ワンピース世界の赤っ鼻に憑依しました   作:エタエタの実の飽き性人間

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嬉しすぎて今考えてるネタも思わず話しちゃいそうなので、返信を書けず申し訳ありません…。

何とか続けていきますので応援してくださると嬉しいです!


第3話

 シャンクスに覇気を感じとるコツを聞きながら、バレットに2人がかりで挑んでは殴られる修行に耐えること半年、バギーはついに覇気の存在を感じ取れる様になった。加えて能力も、前まではバラけた身体を二つ以上動かすことが出来なかったが、慣れたのか頭、胴、腕、脚の四つの部位をバラバラにして動かせる様になってきた。

 

「くらえ! バラバラ砲!」

 

 シャンクスがバレットの気を引いている間に切り離してバレットの背後に待機させていた片腕を勢い良く飛ばす。武装色の覇気は纏わせることは出来ないものの、ONE PIECE世界で毎日限界まで鍛え上げた筋力と能力のおかげで、人1人昏倒させることは容易い威力だ。

 

「蚊が止まったかと思ったぜ!!!」

 

 バレットはそんな一撃を脳天に直撃させても、微塵も堪えた様子なく振り向いた勢いで拳を突き出す。

 

「あぶねえっ! バラバラ緊急脱出!!」

 

 砲弾の様な勢いの拳圧を胴体だけ取り外し、避ける。その隙に、追撃しようとするバレットに後ろから武装色を纏わせたシャンクスが襲い掛かる。

 

「隙あり! …ゲフゥ!」

 

「ぎゃああ!! …何すんだ!! ハデバカやろう!」

 

「ツメがアメェな。見聞色の覇気を使わなくても予想できたぜ」

 

 バギーを追撃すると見せかけて、奇襲を想像していたバレットは身を屈めることで攻撃を躱し、シャンクスは飛び掛かった勢いのままバギーと追突していた。思わずバギーがシャンクスに詰め寄る。

 

「いやあ、悪い悪い。まさか避けられるとはな、わははは」

 

「笑って誤魔化すなオメェ!」

 

「呑気に話している場合か?」

 

 そう言うとバレットは再び2人に襲いかかる。慌てて応戦するバギーとシャンクスだが、徐々に動きが鈍くなる。そんな3人を船室の窓から眺めている人物達がいた。

 

「あいつら中々持ち堪える様になったじゃねえか。」

 

「ああ、バレットに鍛えさせるって聞いた時はどうなることかと思ったがなんとかなって良かったよ。こうなるって分かっていたのか? ロジャー」

 

「ガハハハハ!! そりゃおめぇ、ダメだったらそん時考えりゃ良いじゃねえか!」

 

 顎が外れそうな様子の金髪の男は、ロジャーに向かって目くじらを立てて詰め寄る。

 

「何も考えてなかったのか! …全く、あの2人が不憫だな。」

 

「まあ、そう言うな。………レイリー、お前バレットのことどう思う?」

 

「どうって…、あいつの戦闘が身勝手って話しか? まあ、あれだけの強さを誇るんだ。そう言うこともあるだろう。少し落ち着いてもいいと思うがな。」

 

 レイリーが、そう答えるとロジャーは、窓から離れ船室のテーブルに置いてあったグラスに棚から取り出した酒を注ぎながら呟いた。

 

「そうじゃねぇ、アイツはな、孤独なんだ。本当の強さってもんを知らねェ。孤独こそが強さだと考えてやがる。今はいいが、いずれその孤独故に身を滅ぼすぜ。」

 

「おい、それ俺の酒……、まぁいいか。だからあの2人の子守りをさせたのか?」

 

「あぁ、俺はいずれ死ぬ。まだ、仲間の奴らには言ってねえがバレるのも時間の問題だ。そん時に、バレットを引き留める鎖が必要だ。

 アイツの事だから俺が病気だと知ったら元気な内にっつって四六時中相手をしなきゃなんねぇ羽目になりそうだ。」

 

 そう話すロジャーの目には、暖かいものがあった。レイリーは、そんな姿を見て溜息を吐くと、再び窓の外に視線を移した。

 

 戦いは、既に終盤に差し掛かろうとしていた。バレットの追撃に堪えきれなくなったバギーが、バラバラの実の能力で体を6等分して翻弄しようとするも、胴体に直撃を受けてダウン。シャンクスはそんなバギーを見て焦り、勝負を決めようとしたところを隙をつかれ殴り飛ばされた。

 

「んぎゃあああ!!!!」

 

「ガハッ!!!」

 

 2人が目を回して倒れていると、バレットが近づいてきて2人の頭に水をかける。

 

「ぐああああ!! …ハデに敵襲だ!! …ん?」

 

「ぶはぁっ!!! ゲホッ、ゴホッ! ……優しく起こしてくれよ…。」

 

「そこで転がってると邪魔だ。とっとと、雑用にもどれ」

 

 2人にそう告げるとバレットは自身の部屋に戻って行く。また、トレーニングでもするのだろう。そんなバレットの後ろ姿を見ていると、徐ろにバギーがシャンクスに声をかける。

 

「…なぁ、おい。バレットさん少し丸くなったと思わねェか?」

 

「…あぁ。前だったらわざわざ起こしてくれなかった、と思う。」

 

「だよなぁ…。てかオメェ!さっきはよくもぶつかって来やがったな!」

 

「お前だって最後やけになって突撃しただろ! あれのせいであの後1人でバレットさんにボコされたんだそ!」

 

「なぁにぃおう!!!」

 

「やるか!?」

 

 売り言葉に買い言葉とばかりに2人が言い争っていると、クルーに注意される。

 

「おい! 見習いども! さっさと持ち場に戻らねーか!」

 

 2人ともしばらく睨み合っていたが、再度注意されると流石にこれ以上は不毛だと思ったのかそれぞれの仕事に戻って行った。

 

 

「あーあ、どうすりゃもっと強くなれんだろうなぁ」

 

 持ち場に戻り1人になると、不貞腐れた様にぼやいてしまった。だが、それも仕方がない。なんせこの半年、ひたすらバレットに殴られてばかりで自信を失いそうになっているのだ。

 

「覇気もまだ使いこなせねェし、やっぱなんかが足りねェんだよな…」

 

 もちろんこの半年、全く成長しなかった訳じゃない。覇気は知覚することができる様になったし能力を使った攻撃も修得した。しかし、一方で課題も山積みなのだ。

 

 身体を鍛えることで、その辺の海賊には負けない自信はある。能力はまだまだ使いこなしきれていないが、既に原作の初登場時のバギーよりも強くなった。覇気は知覚しただけとは言え、その影響で身体は頑丈になったし、勘も鋭くなっている。ただ、バレットと渡り合うには、少なくとも覇気を纏わせて攻撃を通じる様にしなければならない。

 

 今日の立ち会いでも、最初のバラバラ砲でダメージを与える事が出来ればもっと善戦出来ただろう。

 

「ちきしょー、やっぱ火力不足かー。…とは言っても原作の俺様の技はもうほとんど使えるしマギー玉は開発する環境がねえ。地道に武装色鍛えるしかねェか…?」

 

 考えれば考えるほど、その結論に至る。残念ながら覚醒すらしていないバラバラの実では新世界でもトップクラスの海賊にダメージを与える火力を生み出すことは難しい。

 

「シャンクスはいつの間にか覇気纏わせられる様になってたしな。知覚できる様になったらすぐって言ってたけど…」

 

 ブツブツと独り言を言いながら、持ち場の掃除を始める。体をバラバラにできるバギーは、腕の2本にそれぞれ箒と雑巾を持たせてそれ以外は座って考え事を続ける。サボっている訳ではなく、マルチタスクの訓練だ。バラバラの実の能力は動けなくなることを考慮に入れなければどこまでも自分をバラバラに出来る。では、原作よりも能力を使いこなせていないのは何故か。バギーはその原因を思考力だと考えた。

 

 原作のバギーは、今よりも大人で脳が発達していたことはもちろん、長年バラバラの実を使うことで思考力を磨いていたのではないか。そう思い至ってからは、日常の中でどんな場面でもバラバラの実を応用して過ごそうとしていた。例えばシャワーを浴びるときはより細かく分け、小さいサイズでの感覚を身体に覚え込ませたり、料理や洗濯の時はあえて遠くから手だけ動かして作業をさせたりしている。

 

 その甲斐あってか、能力の精度は日々驚くほどに上達している。素早い思考を求められる戦闘時でなければ全く別の場所に各パーツを配置して動かすことも出来る。残念ながら顔以外では視覚情報が無いので、今のところうまく活用できていないが。

 

「覇気にバラバラの実の能力、身体もまだまだ鍛え足りねェ。やることが目白押しだぜ、っと」

 

 天井の汚れも、バラした腕を浮かせて綺麗に拭き取ると、大きく背伸びをして修行で疲労した身体を労う。

 

「しっかし妙だぜ、いくら能力とは言えバラけた身体をこうも自由に動かせるのはよ。…あ、間違えた。」

 

 気を抜いた所為か、掃除させていた腕をそれぞれ右左逆に取り付けてしまった。いくらなんでも、このおかしな身体に慣れすぎたと自省してるとある事を思いついた。

 

「あ? これもしかしてハデにスゲェんじゃねェか…?」

 

 バラバラの実の新しい可能性に気づいたかもしれない。次から次へと湧き出るアイデアにバギーは胸を高鳴らせた。

 

「よし! 試してみるか!!」


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