ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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弱者の拳

次の日、櫛田は何事も無かったかの様に皆に笑顔を振りまいていた。ちなみに俺の所には来ない、当然である。

 

「天野、今日の放課後俺の部屋に来てくれないか?」

 

「うわっ、びっくりした。分かった。」

 

俺は後ろから気配を消した綾小路に話しかけられる。それにしてもこいつ気配本当にねぇな。闇討ちなんか食らった日には終わりだなこりゃ。

 

 

「よう、邪魔するぜ、ここか?犯罪者が三匹も紛れ込んでいる不良品ってのは?」

 

俺たちの会話をかき消すようにクラスに姿を現したのはCクラスの王、龍園翔。その後ろには伊吹、アルベルト、金田と言ったCクラスの幹部みたいなやつらが揃っている。それにしても金田は不細工だな…俺といい勝負だ。

 

「龍園……何の用だ?」

 

みんなを代表するかのごとく平田が声を荒らげる。暴君モードだ。暴君と暴君がかち合ってしまった……なんて事だ。ここが世紀末か?

 

「平田…平田…お前本当に平田なのか?そんな顔もできるとはな…ちょっとは面白そうじゃねぇか。」

 

龍園は煽るだけ煽って面白いものを見たかのように帰っていった。台風見たいなやつだなあいつは……大半のDクラスの生徒は呆気に取られてお口ポカーンとしてた。馬鹿面である。流石はDクラス、対応力も皆無だ。

 

「あらあら、面白い事をしているようですね。」

 

何故かDクラスに現れる坂柳派、坂柳、神室、橋本、鬼頭、あと誰か知らんやつの5人のお出ましだ。てかなんでこいつら来てるんだよ。

 

「あ?なんでお前がここにいるんだ?坂柳」

 

龍園も同じ事を思ったらしい。俺は坂柳と龍園の同盟と言う最悪な状況を予想していたがそんなことも無いらしい。

 

「平田君が覚醒したと聞きましたので様子を見に、それにしてもDクラスも大変ですね…器物破損に暴力、そして万引きとは、ねェ神室さん?」

 

「別に……」

 

坂柳は大変楽しそうに笑っている、それと対照的に神室は苦虫を噛み潰したような顔をしている。てか神室そんな顔できたんだな。初めて見た気がするよ。会ったことないけど。

 

「けっ、食えねぇ女だぜ、まぁいい…面白いもんも見れたし帰るとするか…」

 

それだけ言い残して龍園は去っていった。坂柳も同じように去っていく。教室の主であるDクラスは何が起こったのか分からず揃いも揃って呆然としている。ちなみに俺にも訳が分からん。

 

「それでは1時間目の授業を始める……どうしたんだこの空気は一体…授業大丈夫なのか?」

 

1時間目の授業を始めに来た坂上先生は、呆然とした顔をしているクラスを見て、深くため息をつき、授業をするのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

放課後俺達は綾小路の部屋にいた。寮の部屋は基本白を基調とした色合いで、家具なんかを置かないとかなり白の割合が埋める事になる。綾小路の部屋は真っ白だった。この学校に来てもなおホワイトルームで生活してる可哀想なヤツである。

 

 

綾小路は棚から座布団を五人分用意し、俺らに座るよう声を掛ける。

 

ちなみにメンバーは俺、山内、須藤、櫛田、平田だ。堀北も呼んだらしいのだが来なかったとかなんとか。ちなみに阿保木の件に関しては御門が動いてくれるらしい。つまり残ったメンバーで須藤と山内のメンバーの分割だ。

 

俺は周りを見届けてから座布団の上に腰を下ろすと、非常に居心地悪い空気が蔓延した。

 

 

「麦茶と緑茶とコーヒー、どれがいい?」

 

 

「緑茶で頼む。」「緑茶で」「コーヒーがいいかな!」「コーヒー頼んでもいいかな?」「麦茶ー!」

 

綾小路が5人分の飲み物を運んでくるとまた重苦しい空気が流れた。

 

 そんな中堪えきれなくなったのか、櫛田がやや大袈裟な気味に……。

 

 

「わあっ、えっと、相変わらず綺麗な部屋だねっ」

 

 

 綺麗な部屋に見えるのは、ただ単に物が無いだけだ。

 

 そう指摘したい衝動を、俺はなんとか踏みとどまって呑み込んた。俺に発言権は無いし話したくもない。綾小路もなにか言いたそうな目線だったが。

 

 

「確かに…真っ白だね。」

 

平田も続く。綾小路はまたも何かいいたそうな顔をしている。俺はその顔をするのに疲れた。省エネと言うやつである。

 

「真っ白な部屋だよな本当に」

 

須藤も続く、綾小路は心做しかイラついてるようにも見えるが…

 

「綾小路の部屋クリーニングでもしたのかよ、ホワイトルーム過ぎんだろ、笑っちまうぜ。」

 

おそらく意図していないであろう山内の発言が綾小路の地雷を間違えなく踏んだ。目が完全にキレてる人のそれだ。原作では綾小路はポーカーフェイス得意なはず…なんだけどな?

 

そしてまた空気が重くなる。その原因は何となくわかるが。

 

仕方がない。ここは俺が話を切り出す訳にも行かないし我慢比べだ。てか帰っていいっすか?

 

 

 

「それで、須藤の話は本当なのか?」

 

どうやら俺の懸念は無視して話が進んでいくようだ。

 

 

「須藤…お前短気だよなぁ、てかなんで天野はいるんだ、さっさと帰れよ疫病神が、あれか?プライベートポイントで事件でももみ消せるのか?」

 

何故か原作より頭が良くなった山内が誰もが触れなかった俺の存在に触れる。そう、空気が重くなっている原因はこの俺だ。疫病神というのも間違ってない、だから帰らせてくれ。

 

「悪いが山内は黙っててくれ、平田、どうなんだ。」

 

 

綾小路が黙らせる。山内を睨んでいるような…こいつ死んだな。ホワイトルームとか言っちゃうからだ。それにしてもこいつ原作より頭いいし原作知識持ってるかもしれないし…本当に山内か?

 

 

 口を噤む山内から視線を逸らし、俺達は須藤を見る、彼は顔を俯かせて、視線が交錯しないようにしたが、その場しのぎでしかない。というか山内はなぜこんなに偉そうなんだ。

 

平田が山内、須藤の件に関して話す。

 

 

 その報告を聞き届けた時、俺は龍園の成長を感じた。Cクラス行こうかな…。

 

 どうやら龍園は、本格的にDクラスとの全面戦争を所望しているようだ。上手くやるものだと感心させられる。

 

 

「先週の金曜日に須藤君がCクラスの生徒達、石崎、小宮、近藤君をを思わず殴ってしまったみたいなんだ。僕は嵌められたと思ってる。石崎君はバスケ部じゃなくて地元では有名なワルだったらしいし、須藤君を怪我させるつもりだったけど、須藤君が予想以上に強くて方向を変えたんじゃないかな?」

 

平田は明らかな成長を見せている。確かそこら辺の情報は一之瀬達Bクラスの力を借りて何とかしたはずなんだが…平田は恐ろしい速度で情報収集を始めていた。これがトリプルフェイスの力なのか。こいつは将来黒の組織に入れそうだな。

 

「下手したら停学処分になるかもしれないって、茶柱先生に言われたみたいなの」

 

分かりきった話だが櫛田が口を開く。学校側からしたらそれは当たり前か。

 

 茶柱先生の呆れ顔が脳裏に浮かび上がるが、今はそんなことはどうでも良い。

 

 

 

「須藤がCクラスの生徒と暴力事件を起こしたのは分かった。けどそれだけだと状況が摑めないから、順序よく事実だけを詳しく話して貰えるか?」

 

 

 

「……俺も悪いのは分かってるつもりだ。殴ったのは俺だからな。けどよ、先に喧嘩を売ってきたのはCクラスの方だ。俺は連中を返り討ちにするために……!」

 

 

 

「須藤くん、落ち着いてね。ね?」

 

 

 

 両肩を震わせる須藤の手に、優しく自分の手を添える櫛田。というかなぜ須藤が答えた。

 

 

 櫛田の労力は無事に報われ、須藤の呼吸を落ち着かせることに成功した。

 

 

 

「綾小路にはこれまで何度か言ってきたから覚えてくれてると思うが、顧問の先生からこの前、夏の大会にレギュラーとして迎え入れられるって話をされたんだがよ」

 

だから何故お前が喋る。綾小路は突っ込まねぇのか……

 

まぁ須藤のバスケットボールの才能が日を跨またぐごとに開花しているだろうことは想像に難くない。特に中間テストが終わってから、彼はより一層努力してきた。

 

一年生がこの時期、大会に出場する。

 

これは、部活に所属していない生徒でも分かる程の偉業だ。現に今、櫛田が目を見開いている。結果次第ではプライベートポイント、クラスポイントも増えるだろう。そしたら今度こそ須藤金返してくんねぇかな。

 

 

「レギュラーって凄いじゃない須藤くん! おめでとう! 今度皆でお祝いするね!」

 

 

「サンキューな。けど別に、まだ可能性の話だ。まあ……一年の中じゃ俺だけだけどな」

 

 

「快挙だよ、快挙!」

 

 

 

 何度も手を叩き、尊敬の眼差しを櫛田は須藤に送る。可愛い女の子から送られる賛辞に、彼は照れ臭そうに鼻を掻いた。

 

 

「でも、暴力事件のせいで白紙に戻りそうだよな。それだけならまだいいけどバスケ部永久追放とかも有り得るんじゃね?何してるんだよ。」

 

 

山内がヘラヘラ笑いながら須藤の肩を叩く。こいつ他クラスの回し者なんじゃねぇか?

 

幸いにも誰も触れず、須藤がまた表情を戻し話を続ける。てかなんで山内は呼んだんだよ。

 

「レギュラー候補だけじゃねえ、絶対レギュラーにのし上がってみせると俺は奮起した。ここ最近は部活終了後、先輩と自主練をやっていてよ。その準備をしてた…そんな時だった」

 

 

 

「Cクラスの人たちが須藤くんに絡み出したみたいなの。あれっ? でもそれだと、その人たちは同じバスケ部員ってことになるよね?」

 

櫛田はいつの間にか発言権を獲得したらしい。俺はここから逃げる権利が欲しい。

 

「櫛田の言う通りだ。部員の小宮と近藤に特別棟に呼び出したんだ。話があるとかなんとか言ってよ。さっきも言ったけど、先輩との自主練があったし無視をしても良かった。けど連中とは度々言い合いをしていたから、これを契機に腹を割って話をしようと思って、先輩に謝ってから特別棟に行ったんだ」

 

 

平田は要約力もあるな……。

 

とはいえここまで聞けば、何故喧嘩が起こったのか、その理由がある程度の察しは付く。だいたい原作通りだなこっちは。

 

 

「もしかして小宮くんと近藤くんは、須藤くんがレギュラー候補に選ばれたのが気に食わなかったの? それって完全に嫉妬じゃない?」

 

 

「それならまだ話は簡単だったんだけどな……。特別棟には小宮と近藤と……石崎って奴が居たんだ」

 

 

 

「え? 石崎くんって同じCクラスの? けど話に関係ない部外者じゃ……」

 

 

「なんでも石崎は小宮たちのダチらしくてよ。自分のダチを差し置いて、Dクラスの『不良品』の俺がレギュラー候補に選ばれたのに納得いかなかったんだと。最初は自分からレギュラー候補入りを辞退するよう俺に説得してきたんだけどな、そんな要求呑むわけがねえ。断ったらとうとう、部活を辞めろと言ってきてな。それも断ったら殴り掛かってきたから、やられる前にやったんだ。」

 

 

 

「何だかそれ……幼稚にも程がない?」

 

 

 

 あまりの馬鹿馬鹿しさに、怒りを通り越して呆れてしまう櫛田。まぁこいつらは気づいてないだろうが龍園の指示だろう。まぁ櫛田に限って言えば須藤も対象に含めてそうだが。

 

 

まずだが、最初に仕掛けてきたのはCクラス側。主犯は石崎と視て問題ないだろう。共犯が小宮に近藤。原作もそんなんだった気がする。

 

 彼らは須藤の短絡的な思考を利用して、先週の金曜日の放課後に須藤を特別棟に呼び出した。彼らの狙いは須藤健がバスケ部を辞めること。並びにクラスポイントとプライベートポイントを削ること。あと退学した時のペナルティ確認だったはずだ。

 

 しかし須藤は彼らの要求を真っ向から拒否し、実力行使……つまり暴力行為に手を掛けた。だが彼らにとって誤算だったのは、須藤健の身体能力の高さを見誤っていたこと。まぁ計算通りなのかもしれないが。

 

とはいえ三対一なら勝てると思い込んでいたが、為す術もなく敗北。連中からしたら屈辱的で、自尊心が大きく削られただろう。

 

 やられっぱなしでいられるわけもなく、須藤と別れた後すぐに学校に報告した。

 

 

 それらを考慮するに、今回の騒動はやはり、龍園翔が裏で手引きして、配下の石崎たちに引き起こさせたものだろう。

 

 

「つまり、仕掛けてきたのは石崎くんたちってことだよね? じゃあ須藤くん、悪くないじゃん。先生には言わなかったの?」

 

 

「もちろん言ったぜ。あっちから脅迫紛いのことをしてきたことをよ。けどよ、俺、これまでがこれまでだったろ? だから信じて貰えなくて……」

 

 

「それは、そうだね……」

 

 

 須藤がこれまで起こしてきた騒動が、全て裏目に出てしまっている。

 

 例えばこれで須藤ではなく櫛田だったら。茶柱先生や他の教師も聞く耳を持ったはずだ。

 

 日頃から悪行をしている人間と、日頃から善行をしている人間。

 

 どちらを信じるのかと問われたら、後者の人間を信じるだろう。

 

 だがそれは、何も無い状況ならの話だ。

 

 

「このままじゃクラスポイントもプライベートポイントも減って須藤は停学とかだろ?バカだよなぁお前。」

 

山内はなんも分かってないし黙った方がいい。ゴキブリ以下だなこいつは。まぁ皆無視してるが。

 

とはいえそこら辺が妥当な処罰か。

 

もし来週の火曜日までに須藤の無実を証明出来なければ、Dクラスが受ける傷は浅くない。深くあってくれむしろ。

 

 

 

「そんなのおかしいよ! ……確かに須藤くんが殴っちゃったのは悪いけど、それでも、今までの『過去』があるから、そんな理由で判断するなんて……! 須藤くん、ここ最近は授業も真面目に受けていたし、バスケの練習だってより精を出していたのに…」

 

 

 

「だからこそ、なんだろうな。」

 

 

 

「綾小路くん、それってどういう……?」

 

 

 

「須藤健が変わろうとしていることはDクラスの生徒はよく知っている。櫛田の言う通り、オレだって頑張っていると思う。それは成果として出ている、だけど今回の『喧嘩』が勃発した。期待していた状態で、結果的には裏切られた形になったんだ。そうなったら、櫛田だったら思う?」

 

 

「……ガッカリするよね……」

 

 

 それに話は、どっちが良いか悪いかの簡単なものじゃないだろう。

 

 須藤が石崎たちを殴ったとはいえ、一対三の状況を作ったCクラスにも過失はある。

 

 だから須藤だけじゃなく彼らにも何らかの処罰が下されるはずだ。

 

 それが意味することはたった一つ。

 

 

「罰の大きさは兎も角として、『喧嘩』に関わっている人間全員が停学だろうな」

 

 

「……!」

 

 

「で、でも! 正当防衛が当てはまるんじゃ。」

 

「過剰防衛だろ?バカだな健は。」

 

何故か過剰防衛という言葉を知っている山内の一言で、櫛田の主張を否定された。というか山内も成長してないか?性格は相変わらずクソだが。

 

 正当防衛とは、急に乱暴を受けたときなどの不正な侵害に対し、自分や他人を守るため、やむを得ず相手に害を加える行為のこと。過剰防衛というのがそれが過剰な害の与え方だと判断されたということだ。

 

 

 

「須藤の話を聞く限り、石崎たちはあくまでも『言葉』で脅迫してきただけだ。ガチムチのスーツ姿の黒人に銃で心臓を打たれたり、抱きしめられながら斬魄刀で刺されたり、爆裂魔法を当てられたわけじゃないんだろ?」

 

綾小路が須藤を一瞥して確認をとる。というかそんな単語どこから得たんだ。こいつ1ヶ月でこっちに染まりすぎだろ。

というか最初のはCクラスならありそうで怖い。

 

 

「ああ……後半はちょっと意味がわかんなかったがそうだな。」

 

 

「片方だけの要求を一方的に聞くわけにもいかないから、約一週間の期間が設けられたんだと思う」

 

 

 そして期日までに第三者が納得いく証拠が提示出来なければ、今ある証拠──『怪我』で判断するしかない。

 

その主旨を綾小路が告げると、櫛田は沈痛な面持ちで言葉を漏らした。まぁ演技だろうが。

 

 

「だから須藤くんの方に重い罰が与えるってこと?」

 

 

 

「先に訴えた方の強みだな。被害者がCクラスなんだから仕方ないだろうな。」

 

 

 

「どうすれば良いんだよ……。だって、だってこんなのあんまりだろ! 俺も悪いのは認める。謝罪だってする。けどだからといってこんなのって……! それに俺だけの問題じゃねえ、クラスにも迷惑を掛けちまう!」

 

「ほんとな、お前最低だな、健。友達として恥ずかしいぜ。」

 

 顔を両手で抱え赤面する須藤に山内が彼の背中に手を添えた。何度も軽く叩き、ヘラヘラ笑っている。こいつは救いようが無いな。須藤の成長振りを見てると余計悲しくなってくる。成長の仕方を山内だけ間違えてないか?

 

 

 

「綾小路くん、何か手はないかな?」

 

櫛田が山内は無視して聞く。一瞬山内に般若みたいな目線を向けたような…気のせいか?

 

「……言葉で説明しても意味が無いなら、他の手段をとるしかない。例えば…目撃者の有無

 

 

とはいえまあ、そんな都合が良い展開があったら苦労はしない。

 

 事件現場は特別棟。放課後の時間に好き好んで訪れる訪問者などそうそう居るはずがないだろう……。しかも監視カメラもないしな。

 

 

それにもし仮に、目撃者が居たとしよう。一部始終を見ていたのなら願ったり叶ったりだが……最悪の場合、さらに窮地に陥ることも覚悟しなければならない。

 

 例えばその目撃者が…仮称として黒幕Xとする…須藤がCクラスの生徒を殴り飛ばした直後から見ていたら、こちら側にとっては最悪の判断材料として学校側に提示されるだろう。

 

 それにもしXがD及びCクラスの生徒の場合。前者だったら証拠能力が大きく削がれるし、逆に後者の場合、自分のクラスメイトが不利になるような発言はしないはずだ。しかもAクラスの坂柳派はおそらくCクラスの味方をするだろう。」

 

綾小路の言う通りだが黒幕Xはお前なんだよな。心の中で突っ込みを入れておく。

 

「今取れる解決方法は、主に二つ。一つ目はCクラス側が自分の非を認めること。それが一番だよね」

 

 

「櫛田には悪いと思うけどよ……それは無理だぜ。バカな俺でも分かる。あいつらはそんなタマじゃねぇし、自分から訴えたのに取り下げるなんて……まして、自分の非を認めるなんて天地がひっくり返っても起きねぇよ。」

 

「それがわかってるならなんで殴ったんだよ。」

 

山内のブーメラン発言は皆無視して話し合いを続ける。

 

「うん、私もそれは須藤くんの話を聞いて分かったつもり。二つあるって言ったけど、実質は一つだけ。つまり…こいつ、目撃者を捜すこと」

 

 

結局、それが無難なところか。

 

黒幕Xを捜すことに異論は無い。今回ばかりは櫛田の主張が正しいとも思う。

 

 だがここで、さらなる問題が浮上する。

 

 

「目撃者を捜す。口で言うのは簡単だけど、どうやって捜すんだ? 一年生だけでも百六十人。二、三年生を頭数に入れたら合計、四百八十人だぞ。しかも綾小路の話を聞いてたらわかるが1年の九十五人ぐらいは役に立ちそうもねぇ。」

 

 

「一年生は一人一人地道に行くとして……上級生の場合はクラス単位で聞くしかないよね」

 

 

 さらりと凄いことを言ってのけるな。

 

 櫛田はクラスメイトとして……いや、須藤の友達として、全面的に協力するようだ。

 

 気合を入れるためか、可愛らしく両拳を握る彼女を見て、須藤も元気が出たようだった。

 

 

 

「……本当に悪いな。何度も何度も迷惑を掛けてよ。けど頼む…助けてくれ」

 

 

 

「もちろんだよ、須藤くん! ね、みんな?」

 

 

 

「……オレで出来ることならな」

 

「任せてよ。ちなみにDクラスに目撃者は募って見たけどいなかったね…。」

 

平田の行動力は恐ろしい成長を遂げているような気がするが。

 

「お前本当に反省してんのか?」

 

山内、お前もう黙ってろよ。

 

幸いにも俺が何かを言う前に、山内の発言をかき消して綾小路が須藤に頭を上げるように言った。

 

 

「取り敢えず須藤、お前は何もするな。当事者が動くと面倒になるからな」

 

 

「…………分かった。綾小路には借りを作ってばかりだな。お前が困っていたら絶対力になるから、その時は頼ってくれ。もちろん、他の奴らもだぜ。それじゃあな!」

 

それだけ言い残して須藤は去っていく。平田、櫛田、山内も去っていき俺だけが残された。俺を残すな俺を…。

 

「櫛田が山内の方を、平田が須藤の方をやってくれるらしい。お前も手伝え。」

 

お断りしますって言いたいが言えないのが悲しい所だ。龍園に自首したらポイント貰えねぇかな。

 

「わかった。須藤の方をやろう。」

 

俺は原作知識のある方に逃げる事にした。というか今の山内を助けたくない。

 

「わかった。じゃあ俺は山内の方をやる。阿保木の件だが御門が自信ありげにしてたしまぁなんとかなる筈だ。それじゃあ頼んだぞ。」

 

なんとかなるなよ。そう思いながら俺は頷く。

 

俺のやる事は3つ。1つ目は取り敢えず頼まれたのは目撃者探しだけだとニュアンスを受け取って目撃者探し『だけ』する事。2つ目はできるだけ須藤に『不利な証拠や状況』を集めていく事。そして3つ目は、『冬休みまでに』山内春樹を退学にさせる事。

 

4月に虐めが始まった。心は凍り付いていた。

5月に虐めが終わった。腫れ物扱いされ、俺は心が凍り付いたままだった。

そして6月…俺は、Dクラスを崩壊させる。この腐ったクラスに、裁きの鉄槌を、弱者の拳をくらわせるために

Dクラスを

  • 許すな!
  • 許してあげよう
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