いていいのかわからない
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感想欄が0人で書き込みにくい
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読む専で感想を書かない