ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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赦しの秘跡

「んぇ.......?ここは.......あぁBクラスか。」

 

どうやらまたもやぐっすり寝てしまったらしい。今が何時かは分からないが、深夜なのは間違いないだろう。月の位置から察するに今は夜の3時ぐらい。ということは今日は無人島生活2日目のようだ。

 

さて、俺のやる事を再確認だ。まずはBクラスのリーダーをリタイアさせる事。これは恐らく成功でいいだろう。Bクラスのリーダーである白波が5日目にリタイアする事は3日目に龍園に伝えればいいだろう。あの様子だと俺と龍園が敵対しているという話は信じているっぽいし、変に接触する事は避けるべきだ。幸い怪我も痛いが本気を出さなきゃ動ける程度だ。いつでも何とかなるだろう。

 

次にこの島にある食料を減らす事だがスパイしてるし怪我してるしで俺には無理だ。龍園達がやってくれるだろう。

 

次にBクラスの黒幕Z探しだが一向に分からん。綾小路みたいな人畜無害そうなフリして怪しい『女』が見当たらない。もしかしたらオカマなのか、それとも何かしらの方法で存在を消しているのか。プライベートポイントを使えばかなり誤魔化せそうではあるんだけどなぁ.......

 

後追加でやることと言ったら、本来マイナスになるから出来ないこと。環境汚染や点呼の無視だが点呼の無視はAlwaysだ。決して二郎系ラーメンでは無い。

 

環境汚染は龍園に日焼け止めを水源に大量にぶちまけるように一応言ってはあるがこれもどこまで効果的かは怪しいものだ。一応ビデオカメラもある訳だし挑発して殴らせれば失格!とかにもなるんだろうけど………そんなの引っかかりそうなのはDクラスぐらいだ。略奪の冤罪を被せようにもうちにはポイントがない、というか冤罪はもうコリゴリだ。

 

まぁという訳で俺はBクラスのヒモ生活を3日目まで続ける事は確定だ。取り敢えず昨日の夜を寝過ごして食べてないので腹が減った。なんかしら野菜でも取りに行くか。

 

俺はハンモックから起き上がり、森の中に入って行く。たしかこの道を左に行った先にきゅうりが実っていたはずだ。

 

 

俺はきゅうりを1本手に取る。きゅうりの塩もみしたやつは俺の好物のひとつだ。今回は残念ながらお塩は無いので海水にでもつけてでも食べたいが取り敢えず腹が減った。

 

「う、美味すぎる。」

 

きゅうりを何本も俺はボリボリ食べる。なんでこんな食材がこの無人島なんかにあるんだ。このみずみずしさ。塩加減。塩なんかないはずなのに美味い。豪華客船より豪華じゃないかコレ?

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

遠くでドンと何かが落ちる音がした。そして聞き覚えのない誰かの悲鳴。.......その二つの状況から考えられる結論は一つ、誰かしら落ちたってことだ。

 

俺は急いで音がした方へと走る。なんか後ろからゴゾゴゾ音がする気がする。ついに俺の速度は音速、光速を超え神速へと到達したのかもしれない。飛び級って奴だ。足は陸地着いてるけどな。

 

いた、ここだ。多少暗くて見ずらいが誰だかわからない男子生徒が倒れている。目の前は5m程の急な坂になっている。どうやらここから落ちたらしい。

 

「おいあんた、大丈夫か?意識はあるのか?返事をしろ!!」

 

こう言う緊急の時はまず意識確認だ、意識があるかないかで対処が変わってくる。

 

「う、ぁぁぅゎぁぅ」

 

上手く話せてはいないが取り敢えず意識はありそうだ。怪我の度合いは分からないが取り敢えず本部に連れていくべきだろうか?

 

「おい大丈夫か!本部に連れてってやる!」

 

「た、助かる.......」

 

それだけ言い残すと男は意識を失ってしまった。俺はその男を背負って立ち上がる。左手が使えないが腕を上手い事使ってカバーするしかないだろう。

 

俺は感覚を研ぎ澄まして周りを見渡す。俺の後ろに誰かしらの気配がする。俺がスパイかもしれないと思い付けられていたのかもしれないし、犯人かもしれない。いずれにせよ俺の歓迎する相手では無いことだけは確かだろう。

 

「誰だ!姿を現せ!」

 

まぁおそらく現すわけないだろう。このまま犯人ならバレないように何処かに去ってくれればいい。俺を付けてきた奴なら普通に考えて人が怪我をしている時点で助けに入るはずだ、それこそバレては行けない余程の事情でも無い限りは。

 

俺はプレッシャーをかけてしばらく待つ。カウンターの準備だけはしておく.......10秒.......20秒.......どれだけの時間が経っただろうか。相手の気配は何処かへと消えていった。どうやら諦めて行ってくれたらしい。多分犯人だろう。

 

俺はそのまま男を連れて........本部へと向かった。一瞬何処かに監禁して点呼のポイントを削る事も考えたがこの状況だとバレて俺が犯人にされかねないし、リタイア分の30ポイントを削れるだけでもマシと考えるべきだろう。

 

「すいません、この人森で倒れてて、リタイアさせて休ませてあげてください。」

 

俺は名前すら知らない男をリタイアさせる。JKが良かったがまぁしゃーない。

 

「わかりました。この人のクラスとか名前とか分かりますか?」

 

受付の人が聞いてくる。全くわからんが少なくともCクラスでは無いだろう。というかこいつはそもそもこんな時間にどこで何をしていたんだ。

 

「分かんないです.......」

 

「一年Aクラス、三輪護良です。」

 

俺の背中で気絶していた男改めて三輪は死にそうな声で返事をした。大丈夫かこいつ。

 

「よかった.......意識が戻ったみたい。リタイアでいいかな?」

 

「一歩も動けそうにないのでそうします。運んでくれた君もありがとう。助かった。それよりも職員さん、この島には熊がいる。慌てて逃げようとしたが坂を踏み外して怪我してしまった。」

 

まだ頭が混乱しているのか語順が若干おかしい。

 

「熊.......ですか?.................なるほどそういうことですか。それならばこちらで対応しておきますね。」

 

「助かります。葛城さんのためにもここであんな熊に試験を破壊されるわけにはいかないので.......」

 

こうしてAクラスの三輪君とやらは葛城派閥らしい。そう言えば葛城の懐刀とか聞いた事あるぞ。

 

まぁ何はともあれこれでAクラスは-30ポイントの棚ぼただ。

 

俺はそのままBクラスに戻った。幸いにも今ここにいるBクラスは誰も起きていないらしい。例のキレものがいた訳では無さそうだ。

 

そして俺は再び眠りに着いた。

 

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「.......きて.......天野君.......起きて!!」

 

2日目の朝、俺は一之瀬に起こされて目を覚ました。それにしてもやっぱり一之瀬は天使だな。

 

「お、おはよう一之瀬〜今日も可愛いね。」

 

「揶揄わないでよ.......もう、それに今はもう12時、お昼だよ。」

 

どうやら口から漏れてたらしい。やっぱり朝は頭働かんな。

 

「ありゃありゃ.......もうそんな時間か。ぐっすりだったわ。」

 

「ちゃんと早く起きなきゃダメだよ.......?はいこれ天野君の分のお昼ご飯ね?」

 

そう言って俺は一之瀬にカンパチの刺身を渡される。すげぇなこれ一体どこで見つけてきたんだ.......。

 

「てか俺の分もあるのか。」

 

「当たり前でしょ。友達なんだから。」

 

さも当然とのように友達呼ばわりしてくる一之瀬。こいつ隙だらけじゃねぇか?

 

「おぉぅそうか.......そう言えば前一之瀬熊がいるとか言ってなかったか?あの話詳しく聞かせてくれよ。」

 

「熊?見たのは私じゃなくて麻子ちゃんなんだけど、なんか川の近くに居たらしいって程度だよ?」

 

「うーんと、実は昨日夜の3時に起きてさ、腹が減ったから森に野菜を取りに行ってたんだけど、その時に悲鳴が聞こえてきてさ、悲鳴の場所に行ったらAクラスの生徒が倒れてたんだよね。本部に連れてってリタイアさせたけどリタイアする間際に熊が出たとか言ってた。」

 

一之瀬はしばらく手を顎に当てて考え込む仕草をしてた、可愛い。

 

「えーと、ちょっと関係無いんだけど夜の3時に森に入るなんて危なくない?」

 

「いや、そうでも無いぞ。特にこの森なら。」

 

「どうして?」

 

一之瀬が不思議そうに首を傾げる。可愛いな畜生!!

 

「いやだってあの森って人工的に作られてるじゃん、迷う事はあるかもだけどせいぜい20分もあれば元の場所に戻れるって。」

 

「なるほどねぇ.......ちなみにAクラスのこの名前ってわかる?」

 

「えーと.......確か三輪って言ってたな。」

 

「三輪君なのか.......きな臭い匂いがするねぇ.......。」

 

急に一之瀬が高円寺みたいに語尾を伸ばし始めた。考えてる時の癖.......なのか?

 

「きな臭いってどういう事だ?」

 

「えーとね、Aクラスが3つの派閥に別れてるのは知っているよね?」

 

「葛城と坂柳と綿白神だな?」

 

「うん、それで三輪君は葛城派閥のNo.2なんだよね。今回の試験坂柳派閥はNo.2の橋本くんだけ残してほぼみんなリタイアしてるみたいだし.......」

 

「つまり一之瀬は熊は坂柳派閥が何かしらの方法で用意したって思ってる訳だな?」

 

「うん、天野君は違うの?」

 

他クラスに情報って明け渡してもいいものだろうか。まぁいいや。龍園に制裁を食らったらそんときは本当にBクラスに逃げる事にしよう。

 

「熊をどう用意したかってのはさておき、もし熊なら坂柳のやり方にしては余りにリスキーすぎる。熊なんて用意して死者が出たら退学どころの騒ぎじゃないからな。コレはほかのやつでも同様だし、そもそも熊なんて用意仕様が無い。しかもこの島は国の徹底管理の元にあるし、本部も熊の方向を何やらわかっている節があった。本物では無いだろうな。」

 

「学校側もわかってて黙認してるって言うことは.......学校側か生徒の誰かしらが熊を用意したって事だよね?」

 

やはり一之瀬は頭の回転が早い。2000万ポイント払ってCクラスに連れて来れないかな。無理だろうけど。

 

「一之瀬は誰が犯人だと思う?」

 

一之瀬はしばらく考え込んだ仕草をしている。というか一之瀬無しでも回ってるっぽいけどこいつはこんな所で油売ってて良いんだろうか。仮にもクラスのリーダー.......だよな?不安になってきた。

 

「うーん.......やっぱり坂柳さん達じゃないかな?天野君はどう思うの?」

 

「まぁ消去法で言ってみるか、まずBクラスじゃあないよな?」

 

「うん、絶対違うと思うよ。」

 

一之瀬は心外だとでも言わんばかりに言ってくる。まぁBクラスがそんなやり口はしないだろう。と思いつつも黒幕Zの可能性はあるのか。まぁBクラスなら黒幕Zで確定だな。

 

「ちなみに多分Cクラスでも無い。仮に偽物を用意出来たとしてもおそらくこの特別試験のポイントを使うはずだ。Cクラスは既にポイントは0だから用意出来ないだろうな。今回の試験でプライベートポイントでも使ってれば別だが龍園の方針的に無いと思う。」

 

「一番こういうのやりそうだけどね.......」

 

一之瀬の言葉に俺は苦笑いをうかべる。確かにすぐに想像が着いてしまう。

 

「で、まぁ当然だけど葛城でも無いだろう。自分の右腕を消すメリットは無いしな。」

 

「となると残るのは学校側と坂柳さん達と綿白神さん達とDクラスだけど.......綿白神さん達もこの試験ほとんど残ってないし除外でいいのかな?」

 

「いや、それは早計だ。」

 

「どうして?」

 

まぁ.......船と連絡をつける方法なんて多分ないだろう。というか俺は一之瀬に甘い気がする。優しくされる事に弱いのかもしれないな。

 

「深夜にでも本部にバレないようにこっそり船から泳ぎでもすれば一応この島には来れる。それでまたタイミングを見計らって泳いで戻ればいい。ある程度の身体能力のある人間ならやれるだろうな。学校側にバレたらやばそうだけど。」

 

「綿白神さんの性格ならやりかねないって事か。」

 

一之瀬の評価が二段階上がった。やはりあの自称お嬢様は評価低いらしい。ざまぁみやがれ!

 

「そういう事だ。坂柳派閥はそんな事出来るやつは鬼頭ぐらいだろうが.......まぁ可能性としては無くはないし綿白神なら今言った方法でやりそうだからAクラスの可能性はあるかもな。ただ学校側に把握されてるっぽいしプライベートポイントでも使って許可を貰ったのかもしれない。」

 

「なるほどねぇ。学校側の用意って事はないのかな?」

 

何やら一瞬一之瀬の言い方に違和感を感じた。まるで話を逸らしたいような.......気の所為だろうか。

 

「山内事件で不足の負傷者を出したばかりだ。さらに負傷者を増やすようなやり方をするとは思えないし学校側の線は薄いだろう。」

 

「にゃるほどねぇ.......Dクラスは?」

 

そういえばさっきから質問攻めな気がする。まぁいいけど。

 

「Dクラスで泳いで来れそうなやつは船に何人かいるが.......そのうちの平田以外の人間はクラスに貢献なんてする気はさらさらないだろうし、平田なら無人島に初めから残した方がDクラスのメリットになる。ちょっと非効率だな。そして今この島にいるDクラスの奴らじゃ熊の偽物とか思いつかんだろうな。」

 

「まぁそうだろうねぇ.......てことはAクラスのどっちかってことかな。」

 

俺はこの試験毎日一之瀬と話してるだけで終わりそうで怖い。だがハンモックの安らぎと美少女野一之瀬が誘惑してくる。キャバクラみたいだな。

 

「にゃるほどねぇ.......ありがとう、参考になったよ。Bクラスに来たらやっぱり頼りになりそうだねぇ。」

 

「いやいや気にするな。頼りになるとは思えんけどな。」

 

俺の勧誘も黒幕Zの支持だろうか。全てが黒幕Zの指示な気がしてイマイチ信用ならんな。

 

そういえば綿白神の話を話してる最中に一之瀬に違和感を感じたような気がする。うーん.......違う気がする。裏で繋がってるとも思えないし熊の件について別に首謀してるという感じでも無かった。というかBクラスだったら怖すぎる。一之瀬がそんな事許容するとは思えない。

 

そうなると導き出される結論は一つ、おそらくはリタイアしている誰かしらがこっちに来る事を学校側にプライベートポイントで許可を貰った。という事になる。そいつが黒幕Zなのか、それともリーダーなのかは変わらないがそういう事だろう。

 

いや待てよ.......黒幕Zは録音機の所で話していた、という事はクラス内にいる誰かなのだろう。つまりリーダーはリタイアした奴の中にいる、それも男子で。

 

こうなると絞り込めそうなんだけどなぁ.......うーん。

 

取り敢えず俺は目の前にあるカンパチの刺身を食べて二度寝をする事にした。ハンモック最高!!

 

「お邪魔させてもらうわ。」

 

しかし俺の二度寝は華麗に邪魔された。恐らくはBクラスの視察に来たのであろう堀北、邪魔すんじゃねぇ。ちなみに綾小路がリタイアしているせいなのか櫛田と来ていた。相性最悪だろこれ。

 

「やっほー堀北さん、偵察かな?」

 

一之瀬が相手しに行った。よしとけばいいのに。取り敢えず俺は堀北に顔がバレないよう逆方向を向いて狸寝入りをしておく。

 

「えぇ、それよりも.......BクラスにもCクラスの生徒がいるのかしら?」

 

「うん、天野君がいるよ、でもそれがどうかしたの?」

 

おいこらバカ言うな。あいつと話すとか絶対嫌だぞ俺。

 

「天野.......誰だったかしら?どこかで聞き覚えがあるような.......思い出せないわね。」

 

「元々DクラスにいてCクラスに行ったじゃん、覚えてないの堀北さん?」

 

櫛田、どうして余計な事を言うんだ。これだからDクラスは.......

 

「あぁ.......あの虐めに抵抗すら出来ず挙句の果てにDクラスの金を無断で使ってCクラスに逃げた愚か者ね。会わせなさい。彼には文句を言いたい事がごまんとあるわ。」

 

「だ、ダメだよ堀北さん!それに元々あのプライベートポイントは天野君のものだし天野君は愚か者じゃないよ。」

 

虐めに抵抗出来てないところと逃げた事は否定してくれないのか櫛田.......。ちょっと悲しいぞ。

 

「天野君ならあそこにいるよ。」

 

そう言って俺の方に指を刺される、一之瀬何やってんだよお前!

 

そうこうしているうちに櫛田と一之瀬、堀北が来る。一先ず狸寝入りだ。

 

「寝てるみたいだしそっとしておいてあげようよ。」

 

いいぞ櫛田。このまま上手い事言ったらお前はDクラスの奴らみたいに復讐は無しにしてやる。

 

「関係ないわね.......えいっ!」

 

「いった!何するんだお前!!」

 

堀北の脇腹への突きを喰らい、思わず叫んでしまった。いやこいつ神経おかしいだろ。

 

「ほら、やはり狸寝入りだったわね。寝たフリとは負け犬らしい思考ね。」

 

「いやいやいやいや、お前他クラスへの暴力行為は即失格だろ!それにいきなり突きなんかくらったら寝てても目を覚ますに決まってんだろ!!」

 

いや色々とやばい奴だが兎にも角にも頭に来る。こんなにストレスが溜まるのはそうは無い。こいつは狂人かなにかなのか?

 

「堀北さん.......謝った方がいいよ!」

別に櫛田のせいでは無いのだが、止めなかった櫛田にもなんだか腹が立ってきた。

 

「ごめんね天野君.......まさかいきなりあんな人として有り得ない事をするなんて思えなくて.......。」

 

一一之瀬が頭をこちらに下げて謝ってくる。流石は本物の大天使だ、だが俺の頭に湧いてきた怒りは収まらなかった。昔から怒ると言っちゃいけない事を言ってしまう性格なので極力抑えているのだがどうも堀北だけは無理だな。

 

「暴力?暴力だって言える証拠はあるのかしら?それに万が一あったとしても貴方のような軟弱者に訴えを出来る度胸なんてある訳ないわ。」

 

こいつはテロリストか何かなのか?

 

「天野君、訴えよう。私が証人になるから。Dクラスにいた頃から毎日こんな目に遭ってたなんて悲しすぎるよ。」

「俺も見てたぞ!」「私も!」「俺も協力する。」

 

一之瀬が心底悲しそうに言う。やっぱり大天使だな。それにBクラスの生徒達も皆協力してくれるらしい。良いクラスだな本当に。

 

「そうだな、訴えるか。」

 

俺も訴える決心をした。まぁ始めから訴えるか龍園にチクる気満々だったんだが訴える方向性で行こう。

 

「何故あなた達が彼の味方をするの!メリットは無いはずよ。」

メリットは無いかもしれないが人としての最低限の常識はあるんだろ、お前と違って。

 

「今のはどう頑張っても堀北さんが悪いよ.......謝らないと。」

 

櫛田がフォローをするがもう遅いだろう。というか謝られたからと言って許せるものでも無いしな。

 

「だいたい貴方達がなんと言おうと彼は弱虫だから訴える度胸なんて無いはずよ。私は悪くないわ。」

俺の頭に青筋が今頃浮かんでいる頃だろう。此奴は山内レベルだぞ。

 

「いや訴えるだろ普通に。そして悪いのはどう見えもお前だよ。やっぱりDクラスって本当に腐ってんな。」

 

「そうだそうだ!」「堀北最低だな!」

Bクラスから声援が入る。ありがたやありがたや。

 

「ふざけないで頂戴!貴方達に何のメリットがあるの!!」

 

堀北が心外と言った表情で叫び返すがIQ20ぐらいだろこいつ。

 

「メリットならあるよ。ライバルであるDクラスのポイントが減るからね。でもメリットとか以前に人として見過ごせない。それがこれからクラスメイトになる人なら尚更ね。」

 

「クラスメイト、どういう事かしら?彼はDクラスからCクラスに逃げた負け犬のはずよ。」

 

堀北が訳が分からなさそうに聞く。というかこいつメンタル強すぎだろ。

 

「天野君は負け犬じゃないよ。それと私達は2000万ポイント用意して天野君をBクラスに移籍させるつもりなの。天野君も前向きに打診してくれてる。」

 

まぁ実際割と前向きである。AクラスとDクラスが論外なせいだが。

 

「っ.......。あなたにはプライドというものがないの?」

 

堀北がこちらを睨んでくる。この状況で睨むとかコイツは何考えてるんだ?

 

「そういうお前にはモラルってものがないのか?、あんな事山内でもやらないぞ。やっぱりDクラスはゴミだな。」

 

「.......っ。彼なんかと一緒にしないで頂戴!だいたい唯一の長所だった金も無くなった貴方と違って私が本来Dクラスなのはおかしいわ。これは学校側のミスに決まってるわ!!」

 

もはや目眩すら覚えるレベルなんだがこいつ.......。本来言うべきじゃない情報の数数が頭をよぎる。絶対にこれからを考えたら言うべきでは無い。だがそんな理性すら吹き飛ばすほどに俺は堀北に憎しみを覚えていた。周りにBクラスは半分ほどいる。黒幕Zがいる可能性も十二分に有り得るのだが.......俺の本能は止まってくれなかった。きっと俺は後悔する。後で頭を抱える事になる。

 

..............だが俺は目の前のこいつを許せない。許したくない。

 

 

 

「まず俺のプライベートポイントはまだ2億近くあるし、俺の長所はそれだけでは無い。少なくとも俺はお前より優秀な自信がある。あとお前は山内と対して変わらないし、なんなら今はお前のが下なんじゃないか?それとお前がDクラス以外のどこのクラスに配属されるって言うんだよ。」

 

言ってしまった。2億という額に周りがザワつくがもう知った事か。俺は止まれない。止まる術を知らないのだ。怒りのビッグウェーブに俺は乗るしか無かった。

 

「.......自己分析すら出来ないとは哀れね、訴えられるものなら訴えればいいわ。私は悪くないもの。」

 

なんだこいつ、アホなんじゃないのか。

 

「自己分析出来ないのはお前だろ。それなら訴えさせてもらう。お前が敬愛する生徒会長のお兄様から退学の報告を貰ってくる事だな。」

 

「.......兄さんは関係ないでしょう!それに私は退学なんてしないわ。」

 

「いやぁ.......暴力的なお前の兄様の事だ。一族の恥であるお前なんか退学させたいだろうよ。まぁお前のした事はしっかりお兄様にも報告してやるよ。」

 

「.......私は.......恥なんかじゃないわ、兄さんは暴力的なんかじゃない。」

 

「いやぁ.......5月のお前らのやり取りを見てたらどう見ても暴力的だけどな。端末に動画もあるぜ?」

俺はまたも出すべきでは無い情報を出してしまう。完全に口が止まってくれない。怒りって怖いな。

 

「なんで貴方がそれを.......兄さんは関係ないわ。」

「まぁともかくお前は訴えるし、お前らDクラスにはこれから地獄を見せてやるよ。」

「帰るわよ.......櫛田さん。」

 

負け犬の遠吠えというが、もはや遠吠えする事すら出来ないらしい。堀北は櫛田を連れて帰ろうとしたがまぁ訴えることは決定だな。

 

「その.......堀北のバカ.......堀北さんが本当にごめんなさい。謝って許されることじゃないけど.......謝りたいな。」

 

櫛田は泣きそうな顔でこちらに謝罪をしてくる。というか今一瞬仮面が外れかかってなかったか?

 

「あいつはクラスの総意を取って退学させた方がいいと思うぞ。マジで。」

 

「あんな人でもクラスメイトだから.......」

 

大変だなコイツも。Dクラスじゃなきゃもう少し楽な生活ができただろうに。

 

「それにしてもろくな人がいないねDクラス.......」

 

一之瀬がひきつった顔で言ってくる。大天使一之瀬の顔を引き攣らせるとか偉業だろ。マジで。

 

「唯我独尊自由人に万引き犯、器物破損者に暴力事件の犯人、虐めをする奴らに暴君に高飛車毒舌女、腹黒女に脅迫者、退学が嫌で暴れ回ったやつに満場一致で退学を叩きつけられたやつ、元いじめられっ子に赤点退学者、学力至上主義者に不良上がり、オタクにギャルにDQNに陰キャに感情ねぇやつにコミュ障、6バカに自己中野郎か。救いようが無さすぎないか?」

 

なんかほとんどが堀北と6馬鹿な気がするが気の所為だろう。

 

 

「え?今なんて?」

 

櫛田が聞き返してくるが俺も全部上げ直そうにも覚えていないし無理だな。

 

「まぁともかく、ヤベェ奴らの巣窟過ぎるだろ。一抜けして正解だろ。」

 

Cクラスに逃げ込んだのはマジで英断だと思う。

 

「あはは.......それよりも2億プライベートポイント持ってるって本当?それならBクラスにこればいいのに.......」

 

一之瀬視点はまぁそうなるよな。完全に俺の口が滑った。

 

「そうだなぁ.......それよりも前にさ、BクラスとCクラスでDクラス、特に堀北に痛い目を見せるために同盟を結ばないか?龍園は間違えなくこういうのが好みだろうから賛同するだろうよ。」

 

「さすがに龍園君ほどじゃないけど.......私も堀北さんは許せないし協力したいかな?よろしくね。」

 

俺と一之瀬は互いに握手を結ぶ。目の前でオロオロしている櫛田は取り敢えず無視でいいだろう。

 

「その話、Aクラスも混ぜてもらおうか。俺達もDクラスには恨みがある。」

 

後ろを振り返ると葛城と橋本がいた。大変珍しい組み合わせだ。

 

「俺達葛城派と坂柳派はその同盟に賛成している。過半数が賛成している以上綿白神派にも反対はできないだろう。」

 

「そうだな、それじゃあ3クラスでDクラスには痛い目を見せる方針で行こう。と言っても基本的には普通に過ごして、痛い目は見せられそうな時に見せるけどな。」

 

こうして俺達の同盟が完成する。目の前にいた櫛田は頭を抱えて何処かへ行ってしまった。

 

その後俺達は解散し、俺は龍園への報告のために森へと向かった。もちろんBクラスから許可は貰っている。

 

「待って。話があるの。」

 

そう言って後ろから櫛田がやって来た.......が少なくとも天使モードでは無い。まぁ堀北の件でストレスはえぐそうだし仕方ないのか?

 

「ん?どうしたんだ櫛田?」

 

まあ取り敢えず気付かないフリをしておこう。

 

「さっきの腹黒女って私だよね.......一体いつから気づいていたのかな?」

今日の俺は大変口がよく滑るらしい。堀北のせいで冷静さを失いまくっている。あいつはある意味最強かもしれない。

 

「最初から、かな?」

 

もはや誤魔化すのすらめんどいので俺は否定せずに言う。学校と違い櫛田は体操服、指紋を残すなんて芸当はできないだろう。まぁ仮に訴えでもしてもプライベートポイントで揉み消すのだが、そして仮に櫛田が俺の評判を下げようとも俺の悪評は既に大量にある。無意味だ。

 

つまり櫛田の武器は全て俺に相性最悪、こいつは俺に何も出来ないはずだ。

 

「最初からなんだ.......私の裏の顔を見て気持ち悪いって思ってたから距離を置いてたのかな?」

 

「いや気持ち悪いとはずっと思ってないし、虐められてる被害者と関わった奴も虐めに巻き込まれるってよく言うだろ?」

 

「それを私が信じるとでも?」

 

「ここで嘘を吐く理由もないだろ。お前が俺を何かしらの方法で訴えても俺はプライベートポイントで揉み消せるし、噂で俺の評判を落とそうにも俺は冤罪事件のせいで評判もクソもない。今のお前じゃ俺をどうする事も出来ないのにここで気を使う理由がどこにあんだよ。それにあのゴミみたいなDクラスにストレス貯めるのは当たり前だろ。同情こそするけど気持ち悪いとはならねぇよ。」

 

「もし私が訴えでもしたらその時は3クラスから私は狙われるもんね、確かにどうする事も出来ないね。」

 

櫛田の言う通りである。いわば櫛田の首元に俺がナイフを突き付けているわけだ。

 

「そういう事だ。ついでにもし気持ち悪いと本気で思ってるならお前は既に堀北みたいに3クラスから狙うターゲットになってるだろうよ。」

 

堀北があまりにも反面教師すぎる。この世界線の成長は寧ろ-だな。

 

「昔色々あってね、裏の顔がバレちゃった事があったんだ。」

 

櫛田は昔の事を語り始めた。中学の事件だろう。俺は前回の反省を生かしお口チャックをする。

 

「それで、クラス中が無茶苦茶になっちゃって.......私は当然だけど皆から嫌われたの。」

 

櫛田はなおも話し続ける、何故そんな事を話すのか、俺を退学に出来ないのに話す理由など無い気がする

 

「それで高校こそは.......って思ったんだけどやっぱりダメだったみたいだね.......」

 

「俺以外にはバレてないだろ。」

 

堀北と同じ中学な事は伏せておく。反省は活かす!タコス!イカすみ!タコすみ!

 

「あはは.......まぁそうだね。でもこれから天野君が話さない保証はないよね。」

 

まぁそれは確かにそうだ。というか俺は黙っとくとも言った覚えは無いんだけどなぁ。

 

「正直今のDクラスが酷すぎるから裏の顔が出てもついに壊れたか程度にしか皆思わんと思うけどなぁ.......」

 

「そうかもしれないけど.......一応信頼が崩れる可能性があるんだよね。それは嫌だから。」

 

律儀なことだ。今のDクラスは恨んではいるが俺は櫛田にはちょっと同情してしまう。矛盾だな。

 

「まぁ.......無理はするなよ。ほんと。」

 

「ありがとう.......それで天野君って2億近くポイントがあるんだよね?」

 

「まぁそうだね。」

 

実際には1億8000万ちょっとだがまぁ誤差ってことにしておこう。

 

「天野君の事攻撃したりしないって約束するしちゃんとAクラスを目指すのに頑張るからさ、私をCクラスに入れるのに2000万ポイント払ってくれないかな?その代わり私に出来ることなら何でもする。要は命乞いみたいなものだよ。」

 

いやいやいやいやわけがわからん。どうしてそうなるんだ。

 

「声に出てるよ.......私がどう頑張っても天野君を退学させるなんて出来ないし、しようものなら先に私が退学させられちゃうよね?」

 

「いや命乞いの方はまぁわかる。2000万俺が払うくだりは一切わからん。」

 

何がどうしてそうなった。俺のメリットってなんだ?考えれば考えるほどわからん。

 

「私が今のDクラスにいたらいつか絶対に爆発しちゃう。今のDクラスは地獄過ぎるから。だからほかのクラスに逃げ出したいんだけど、当然よっぽどの余裕でも無い限り他のクラスが私のために2000万ポイント出してくれる事なんてありえないと思うんだ。優秀な人も多いし。私もそこそこ上の方になれる自信はあるけど2000万払うほどの価値は感じて貰えないと思う。しかもDクラスってだけでさらに不利。」

 

まぁ実際そうだろう。そして何となく櫛田の望みは見えてきた。

 

「だから、2億プライベートポイントもある天野君に縋るぐらいしかこのクラスから抜け出す方法は無いんだよね。もちろんDクラスに虐められて恨みを持ってる天野君が虐めを見て見ぬふりした私を助けてくれるとは思えないけど.......それでも私には今のクラスは辛すぎるの。一応意思だけでも伝えとこうと思って。」

 

櫛田本人も通るとは思っていないのだろう。全てを諦めたような目をしていた。それは何処か前世の自分にも似ているような目。

 

「櫛田、Dクラスは辛そうだな。」

 

「うん、すごく辛い。」

 

一瞬、櫛田が昔の自分と重なって見えた。夢敗れ、ブラック企業の会社に就職して、中間管理職になり、上から毎日無茶な事を言われながら何とか仕事をこなし、そこから逃げる事を諦めた前世の自分。

 

だからなのだろうか、助けたいと思ってしまった。目の前にいる櫛田は一切信用出来ないし、虐めは見過ごすし、俺が困ってた時は助けてくれなかった。助ける理由など論理的に見てどこにも無い。無いはずなんだ。

 

「じゃあDクラスのスパイをしてもらおうか、Dクラスにスパイがバレるかどこかしらの期限までスパイを続けたらCクラスに来るって言うのでいいか?」

 

「え?え?なんで?」

 

櫛田が困惑した声で言う。

 

もちろん助ける理由なんて無い。

 

無いはずなのだが俺は今目の前の少女に救いの手を差し伸べようとしている。勿論全てを許すつもりは無い。堀北や山内みたいな積極的に虐めをしてたクズどもは地獄を見るべきだし、綿白神達に関しても同様だ。だが、俺が櫛田だった時、果たして俺は今の俺の位置にいる人間を助けられるだろうか。

 

スパイって事にしとけば龍園にも許可はまぁ取れるだろう。俺が去った後のDクラスがどれほどか知らないが地獄だったことだけは分かる。

 

「俺が困ってる時に誰も助けてくれなかったから、俺は誰かが困ってたら助けてあげたい.......のかもしれないな。」

 

とは言いつつも俺にもよく分からない。非効率なのは間違えないんだが.......俺はなんで助けようとしているのだろう。

 

スパイをさせるだけさせてバレたら足切りをすればいい。理性がそう言い訳を作る。俺の脳は一先ずその言い訳を自分の中の理由として無理矢理納得させた。そうしなければこの復讐心が何か間違った様なものの気がしてならなかった。

 

俺の復讐心が間違ったものなんかでは勿論無いだろう、だがそれを今の櫛田に向けるのは何か違う気がした、向けるべきなのは虐めてきたDクラスの奴ら、何よりも綿白神な筈だ。俺はDクラスへの怒りのあまりそれすら見失っていたのかもしれないな。

 

「ありがとう.......あり.......がとうぅ.......。」

 

櫛田は泣きながらお礼を言う。俺はポケットからハンカチを取り出した。昔ジェントルを名乗る怪しい男に押し売りされたものだがハンカチを持っといてよかった。

 

「これ使って。」

 

俺はハンカチを櫛田に差し出す。押し売りのセールスマンには感謝しとく。

 

「ありがとう.......私、天野君のために頑張ってスパイするね.......。」

 

 

「無理はするなよ。」

 

「取り敢えずDクラスのリーダーは堀北だよ。リーダーやるって言ったら皆反発してたけど勝手に先生に報告してリーダーになっちゃったみたい。その後皆が文句言ってて地獄だったよ。」

 

「お疲れ様.......よく頑張ったな。」

 

リーダー堀北は予報通りの結果だが過程は全然違った。原作通り櫛田が推薦したのかと思ったけど普通に堀北が無能かましてただけだったわ。原作知識でドヤるの良くねぇわやっぱ。

 

まぁその後は予想が着く。櫛田も大変だな.......。

 

「うん、今日は本当にありがとう。また何か分かったら教えに来るね。私天野君のために頑張るから。」

 

「ありがとう。」

 

櫛田は逆方向に走り去っていった。なんか俺のためって部分を強調された気がするがこれが俗に言うあざとい戦法ってやつなんだろうか.......。そんな事を考えながら俺は龍園の元へと向かった。

山内に再登場

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