「一年Aクラス坂柳、葛城、綿白神、Bクラス一之瀬、神崎、木山、Cクラス龍園、椎名、山田、Dクラス高円寺、平田、須藤、櫛田により、山内の捕獲が確認された。以上で試験を終了とする。」
俺達の包囲網から2日後、ついに山内逮捕の報告が知れ渡った。この2日間は大変だった。いつの間にか体を鍛え、頭を鍛えていた山内によって全4クラスから27名もの負傷者が出た。そのうち19人は女子なのだがまぁ仕方のない事だろう。あいつがサイコパスすぎた、それだけだ。証言では女子を殴る事に快感を覚えていたり、エアガンを飛ばしてきたりしたらしい。「世の中クソだな!!!」とか言いながら逃げ回ったり、虚無に満ちた目をしていたりしたらしい。完全に足立透じゃねぇか!
「なお、山内春樹の引き渡しを今からデッキで行いますので、見たい方はデッキへお集まりください。」
どうやら山内は最後まで見世物になるらしい。可哀想に。
いや、よくよく考えたら可哀想なんて事はないのか。山内だから。
俺はデッキに向かう途中で綾小路と出会った。
「久しぶりだな天野、三つの事件の時はすまなかった。」
まさか初手謝罪から入ってくるとは思わなかった。
「お前が謝罪するとはな.......意外だったぜ。」
「山内を押し付けなきゃ行けないかもしれなかったんだ。謝りもするさ。」
綾小路の顔は無表情なのだが何やら悲壮感が漂っている。相当だったらしい。
「相当だな.......山内。」
「俺はこの学校に入るまで感情というものを感じられなかった。だが俺はお前に同情、山内に不快感と嫌悪感を教えて貰った。負の感情ばかりで辛いが、それでも感情を得られたという点についてはこの学校に感謝している。」
「そ、そうか.......」
というか俺の事それだけ同情してたなら助けてくれればよかったのに。
「俺でもあのDクラスをコントロール出来るかは怪しい。平田は凄い奴になった。想像以上の逸材だ。」
「平田は.......お前が変えたんじゃないのか?」
俺は平田の根幹に突っ込む。綾小路以外に考えられない。
「あぁ.......俺と高円寺が正しいがな。平田は堀北とは違って何とかなりそうだったしな。」
高円寺もか.......高円寺なんか原作よりだいぶ検診的になったな。
「そうか.......お前も大変だったな。」
俺は綾小路に復讐や怒る気力すら削がれるぐらいの同情を向けてデッキに到着した。
その場には知らんやつもいるが各クラス5~6人程度.......だろうか?
「てめぇら、顔も名前も全員知ってるぞ!!てめぇら手を組んで俺をハメやがったな!!!」
「いや、退学になったのはお前の日頃の行いのせいだろう。」
Bクラスの木山から正論が飛んでくる。そりゃそうだ。全員で頷く。
「Aクラスは葛城一派の葛城と三輪、坂柳一派の坂柳と橋本に綿白神一派の綿白神と一条だな。弥彦と神室がいないとはな。」
一条って誰だよ!三輪って誰だよ!なんで皆数字が入っているんだよ!そういえば保健室にいた八雲ってやつも数字が入っている。ブームなのかもしれない。てかさっきまでこの三輪ってやつ保健室いなかったか.......まぁ2日もあれば治るか。
「Bクラスは一之瀬に神崎、白波に木山に柴田に八雲だな。まぁ順当なリーダー格達だな。」
なぜだか急にこの場にいる人物の分析と説明をし始めた山内だが、もう退学なので無意味だろう。というか八雲ってやつもここいるのか.......こう見てみると序盤からリーダー格を潰してた山内は優秀なのかもしれない。サイコパスだが。
「んでCクラスは天野に龍園、金田にアルベルト、伊吹に石崎か.......椎名が居ないのは争い事を好まねぇからだろ?」
どうしてこいつはこの分析力をクラスに生かさなかったのだろうか.......どこで鍛えたか知らないが今や平田ぐらいの筋力はありそうな体とその頭があればこいつもうちょっとまともな立ち回りができただろう。
「Dクラスからは高円寺、御門に綾小路、平田に櫛田に堀北か.......個性的なメンバーだな。」
その点は俺も同意だ。個性的なんてものじゃない。
「まぁ何はともあれ、だ。お前ら主犯格の顔と名前は覚えた。裏掲示板で山内テンペストとか天災山内とかサイコパス山内とかピエロ山内とかブラックルーム山内とか散々バカにしてきやがったのもてめぇらの戦略なのか?あ?」
誰も何も答えない。揃いも揃ってゴミを見るかのような目だ。というかその裏掲示板書いたやつ転生者だろうよ。
「俺はなぁ、ここで一旦退学になるかもしれねぇ、だが一旦だ、必ず鍛えててめぇらを潰しにここに戻ってくる。そんときがテメェらの最後だ!最後なんだよ!!モゴゴゴモゴゴゴ!」
後半は坂上先生に猿轡を噛まされてわからんかったが戻ってこれるわけも無いだろう。よっぽどの原作改変でもない限りは。
他の生徒たちも戻ってこれる訳は無いと思っているのか痛い目線を送る。
「モゴゴゴ.......モゴゴゴモゴゴゴ!モゴゴゴモゴゴゴ!モゴゴゴ.......モゴーゴゴ!」
もう何を言っているのかも分からないがみんなから痛い目線を向けられる。
山内は右目に眼帯をつけられ。椅子のようなものに座らされて手足を拘束される。奇しくもポーズが藍染だ。こいつにそんな力は無いが。
「見苦しいぞ、山内。」
葛城の一言がトドメとなって、山内は連れていかれた。
「ついに.......終わったんですね。」
綿白神が感慨深げに言う。皆からは達成感や虚脱感を感じる。
「あぁ…これにて同盟も解消だな。」
木山が疲れた顔で言う。改めてこれだけのメンバーを敵に回した山内という男は恐ろしい。
「山内…やっと退学したか…」
三輪の言う通りだ。こいつ退学決定してから粘りまくるしえぐい成長を見せるしどうなってるんだ。
「まぁもう会うことも無いはずだ、あんな不良品にはな。」
神崎の言う通りだろう。それにしても神崎ってこんなに口悪いっけか。
「山内君……ついに退学したね。これでもう安全かな。」
若干表向きの顔が崩れかかった櫛田が言う。櫛田の発言としてかなりヤバいが、山内のせいだとみんな思っているのか何も突っ込まない。
「取り敢えず…部屋でみんなゆっくり休もう…お疲れ様。」
平田の疲労に満ちた顔の一言に皆大人しく従う事にした。
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『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義ある景色をご覧頂けるでしょう』
俺は島に着くアナウンスで目を覚ます。意義ある景色を見るために俺はデッキへと向かう。そういえばここ山内を連れてったデッキだな。まぁどうでもいいけどり
「クク、やっとまともなのが始まるぜ。天野、準備はいいか?」
デッキで会うや否や龍園に話しかけられる。アルベルトも石崎も一緒に付いてきているようだ。俺はドローンを操作して一足先に無人島へと着地させようとする。
「無人島へ先にドローンを着地させるのは禁止だ。戻しなさい。」
しかし残念ながら坂上先生に阻まれてしまった。ドローン作戦はおじゃんである。持ってきた意味なかったな。
「クハハハ、お前やっぱり最高だぜ!!」
龍園は俺の没になったドローン少年のL君作戦を気に入ったらしい。ちなみにL君というのは龍園の事である。
諦めて俺はじっくりと島を見る事にした。スポットっぽいものの場所を順番に把握していく。携帯で撮影でもしておくか。双眼鏡ないし。
そしてしばらくすると沢山の集まった生徒達が来た。その中でも目立って緊張感無くはしゃいでるのは……あれDクラスだな。豪華客船に来れて楽しいのだろう。これからまた特別試験だなんて夢にも思ってなさそう。
「おい邪魔だ、どけよ不良品ども。」
騒がしいDクラスにわざわざ近付いていった男子がいきなりDの生徒に体当たりをかまして喧嘩を吹っかけた。Aクラスの葛城派閥の奴だった気がする。こいつAクラスの癖に頭悪くね?
しかも俺、そっちの方にカメラ向けてるから全部撮れたんだけど……。
「テメェ!何しやがる!」
あ、トラブルメーカーにして6馬鹿改めて4馬鹿の須藤じゃん。こいつの短期はいつになったら治るんだ?まぁ無理だろうな。
「お前らもこの学校の仕組みは理解してるだろ。ここは実力主義の学校だ。Dクラスに人権なんてない。不良品は不良品らしく大人しくしてろ。こっちはAクラス様なんだよ。」
そんな傲慢の極みとも取れる発言をしているやつは綿白神派閥の奴だったはずだ。まぁ上があんなのなので仕方ないのだが、というか突き飛ばしてないお前がそれを言うのかよ。Dクラスへの同情心は当然無いが、あのAクラスの奴は綿白神一派なのでさっさと地獄を見てほしい。Aから脱落した時に龍園にフルで煽られる刑を心の中で決定した。まぁ今からあいつには地獄が待っているのだが。
この騒動をチクるために龍園達を探すと……お、居た。Cクラスのメンバーはある程度固まってるらしい。
「あそこでAクラスがDクラスにぶつかって傲慢の極みみたいな発言してたから撮っておいたぞ。」
この上なく堂々とチクる。それもそいつらの目の前で。
「は?……CクラスごときがAクラスの俺たちに盾つこうってのが?」
名前も知らんやつは俺の方を睨みながら言ってくる。因みにもちろんこの姿も撮影してある。
「撮影されてるのが見えないとは…お前盲目なのか?」
「クソっ!」
龍園に煽られたやつは軽くヘコみながらどこかへ行く。
ちなみに船は島に近付いても一定の距離を保ちながら着岸する様子がない。そして……島の周囲を回るみたいだ。スポットなんかを確認させてくれてるのだろう?
そして島を一周するとまた船内アナウンスが流れた。
『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒たちは30分後、全員ジャージに着替え、所定のカバンと荷物をしっかり確認した後、学生証端末を忘れず持ちデッキに集合してください。それ以外の私物は全て部屋に置いてくるようお願いします。また暫くお手洗いに行けない可能性がありますので、きちんと済ませておいてください』
分かってはいたが端末すら持ち込ませず、か……。プライベートポイントでどうこうは今回は出来ない可能性が高そうだ。ジャージなのはジーパンアンチの俺としてはありがたい。こういうの、動きやすくて結構好きだ。ちなみに俺に言わせれば機動力最悪、防御力低めのジーパンは服の中でも最弱だ。まぁ何はともあれ着替えるか。
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このクソ暑い時期に長袖のスーツを着せられている可哀想な窶れ顔で汗だくの真嶋先生に端末を渡してから下船したあと、太陽がガンガンに照りつける暑さにゲンナリしつつ、生徒が全員整列するのを待っていた。それにしても各クラス人数があまりにも少なすぎる。
ちなみに担任達は全員スーツ姿で汗をかき、見たことない大人達が作業着で特設テントの設営などをしている。雰囲気もなんかピリピリしている、特に真嶋先生なんか苦虫を噛み潰したような顔をしている。
何故か人数が原作より少ない無人島の特別試験。理由は恐らく山内のせいなのだろうが原作基準だとクラスポイントはどこにもさして残らなくないか?
そんな事をこんがえているとDクラスまで全員が揃い、準備されていた白い壇上にAクラス担任の真嶋先生が上がった。
「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。」
真嶋先生がそういうのも無理はない。山内の暴走のせいだろう。山内を連れて帰るとかいう貧乏くじを引いた坂上先生が不憫でならない。
「しかしその一方で31名ではあるが、病欠、山内による負傷などで参加できなかった者が居ることは残念でならない」
山内のせいで大量の怪我人が出ていた。まぁ無人島サバイバルである以上怪我をしていたら流石に無理があるだろうが……そういう意味では体調不良と嘘を着いてサボることも出来たのかもしれない。……まぁ、うん。山内捕獲とか特別試験としてダメだろ。
「ではこれより……本年度二度目の特別試験を行いたいと思う」
やはり無人島試験が来たか。まぁお察しの通りだ。
「え?特別試験って?どういうこと?」
誰の声か知らないけど、ちらほらと似たような疑問の声が上がる。こいつら山内の件で何も学んでないのか?……Aクラスの坂柳一派と、各クラスの首脳陣ではそういう声ほぼ無いように見えるな。流石は優秀な生徒達と言ったところか。騒がしいのは雑兵だ。現界天兵達では無い。
「期間は今から1週間。8月7日の正午に終了となる。君たちはこれからの1週間、この無人島で集団生活を行い過ごすことが試験となる。なお、この特別試験は実在する企業研修を参考にして作られた実践的、かつ現実的なものであることを最初に言っておく」
Dクラスからの不満防止か、免罪符か、なんにせよこの学校らしい詭弁である。虐めを黙認したこのクソみたいな学校が虐めじゃないよっていう言い訳をしているなら皮肉にも程がある。
「無人島で生活って……船じゃなくて、この島で寝泊まりするってことですか?」
Bクラスから声が上がる。「こいつらよくBクラスに入れたな」と、呆れてしまった。
「そうだ。試験中の乗船は正当な理由無く認められていない。この島での生活は眠る場所から食事の用意まで、その全てを君たち自身で考える必要がある。スタート時点で、クラス毎にテントを2つ。懐中電灯を2つ。マッチを1箱支給する。それから日焼け止めは制限なく、歯ブラシに関しては各自1つずつ配布することとする。特例として女子の場合に限り生理用品は無制限で許可している。各自担任の先生に願い出るように。以上だ」
「物資足りなさすぎますよ絶対生活できませんよ!」
「はああ!?もしかしてガチのサバイバルとか、そんな感じ!?そんな滅茶苦茶な話聞いたことないっすよ!アニメや漫画じゃないんすから!テント2つじゃ全員寝れないし!そもそも飯とかどうするんですか!あり得ないっす!」
めちゃくちゃ大声でDクラスの奴らが騒いでる。言ってることはかなり同意出来るけど、必死感がキモすぎて同意したくないな……。でもまぁ確かにアイツの言う通り、ほぼアニメや漫画の世界だな。まぁここはそのアニメや漫画の世界なのだ。だから起きているのだが誰にもそんな事は言えないだろう。
Dクラスの大声出してたやつが真嶋先生に「ありえないと思うなんてありえない」的な説教をされていたが、途中変なことを言ってた。バーベキューとかキャンプファイヤーはできないのかって言ったら出来るかもしれないし、出来ないかもしれないとか言っていた。誰かが言っていたが、この世にあるものが全て真実とは限らないわけだ。
「この特別試験のテーマは『自由』だ」
「フハハハハハハ!自由か!いい響きだ!」
それを聞いた自由人代表の高円寺が笑って叫び出した。周りが引いている。
「おっと失礼……続けてくれたまえ。」
高円寺が黙ったところで真嶋先生が再び解説を始める。
「この無人島における特別試験では大前提として、まず各クラスに試験専用のポイントを300支給することが決まっている。このポイントを上手く使うことで1週間の特別試験を旅行のように楽しむことが可能だ。そのためのマニュアルも用意している」
真嶋先生はそう言うと結構分厚い冊子を別教師から受け取った。空気を察したのか池たちも黙る。
「このマニュアルには、ポイントで入手できるモノのリストが全て載っている。生活で必需品と言える飲料水や食料は言うに及ばず、バーベキューがしたければ、その機材や食材も用意しよう。海を満喫するための遊び道具も無数に取り揃えている」
「つまり……その300ポイントで欲しい物が何でも貰えるってことですか?」
黙ったと思ったらまた池が話し出した。それにしても敬語が使えるとは……こいつ本当に池か?
「そうだ。あらゆるものをポイントで揃えることが可能になっている。無論、計画的に使う必要はあるが、堅実なプランを立てれば無理なく1週間を過ごせるよう設定されている」
「1週間遊ぶだけでもいいってことですか?」
篠原が聞く。さっきからDクラスの奴しか話してないがこいつらは黙ることすらできないのだろうか?まぁ元々アホばっかだから仕方ない…の…か?
「そうだ。全ておまえたちの自由だ。もちろん集団生活を送る上で必要最低限のルールは試験に存在するが、守ることが難しいものは一つとしてない」
どうせルールには抜け穴がある、それも無数に。龍園あたりはそこんとこに気づいているだろう。
「そして、この特別試験終了時には、各クラスに残っているポイント、その全てをクラスポイントに加算した上で、夏休み明けに反映する」
理論上のマックス加点は確か配布点の300+ボーナスポイントだったはずだが、今回は山内のせいでみんな-が最初からありそうだ。
「1週間我慢したら……来月から俺たちの小遣いも大幅に増えるってことだよな!?」
それにしてもDクラスは喋ってばっかりだ。さっきからDクラスばっかりが大声で話してるぞ。楽しそうで良いね。アホっぽすぎて絶対に混じりたくないけど。
「マニュアルは1冊ずつクラスに配布する。紛失等の際には再発行も可能だが、ポイントを消費するので大切に保管するように」
1冊だけしか配布しないから100取り合いになりそうなんだけど…うーん。
「また、今回の旅行を欠席した者がいる。特別試験のルールでは、体調不良などでリタイアした者がいるクラスにはマイナス30ポイントのペナルティを与える決まりになっている。だがしかし今回はその前の山内捕獲の件であまりにも多くの生徒が保健室送りになってしまったため、その分のカウントはなしとする。また、この場に山内によって負傷させられた者がいる場合この後すぐに前に来るように。彼らの分のポイントもマイナスはしない。」
原作のように坂柳の責任でCP30のマイナスとはならなさそうだ。
ただ1人あたり30ポイント……、クラスポイントとプライベートポイントもあってややこしいから特別試験ポイント、英訳するとプレミアムポイントってところだろうか。Google翻訳に打ち込んだらこれがでてきたがそんな訳ないだろ。頭の中のGoogle翻訳さんは熱にやられたらしい。アレクサ助けて。Siri助けて。
脱落1人でプレミアムポイント30減点っていうのは原作通りらしい。龍園なら闇討で他クラスを1クラスあたり10人脱落させて確実にプレミアムポイントをゼロにしかねないさや、まぁそこまでしなくても、1人や2人でもかなり大きな影響になるんじゃないだろうか。
「以上だ。それでは解散し、各クラスの担任から補足説明を受けなさい」
真嶋先生がそう宣言すると、全てのクラスがそこそこ急いで分かれていった。
そうして、各々の担任から追加の説明を受けることになった。が、坂上先生はいないので俺たちはAクラスと一緒に説明を受けるらしい。
「今から皆さん全員に腕時計を配布します。これは1週間後の試験終了まで外すことなく身につけておくように。許可なく腕時計を外した場合にはペナルティが課せられます。この腕時計は時刻の確認だけでなく、体温や脈拍、人の動きを探知するセンサー、GPSも備えており、また、万が一に備え学校側に非常事態を伝えるための手段も搭載しています。緊急時には迷わず使用するように」
これは体調管理もそうだが、影打ちや暗殺なんかを防ぐ類のものだろう。喧嘩が弱い奴らには嬉しいはずだが、Cクラスは悪いことしてでも勝ち抜く、というかそういう戦術の使い手がトップので相当に厄介だ。GPSあったら誰が関与してるか分かってしまう。やっちゃえバーサーカー!も出来ないと言うわけだ。どうでもいいけどヘラクレスとアルベルト似てね?
「それではマニュアルと腕時計をA、Cクラスに配布します。」
「おい、Cクラスを先に配れよな。」
「敬語を使え、龍園。」
「ハイハイ、Cクラスを先にお願いしますよ、真嶋せんせぇ?」
敬語こそ使えどまるで態度を変えようとしない龍園を追い払うかのようにさっさとマニュアルと人数分の腕時計渡した真嶋先生は、Aクラスに大事そうに1人1人に腕時計を渡していった。「必ず動作確認をして下さい」とのこと。めんどくさそうに龍園が腕時計を石崎に配らせる。大変だなこいつも、苦労人だ。
配布が終わると、真嶋先生が補足の説明を始めた。ちなみに龍園はかなり集中してマニュアルを食い入るように熟読している。……俺も見たいんだか後で見せてくれねぇかな…。
「その腕時計は完全防水となっています。そして、外した場合はペナルティが課せられます、1週間後まで装着し続けるように。万が一故障した場合は、すぐに試験管理者がやってきて代替品と交換することになっています」
抜かり無いっすね……。壊れたフリして破壊するのもダメってことかよ。
「追加の説明ですが、マニュアルの最後にマイナス査定の項目が載っています。」
そう言って先生がマニュアルを独り占めしているチンピラに目を向けると、他のやつも同じ事を思ったのか龍園を見る。
「龍園氏、内容を知りたいのですが…」
龍園氏呼びするこのオタク感満載の男は金だ。金田はCクラスでちょっと貴重な頭良いタイプだ。メガネでオカッパで、かなりムッツリスケベそうな顔だ。学年ブサイクランキングで堂々の1位に君臨している。ちなみに俺は4位だ。
「あ?今から説明してやるよ。まぁ少し待ちな。えーと…。
『著しく体調を崩したり、大怪我をし続行が難しいと判断された者はマイナス30ポイント。及びその者はリタイアとなる』
『環境を汚染する行為を発見した場合。マイナス20ポイント』
『毎日8時、20時に行う点呼に不在の場合。1人につきマイナス5ポイント』
『他クラスへの暴力行為、略奪行為、器物破損などを行った場合、生徒の所属するクラスは即失格とし、対象者のプライベートポイントの全没収』
だそうだ。闇討ちは流石にアウトか…。
学校側も当然当たり前のように、他クラスへの妨害にしっかりと罰則を用意している。環境汚染も暴行、略奪、破壊もダメらしいのでCクラス得意の戦術は使えないし、川にカドミウムを仕込んで潰したり、食料の略奪は当然アウトだ。
島の中だから監視カメラがそこまでカバー出来てないだろうけど、それでもGPS機能のついた腕時計があるせいでバレずにやるのは難しいようになっている。基本的に学校は正攻法でやらせたいようだ。可能なのは『島の食料を先に集めまくる』『挑発をしまくる』くらいだろう。
「あの~~先生。点呼というのはなんでしょうか?」
Cクラスの篠原こと真鍋が質問した、お前敬語を使えるのか……偉いな。
「担任教師は各クラスの生徒と共に試験終了まで行動を共にすることになっています。皆さんが決めたベースキャンプ付近でも拠点を構え、点呼はそこで行う予定です。ちなみにベースキャンプの変更は認められて居ません、慎重に決めて下さい。ただしCクラスは坂上先生が現在居ないため私が行きます。公平性を期すため、私以外の職員が行く場合もあります坂上先生はあと2日で戻ってこられる予定です。」
坂上先生は山内と一緒らしいのだが本当に2日で帰れるだろうか…俺は心の中で坂上先生に合掌しながら話を聞く。
「そのベースキャンプに関する補足説明、さらに追加のルールですが、島の各所には『スポット』と呼ばれる箇所がいくつか存在します。それらには占有権が存在し、占有したクラスのみが使用権を得ます。ただし占有権は8時間しか意味を持たず、自動的に権利は消失します。その都度、他クラスにも占有権を取得する権利が発生することになります」
出たなスポット…。
「そして、スポットは1度占有するごとに一時間あたり1ポイントのボーナスを得ることが出来ます。ただし、このポイントは暫定的なものであり、試験中に使用することは出来ません。試験終了時に精算されます。」
8時間ごとに更新、1日最大24ポイント。7日で理想の最大加点は168ポイント……。原作と違ってスポットの点が一時間ごとになっている、スポットいくつあるのか明確には分からないかま、ベースキャンプ候補ってことはそこまで多くないはずだ。人数が少なくなっていることも加味して考えると、ポイント増加は妥当かもしれない。
「スポットに関しての詳細ルールは次の5項目です。
1. スポット占有には専用のキーカードが必要である
2. 占有権の取得1回につき1ポイントを得る。占有したスポットは自由に使用できる
3. 他が専有しているスポットを許可無く使用した場合50ポイントのペナルティを受ける
4. キーカードを使用することが出来るのはリーダーとなった人物に限定される
5. 正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない
の5つです。」
リーダーに関してはひとまず置いとくとしても、他クラスのスポットを許可なく~っていうのは、略奪行為の禁止と同じような意味だろう。『許可』の定義がどうなるのか、クラスの誰か1人が許可するだけでもいいのか、みたいな詳細は後で確認しておいた方がいいだろう。Dクラスなんか特に裏切り者…出そうだしな。
「そして次に、これが最後のルールとなりますが、特別ルールとして最終日の点呼にて『他クラスのリーダーを言い当てる権利』がリーダーには与えられます。そこで他クラスのリーダーを正しく指名することが出来れば、特別試験ポイント100ポイントが加算され、指名されたクラスは100ポイントの減点がされます。……ただし、指名したリーダーが間違っていた場合、指名したクラスは100ポイントの減点です。ただし、どこか一クラスからでもリーダーが指名された場合、スポットのポイントは0になります。」
人数が少ない都合7日、原作よりもハイリスクハイリターンになっているらしい。仮にスポットを沢山専有しても、リーダーがバレる危険性が高まり、ポイントは0になりやすいという訳だ。ポイント額が増加しているのは人数が減った影響だろうか。
「リーダーは1クラスに必ず1人決めてもらいます。……リーダーが決まったら私に報告して下さい、リーダーの名前を刻印したキーカードを支給します。報告期限は本日20時の点呼までです。それまでに決まらない場合はこちらで決めることになっています。……以上です。」
とはいえうちのクラスのリーダーってどうせ龍園だろう。指名される、されないの話ではなく他にできる人間はいない。
同じようにAクラスの葛城&綿白神、Bクラスの一之瀬、Dクラスの平田&櫛田あたりはリーダー候補だろうが、当てられたらポイントを100ポイント減点ってのは大きいし、なるべくバレないように目立たない生徒にする可能性も高い。それでいて隠し通せる最低限の能力はある人間である必要はあるから多少は絞られるだろうが……。
もし仮にうちのクラスのリーダーを俺が決められると仮定して考えてみる。真っ先に思いつくであろう龍園は目立つ上に当てずっぽうで指名されるき件もある、伊吹は綾小路に嘘を見抜かれるレベル。石崎はアホだから除外、同じように小宮近藤もちょっと信頼度が無いので除外。アルベルトは誰も隠せなさそうなので除外。金田と椎名では身体能力が低く、沢山のスポット確保には向かないだろう。適任ゼロなのでは…あれ?
ちなみに俺は絶対に嫌だ。メリットが無い癖にリスクばっかりある仕事なんて絶対やりたくない。走り回るのは疲れるし、リタイア作戦をする時に上手く仮病をする自身もない。
「では、質問があればどうぞ。……試験である以上、教師として皆さんを手助けすることは出来ません。そのため結果に影響する事は回答できませんが、ルールを確認するための質疑応答は許可されています」
「真嶋、ポイントがゼロになった上で離脱者が出たらどうなる?」
龍園が聞く、こいつは敬語を使えなくて偉くないな。
「……その場合は0ポイントのままだ。マイナスになることもないし、代わりにクラスポイントやプライベートポイントが減点されるということもない。あと敬語を使え。」
「クク……」
ポイント数には関係なくゼロポイント作戦を決行するつもりらしい、それにしても決めるの早すぎるだろ、開始1時間……どころかまだルール説明中だから開始もしてないんじゃない可能性すらある。
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その後、クラス毎に配布されるテントの使い方と、1つだけ配られる簡易トイレの説明を受けた。ダンボールトイレ……被災地で使うトイレでも最近は簡易トイレな気がする。男子は別に良いだろうが女子達からは文句が出そうだ。
そういえば原作ではDクラスはこれで大モメしてたっけ狩り……。
船のアナウンスでトイレ行っとけ言ってたからあと数時間は大丈夫だろうけど、もうちょいちゃんとしたのを購入する話し合いを各クラスがすることになるだろう。いくら龍園の恐怖政治クラスだからといっても、女子にまでダンボールトイレを強要したら流石に反発されるだろう。……女子達が泣き叫びながら集団で龍園を殴りまくる光景が見れたら面白いとは思うけども。でもなんかみたくない気もするが。
俺達はAクラスから少し離れた位置に移動する。まぁそりゃそうだわな。
「今から作戦を話す。」
Aクラスに聞かれない位置に動いた龍園が作戦を話すらしいり
「作戦を考えたが、情報が漏れないよう関係する人間にのみ話す。他の奴らは日陰で休んでろ。……その場で大人しくしとけ。あと、勝手にポイントを使ったら場合は二学期から虫けら以下の扱いになるからな?わかるな?言っている意味が。」
こいつ怖いわ。
「じゃあ今から呼ぶヤツはついて来い。天野、金田、石崎、アルベルト、伊吹、椎名、小宮、近藤だ。」
「あと木下と真鍋、薮、山下、諸藤も来い。」
ふと思いついたことがあったので俺は追加でメンバーを呼んでみる。龍園が一瞬こっちを見る。何を考えているのかと問う目だ。まぁ思い付きだから期待しないで欲しいのだが。
「今天野が言ったヤツらもこい…それじゃあ作戦を説明するぞ。」
こうして、俺たちの無人島サバイバルが始まった。
Dクラスを
-
許すな!
-
許してあげよう