ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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二巻部分
事件参上


今日は六月の月初め。

 

クラスポイント発表の日であり、おそらく須藤が揉め事を起こすであろう日だ。俺への虐めの事もあり、恐らく今月も須藤の為に払ったポイントが帰ってくることはないだろう。

 

Dクラスは入学してからの1か月間に虐め、授業放棄、須藤のポイント代行、金の無駄遣い等のバカな行動の数々を重ねた結果、クラスポイントは0。しかも虐めも学校バレである為、哀れな奴らと笑ってやりたいが哀れなのは寧ろ俺の方だ。

 

この学校では、月初めにクラスポイント×100のプライベートポイントが、小遣いとして生徒に支給される。

 

当然、5月に俺たちに支給されたポイントは0。その事に阿鼻叫喚するクラス。

 

この学校は優しさという皮肉を抱え、施設内のいたるところに無料のモノを設置している。

 

 学食の山菜定食。

 

 自販機のミネラルウォーター。

 

 コンタクトレンズの空のケース。

 

 食品スーパーの無料コーナー。

 

なんかひとつゴミが混ざってたような気がするが多分気の所為だ。

 

まぁ何が言いたいかと言うと、ポイントが無くても生存のための必要最低限の生活は出来るということだ。まぁそこに自由は無いし幸せも無い、機械みたいな毎日を送ることになる訳なのだが。

 

 当然ながらポイントがない状態では、この学校ご自慢の娯楽施設など利用できるはずがない。寧ろ他のクラスの人達が使っている姿を見て惨めになったり、妬み僻みといった感情を増幅させるだけのものだ。かと言って強奪などしようものなら処罰をくらい、さらにポイントは減らされる。負のスパイラルだろう。

 

 4月にやりたい放題やった結果自分に返ってきた、つまり自業自得とでも言えばいいだろうか。虐められた俺は完全に巻き添えだろうが。まぁ何はともあれ俺たちDクラスの生徒は学校側から「不良品」の烙印を押され、5月の1カ月間、禁欲を極める地獄のような生活を送った。特に池なんかは背後から謎のオーラが出ていた。

 

 しかしDクラスの中でも、長谷部や幸村、三宅、高円寺などをはじめとして、山内を助けるのにポイントを使わなかった一部の生徒は、禁欲などをそこまで強く意識しなくても生活できるようなポイントを残している。

 

しかし櫛田や平田、が極貧生活をしているのはなんと言うか……心がぴょんぴょんするんじゃぁ。

 

 

ちなみに、現在のDクラスで最も多くのポイントを所持している生徒は、恐らく俺だ。

 

 額にして約2億ポイント。その内、今自由に使えるのは5000万だが十分だろう。

 

 単純に計算すれば、この2カ月間でAクラスに支給されたポイントの合計額の総額が800万程度なので、ほぼ間違えなく学年で最も高い数値だ。

 

今日のクラスの雰囲気は、日常とは異なっていた。

 

どこか浮ついている様子のものも少数いたが、大半の生徒のに緊張感があった。俺も朝確認したがポイントは振り込まれていない。恐らくそう言う事なのだろう。

 

今日は六月の月初め。クラスポイント発表の日なのだが、前回のテストからしてポイント0は有り得ないだろう。

 

だが振り込まれていないという事は揉め事があったことを示唆している。

 

 

 

平田を初めとしたクラスの大半と、一之瀬へのBクラスの借金で合計60万ポイントを支出し、山内を退学から救済した。

 

この行動について、俺心の中で愉悦と苛立ちという二つの感情が燻っていた。

 

山内がいずれクラスに必要不可欠な存在になる……ということは考えづらい。クラスの中にも不満を持つものが多いが、それでもプライベートポイントの貯金の提案という案自体は割かしまともなものだった為である。山内のゴミっぷりと差し引いても株は上がっていた。

 

山内株は、四月に比べるいくらかマシになっていた。まぁ微々たる差であろうが。そんな山内より関わる相手のいない俺って…とも思ったが悪いのは俺ではなく虐めてきたヤツらだろう。

 

そして、だ。

 

 プライベートポイントの使用用途がとてつもなく広いことも、その件で明確なものになった。

 

ポイントを支払えば、使い方次第では退学すらも取り消しにできる。

 

これまでは「貯めておいて損はない」だったのが、今は「貯めておけば得する」に考えが変わった。その結果俺の所持金を狙ってくる帝国主義野郎共が増えたのだが。

 

と、そこまで考えたところで、平田と茶柱先生が教室に入ってきた。何か話していたのだろうか、今の平田は最早よく分からん。

 

 

「おはよう。なんだ、今日は空気が違うな。どうした?」

 

茶柱先生が挑発的な笑みを浮かべ挑発的な言い方をする。この人は挑発しかしない。ちなみに髪は長髪だ。クールビューティーである。

 

「なんか寒くね…そろそろ夏だってのに…」

 

 

「佐枝ちゃん先生! 俺らもしかしてまたポイントゼロだったんすか!? 朝見たら振り込まれてなかったんすけど!」

 

 

 

「なるほど、そのせいか」

 

 

 

 池の主張に、茶柱先生が納得したような表情を浮かべる。

山内の寒くね発言はスルーである。アイツはエスパーに目覚めたかもしれない。俺も悪人になって効果をバツグンにしてやりたいものである。

 

ここDクラスは、入学当初とは表向きは本当に見違えるクラスになっていた。

 

 無断欠席、虐めや遅刻はなくなり、授業中の私語もかなり少なくなった。いつだったか堀北が言っていたが、マイナス要素はほとんど削れたはずだ。…表向きはな、裏でも俺のよく分からん隔離生活は続いているし、相変わらずハブられている。何故だか知らんが茶柱は4月までにあったイジメを学校の意思で黙認する事になったらしい。噂によるとどっかの大企業の圧力のせいらしいが余計な事ばかりしてくれる。

 

とはいえ前回の中間テストも、高い水準でクリアした。

 

今月こそはポイントを獲得できる。誰もがそう確信していただろう。にも拘わらず、俺たちの端末にポイントは振り込まれていなかった。皆はその事に激おこプンプン丸らしい。俺は貧乏人煽りがしたくて仕方ないが、頑張ってこらえた。

 

まぁ何はともあれ、茶柱先生が察した通り、教室の雰囲気が変だったのはそのせいだ。

 

 

「そう結論を急ぐな。Dクラスが頑張ったことは、学校側もしっかり把握している」

 

 

 言いながら、持ってきていた巨大な紙を取り出して、黒板に貼り付ける。

 

 

 

「では、今月のクラスポイントを発表する」

 

 

 

 広げられた紙を見る。

 

 これは……

 

 

 

「あまり良くない傾向ね……まさか、もうポイントを増やす方法を見つけ出したのかしら」

 

 

 

 堀北が不安そうに呟いた理由は、Aクラスのクラスポイントだ。その数値は1004と、入学時のポイントをわずかに上回る結果となっている。

 

 Aクラスを本気で目指す堀北や平田にとって、これは由々しき事態だろう。

 

 だが堀北や平田と違って、クラスの大半は他のクラスのポイントのことなど眼中にない。

 

 肝心なのはDクラスのポイント。

 

 そこには……86と表示されていた。

 

 

 

「86……8600ポイントってことか!? よっしゃあ!」

 

 

 

 山内の歓喜の声を皮切りに、クラス中が一瞬沸き立つ。だが悲しいことに山内が言うなと言う目線で大半からは見られ、2秒で空気が冷める。茶柱先生の呆れた目線が一番痛そうである。

 

とはいえその気持ちも分かる。約2ヶ月ぶりのポイントだ。喜ばないわけがない。

 

 しかし、それを茶柱先生は制す。

 

 

「そう単純に喜んでいていいのか? 他のクラスのポイントを見てみろ。お前たちと同等か、それ以上にポイントを増やしているだろう。今月のポイントの増加は、テストを乗り切ったお前たち1年生に対する褒美のようなものだ。一定のポイントを全クラスに支給することになっていたに過ぎない」

 

 

 

 なるほど、だから全クラス綺麗に上昇していたのか。

 

 

 

「あれ、じゃあなんでポイント振り込まれてないんすか?」

 

 

 

 誰かがそう呟く。

 

 そう、問題はそこだ。

 

 前に張り出された紙には、確かにクラスポイント86と書かれている。

 

 しかし俺たちの端末に8600のプライベートポイントは支給されていない。

 

 

 

「何個かトラブルがあってな。ポイントの支給が遅れているだけだ。気にするな」

 

 

「えー、なんすかそれー。学校側の不備なんだから、お詫びでポイント追加とかないんすか?」

 

 

「そんなことを私に言われても困る。ポイント関連の決定権を持っているのは担任ではない。トラブルが解決され次第、問題なくポイントは振り込まれるはずだ。ポイントが残っていれば、の話だが……残っていれば…な。」

 

 

 

 そう言うと、茶柱先生は次の連絡事項の伝達を始めた。

 

 茶柱先生の意味深な一言を理解出来ているものは数人だった。六馬鹿はフルで騒いでいた。それを窘める御門とそれを見て黄色い声援をあげる新・篠原グループを見て、やっぱりこのクラスはDクラス何だなと何度目か分からないため息を着くのだった。

 

最後に、須藤、山内、阿保木の3人が茶柱先生に呼ばれ、放課になった。

 

 

 

「変わってるようで変わってないよな、山内のやつ。退学した方が良かったんじゃないか?」

 

「須藤君も喧嘩っぱやいの変わってないし、怖いし。」

 

「阿保木って誰だよ。」

 

 誰かのそんな言葉が耳に残る。

 

 

 

 さっきの言葉は、また何かやらかしたのか、というニュアンスと、呼び出しを受けた際の先生に対する態度が悪かったこと、この二つが含意されていそうだ。

 

だがバスケに情熱を注ぎ、人生の中心に据えている須藤にとって、それを邪魔されてまで呼び出されるのはよっぽど嫌なことだろうな、とは察する。

 

 もちろん、須藤の態度には問題ありだが。

 

山内はダルそうに向かっていったが赤点を取って本来退学するところの立場だったり、自分の身を弁えない提案なんかで株が落ちているのだろう。

 

 

 

「綾小路君もそう思う? 彼は退学すべきだったと」

 

 

ふと耳を傾けてみると、さっきの声は堀北の耳にも届いていたのか、帰り支度の時間潰しに綾小路に問うた。

 

 

ちなみに俺は勿論ぼっちである。会話する相手などいない。

 

「オレは別に」

 

 

 綾小路はそうさらっと答える。

 

 別に、そうは思わない、なのか。

 

そもそも興味が無いのか、或いはそれ以外か、うまい逃げ方だ。

 

 堀北も中間テストでは須藤たちの勉強を全面的にフォローした身だ。

 

 多少なりとも思うところはあるのだろうか。

 

 

 

「須藤くんがクラスにとってプラスになるのか、それはまだ未知数ね。とは言え山内君は確実にマイナスね。助けるべきではなかったわ。」

 

 

 

 どうやらそんなことはないらしい。

 

 須藤よ、お前の想い人はお前に無関心だぞ。お前の恋が叶う事は一生無いだろうが、というか俺が叶えさせない。

 

 その想い人、堀北は帰り支度を終えて立ち上がり、綾小路も同時に荷物を持って席を立った。

 

 この2人は最近、寮まで一緒に帰ることが日常になっているらしい。勿論聞き耳を立てているのだがストーカーでは無い。

 

 

 

 俺が綾小路について知っていることといえば、頭がいい、喧嘩めっちゃ強い。顔もそこそこ良い。根暗。コミュ症。射撃ができない。事なかれ主義。ホワイトルーム。父親が権力者。感情が無い。最後に勝ってさえいればそれでいい。駒としてしか見てない。常に最適解をだす。etc.....

 

敵対したら死ぬというだろう。綾小路と高円寺、この二人と敵対したらほぼ詰みだ。どうにかしてこの2人をすり抜けてDクラスに復讐したいが……

 

それにしても3つか、須藤の件だけなら佐倉だけで何とか出来たかもしれないが……

 

 

 佐倉の顔面偏差値は相当高い。堀北や櫛田にも引けを取らない美人だ。まぁそりゃあグラドルだから当然だが。

 

 しかし、自撮りが趣味であると言う彼女は、カメラの前以外ではそれを隠している。

 

眼鏡……それも、度の入っていない伊達眼鏡をかけ、地味な雰囲気を意図的に醸し出している。

 

人付き合いは苦手だ。多分コミュ障だろう。誰かと仲良く話している場面を見たことがない。

 

 そんなことを考えながら、綾小路と堀北が教室を出て行くのを見届けて、教室を出る。

 

 

靴箱で外履きに履き替え、外に出る。最近は画鋲も入ってなくて平和だ。

 

季節は梅雨に入り、雨が降る事が増えてくるこの時期の靴はびしょ濡れで靴下の中が濡れてる感覚は最高に不快だ。

 

それにしても靴箱前の玄関に貼られた黒服の不審者の手配書の額は50万ポイントに跳ね上がっていた。こんな金額では最弱の海のイーストブルーですら生活できない雑魚なのだが。

 

俺はその気持ち悪い足で外に向かおうとすると何故だか目の前に綾小路がいた。堀北は帰ったのだろうか、取り敢えず無視して歩く事にする。

 

「龍園の言っていた不審者とやらはお前だよな。天野。」

 

俺は背筋が凍るような思いがする。冷や汗をかいたのを感じた。こいつは何処にもいなかったのに何故わかるのか。

 

「靴だ、服装はいくらでも変えられるが靴はそのままだ。暗闇の中だからバレないと思っていたか、龍園と会うことが予想外だったのか、或いはポイントが無くて変えの靴まで買えないのかは分からないが靴が同じだ。そのモデルの靴はモール内には存在しない。犯人はお前だろう。」

 

エスパーだろうか。それにしても靴とは思い付かなかった。それにしても綾小路は友達だから大丈夫……だよな?不安になってきた?返答をミスったら間違えなく死ぬだろうが、いくら綾小路でも俺を11回も退学にするなんて芸当は出来ないだろうしひとまず綾小路内での俺の警戒度を下げたいが……どうしたものか

 

「何が目的だ?」

 

気付けば言うつもりのない言葉が口を飛び出していた。シラを切り通すつもりだったのだが……俺の口は馬鹿なのか?

 

「認めたか…まぁいい…龍園に言うつもりは無い、俺が協力して欲しいのは一つ、あの後茶柱先生に聞きに行った平田の話では須藤達三人は問題事を起こしている。山内は特別棟の階段の手すりの破壊、須藤は暴力事件、阿保木は万引きらしい。その事件について手伝って欲しい。」

 

龍園に目をつけられる地獄の学園生活よりは俺を虐めた奴らの救済の方がマシ……だろうか…

 

「何をすればいい?」

 

「須藤はCクラスと揉めたらしいがおそらく嵌められたと見ている。まずは須藤の事件の目撃者を探したい。阿保木の万引きは阿保木が万引きしたコンビニの監視カメラの映像を確認したい。山内の手すりの破壊は壊れた手すりから山内の指紋が出ているらしいが、一先ず手すりの破壊された現物を見に行こうと思う。悪いが着いてきてくれ。」

 

「わかった。」

 

俺は肩をすぼめながら綾小路に着いていく、何がこいつのお眼鏡にかなったのか知らないが綾小路と上手いこと組めればあいつらの人生も地獄真っ逆さまだろう。まぁ綾小路はそんなに甘くないが。仕事自体も楽そうだし、俺は大人しく引き受けることにした。

 

しかしこの時の俺は知らなかった。この事件を境に俺の価値観と立場が大きく変わり始めるのを---------------

Dクラスを

  • 許すな!
  • 許してあげよう
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