ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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期末試験 後編

「それで何があったんだ?」

 

昼休み、食堂に呼び出された俺は松下に聞く。ちなみにいつもの通り視線を集める.......事はなかった。何故かと言うと.......

 

「あ?見てんじゃねぇよ?」

 

そう、龍園と一緒にいるからである。こちらにチラチラ視線を送ってくる奴らはいた。まぁクラス移動も含めて目立ちまくってるから仕方ないのだが、そいつらを龍園が睨みを効かせて追い払っているという訳だ。別に優しさとかではなく龍園も単純に聞きたかったらしい。ちなみに同じ理由で坂柳と葛城もいる。

 

取り敢えず全員飯を持って所定の席に合流する事にした。ちなみに松下の分はいつの間にか俺の奢りになっていた。ちゃっかりしてるなこいつ.......そう思いながら松下の方を見るとウィンクされた。あざとい。

 

「3色チーズ牛丼特盛温玉付きで。」「私は豚トロ丼お願いします!!」

 

俺の声に被せるように松下が言う。こいつ奢らせる気満々じゃねぇか図々しい。

 

「あ、会計は別でお願いします。」

 

俺はタカり魔を無視してさっさと席に着くとこにした。その方がいい。

 

「え.......嘘だよね.......嘘だよね?」

 

大して松下だが顔が真っ青だ。ポイントはなさそうだな。

 

「自分の飯ぐらい自分で払ってくれよ。」

 

そもそもDクラスに奢ってやるつもりは本来無い。松下はDクラスに2人しかいない友達だから一緒に飯を食うがそもそもDクラスと飯など食いたくない。

 

「何でもするから.......お願いします払ってください。」

 

なんかだんだん重症になっていく松下が俺の腕に抱きついてくる。こいつ意外とデカいぞ.......何がとは言わないが。

 

「女の子泣かせてる。」

「今なんでもするって.......」

「あいつ最低だな。」

 

周りからヒソヒソと言われる。こいつこれが狙いか.......。

 

「会計一緒でお願いします.......」

 

俺は諦めて松下分も払う。初めから払うつもりでしたともええ。友達ですもんね、ええ。

 

松下の方を見ると舌を出してウィンクしてきた。恐ろしいやつだ。

 

俺達は両手にそれぞれの丼を持ちながら所定の席に向かう。

 

既に席には坂柳と龍園に葛城、そして何故か幸村がいた。なんでいるんだこいつ。

 

「聞き分けのない人ですね.......貴方程度の方ならAクラスにいくらでもいます。引き抜く価値はありませんね。」

 

「同感だな。お前を引き抜くぐらいなら一之瀬や神崎を引き抜く。Dクラスにしても平田や櫛田、御門、性格面を考慮しなければ高円寺もいる。お前を引き抜くメリットが思いつかないな。」

 

「ちなみにCクラスもお断りだぜ?天野に俺が怒られちまう。まぁそもそもイジメをしてたにしろ黙認してたにしろお前はそこまでのクズって事だがな。」

 

三者三様に断られる幸村、どうせクラス移籍しようとしたのだろう。それも他クラスのポイントで。

 

「クソ、何が足りないんだ!!」

 

幸村は悔しそうに叫ぶ。注目浴びるから黙ってくんねぇかな。顔見るだけでも不快だし。

 

「学力以外全部ですかね.......」

 

坂柳がトドメの一言を放った。俺からも助言をしてあげる事にしようか。

 

「どうしてもAクラスに上がりたいなら3年間高円寺のお世話でもしたらいいんじゃね?」

 

これは割と事実だ。高円寺がその気になれば幸村と合わせて2人分Aクラスとか普通に余裕だろ。

 

「まぁ何はともあれだ、この場にいるんじゃねぇよ邪魔だ。」

 

龍園の一言で幸村は何処かへ去っていった。

 

「あいつは馬鹿だな。まぁそれはいい。それじゃあ話を聞かせてもらおうか。」

 

龍園の一言で松下が口を開き始めた。ちなみに龍園はラーメン、坂柳はなんかよくわからん優雅そうな定食。葛城がトンカツ定食だ。

 

「わかった。」

 

そして松下はDクラスに起きた惨劇を話し始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

7月1日 やはりというかなんというかプライベートポイントは振り込まれなかった。何回か授業放棄、学校裁判にかけられるような不祥事の数々、無理もない。一部のバカを除き大半の人間はそう思っていた。そう、一部のバカを除いて。

 

「ふざけんなよ!!プライベートポイントが振り込まれてねぇじゃねぇか!!クソが!!」

 

一部のバカ筆頭、山内春樹はプライベートポイントが振り込まれていないことに激怒していた。クラス中が目を合わせず、見ない事を徹底している。

 

そんな彼に着いた渾名はサイコパス疫病神、妥当だった。

 

「それでは今日のSLTを行う。」

 

扉を開けて茶柱先生が入ってくる。茶柱先生も入学当初に比べて少し窶れている。それはDクラスの面々も同じだ。大体は山内のせいになっているが、他のDクラスの面々も大半は悪い。

 

「まずはクラスポイントからだ。こちらの紙に書いてある結果となる。」

 

分かりきっていたが今日私たちにポイントは振り込まれておらず、問題行動のせいか、クラスポイントが0になったからなのかという問題だけだ。そして張り紙を見て大半の生徒がクラスポイントが0になった事を察する。仕方ないだろう。この一ヶ月の行いはお世辞にも良くなかった、が、退学が決まった山内だけは違った。

 

 

「俺!退学になる必要ないじゃねぇか!今すぐにでも取り消せよ!!」

 

山内の怒りは或る意味正しい。彼は完全な無駄死になのだから。まぁ足切りという意味では仕方ないのだが。

 

「残念ながらそれは出来ない、お前は退学だ。」

 

ふざけんな!と言わんばかりの顔で山内が茶柱先生を睨む。

 

「貴方みたいなクズが退学してくれて私達もせいせいしているの、さっさと着席して頂戴。」

 

堀北が余計な事を言う。どうして火に油を注ぐのだろうか、勉強や運動が出来ても地の頭は悪いのだろうか。

 

「は?そもそもお前のせいで退学になったんだぞ!俺は!」

 

山内の怒りは本当に山内なのか疑うレベルで真っ当な怒りで山内なのか疑うレベルの正論を振りかざす。山内なのか疑うレベルだ。

 

「見苦しいねぇ.......山内ボーイ、もう教室には来ない方がいいんじゃないかなぁ?」

 

さらに高円寺が煽り出す。こいつらがDクラスの理由が何となく分かってきた。

 

「山内、失せろよ。」

 

さらに御門が追い打ちをかける。山内がボコボコに言われて皆内心喜んでいるだろうがそれはそれ、これはこれ、早く終わって欲しいと思っていただろう。

 

「そんな.......山内君が可哀想だよ!!酷いよ堀北さん!!」

 

そんな中櫛田が山内を庇うかのような姿勢で堀北を注意する。堀北は気分を害されたようでしかめっ面になっていた。

 

「貴方.......馬鹿なの?こんな猿退学した方が身のために決まっているでしょう?前々から思っていたのだけれど貴方致命的に頭が悪いわね。」

 

堀北の容赦ない八つ当たりが櫛田と山内を襲う。堀北が苛立っている原因はどうせAクラスに上がれる望みがどんどん無くなっているからだろう。

 

「猿、猿だと??ふざけんじゃねぇ!!」

 

山内が再度キレる。煽り耐性が0なのだろうかこいつは。

 

クラスメイトの大半は呆れ顔だ。茶柱先生はもはや止める気力すら無さそうだ。

 

「はぁ、話すだけ時間の無駄ね。IQが30以上離れていると話が通じないもの。茶柱先生、続けてください。」

 

最後まで煽る事を忘れない堀北の発言に、頭に青筋を立てながらも山内が座る。

 

「あ、あぁ.......すまない。それで天野がDクラスからCクラスに移動した。理由は.......言わなくてもわかるな?」

 

茶柱先生は当たり前のように言う。天野君は優秀だった。冤罪のせいで大半のDクラスのバカたちは虐めてたから分からないだろうが、彼がクラスを指揮すればAクラスもそれこそ夢ではなかっただろう。それにしてもCクラスだとは思わなかった。てっきりBクラスに行くものだと思っていた。

 

そして私は完全に置いてかれてしまった。時すでに遅し、4月のうちから周りの目を無視してでも仲良くするべきだったと私は心の中で後悔する。まだチャンスが無い訳では無い。天野君に頑張って取り入れればCクラスに入れてもらえる可能性はまだ十分にあるはずだ。

 

他に可能性がありそうなのは高円寺君ぐらいだが、彼の事は考えるだけ無駄だろう。

 

この事も大半の生徒は納得していた。一部のバカを除いては。

 

「はぁ、卑怯だろそんなの!!」

 

声を荒らげたのは池。山内程じゃないにしてもこいつも株は低かった。学力も身体能力も低く、虐めの中心の一人でもあった。仕方ないだろう。

 

「卑怯などではない。さて、次にテストの結果だが.......」

 

そう言いながら茶柱は1度山内を見る。山内は白目を剥いていた。訳が分からない。

 

「山内は平均点並びに赤点ボーダーとしてカウントしないものとする。」

 

瞬間、山内の機嫌が少しだけ良くなった。ほんの少し、焼け石に水程度だが。

 

「まぁ喜べ、大半の生徒は頑張った。とはいえ放課後のSHRでは手続きが間に合わないからなあ」

 

 

 

訪れる沈黙。しかし中間の時とは違い、茶柱先生の顔は絶望に満ちていた。

 

 

その一方手続き、という言葉に敏感に反応する一部の生徒。

 

言わずもがな、赤点候補組。

 

 

 

池や須藤は神頼みなのかまたもや手を合わせ、堀北は不安そうに身動ぎし、そして一番の退学候補である阿呆木は…真っ青を通り越して真っ白な顔に焦点の合わない何かに怯えた目で茶柱先生を見る。まるで中間テストの山内のように。

 

  

阿呆木はテストが終わってからずっとあんな調子だ。話によるとテストの時に体調を崩したらしい。

 

 

Dクラス担任の茶柱先生は大きな白い紙を五枚、ホワイトボードに張り出した。

 

 

 

 

 生徒の名前と点数の一覧が載せられた大きな白い紙がホワイトボードに貼られ、赤点候補組は凝視する。

 

 

 

 

「正直なところ、私は憔悴している。国語、数学、並びに社会では一位が八十五点で4人しか居ない。。平均点も小テストの時から大幅に減少している。」

 

 

 

 

 

 

英、国、数、理、社。それぞれの教科の一人一人の点数が表示されている。

 

 

 

 

各教科、一番上には85点の文字がずらりと並ぶ。その光景に、生徒たちは落胆の声をあげる。

 

 

 

 

しかし生徒らにとって最も重要なのは自分が退学しないかどうかついてだけだった。生徒の中には退学など絶対しないと思っているものもいるだろうが、阿呆木は祈るような目でホワイトボードに貼られた紙を見る。

 

 

 

 

 

 池が盛大な音を立てて席から立ち上がり、必死な表情で彼女に問い詰める。

 

 

 

 

「先生、そんなことより赤点者は!? 赤点者は居るんですか!?」

 

 

池の焦った声が響く。自分の為か、須藤のためか、或いは阿呆木の為か、興味本位か、だが恐らく全ての生徒が気にしているであろう事。

 

 

「まぁ落ち着け池、少なくともお前は退学じゃない。」

 

 

含みのある言い方で返事をする茶柱先生。お前「は」という事は他の誰かは退学ということだ。

 

 

 

 

「皆テストご苦労だった。お前らが健闘したことは純粋に賞賛に値する。ただし……」

 

 

 

 

言うなり茶柱赤ペンを取り出し、数学の成績が書かれた枠の中にある阿呆木の名前の上に線を引いた。

 

 

 

 

「阿呆木…お前は退学だ。」

 

 

 

 

 

茶柱の無慈悲な言葉が教室に響く。瞬間、さっきまでより一層思い空気が流れた。しかしそれはたった一人の愚か者に掻き消される。

 

「退学!!ざまぁみやがれ!!!俺なんか!!平均点以上なのにお前は退学だってよ阿呆木!!俺はお前とは違う、退学なんてしないし不良品じゃないんだ!!」

 

山内が虚ろな目で笑い出す。不気味な人形のようでキモかった。

 

 

「お前の努力は認めるが退学は取り消せないぞ山内.......」

 

悲痛そうな声で茶柱先生が告げる。

 

「は?なんでだよ…おかしいだろ!俺が退学?な訳ないだろ!」

 

 

 

山内は真っ青な顔から一転、怒りを露わにし真っ赤になる。

 

 

 

  

 

「事実だ、とはいえ阿呆木、お前は赤点を取った。今日で退学だ」

 

 

 

そんな中、山内と阿呆木は現実を認識出来ずにいた。

 

 

 

 

「何でだよ!俺は天才だぞ!何でも出来る!俺を退学にするなんてばかけてる!だいたいあんな、あんな、ふざけた、ふざけた試験だぞ!!俺が!!あんなふざけた試験で退学?ありえない!!」

 

 

 

 

「お前があの試験をどう受け取ろうとお前の勝手だが退学は取り消せない。」

 

 

茶柱先生の処刑通知を山内は受け入れない。受け入れられない。

 

 

 

 

「俺は悪くねぇ、俺は悪くねぇんだ!さっさと退学を取り消せ!納得いかねぇぞこんなん!」

 

 

三度、山内は激高する。一歩間違えたら恫喝と取られても仕方ないレベル。クラス中は中間テストの時は同情の目線とドン引きの視線に包まれていたが、今や慣れたのか目を合わせない事を意識しているようだな。高円寺だけは優雅に髪のセットをしているが、大半は山内の方に視線を向けないようにしている。

 

 

 

 

「お前が納得しようがしまいが退学は決定した。阿呆木は放課後、退学届を提出してもらうことになるが、その際には保護者も同伴する必要があるから、私から連絡しておく」

 

 

 

 

淡々と阿呆木に報告する茶柱の言葉が、事実として教室内に浸透していく。こんな時にも常に担任は冷静である。まぁ茶柱先生の顔は完全に憔悴し切っているが。

 

 

 

「せ、先生、待ってください。本当に阿呆木くんは退学なんですか?救済措置はないんでしょうか?」

 

櫛田が聞き返す。中間の時の平田と全く同じ言葉を言っているのは偶然なのか。

 

「中間テストの時はまだ足りない点が数点だったが.......阿呆木を救えるだけのプライベートポイントは恐らくお前たちでは足りないだろう。そしてBクラスや他のクラスも恐らく貸してくれないだろう。」

 

茶柱先生の言う通りだろう。

 

「へっ、ざまぁねぇな阿呆木!!」

 

山内が茫然自失として何も喋れなくなっている阿呆木を煽るが、彼の退学は変わらない。

 

「君も退学決定だろぅ?黙っておきたまえ。」

 

高円寺は容赦なく追撃を入れてきた。

 

「ふざけんな!!」

 

山内は椅子を持ち上げ高円寺に振りあげようとする、が、高円寺により椅子は破壊される。否。椅子を持った山内の左手が破壊される。

 

「ぐわァァァァァァ!!!」

 

山内は声にならない悲鳴をあげてその場で倒れる。

 

「くだらないねぇ.......アディオスだ諸君!」

 

そう言いながら高円寺は何処かへ去っていった。

 

「待て、高円寺、高円寺!!」

 

茶柱先生は高円寺を追いかけた。こっちをなんとかして欲しい。

 

「力の差も分からないなんて愚かね。」

 

堀北が煽る。クラスの雰囲気は完全に地獄と化していた。

 

「黙れ!!女のくせに!!」

 

山内は今や流行らないであろう男尊女卑の考え方を持ち出しそして.......堀北にビンタした。

 

 

そして堀北の頬が赤く腫れる。

 

「山内!暴力は制裁だよ!席に着け、堀北も煽りすぎるな!これ以上煽るようなら制裁を加えさせてもらうよ?」

 

暴君なのか爽やかなのかもはやよく分からない平田の静止で2人は心を落ち着けようとする、が、2人とも逆方向に教室を出ていってしまう。

 

平田と櫛田はそれぞれ別れて追いかけていく。そして平田を沢山の女子が、櫛田を沢山の男児が追いかけて言ってしまい、教室は数人の生徒だけが残っていた。

 

「授業を始めます.......休みが多いですね.......」

 

彼らは坂上先生の授業についに戻ってくる事は無かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「って感じかなぁ?」

 

松下が酷く疲れた顔で言う。その様子を見て葛城、坂柳、龍園も酷く同情した顔になる。山内はクズだな。

 

「それは.......大変だったな。」

 

3人を代表して葛城が労いの言葉をかける。

 

その後俺達は微妙な空気になりながらもなんとか昼飯を完食し終え、教室に戻る事にした。

「そう言えば龍園、2つほど話しとこうか。」

 

俺はそう言えば言い忘れていた事をついでに龍園に行っておく。

 

「ん?どうした?」と、龍園は相槌を打つ。

 

「一つ目、Dクラスにいる綾小路清隆ってやつが実力を隠してるだけでむちゃくちゃ強い、今のDクラスすら建て直せるかもしれないレベルで。」

 

それを言った瞬間、龍園の顔色が変わる。

 

「マジか.......少し調べておく。」

 

「それでもう一つ。坂柳理事長に渡した書面で裏技として自分達から言えばケヤキモールとかでバイトできるようにしといたからCクラスの部下たちを働かせて金稼いだらどう?」

 

これはこれも前々から思っていた。バイト、出来ても良くね?

 

「なるほどわかった。やっておこう。」

 

龍園の快い返事を聞いた俺たちが、Dクラス付近を通ったであろう坂上先生の叫び声を聞くまでにそう時間はかからなかった。

 

一番の被害者なのかもしれない。

Dクラスを

  • 許すな!
  • 許してあげよう
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