ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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影に潜む者達

「んぇ……?ここ…は…?」

 

俺は目を覚まして身体を起きあげようとしたが違和感に襲われる。背中は床のように固くはなく、軽い力だけでは起き上がれなかった。首を動かして見てみるとハンモックの上にいるらしい。

 

「あ…目が覚めたよ帆波ちゃん!」

 

近くにいる女子生徒が一之瀬を呼びに行ったらしい。なんで俺Bクラスにいるんだっけか。確か龍園にスパイやれって言われて…何となく思い出してきたぞ。

 

「……あれ…?治療されてる?」

 

俺が驚いたのも無理はない。目が覚めたら左手の薬指には添え木と包帯がされて、怪我してるあちこちが治療されていた。いくつかポイントを使ってくれたとしたらラッキーなんだが…さすがにそう都合よくは行かないか?

 

「えーっとね…うちの担任の星ノ宮先生がこのままじゃまずいからって無償で治療してくれたんだよね!!でも無理はしないでね。私は安藤紗代!よろしくね!」

 

安藤…モブだろうか?いやなんかこの世界線は名も無きモブが恐ろしく強い世界線だ。無双ゲーの難易度地獄みたいな世界線だ。警戒を解くわけにもいかんだろう。

 

「俺は天野聖 聖人の聖でセイントだ。そうなのか……後でお礼を言っておくことにするよ、安藤さんもありがとう。」

今の俺は愛想と愛嬌のあるセイントくんだ。せんとくん呼ばわりしてきたやつは全員血祭りにするがそれ以外にはちゃんと櫛田みたいにぶりっ子していこうと思う。

 

「あ、穂波ちゃん、神崎君、柴田君、天野くん目を覚ましたみたいだよ!!」

 

安藤と交代で一之瀬、神崎、柴田のBクラスの原作三強が来た。統率力の一之瀬、頭脳の神崎、身体能力の柴田である。

 

「ありがとう三人とも、助けて貰って……」

 

俺は少し申し訳なさそうに言う。それにしても星ノ宮先生には感謝だな。もう二度とゲロノ宮と呼ばないようにしよう。

 

「全然気にしないで!それよりも…天野君が意識が飛ぶ前に話してたCクラスのお話聞かせてもらってもいいかな?」

 

ここはギャルゲーで所謂ターニングポイントだ。なんかボロを出しそうで怖いし話さないに越したことはない。俺は話さないを選択する。

 

「助けて貰って悪いけど…俺はCクラスの人間だ。Bクラスに情報を流す訳にはいかないんだ……。」

 

俺は大変申し訳なさそうに俯いておく。俺がCクラスに移籍してまだ日も浅い。龍園とは極力敵対関係風にして置いた方がいいだろう。

 

「えーとね……それじゃあ一つ聞いていいかな、天野君ってCクラスから別のクラスに行きたいとか思ったりしてる?Dクラスで虐められてたのは知ってるんだけど…嫌なこと思い出させちゃったらごめんね?」

 

一之瀬が手を合わせながら申し訳なさそうに聞いてくる。可愛い。モアイロケットを発射したいレベルだ。赤は最低50000だから高いけど一之瀬になら出せるかもしれない。まぁここはVR空間ではなく現実なのでスパチャなんか送れやしないのだが。

 

まぁそれはいいとして、質問の真意が見えてこない。

 

「うーん……どこのクラス行っても変わらないからなぁ……」

 

これは真っ赤な嘘だ。トマト畑のトマトを残さずをぶちまけたあの道ぐらい赤い。虐められたDクラス、冤罪の元凶が派閥を作っているAクラスに、龍園に支配されたCクラス、こう見てみるとBクラスだけが救いのように見える。だからBクラスに来る代わりにCクラスのスパイをやれってところか。一之瀬らしくは無いが彼女もまた成長しているのか、それとも誰かしらからの入れ知恵か、いまいち見えてこないな、

 

「Bクラスは虐めも冤罪も無いよ…それでご相談なんだけど…」

 

 

Cクラスのスパイになれってことね、分かりますとも。

 

「頑張ってこっちで2000万ポイント用意するからさ…Bクラスに来る気ない?虐めも冤罪も…他にも辛い思いはさせないって約束するよ、どうかな?」

 

「えーと、見返りは何が欲しいのかな?Cクラスの情報?それともDクラスの情報?」

 

「ううん、違うよ、目の前で虐められてたり冤罪にあってる人なんてほっとける訳ないよ。クラスの皆も同じ意見だよ。」

 

なるほど、なんとも一之瀬らしい理由だ。主人公に脅されたり、高円寺がやけに協力的になってたり、名も無きモブたちがエグチで強かったり、いきなりDクラスから虐められたり、学校側がなんの対応もしなかったり、山内が覚醒しすぎて頭おかしくなったり、原作改変が多すぎて頭を抱えていたがこれが本来のよう実である。この間違いだらけの世界で唯一まともな気がした。

 

「いやぁ…Bクラスの人たちに迷惑かけられないし遠慮させてもらおうかなぁ…さすがに可哀想だからおいでって言うのはちょっとねぇ…クラスにも言わないだけで不満な人もいるだろうし……」

 

取り敢えずやんわりと断っておく。Bクラスが悪いとは言わないが復讐が終わるまでは少なくともCクラスの方が動きやすいのだ。

 

「遠慮なんかしなくていいって!な、神崎?」

 

「突然だ、それに天野をBクラスに呼びたいのは温情って訳でもない。Bクラスの戦力アップにもなる。」

 

「え?戦力アップ?」

 

このモブが最強格でリーダー枠もぶっ壊れたソシャゲ並にインフレが加速したこの世界線で俺が戦力になる訳ないだろ。多分。

 

「うん、天野君は勉強も運動もできて賢いから…天野君がBクラスに来たらAクラスに上がれるかなぁって思ってるんだよね。」

 

「それはありがたいけど…坂柳とか葛城とか綿白神のリーダー争いで負けた方とかでもいいんじゃないか?」

 

絶対あいつら俺より強いでしょ。

 

「まぁそこら辺の人達も当然強いんだけど……私としては天野君に来て欲しいなぁって……」

 

何が一之瀬にそこまで気に入られているのだろう。いっちょんわからん。

 

「まぁ考えておくよ…それよりも仮にもCクラスのスパイをこんなところに置いちゃって大丈夫なのか?」

 

俺、Cクラスのスパイって名乗ったよな?記憶が若干飛んでるのが二足歩行の喋るクマの幻覚を見た気がする。

 

「うーんと、本当にスパイをしたいなら自分からスパイって言わないよね、多分龍園君に言われてイヤイヤやってるんじゃないの?」

 

「イヤイヤなんてものじゃない、イヤッイヤ イヤ!!!ぐらいはあるぞ。」

 

これがチャットの会話なら語尾に笑笑とかつきそうな内容だな。まぁ俺にチャットする友達なんてものはいないしいる訳もないが。

 

「にゃはは…それならうちのクラスで生活して、龍園君にはリーダーは見つけられなかったって言えばいいんじゃない?」

 

「まぁ普通ならそうなんだけど……正直に言っちゃうともうCクラスにはBクラスのリーダーがバレてるらしいぞ。」

 

「え?嘘でしょ?はやすぎない?いくらなんでも。」

 

「本当か嘘かは分からないが龍園が言ってた。」

 

おれはあくまでも「らしい」とか「本当か嘘かは分からない」と着けておく。別にここでリーダー、白波だろ?っていうメリットもない。俺の信頼度の指標にもなるしここは判断は相手に委ねよう。どうせ目的の毎月のプライベートポイントは達成している。最悪この試験が0ポイントでも問題は無いだろう。

 

「にゃるほどねぇ……ちなみに名前なんて言ってたかわかったりする?」

 

「白波千尋って言ってたなぁ…。合ってるのか?」

 

「にゃはは…本当に参ったなぁ…一体どうやってわかったんだろう。」

 

録音機です盗聴しましたやったのは俺ですとはさすがに言えない。てかお前らどうせリーダー交代するじゃんか。

 

「うーん…龍園にしかそれはわからんけど、まぁそれはいいとして、リーダーをリタイアさせた方がいいと思うぞ。」

 

「リーダーをリタイア?正当な理由なくリーダーを変更出来ないって書いてなかったかな?」

 

一之瀬演技が上手いな。盗聴してなかったら100分からなかったぞこれ。ちなみに龍園に擦り付けて余計な事は言わなかった。なんかまずい予感がした。本能ってやつだ。

 

「いや、リタイアは正当な理由になるからリーダーを変更出来るはずだ。それで交渉なんだが…」

 

「交渉?」

一之瀬は首を可愛らしく傾げる、気がついたら後ろにいた柴田やモブ達は消えて神崎と一之瀬だけになってた。神崎なんか喋れよお前……

 

「リーダーをリタイアさせる前にキーカードの写真を撮影してA、C、ついでにDクラスに配布してリタイアさせるのはどうだ?写真は俺がスパイとして撮ったことにしとけばいい。」

 

「にゃるほどねぇ…そうしたらA、C、Dクラスは-50ポイント、うちだけ-30ポイントだから得をするって訳か。でもいいの?Cクラスにも嘘の情報を教えちゃって。」

 

「龍園、地獄に落ちればいいと思うよ。なんか言われても俺は知らぬ存ぜぬを貫き通すし。カメラは俺の荷物の中に入っているはずだり」

 

まぁ実際は変更したリーダーが当てられるんだけどね。こちらもBクラスに聞かれたら俺は知らぬ存ぜぬである。ちなみにバックの中にはカメラとトランシーバーしか入っていない。探られても特に問題は無いだろう。ミスなく堅実には俺のモットーである。まぁ嘘なんだけどね。

 

「なかなか辛辣だねぇ…そういう事ならカメラはお借りして写真を撮っとくね。でもこれをAクラスとCクラスにはどうやって伝えるの?」

 

「Aクラスには既に龍園が契約としてスパイの情報を共有する契約を送ってあるから龍園に送ればそのまま伝わるだろうな。問題はDクラスだが、まぁプライベートポイント目的で交換すればいいだろうよ。Dクラス程度ならそれで大丈夫だろ。今回はリーダー組もいないしな。」

 

「にゃはは…今無人島にいるDクラスじゃあ櫛田さんぐらいしかいないからねぇ。任せてもいいかな?」

 

「俺に任せろ。」

 

キリッとした顔で俺は言う。右手はサムズアップである。

 

「写真は撮っといたよ。カバンの中に入れとくね?」

 

「助かる、3日目ぐらいに龍園には渡す。」

 

「OK。こっちもは5日目ぐらいに千尋ちゃんをリーダーから変えるね。取り敢えず天野君はゆっくり休んでて、怪我もまだ治ってないんだから……」

「ありがとう、そうさせてもらうよ。」

 

結局神崎は最後まで何も話さなかったな。協調性は確かにDだこいつは。

 

取り敢えず俺は怪我を治すためにも眠りにつく事にした。幸いにも俺が眠るのにそう長くはかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜 一之瀬side 〜

 

 

私たちは天野君が寝静まった後、場所を移動した。そこで本題に触れる。

 

 

「神崎君、どこまでが本当だと思う?」

 

「Cクラスのスパイとしてここに来たのは本当だろう。怪我の度合いは尋常ではないが人の心の無い龍園ならやりかねない。リーダーのリタイアもあいつが言っていた通りだな。それを見抜いてるあたりやはり優秀だ。」

 

神崎君の見立てはには私も同意見だ。

 

「にゃはは…AクラスとCクラスの裏取引の話も多分本当だね、Aクラスには仮設トイレが2個あったから。違和感あったけどまさか物資を裏取引するなんてね……。そんな機密事項まで話しちゃうなんてやっぱり天野君はCクラスには馴染めてないのかな?」

「おそらくそういう事だろうな。だがリーダーの情報の話はどこまで本当かは疑わしいところだな。」

 

「そうだねぇ、どう思う?木山君」

 

私は木山君に話を振る。場所を変えたのは『本来この場に居るはずのない木山君』の存在をバレないようにするためだ。

 

「いやぁ…おそらく本当だと思うぞ。Aクラスとの同盟の話が本当ならうちとDクラスにスパイがいるだろうが、スパイ作戦をしている事は本来機密事項だろう。スポットの占有なんてしようものならリタイア作戦をした意味が無くなって龍園が島にいることがバレる。龍園がそんなヘマをするとは思えんな。」

 

「それは私もそう思うよ。」

 

「加えてAクラスのリーダーは同盟の規約上お互い指名しない、みたいな事が書いてあるはずだ。龍園は最初はそれを記載してない契約書を作るだろうが気付かないほど葛城がバカだとは思えない。弥彦が勝手に契約でも結ばない限りは有り得ないだろうよ。」

 

木山君はなぜだか分からないけど戸塚君に対して当たりが厳しい。何かあったんだろうか……

 

「つまりだ、スパイ活動で本来得るはずのポイントは100ポイントのはずだ。だが俺と同じ方法を使ったのかは分からないが御門がこの島にいるのを確認した。」

 

御門君がこの島に潜伏しているという情報は寝耳に水だ。山内君の件で今回の試験は不参加なのを確認したが、木山君と同じ方法を取ったのかもしれない。

 

「御門君が?木山君みたいに『リタイアを取り消す権利』を買ったのかな?」

 

「わからんな。こっそり出てきて潜伏、何かしらの働きをしてそのまま船に戻る作戦の可能性もあるが……何を目的としているのかは分からない。」

 

「そう言えばこの島に熊がいるって噂を聞いたんだけど本当かな?」

 

麻子ちゃんが遠目に熊らしきものを見たという話があった。他の子は見てないらしいけど無人島だし熊の1匹ぐらい有り得るのかもしれない。

 

「熊?いや、聞いたことがない。」

 

「俺もだな。ここはある程度学校側が人工的に用意した無人島のようだ。現に大量のトマトが地面にぶちまけられた道を発見した。おそらく物資のあるAクラスが他クラスの食料を減らすためにやったのだろう。それか龍園か。まぁ野菜が植えられるぐらいには人工的管理がされている。熊なんかいないと思う。」

 

私もそれには同意見だ。やはり見間違えだろう。

 

「まぁそれはいいとして、御門が戻ってきた理由はわからんがそれでもあいつもリタイア作戦とリーダーのリタイアで交代できる事ぐらいは気づくはずだ。そうなればCクラスはリーダーの指名ミスで-100ポイント、Bクラスのリーダーを当ててもゼロポイントだ。」

 

「にゃるほどねぇ……それならBクラスに恩を売りつつAクラスとDクラスのポイントを下げようって魂胆って事か。天野君はそこまで全部気付いていたのかな?」

 

「おそらくそうだろうな。やはり天野は逸材だ。Cクラスに居場所もなくてAクラスとDクラスは論外だろうしBクラスに来るのが1番だろう。懐柔も楽に行けるだろうよ。」

 

やはり天野君は恐ろしい。木山君や御門君もそうだが、この学校は凄い人だらけだ。

 

「そうだねぇ……それにしてもCクラスとDクラスは天野君野実力に気付いてないのかな?坂柳さんにAクラスの勧誘をされていたって話らしいけど……。」

 

「それは初耳だ。もし派閥争いで坂柳が勝って綿白神が退学になったらAクラスに取られるかもしれないな。Cクラスは龍園の独裁だから天野の入る隙は無いのかもしれん……Dクラスは馬鹿としか言いようがないな。不良品らしいし仕方ないのかもな。」

 

「不良品は言い過ぎだけど……まぁ実際勿体ないことはしてるよねぇ。」

正直Cクラスに天野くんが移籍した話を聞いた時は私も耳を疑った。Dクラスの重大なミスだろう。

 

「まぁ、天野の見張りは頼む。俺は…この試験で俺のように存在を隠して潜伏している奴らの警戒にあたる。」

 

御門君しか居ないのだから奴らじゃなくて奴では無いだろうか。それとも自分も含めてなのか。どうも木山くんの言い方には違和感を覚えた。

 

「了解。それじゃあそろそろ別れよっか。」

 

他の人に見られないように私達はこの場所を別れた。

 

 

この時私はまだ知らなかったんだ……この試験の裏で起きている事件に。

 

もしも知っていたのなら……何か変えられたのかもしれない。

山内に再登場

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