ワンピース世界の赤っ鼻に憑依しました   作:エタエタの実の飽き性人間

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続けるか分からないです。


第1話

  ONE PIECEという漫画にバギーというキャラがいる。超人系悪魔の実である「バラバラの実」を食べたバラバラ人間だ。登場初期は、主人公一味のかませ犬のような立ち位置だったが、物語が進むにつれて存在感を増していった。

 

 その理由は彼の経歴にある。

 

 海賊王ゴール・D・ロジャーの元クルーで、四皇である赤髪のシャンクスと兄弟分。その後自身の海賊団を立ち上げバギー玉という街一つを消し飛ばす威力を持つ強力な爆弾を開発する。紆余曲折あり、インペルダウンに投獄されるも、元ロックス海賊団である伝説の海賊シキ以降初の脱獄に成功し、海賊派遣組織を立ち上げ七武海に上り詰めた。

 

 最悪の世代であり、第五の海の皇帝とも呼ばれる麦わらのルフィと幾度も交戦し、時には共闘する関係を持つ。数多の海賊から慕われるカリスマ性と、その圧倒的な経歴、運、リーダーシップにより鷹の目ミホークとサー・クロコダイルを従え「クロスギルド」という会社を設立。海軍将校に懸賞金をかけ、世界の秩序を大きく乱し、最終的には四皇の地位に登り詰めた稀代の大海賊である。

 

 そんな彼だが、実力はそこまで高くなく、その評価と実態が大きくかけ離れていることもあり、一部のキャラクターからは軽視される傾向がある。

 

 しかし、言うまでもなくバギーという男のポテンシャルは非常に高い。バラバラの実を食べた能力者であり、覇気以外の斬撃はほとんど無効化することができる。また、その他の攻撃についても体を分離させることで避けることが可能な上、覚醒をすれば自分以外をバラバラにできる能力は非常に強力である。

 

 原作では、覇気を使う描写が無かったバギーだが、そのカリスマ性から覇王色の覇気が目覚める可能性は高く、能力自体も見聞色や武装色の覇気と相性が良い。

 

 敢えて言おう、バギーは四皇に相応しい海賊であると。

 

「…だからと言って、バギーに憑依するのは話が違うだろ…」

 

 そうやって独り言ちていると、赤い髪が映える少年が話しかけてきた。

 

「どうしたんだ、バギー? ブツブツ独り言なんか言って」

 

「シャンクスか、俺様は今忙しい。用がないならほっといてくれ」

 

 原作では未来の四皇になる男によくこんな口が利けるなって? 気づいたらこいつとは同じ船に乗っている同期だったんだ。変に下に出すぎるのもおかしいだろ? 俺だって初めは緊張したさ。幸いシャンクスの性格は、原作と同じように細かいことは気にしない大らかなものだ。俺みたいな奴でも、平等に接してくれるのがその証拠だ。それに、この口調にはもう一つ理由がある。

 

「そんな冷たいことを言うなよ、バギー。それに何もやってないように見えるぞ」

 

「こんのハデバカやろォ! どう見ても考え事してるだろうがよ!! オメェの目は節穴かってんだ!!」

 

「わははは!! そう怒るな、レイリーさんが呼んでるから声かけただけさ。なんかやったのか?」

 

「レイリーさんが? 身に覚えがねェな。一体何の用だ?」

 

「さぁ、俺は何も聞かされてないからな。んじゃ、確かに伝えたぞ!」

 

 そう言うとシャンクスは甲板の方に歩いていった。…先程話したもう一つの理由ってのがこの口調だ。何故かこの身体に憑依してから、喋ろうとすると原作バギーの様な話し方になってしまう。

 

 ちなみにさっきは、悪態をつくつもりは一切なかった。実際には、「いやいや、少し考え事をしていたんだ。それより何か用があるのか?」と、話したつもりだった。

 

 今のところこの変な現象の所為で、俺とバギーが入れ替わったことに気づかれていないみたいだから別にいいんだけどな。それよりも、レイリーさんと言うのは、俺が今所属している海賊団の副船長だ。普段は、暴走がちなロジャー船長を宥める役割や、サボる船長の代わりに船を仕切っているから忙しいはずなのにどうしたんだろう。

 

 そんな風に考えながら、副船長室に向かいだす。まあ、行ってみれば分かるだろ。

 

「レイリーさん、なんか用があるってシャンクスの奴から聞いたんだけど」

 

 扉の前に着くと、ノックしながら中にいる人物に声をかける。落ち着いた低い声が扉の向こうから帰ってきた。

 

「おう、バギーか。中に入ってくれ」

 

「一体なんだ? レイリーさんが俺様を呼ぶなんて珍しいな」

 

「そうか? まあ、普段は忙しいからな。そんなことよりバギー、噂で聞いたんだが、最近お前修行してるらしいな」

 

 その事についてか。確かに俺は自分がバギーに憑依したって気づいた時からトレーニングを始めた。原作のバギーの様に強運が有るとは限らない。元ロジャー海賊団クルーって事実もどこから漏れるか分からないから、自衛の為に鍛え始めた訳だ。幸い、身近に強い人間がいくらでもいるから身体の鍛え方なんか聞いて将来に備えてるって訳だ。

 

 ちなみにバラバラの実は既に食っていた様で、試しに腕を引っ張ってみたら見事に取れてしまった。

 

「あー、その事か。なんだよ、レイリーさんも俺様が強くなれねえって言いてえのか?」

 

「もちろんそういうことじゃないぞ。バギー、お前が本格的に鍛えようってんなら師匠をつけてやろうと思ってな。1人だと大変だろう」

 

「ほんとか! ありがてえ! 最近身体を鍛えるのにも飽きてきたんだ。教えてくれるってんならちょうどいいぜ!」

 

「そうかそうか。お前も喜んでくれるか。…よし、入ってこい。」

 

 レイリーさんがそう言うと、副船長室の扉が徐ろに開かれ金髪をオールバックにした大男が部屋に入ってきた。

 

「…」

 

「ゲッ!!! バレット!!!! …さん。」

 

「…チッ、なんで俺がこんなガキの面倒見なきゃいけねぇんだよ」

 

「そう言うな、バレット。俺も忙しいし、ロジャーは最近調子が悪い。いつでもお前の相手をしてる訳にはいかない。」

 

「俺に押し付けようってか?」

 

 バレットがそう言うと、部屋には緊迫した雰囲気が漂い始める。鋭い目つきでバレットが目の前の男を睨みつけると、レイリーは降参する様に両手を挙げた。

 

「そう怒るなって、バギーが強くなったらロジャーがまたサシでやってやるってよ。 バレット、確かにお前は強いが少し一人よがりな所が見える。悪かねぇが、もう少し落ち着いてもいいんじゃねえか?」

 

「うるせえ、俺は最強にしか興味がねぇんだよ。

 …さっきの話本当だな?このガキを強くしたらロジャーと闘れるってのは」

 

「ああ、最低でも覇気を使えるようにしてくれ。最近シキの奴が鬱陶しいからな。…戦争が起きるかもしれん。戦力が1人でも増えると助かる。」

 

「ま、ま、ま、待ってくれ! レイリーさん!! もしかして俺の師匠って…」

 

「そうだ、バレットに頼もうと思っている。同じ悪魔の実の能力者だしな!」

 

「そんな!!? バレット…さん相手だったら死んじまうよ!」

 

「大丈夫さ! バレットも手加減してくれる! …多分。」

 

「確証ないのかよ!!!!」

 

 冗談じゃない。ダグラス・バレットはその強さ故に鬼の跡目と呼ばれるほどの男だ。レイリーさんとも互角にやり合っている程の実力者だし、それに強さにしか興味がない冷酷な男だ。下手したら殺されてしまう…!こうなったら…

 

「バレットさん! アンタも俺みたいな弱え奴鍛えても時間の無駄だろ!?なんか言ってくれよ!」

 

「ごちゃごちゃうるせえぞ、クソガキ。確かにてめえを鍛えるのは時間の無駄だがロジャーと闘れるってんなら話は別だ。ボコボコにしてやるから行くぞ。」

 

 

「ヒィッ!? レイリーさん! やっぱ殺されちまうよ!」

 

「ワハハ!」

 

「笑ってんじゃねえーよ!!! ハデバカやろォ!! 」

 

「とっとと来い」

 

 脳天にとんでもない激痛が走ったかと思えば、蹲った瞬間に襟を掴まれ引きずられてしまった。…ああ、儚い人生だったぜ。

 

 その後、気を失うまでタコ殴りにされた。ちなみにシャンクスはその様子を見て腹を抱えて笑っていた。…あの野郎絶対後で泣かしてやる。


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