5月22日…テストも終わり来週には久しぶりのプライベートポイントも入る事もあり、クラス中は盛り上がっていた。ちょっと黙って欲しい。
今日は朝早く来すぎてしまったようだが割と人がいる。特に男子、今日が最後のプールらしいので盛り上がっているのだろう。特に盛り上がっているのは株がブラックアウトしそうな山内である。
俺は山内に本気で怒っている。あいつは夏までに退学にさせるべきだろう。
彼は先日、うちのクラスに残った価値を示すと言いながら提案したクラス貯金制度は刹那、彼の株を押し上げることに成功した。クラス貯金制度とはBクラスもしている1個人に毎月一定額を税金のように納税して、いざと言う時にクラスのために使うと言うものである。しかしタイミング、発案者、推薦者の全てがまずかった。
まずうちのクラスはBクラスほど信頼を集めてる一之瀬みたいな人間はいない上に団結力がある訳でもない。平田は何やらぶっ壊れてしまった為、まっさきにクラスからは櫛田に推薦の声が集まったが堀北が全力で反対。協調性皆無のDクラスにおいて誰からも信頼される猛者はいなかった。
そして何故だが山内は預ける相手として幸村を推薦した。あいつは山内を退学させようとしてたはずなのだが……訳分かんねぇよ。その結果人望の無い幸村に任せる事は反発の声が起きた。そりゃそうだろうよ。
そしてDクラスは悲しいことに0プライベートポイント、しかも山内を助けるために多額の金を使ったばかりである。来月に入るポイントも微々たるものだと予想できるため、預ける程の額はそもそも無かった。貯金している人間が限られており、負担額に差が出るのも問題の一つだ。
最後にプライベートポイントをほぼ持っていない上にその貯金を食い潰した山内が提案しても、提案者本人が実践しない上に山内が下の方だから山内の保険にしか聞こえなかった。日頃の行いはやはり大事である。
しかし皆保険は欲しかったらしく、そういう時は誰かプライベートポイントを大量に持っている人間に白羽の矢を建てようとするものである。
そう、俺である。
山内はあろう事か俺が冤罪だったことの損害賠償の代金をクラスの為の保険金として用意しようと言い出したのだ。曰く、誰も悲しまないから、曰く友達がいないからだそう。
この意見に対してクラスの5割が賛成、2割が反対、3割がその他である。その他というのは中立やどうでもいいと思っている人間の事だ。
賛成のメンバーは堀北、御門、幸村グループ、四馬鹿、篠原、佐藤等のグループ外村達の男子グループと1部の軽井沢&櫛田グループである。
4月俺を虐めてた奴らの中でも積極的に虐めてた奴らが大半である。バカは勉強したら治るがクズは死んでも治らないらしい。一応山内が主導して理論的な部分を幸村と堀北が固めている為、山内は自分がDクラスのリーダーだと勘違いしているらしい。
一方で反対しているメンバーはキャラ維持の為にしか見えない皆のアイドル櫛田とそのグループの1部、あと何故か全く分からないが軽井沢と松下に三宅だ。
軽井沢なんて俺を積極的に虐めてた人間だし櫛田グループも陰口を叩いてたはずだ。
ちなみにその他はぶっ壊れた平田に高円寺、綾小路や佐倉等の日和見主義の人間である。
当初は平田がどちらに与するかでどうなるか決まる感じになっていたが平田が会話が不成立状態なぐらいに壊れてしまったのでどうしようも無くなった。
ちなみに俺は発言権すらない。これ俺のポイントだよな?やはりクラスカーストって大事なんだろうなぁ……
どれだけ強い「個」でも「集団」には敵わない。同然だが鉄則である。何をするにしても数は力である。それすら粉砕する個の存在はもちろん軽視してはならないがそれでも集団のが強い。
つまり俺はこのクラスで「個」の時点で勝てないという事。やはり別のクラスに行くしかないか。
とは言いつつもアイツのいるAクラスは論外、Bクラスは羊の集まりでCクラスはマフィアの集団、ろくな選択肢はなさそうだ。
ガラガラガラ…また誰か入ってきたらしい。俺は無視して授業の予習をする。どうせ俺には関係ないと、しかしそれは次の言葉でかき消される事になる。
「おはようみんな、最近は色々とごめん、でも僕はもう大丈夫だから心配しないで欲しい。」
聞き覚えのある声、教卓の前には頭を下げるいつも通りの平田がいた。いや、少し違うか……何か違和感を感じる。
他の人達は平田の復帰に大喜びだ。普段は妬み僻みの池山内でさえ嬉しそうにはしゃいでいる。
「みんなありがとう、それで早速なんだけど、今日の放課後に今後のクラスの方針を皆で話し合いたい。用事がある人以外は来てもらうよ。」
やはり何か違和感を感じる、爽やかだった頃の平田とは違う、何かしらが、確実に、しかし暴君だった頃とも、壊れてた頃とも違う。歯に挟まったプリッツのような違和感、トッポかポッキーかもしれないが知らん。じゃがりこでは無い自信だけはある。
「今ここにいないメンバーにも後でまた声をかけるよ、それともう一つ言うと、クラスの指針はその時に話し合うけど僕個人の立場としては天野君のポイントを使うのは反対だ、あれは彼が苦しんだ分の代償であるべきだし、何より彼を苦しめた僕らが使うなんてのは言語道断だと思う。」
まぁその通りだ、でもな平田、俺にとってお前は虐めを見過ごした共犯だからその程度でこのクラスへの恨みを捨てられると思っているならそれこそ言語道断だろう。
「それから今後彼を苦しめたりする発言、勿論虐めも禁止だよ、モラル的にもダメだし、当然ペナルティも受けるし、何より僕からペナルティを用意するからね。」
爽やか平田だと思っていたら最後に暴君の風格が出てきたぞ。クラスメイトもそれを感じ取ったようで怯えている人もいる。
ここで俺はようやく平田の違和感の正体に気づいた。
爽やかな平田であれば他人に物事を強制などしなかった。暴君な平田であれば他人に謝罪などしなかった。壊れた平田なら他人と対話などしなかった。
つまり、今の平田洋介は今まで平田が持っていた3つの型を併せ持ったハイブリットなトリプルフェイスという事だろう。何があったかは知らないが彼は原作以上の強さを経て帰ってきた事だけは間違えない。爽やか平田の協調性を持ち、暴君平田の場や人を強制的に動かす力を持ち、壊れた平田の……壊れた平田の…壊れた平田の何かしら良い要素を持った。そうする事でお互いがお互いの弱点をカバーし合い、平田洋介という人間はさらなる成長を遂げる。
これが劣等生が優等生になるという事なのかもしれない。俺はDクラスに学校が求めているものの一端を見た気がした。恐らくこんな事俺には無理だろう。
俺は後から欠伸を噛み殺しながら教室に入ってきた男、綾小路清隆を見て、再度原作主人公の本気に怯えるのだった。
それにしてもトリプルフェイス平田洋介か……堀北とか櫛田の枠ドンドン無くなってるな…まぁいいけど。
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昼休み…それは憩いの時間、あるものに乗っては授業が終わった事への知らせであり、またあるものにとっては大好きな昼飯の時間や友達と話せる心地よい瞬間である。人によって大なり小なりあるとは思うが昼休みが憩いの時間でない人間はほぼ居ないだろう。
現にクラス中が楽しそうにガヤガヤやってたり和やかなオーラを放っていたりするし、ちなみに俺は今日もぼっちであろう。根拠は毎日ぼっちだからだ。ぼっちに10000ジンバブエドルだ。自分にかけて自分に返ってくるので儲けは0だが。
しかし俺はこの予想を外す事になる。
「隣、いいかな。」
後ろから聞こえる声が自分にかけられたものだと気づくのに20秒ほどかかった。声の主は松下、まさか俺に声をかけるとは。今クラスでは完全に腫れ物な俺、そんな俺に声をかけたことで弁当組の視線が集まる。じーっと見られる訳では無いがチラチラ見られる。試験中じゃないからカンニングで退学させられないのが辛い。
「あ、あぁ…」
あまりにも予想外の動きすぎて口から息みたいな返事が出てしまった。言霊検定3級は落ちただろう。
「ごめんね、驚かせちゃったかな?まずは改めて謝らせて欲しいな、虐めの件と今回の件も含めて。」
謝ってくれるのは嬉しいけどその言い方だと明らか主犯格みたいに言ってるが俺はコイツは傍観者だったことを知っている。
寧ろ積極的にやってた篠原や軽井沢の取り巻きだったのに一切加担しないとかいう凄い奴だ。まぁ俺を助ける方にも加担はしてないが。
というか別に俺こいつには怒ってないんだよな、こいつの周りは怒ってるけど。
「あ、あぁ…」
さっきから俺はあ、あぁ…しか言えてない。人と話さすぎた弊害なのか知らんが可愛い子と喋れないコミュ障と化したようだ。
「その…本当にごめんね…?お詫びと言っちゃなんだけど私に出来ることなら何でもするから。」
これが本場の何でもする(何でもするとは言ってない。)か。やはりレベルが違う。ロシア人とは格が違うね。まぁまさかこの学校にロシア人なんて居ないしやって来ることもないだろうが…そう言えばアルベルトはどこのハーフなのだろうか、予想ではタンザニアだと思うが今度聞いてみたいところだ。
「あ、あぁ…」
少し考え事をしすぎて思わずあ、あぁ…をまた使ってしまった。完全に会話下手なやべぇ奴である。友達ができる数少ないチャンスを不意にしてしまいそうだ。
この世において侮蔑と孤独を感じるあの環境は正しく地獄と言うに相応しかった。友達は是非とも欲しいところなのだが。
「ごめんね……迷惑だったかな?」
そう言いながら上目遣いでこちらを見てくる松下、計算なのが天然なのか、多分計算だろう。
「いや、大丈夫だ。」
それにしても俺の返事は少し素っ気ないかもしれない。
そんな事を考えていると三馬鹿改めて六馬鹿とその管理者がやってきた。原作から三人増えてて悲しい限りである。管理者というのは御門玲於と言う生徒だ。噂によるとイケメンで運動神経も良く、勉強も出来るらしいが、身長が155cmしかなくHENTAIらしい。六馬鹿は須藤、池、山内、阿呆木、外村、本堂だ。
なぜ6バカと呼ばれてて管理者と呼ばれているのかは謎だが何はともあれそういう呼び名なのだ。
「おい、俺らに許して欲しかったら金出せよ。プライベートポイント。出来なきゃクラスに居場所はねぇ。お前のな。」
御門の呼び掛けに応えるかのように後ろから六馬鹿がケラケラと笑う。
「お前ほどクラスで嫌われてる奴もいねぇだろうよ可哀想になぁ…おい、悔しかったらペガサス流星拳でも打ってみろよ、なぁ?」
山内が挑発するが完全なブーメラン発言だ。それにしてもここはいつからCクラスになったんだ。周りを見ると見て見ぬふりをする奴、6バカを応援するやつこそいれど助けてくれる人はいなさそうだ。
「いや山内君のが嫌われてるから。もうこんな事辞めたら?」
いや一人だけいたわ。隣で松下が山内に食ってかかる。気持ちは嬉しいがコイツの立場は大丈夫なのか。
「うるせぇな、お前には関係ないだろ。」
須藤が山内の援護をする、こいつもそーいえば英語の点はギリギリだったな、中間テストで少しは成長したと思っていたが気の所為だったらしい。
「いや須藤、お前4月の始めに借りたポイント返せよ。これ以上滞納するようなら学校に言うぞ。」
「あ?今12ポイントしか持ってねぇよ!!」
ポイントの事を指摘したら逆ギレされた。周りもドン引きな模様だがこいつは気づいてない。
「おいおい荒れてんなぁDクラスは、ここは動物園か?」
更なる挑発の言葉が飛んでくる。一体誰だ?俺も言ってないし六馬鹿でもなさそうなんだが……
見れば龍園だった、後ろにはアルベルトに石崎が着いている、武道派コンビだ。怖い。
「あぁ!?殺すぞてめぇ!」
須藤が逆上する。御門と残りの六馬鹿が須藤を窘める。
「まぁそうおこんなよ。今日は不審者の注意喚起に来たんだ、まぁ詳しくはこれを見ろ。」
そこにあったのはどこからどう見ても俺だった。懸賞金は10万、なかなか破格だ。
「こいつを見たやつは俺んとこに連絡しろ、10万プライベートポイントくれてやる、要件はそれだけだ。じゃあな。」
それだけ言い残し去っていった。それにしても全クラスに配っているなら恐ろしいやつだ。これで俺の動きは確かに制限された。
俺は松下の連絡先を貰いながら、龍園の警戒ランクをあげるのだった。
これから少し更新頻度落ちるかもです。
Dクラスを
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許すな!
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許してあげよう