ONE PIECE FILM SCARLET 作:リーグロード
正直、コロナ舐めてたわ……。
あれから俺はこのグラトニー海賊団で海賊見習いとして働かされていた。
そもそも、なんでそんな高価な悪魔の実があの島の海岸に落っこちていたのかというと、少し前にグラトニー海賊団と海軍と他の同業者である海賊の3つ巴の戦闘があったようで、その戦闘の目的であった悪魔の実が入った宝箱がうっかり海に落ちてしまい、3つ巴の戦いに勝ったグラトニー海賊団が潮の流れから予測してあの島に上陸し探索していたら既に俺が食べていたという結果に終わったということだ。
ちなみに、俺が食べたバクバクの実モデル獏は人の悪夢を食えるという物凄くショボい力しかなかった。
一応幻獣種なだけあってタフネスさと回復力だけは他の
「おい見習い! 早く荷物運べ!」
「こっちに人が足りてねえんだ! さっさと来い見習い!」
「おら! ツマミが切れたぞ、おかわり持って来い見習い!!」
見習い見習いと人を便利屋のようにこき使う船員についに怒りが爆発する。
「うがぁ──!! 俺はテメェらの小間使いでも奴隷でもねえぞ!!」
酒を飲みながらツマミを持って来いと命令してきた船員にドロップキックをかませると、吹っ飛んだ船員の先には同じように酒を飲んでる船員がおり、ピタゴラスイッチのように綺麗にぶつかって持っていた酒がどこかへ吹き飛んでいった。
「ギャー! テメェこら!?」
「ふざけんじゃねえぞ見習い!!」
「やってやらー! かかってきやがれ!!」
「いいぞお前ら!! もっとやれぇ!」
そこから先はどんちゃん騒ぎの喧嘩が始まった。
殴る蹴るの大騒ぎをしているとアクシデントは大抵は起こるもので、酒が入ったジョッキが船長の食ってた肉にぶちまけられる。
「俺様の飯に酒をぶっかけたアホは誰だ!!」
「やべぇ! 船長の飯に酒がかかった」
「ああなったあの人は止めらんねえぞ!」
ギャー! と悲鳴を上げて騒いでいたバカたちは船長の拳骨を喰らって気絶していった。
そんな海賊生活を続けて早数年の月日が流れた。
あれからバグラス・グラトニーは少年から青年へと成長し、海軍からも目をつけられる名のある賞金首へとなっていた。
「最近グラトニー海賊団に厄介な新入りが入ったようだな」
「ああ、なんでも
そんな噂が本部で持ちきりになっており、当然ながらその話は上の方の人間にも届いていた。
「まったく、おそろし~いね~。このバグラス・グラトニーって奴はまだ若いでしょうに……」
「ふん、海のクズがまた1人増えたとはな、嘆かわしい」
茶をすすりながら1枚の手配書に描かれた人物について海軍本部中将ボルサリーノと元帥センゴクが話し合っていた。
その手配書に描かれたバグラス・グラトニーの懸賞金は4800万ベリーという、まだ若干14歳ほどの少年に対しては破格とも呼べる額だった。
それを重く見た海軍はこれ以上悪の芽が育たぬうちに摘み取ろうと、グラトニー海賊団の発見報告を受けて即座に軍艦を差し向ける。
「9時の方角より海軍の軍艦およそ3隻がコッチに向かって接近中!」
「ゴバババ! ちょうど腹ごなしの運動をこなしたかったところだ。よ~し、野郎共! 食後の運動がてらに海軍潰すぞぉ!!!」
「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
こうして始まった海軍との戦闘は終始グラトニー海賊団の一方的なものへとなっていた。
「喰らえ海軍! ────大海破!!!! 」
船長の得意とする大剣による斬撃が海を真っ二つに引き裂き、その直線上に存在していた3隻の軍艦のうちの1隻を叩き切り堕とした。
「「「「ギャ──────!!!?」」」」」
「「「「ひゃほぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
悲鳴は残りの2隻の軍艦に乗る海兵が……、雄叫びは船長の一撃に士気が上がって船員たちが……。
このまま勢いに乗って船員たちは軍艦に向けて次々と砲弾を打ち込んでいく。
「ぬぬぬ……。おのれ海賊め! 調子に乗りおって!? 何をしている! 早く迎撃の大砲を撃ち込まぬか!?」
「無理です大佐! 先程の出鱈目な斬撃で巨大な津波が発生中!? 舵を盗られ砲弾の狙いが定まりません!!」
「ぐぬぬぬ……!!」
歯を食いしばりながらも、次々と撃ち込まれてくる砲弾を軍艦に直撃せぬよう迎撃していく。
「野郎共! アレにはまだ俺らの今後の食糧が積まれてるんだ。直撃させて魚の餌にさせちまうなよ!」
「「「へい!」」」
やがて海賊船と軍艦との距離は縮まってゆき、ついには飛び移れるまでの距離へと接近していった。
「一番乗りは俺だ!!」
「あっ! テメェ何を先走ってやがるグラトニー!?」
「ええい! グラトニーの奴に遅れを取るな!!」
一番槍として軍艦に飛び移ったグラトニーの背を追いかける形で他の者達も次々と剣を片手に軍艦に乗り込んでいく。
そこから先は乱戦となり、敵味方が入り混じった軍艦の上で怒号と共に縦横無尽に駆け回るのは獣の姿へと変貌したグラトニーだった。
「グオオオォォォ!!!」
「「「ギャー!?」」」
肉体スペックに物言わせたタックルに雑魚海兵たちはそのまま海へと投げ飛ばされる。
「おのれ海賊めぇ!? よくも私の部下を!!」
「っ!?」
突如として斬りかかってきたのは海軍本部大佐パルス・マッカという男だった。
流石は海軍本部大佐の役職についているだけあって、その剣捌きは凄まじいもので、一瞬でも油断すれば即座に斬り伏せられてしまいそうだ。
「ゴバババ! ずいぶんと苦戦してるなグラトニー」
気づけば船長がすぐそばに立ってこっちの戦いを酒を片手に観戦していた。
見れば海兵たちは既に全員床に転がされており、残っているのは目の前の大佐のみだった。
「貴様!? ……部下たちを」
「よそ見してんじゃねえ!!」
「ぐっ……!?」
船長の方に視線を向けた隙をついて脇腹に蹴りを1発お見舞いしてやる。
その時に骨が折れたのだろう。急に動きのパフォーマンスがガタ落ちしていった為、そこから先は終始俺が圧倒して勝った。
「ぐっ……、無念……」
「はぁ……、はぁ……、流石に本部の大佐クラスは強いな……」
息を切らして床に倒れ伏したパルス大佐を見下ろしながら、他の仲間たちはどうしているかと辺りを確認すると……。
「「「「カンパーイ!!!」」」」
「ゴバババ! いや~、まさかグラトニーが勝っちまうとはな。あの油断がなけりゃあの大佐くんも負けなかっただろうに」
「っておい! 人が必死こいて戦っている最中に宴会の準備してんじゃねえぞ!!」
海兵たちから奪った食糧と酒で宴会の準備をしていた仲間たちに襲い掛かる。
「ふんっ!」
「ゴバッ!?」
「飯食ってる船長に襲い掛かるなんざ自殺行為だぜ、グラトニー」
「「「「ぎゃはははは!!!」」」」
その後もグラトニー海賊団は進軍を続け、幾つもの大事件を起こしていった。
雨の大国での国家転覆や、海軍の支部の壊滅、大海賊との一大決戦等々といった新聞の一面を飾り立てる彼らの活躍に世界は恐怖した。
だが、そんな無敵とも呼べた海賊団の進軍は突如として終わりを迎える。
「…………」
「おい! 船長の具合はどうなってんだ!?」
「……医者として言わせてもらうが、船長の容態はもう……」
長き旅の末にグラトニー海賊団の船長であるダリオスは不治の病に侵されてしまった。
既に様々な手は尽くしてきた。幾つもの島を巡り延命治療を施してきたが、日に日に船長の容態は悪化していき、遂に今日この船の医者である男が匙を投げた。
「そんな……。ふざけんな! あんた医者だろうが、病気や怪我を治すのがあんたの役割だろ!!」
「……すまん」
「すまんじゃねぇ!!」
消えそうな声で謝る医者に船員の1人が胸ぐらを掴み上げて怒りの声を上げる。
誰もが止めようと動き出したその時──―
「やめろ。ソイツはよく働いてくれたさ」
「「「「船長!!?」」」」
部屋で安静にしていたはずの船長がこの騒ぎを耳にして止めにきたのだ。
「ゴバババ! 命ありし者、いずれは朽ちて倒れるのが
「「「「うぅぅ……船長……」」」」」
もはや自身の終わりを受け入れた船長の言葉に全員が涙を流して悲しみにくれる。
そんな部下たちの涙に嬉しくなるという感情と共に、この船から離れる前になさねばならぬ事をしなければと決意し、この場にいない男の居場所を聞きだす。
「…………」
水平線に沈みゆく夕日に黄昏ながら、この先の未来に不安を憶える男はただ1人膝を抱えて船首の上で座り込んでいた。
ずっと続くと思っていた。どんな苦難や困難も仲間たちとなら乗り越えられると、根拠のない自信が胸の中にずっとあったのに……。
「ゴバババ! こんなとこで1人夕日に黄昏るなんざお前らしくねぇな」
「っ!? 船長なんでこんなところに、あんた絶対安静って言われてたろ!」
「はっ! いつもアイツの絶対安静の命令を無視しやがるオメェに言われたくねぇよ!」
「いでぇ!」
生意気だとばかしにグラトニーにデコピンを喰らわす船長に、オデコをさすりながら涙目に睨みつける。
「……なあグラトニー、俺は次の島でこの船を降りようと思ってる」
「はぁ!? 何言ってやがんだよ!」
「まあ、確かに勝手かもしれねぇがこれはもう決めたことだ。そもそも、いつまでも戦えない病人が船長を務めてるのが間違いなのさ」
「だったら、俺らであんたを守ればいいさ! この船の強さはあんたが一番よく分かってるはずだ!!」
「ゴバババ! 笑わせんなガキんちょ。この先の海は更なる化け物の巣窟だ。病人を抱えたまま航海できるほど生易しい海じゃねぇ」
「それでも、この船の船長は……「これから先の海を渡る際の、この船の船長はお前に託す」ッッ!!?」
その船長の言葉にグラトニーは言葉を失って振り返った。
もちろん、この船を船長が降りると口にした時は船長交代はある話だとは思った。
だが、まさかその次期船長への指名が俺になるなんざ思いもしてなかったのだ。
言っちゃなんだが、俺はこの船に乗った時期が一番遅い。古参の者や俺以上に船長として役に立つ奴はこの船に幾らでも乗っている。
「何で俺なんだよ。この船には俺以上にあんたの後継に相応しい奴が乗ってるだろ?」
「確かに、俺様の船にはお前以上に役に立つし、信用の厚い奴もいる。だがな、海賊船の船長ってのはそうじゃねぇんだ。俺様がこの船で俺の次に強いと信じてるのはそう……お前だ!」
「俺がか? まあ、そりゃ船長を抜かせば俺がこの船で一番強いのはそうだが……」
「悪党にとっちゃ強さってのは一番重要な指針だ。こりゃ自論だがな、海賊にとって上に立つ人間ってのは自分よりも腕が立って信用も信頼も出来る奴のことだ。だから、俺は信用できる仲間じゃなく、信用も信頼も出来るお前に後を託したい」
まだまだ言いたいことは沢山あった。っが、それでも船長が俺を信用も信頼もしてくれると言ってくれたのだ。
なら、その手を取らなきゃ仲間じゃねえ。そう思ったからこそ、涙も見せることなく俺は船長から後を託すという意思を握手という形で返した。
「ッッッッ!! 俺が絶対にこの海賊団を世界一の海賊団にしてみせる! だから船長、その時まで精々くたばんなよな!!」
「ゴバババ! そりゃまたなんとも無茶苦茶言いやがる!!」
「うるせぇ! いいか、この約束は船長としての命令だ。例え前船長でも次の船長の命令は絶対だからな!!」
「……そうだな。よし、いいだろう。俺様は生きるぜ! 何年掛かるかは知らねえが、このグラトニー海賊団が世界一周を果たした偉大な海賊団になるまで生き抜いてやらぁ!!」
「おう、男と男の約束だ!」
こうして、俺はグラトニー海賊団の2代目船長となり、前船長だったダリオス・ゼイルは宣言通り次の島で船を降りた。
目に涙を浮かべる者もいたが、男の別れだ。その涙を流す者はいなかった。
「あ~、こうして俺がこの船の船長となったわけだが……。まあ、色々と言いたいことがある奴も多いだろう。だがな、俺はゼイル船長から未熟ながらにもこの席を譲られたんだ。
「「「「…………」」」」
そんな俺の宣言に対して皆が取った行動は……
「「「「「ウェ──ーイ!!!」」」」」
懐に隠し持っていた酒を俺に浴びせ掛かることだった。
「ちょっ、うわっぷ!!?」
「なにカッコつけてんだよグラトニー! いや、グラトニー船長様よ!!」
「ゼイル船長が次の船長はお前だって言ったんだ。文句を言う奴は誰もいねぇさ!!」
「お前ら……」
先程までキリッとカッコつけていた顔を破顔させて、頭からぶっかけられる酒を浴びるように口に入れていく。
「よっしゃー! ゼイル船長の見送りと新船長の歓迎の宴だ!!」
「「「「「おおおおぉぉぉ!!!!」」」」」
その日の宴は夜を又ぎ朝まで続いた。
やがて歴史に大きく名を刻むグラトニー海賊団2代目船長バグラス・グラトニーの誕生の日であった。
アニメオリジナル的な話はあと1話で完結します。