とある喫茶店に雇われる話   作:ハッピーエンドは素晴らしい

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すげえ。入浴シーン書いたらお気に入りめちゃくちゃ増えてる。

毎度のごとく誤字報告大変有り難うございます。もし気になる点等ございましたら感想に書いていただけると、書き忘れや説明不足などがないかの確認にもなるので良ければ。

それでは、REDY  FIGHT (仮面ライダーギーツ風)




とある喫茶店がお昼どきな話

 

 

 真っ暗な部屋。外から薄っすらと入り込むビルの光やネオン光が床や壁の所々を照らしているだけで、その部屋の全貌は見ることができない。

 

ガチャリ。

 

部屋の扉が開き、電気がつく。

 

 「ただいまァ……。」

 

電気のスイッチを入れた青年は、誰もいない部屋に向かって弱々しい声でそう言うと、手に下げていたギターケースを机に置いてどっかりとソファーに座り込んだ。

 

 「流石に、疲れたわ……。」

 

安請け合いするんじゃなかったなぁ、とぼやきながらスマホを取り出し、とあるアプリを起動させる。

 

 「報酬は……っと」

 

表示された数字を見てみると、出発前に見たときよりも数字が増えている。青年はつかれたように笑い、表示されたパネルを操作して文字を打ち込んでいく。

 

 「受け取り確認完了。数字もピッタリ、まいどあり……ってね。」

 

時折報酬のことをすっとぼける依頼主もいるためこういう事後処理はしっかりしておく必要がある。よくお人好しだ何だ言われるが、ただで働くつもりはないのだ。

 

 寝よう。そう思い至った青年だったが、ベッドまで行くのも面倒になりそのままソファーに寝転ぶ。そして、手に持っていたスマホを床に転がるクッションに投げようとしーー

 

 prrr....

 

 「……あん?」

 

着信を知らせるベルが聞こえ、何事かとその動きを中断する。青年はノロノロと画面を確認し、そこに表示された人物を見て首を傾げた。

 

 「なにしてんだあいつ……?」

 

時間は既に12時を回っている。こんな時間に何を……?疑問は尽きないが、とりあえずそれは横に置いて青年は通話ボタンを押した。

 

 「……もしもし?」

 『………』

 「もしもーし!」

 『…………』

 

待てど待てど返事がない。いつもなら電話に出るやいなや昼夜問わず騒がしい声が耳をつんざくというのに。

 

 いつまでこうしているつもりなのか。いい加減に寝たいのだが。スキあらば自身を眠りの世界に引きずり込もうとする瞼を懸命に開けながら、回らない頭でそんなことを思う青年。

 

ついに限界を迎えて寝落ちしそうになったその時、脳裏にふと嫌な考えが浮かんだ。

 

 

 

 もしや、声が出せない状況に陥っているのでは?

 

 

 

 「っ……!」

 

意識が完全に覚醒する。机の上のギターケースを引っ掴んで部屋から飛びし、ベランダに出ると手すりに足をかけて跳び出す。向かい側の家の屋根に飛び乗り、さらに並んだ屋根の上を駆け抜ける。

 

暫らく走ると見えてきたのは、一棟のマンション。

 

 「シッ!」

 

迷わず跳躍し、マンションの通路に着壁。手で手すりを掴み、足で壁を掴み、さらに上の階へと駆け上がる。

 

目的の階にたどり着くと、ギターケースから愛用の太刀を取り出し巻き付けてあるベルトを外す。これでいつでも戦える。目の前の扉に以前渡された合鍵を差し込み、意を決して鍵を開けた。

 

 「……ちょっとまて。」

 

 そこまでやって、青年は動きを止める。扉を締めて、もう一度鍵穴を見る。ピッキングされたような形跡はない。鍵もしっかり掛かっていたし、てっきり何者かに襲撃されて遅れを取っているのかと思ったが……。

 

部屋に入ってみてもガラスが割れていたりするなどの侵入されたような痕跡はなく、いつも通りの生活感などまるでないセーフティーハウスがあるだけだった。硝煙の匂いもなく、隠蔽したにしてもあまりに綺麗すぎる。

 

 「じゃあ何が?」

 

頭の中を「?」が埋め尽くす中、とりあえず安否確認はしておくか、と忍者屋敷よろしく壁をひっくり返して出てきた梯子を使って下の階、先程の電話の主が本当に住んでいる部屋へと降りていく。

 

もしかしたら寝ぼけて電話をかけてきただけかもしれない。だとしたら明日文句の一つでも言ってやろう。そんなことを考えながら部屋の扉を開けた。

 

 『……』

 「……。」

 

まず目に入ったのは、壁に取り付けられた大型テレビにドアップで映る妙に不気味なくまのぬいぐるみ。次に床に転がる画面がついたままのスマホ。そして、

 

 「ーーーッッ!!〜ッッ!」

 

部屋の隅で丸くなり、顔全体を手で覆い、声にならない叫び声を上げて泣きじゃくる白い髪の少女の姿であった。

 

 

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 「で?何か弁解はあるか?あるなら聞いてやるぞ。」

 

もっともくだらん言い訳だったらぶった切るがな。

 

昼前のガラリとした店内で、蓮士がギロリと睨む先には千束が正座をさせられダラダラと冷や汗をかいていた。

 

 「えっと、その、」

 「なに?なんだって?」

 「うぅ〜……!」

 

蓮士は基本、ミスをしたり遅刻をしても、注意したり軽く叱る程度で終わらせる。だが、今回ばかりは堪忍袋の緒が切れたようである。

 

蓮士が放つ不機嫌オーラを全身で感じ取った千束は、その右腕に抜き身の刀を幻視した。

 

 (た、助けてたきな!)

 

千束はたきなに視線で助けを求めるが、彼女は呆れたような目をしてからミカに渡されたコーヒーを運んでいってしまった。青い和服に身を包み、いまや彼女も立派なリコリコの店員である。

 

そんな薄情な!千束は心のなかで叫ぶが、今回ばかりは千束が全面的に悪い。ダンッ!と蓮士が床を踏み鳴らせばビクッと千束は姿勢を正す。正しておかないとマジで斬られる。

 

蓮士は千束にグッと顔を寄せ、更に圧を強めながら問いかけた。

 

 「お前、今週何回遅刻した?」

 「え、えっと〜…に、2かー「3回だ」ハイ。」

 「で?今日は何曜日だ?」

 「も、木曜かなぁなんてー「水曜日だなァ?」ふざけて申し訳ありませんっ!!」

 

まあつまり、

 

 「3日連続で遅刻とは良いご身分だなァ!」

 

こういうことである。いや、普通の遅刻であればここまでブチギレることはなかったかもしれないが、遅刻の原因となったものが更に蓮士の怒りに火をつけていた。

 

 「映画見るのは程々にしとけって前にも言っただろうが!このスットコドッコイ!」

 「ひーん!ゴメンってぇえ!」

 

 

 

 (前にも?)

 

そのやり取りを接客しながら遠目で見ていたたきな。彼女は以前二人の間にに何があったのか知らないため、不思議そうに首を傾げる。

 

 「あはは。そっか。たきなちゃんは知らないか。」

 

すると、この店の常連である吉松(よしまつ)シンジが、たきなが運んできたコーヒーを啜りながら懐かしむように語りはじめた。

 

 「ああ、あれだな?」

 

カウンターで二人のやり取りを見ていたミカも、なにか思い出しらしくフッ、とおかしそうに笑っている。シンジはそれに頷き、話を続ける。

 

 「そうそう。前に、千束ちゃんがホラー映画にハマったことがあってね。その時に蓮士君が『絶対見るな』って言ってた映画をつい好奇心に負けて見ちゃったらしくて。その後暫らく一人でーー「わー!ちょっとやめてよ!人の恥ずかしい過去を愉しそうに語らないで!」ふふっ。ごめんごめん。」

 

千束の妨害のせいで最後まで聞くことができなかったが、つまりはその時、映画によって随分蓮士に迷惑がかかったのだろうということは理解できた。

 

 右手で頭をガッチリ掴まれグワングワンと前後に揺さぶられる千束を一瞥し、たきなはふと時計に目をやった。

 

 「店長。そろそろ時間では?」

 「うん?……あぁ、もうそんな時間か。」

 

ミカもまた、時間を確認して頷く。シンジは二人の会話におや?と首を傾げた。

 

 「もう店を閉めるのかい?」

 「ああ。少し所用があってな。」

 

夜はやっているからその時来るといい。ミカがそう言うと、シンジもそうするよ、と答えて店を出ようと荷物をまとめ始める。

 

 「僕もこれから仕事が入っててね。さっさと終わらせてまた来るよ。」

 「あぁ。待っているぞ。」

 

荷物をまとめ終え、リコリコから出ようとドアに手をかけたシンジ。しかしそこへ千束が必死の様子で待ったをかける。

 

 「待って!ヨシさん助けて!ヘルプミー!」

 

シンジはその必死の叫びに顔だけ千束達の方に向け、ニッコリと笑った。

 

 「蓮士君。あまりやりすぎないようにね。」

 「ええ。死なない程度に締めてやりますよ。またのお越しを。」

 「声のトーンがガチなんだけど?!」

 

ハハハ、と微笑ましいものでも見るかのように、シンジは笑いながら店を出ていってしまった。イーヤー!という叫び声を背に、彼の姿はリコリコから遠ざかっていく。

 

 その気配が完全に消えた途端、す、と蓮士の目が細くなった。

 

 「……んでミカさん。状況は?」

 

ミカは予め用意してあった鞄2つと蓮士のギターケースをカウンターの上に置きながら答える。

 

 「武装集団とランデブーだそうだ。」

 「そいつは大変。」

 

蓮士はカラカラと笑いながらギターケースを受け取り、千束の頭を離す。尻餅をつき、「いてぇ!」と声を上げる千束に「さっさと準備しろ」と言い残すと、蓮士は更衣室へ向かっていった。

 

 たきなは一足先に着替えを終えたらしく、更衣室からリコリスの制服を着て出てきていた。彼女は蓮士の姿を認めると軽く会釈をし、先に行っていますと隣を通り過ぎようとする。

 

その時、蓮士は一つ言い忘れていたことを思い出した。

 

 「あ〜っとそうだった。井ノ上。」

 「なんですか?」

 

振り向いたたきなに、蓮士は厨房の方を指さし、何かを持ち上げるようなジェスチャーをしながら言う。

 

 「あそこに置いてある包み、忘れず持ってけよ。」

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 『二人分入ってるから。』

 

 (中身は何でしょうか?)

 

現場に向かうべく特急に揺られていたたきなは、言われた通り持ってきた包を鞄から取り出す。

 

 「お?たきな、それは……!」

 「竹見さんから持って行けと……。千束さんは中身がなにかご存知なのですか?」

 「多分ね。ほらほら開けて開けて。」

 

隣りに座っていた千束に言われるがまま包を開けると、中からは小さめの弁当箱が2つと、手紙が一枚、折りたたまれた状態で入っている。

 

 「これは?」

 

手紙を広げてみると、そこにはやけに達筆な字でこう書かれていた。

 

 [高菜、ツナマヨ

 

 「わーい!」

 

それを覗き込んだ千束は歓声をあげ、重ねてあった弁当箱を一つ取って蓋を開けた。中には白い三角形が2つ、ラップに包まれて入っている。

 

 「おにぎり、ですか。」

 「そうそう。遠征のときいっつももひゃへてふへふほ。」

 「喋りながら食べないでください。」

 「(モグモグ)」

 「……。」

 

口いっぱいに頬張ったご飯で頬を膨らませながら説明をする千束にジト目でツッコミを入れ、たきなも一つおにぎりを取り出すと、ラップを解いてパクリと一口。

 

 「……!」

 

 

 

          美味い。

 

 

 

口に含み一噛みすれば、絶妙な握り加減により米と米とがほろりとほどける。濃すぎない塩味が米の甘みを引き立たせ、噛めば噛むほど味わいが増す。

 

堪らずもう一口。今度はマヨネーズの濃厚な味わいが米の旨味と混ざり合い、口の中を支配する。そして、あとから追いかけてきたシーチキンのパンチが効いた旨味をマヨネーズが包み込み、全てが調和し、小さな革命が起きた。

 

 「美味しい……。」

 「でしょでしょー!」

 

たきなが呟くように発した声を聞き、まるで自分のことかのようにエヘン、と胸を張る千束。それはまるで親のことを自慢する子供のようで、それを見たたきなは以前何気なしに見たテレビドラマのことを思い出した。

 

 (確か……)

 

細かい部分は忘れたが、とあるシングルファーザーと反抗期の娘との生活を描いた作品だったはずだ。慣れぬ炊事や家事をする父と素直になれない娘。ふと思い立ち、それぞれの役に蓮士と千束を当てはめてみようとする。

 

 (……何か、違いますね。)

 

しかし全くその光景を想像できず、止める。

 

少なくとも、二人の関係性は父親と娘と言う感じではない。それにどちらかといえば、父親役はミカのほうが適任である。

 

 ならばなんだろうか。家族であり、しかし親ではない。祖父母?いやもっと違う。……お兄ちゃん?」

 

 「……ふぇ?」

 「え?」

 

千束の素っ頓狂な声にたきなが振り向くと、そこには最後のひとくちを頬張ろうとしていたらしく、口をぽかんと開けたままたきなのことを見ている千束がいた。

 

 「今、なんて?」

 

千束の質問にたきなは、今時分が考えていたことを知らずすらずのうちに口に出してしまっていたことを理解した。

 

顔が真っ赤になっていくのがわかる。

 

 「ーーッ!?何でもありませんッ!!」

 

電車の中だと言うことも一瞬頭から抜け落ち、立ち上がって大声で叫んでしまうたきな。ハッと我に返ると更に顔が熱くなるのがわかる。

 

もうどうにでもなれ。柄にもなくそんなことを思ったたきなはストンと席に座り、ニヤニヤと自分のことを見てくる千束から顔を背け、ヤケクソ気味に残ったおにぎりにかぶりついたのだった。

 

 

 

 

______________________

 

 

 

 

 

 

 「あいつらもちゃんと食ったかな。」

 

電車の中でそんなことが起きているなどつゆ知らず。蓮士は待ち合わせ場所から少し離れた高層ビル群の屋上で、フェンスにもたれながら昼食を取っていた。最後に親指についていたご飯粒を舐め取り、「ごちそうさん」と感謝の言葉を告げる。ラップやら弁当箱を片付けながら首から下げていた双眼鏡を片手で持ち、あたりをぐるっと見渡すと、

 

 「おーおー。集まっていらっしゃいますねェ。」

 

そこには、ここが本当に日本なのかどうか怪しく思えてくるようなゴッテゴテの武装集団の群れが見えた。先程確認したときよりも数は増えているが、何かを待ち構えているようで今の所動きはない。

 

 「ひいふうみ……団体様のおな〜り、ってか。ぶった斬って終わるなら楽なんだがなァ。内容もめんどくせェし。」

 

蓮士が文句を垂れると、つけていたインカムから呆れたような声が聞こえてきた。

 

 『始まる前からよしてくれ。相場の3倍出してくれるそうだから、絶対に失敗できないぞ。』

 「ククッ。わかってるよミカさん。」

 

冗談だって。蓮士はそう言って笑う。失敗できないと言っている割に二人の間には緊張感がないようにも見える。しかし、前々からガッチガチに緊張しておくよりもこうしてリラックスしたほうがいざというとき本来の力を発揮しやすいものなのだ。気が抜けているのと、リラックスしているのとでは意味が違う。

 

 蓮士はもう一度周囲を確認し、ある程度の敵の位置や戦力を確認するとインカムに手を添えた。

 

 「で、もっかい確認しておくが、今回の任務は天才ハッカーさんの護衛……に見せかけた死亡偽装が目標ってことでいいんだよな?」

 

蓮士の言葉にインカム越しにミカが頷いた。

 

 『ああ。打ち合わせ通り、レンは遊撃に出て敵を撹乱。途中から二人のフォローに回ってくれ。無事殺され次第失敗した風を装って撤退しろ。あくまでも敵に対象を殺させたと認識させる必要がある。上手くフォローしてくれ。ミズキもそろそろ始めるそうだ。』

 「了解。あのマダオも金につられて仕事モードかい。いつもそうなら助かるんだけどな。」

 『そう言うな。あれでもなんだかんだ優秀な人材なんだ。』

 

そんな話をしているところに、ふと蓮士の視界の端に何かが映る。双眼鏡で確認すれば、それは見慣れた赤と青のリコリスの制服と白と黒の髪。千束とたきなが到着したようだ。

 

 「お姫様方のご到着だ。死亡偽装のことはあっちの二人に話していないんだよな?」

 

この任務の本来の目的をあの二人は聞かされていない。故に二人はこれが本当に護衛任務だと思っている訳だが、それはなぜか。

 

インカムから、ミカの少し申し訳無さを含んだ声が聞こえてくる。

 

 『二人には悪いが、やはり素直すぎる。演技はあまり期待できないからな。』

 

千束は言わずもがな。彼女は正直……というより嘘がつけない。大体顔に出てしまう。死亡偽装がうまく行っても「わー。ハッカーさん死んじゃったー」と棒読みで演技とも言えぬ演技をしている姿が目に浮かぶ。

 

対してたきなはというと、ここ一ヶ月の間共に任務についたりリコリコで働いたりしてきてわかったことだが、彼女は少々愚直すぎる。本人は気がついていないが思ってることが結構顔や態度に出るのだ。それは彼女の良い点でもあるのだが、恐らく演技とかは……あまり期待できないだろう。

 

 「はっは。間違いない。アイツらほど今回の任務に向いてねェ奴も少ないだろうな。」

 

とはいえ、この任務が終わればきっと二人はへそを曲げてしまうだろう。どうやって機嫌を直してもらおうか。蓮士はぷくっとむくれた千束の顔と、いつも通りを装いながらもツンとした様子のたきなの顔を想像してクッ、と笑う。

 

 「ま、今回は奴さんと一緒に踊ってもらいますかね。」

 

んじゃ。と通信を切った蓮士はインカムから手を離し、双眼鏡をギターケースにしまう。軽くストレッチをしながら屋上からひょいと身を乗り出すとビルの間を三角跳びの要領で駆け下り、最後は忍者のように両足と左手を地面に付い、屈伸で衝撃を逃しながら着地した。

 

 「今日も頼むぜ。相棒。」

 

目の前に鎮座するのは路地に止めておいた自身の愛車。シートを軽く叩いてから跨り、掛けておいたヘルメットを被ってバイザーをおろす。

 

 「さァて、お仕事開始だ。」

 

パンと両手を合わせ、蓮士はバイザーの下ではニヤリと笑った。






・セーフティーハウス
裏社会でよく見られる偽造の住居。裏社会においてはごく普通にありふれたものである。用途は様々あるが、今回出てきたものは、一度敵を迎え入れてから迎撃するための作りになっている。本来の住居は、床の下にあるはしごを降りた下の階にある。

その部屋は幾人もの刺客を迎え入れできたが、微塵にも血の匂いはしない。壁に飛び散る赤い模様も、ただ赤いだけの塗料である。

・おにぎり
蓮士が持たせた包の中身。義手により握られたとは思えぬほどに美味い。塩加減や握り方、具の親和性、全てが調和した一級品。

少女が思い馳せたのは、けして有り得ることのない今の景色。彼女はその目に自分のために飯を握る兄の姿を写したのだ。

〈9月8日誤字修正〉
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