「ソライロツバサさん。……ソライロツバサさんはいませんか?」
「ハァイ! ここにいまぁす!」
あらん限りのスピードで学園の廊下を歩いていると私のクラスから自分の名前が呼ばれるのが聞こえたから、これはヤバいとダッシュして勢い良く教室のドアを開けた。
危ない。危うく遅刻するところだった。なんとか出欠確認には間に合ったからセーフ!
「ま、間に合った……」
「始業のチャイムに間に合ってないからアウトですよ。朝の自主練はしばらく禁止です」
「そ、そんなぁ……」
先生の残酷な有罪判決に耳と尻尾が力なく垂れていくのを感じた。
「……ってことがあったの! いいじゃん出欠確認には間に合ったんだから!」
「いや、ダメに決まってるでしょ」
昼休み、私はカフェテリアでお昼ごはんをかきこみながら今朝の有罪判決に対する愚痴をネイチャにこぼしていた。
そんな私を見てネイチャは苦笑いをするだけだ。
「走るのが好きなのはわかるけどさー。学校生活もちゃんとしないと先生に目ぇつけられて大変だよ?」
「あれ、ネイチャって小学校の頃にヤンチャしてた感じ? 意外かも」
「いや、ヤンチャした結果が目の前にいるから反面教師にしてるだけ」
「ひどーい!」
「事実じゃん」
私、ソライロツバサは激怒した。必ずやかの邪智暴虐な親友をこらしめねばならぬと決意した!
決意したのでネイチャのお皿に残っていた最後のニンジンをお箸で摘んで口に放り込む。
「あーっ!? ちょっとツバサそれは反則でしょ!?」
「んむふふふふふ♪」
うん。今日も学食のニンジンは甘くて美味しい。あ、待ってネイチャそんなに揺さぶらないで食べたものががががが!
「ヒドイ目にあった」
「自業自得でしょ」
空の食器を乗せたトレーを返却口に置きながらため息をつく。
本当に危なかった。あともう少しで食べたものが逆流するところだった。
さて、今日は午後からレース座学だったけか。面倒くさいけど、受けとかないとレースで勝てないからな……。
まあ、午後のレースクラスはネイチャと一緒だし最悪教えてもらおうかな。
「ネイチャ、この後はレース座学だったよね」
何の気なしにそんなことを聞いてみれば、ネイチャの動きがぎこちなくなった。
「ん? どうしたのネイチャ」
「あ、いやぁ……その、ですね」
もじもじし始めたネイチャを見て、なんとなく気づいた。もしかして……。
「アタシ、実はトレーナーさんと契約しまして……」
分かってた。分かっていたけど、それでもやっぱり衝撃は大きくて。
「え、ええええええええええ!?」