ようこそ間違った教室へ   作:あもう

37 / 86
説明

 

 指定された20時40分、その15分前に俺は招集場所に来ていた。二階のこの層は本来生徒は立ち入り禁止の場所なはずだ。しかし少し視線を動かせば、あちらこちらに生徒が居て、目の前の部屋に入っていいのか相談しているようだった。おそらく彼らも、メールで呼び出されたからだろう。というかそもそも生徒の立入禁止の場所に入っていいのかすら怪しいのだが……まぁいいか。

 

 

取り敢えず今回の試験の作戦は一つ、先手必勝だ。言わずもがなだがDクラスが例え全部取ろうとも追い抜かれる事は無い。が、A、Bクラスの警戒はするべきだろう。

 

それにしても、これは部屋に入って良いのだろうか。他の生徒は入る様子は無い。俺はここで待つ事にした。5分ほどたっただろうか、俺と同じ場所にアルベルトが現れた。お早いおつきですこと。まぁ俺が言えるがらでは無いが。

 

「どうやら揃ったようだな、入りなさい。」

 

目の前の部屋の内側からドアが開く、ドアは内開きなせいで顔は見れないが、低く太い声な所を見ると茶柱か男の先生だろう。若作りしてる星ノ宮先生の声とは思えない。

 

……今なんか一個隣の部屋から殺気が飛んできたような……気の所為だな。うん。

 

 

俺は何処かから飛んできた殺気に焦ったので一度深呼吸してから、扉の空いた部屋に足を踏み入れた。アルベルトも続く。

 

するとそこには、スーツ姿の一年A組の担任、真嶋先生が立っていた。テーブルの上に置かれているのはおそらく干支試験の資料だろう。

 

 

「そこの席に座りなさい。」

 

 

 

 真嶋先生が三人分の椅子を引っ張りながら、指示を下した。

 

 

「座ろうか、アルベルト。」

 

「YES!BOSS!」

 

前々から思っていたんだがアルベルトはYES!BOSS!しか言えないのだろうか。

 

そして誰かは分からないが謎の空席の存在、そのまま沈黙の時が流れる。

 

そして時刻は20時40分を迎えた。

 

しかし空席は埋まらなかった。遅刻している生徒がいるのか、それとも山内の一件の怪我7日、無人島試験の怪我なのか、そもそもこの空席ははたして誰なのだろう?これ本当に干支試験であってるよな。不安になってきたぞ。

 

とはいえこの面子は同じクラスの生徒が集められているはずだ。1クラス二人~3人だと思っていたんだがなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

「一年Cクラス、天野聖、山田アルベルトだな。まずは本来ここのグループだった龍園翔は熊に襲われたため不参加になってしまった事を残念に思う。それでは今から、第二回特別試験の説明を行う。質問は許可するまで受け付かないのでそのつもりで。逆に、こちらが質問したら、答えられる範囲で答えるように。分かったな?」

 

 

 

「はい」「YES!BOSS!」

 

こいつ、YES!BOSSしか言えないのか…?

というか最期の一枠は龍園……まぁ辰グループなんだから当たり前っちゃ当たり前なんだが、それにしてもやはり参加出来ないのか。Cクラスにとっては痛いスタートだな。

 

 

「それではまず質問だが、きみたちは十二支を知っているか?」

 

 

俺は頷く……がアルベルトは首を横に傾げていた。そういやこいつ日本人じゃねぇもんな。まぁ日本人なのにセイントとかいう名前の俺が言える話でも無いけどさ。

 

 

 

「子ね、牛うし、寅とら、卯う、辰たつ、巳み、午うま、未ひつじ、申さる、酉とり、戌いぬ、亥いの事だ。1年事に交代するその年を代表する動物みたいなもんだと思ってくれればいい。12年で1サイクルだな。」

 

それを聞いてアルベルトが理解を示したのか頷く。

 

「その通りだ。今回の特別試験では、一年生全員を十二のグループ、つまり、干支に分けて行う。そして試験の目的はシンキング能力を問うものとなっている」

 

 

良かった。もしこれで仮に「別の試験になりました!」とかだったら納得出来なかったしな。

 

 

「社会人に求められるのは多くあるが、しかし、基本的には大きく三つに分けられる。行動力のActive、思考力のThinking、そして協調性のCommunicationだ。この前の無人島生活では、協調性に比重が置かれていた。それはきみたちが一週間で身をもって痛感しただろう。だが、今回は思考力という事だ。」

 

 

やはり来たか、俺はそれを聞いて頷くがアルベルトは首を横に傾げていた。いやお前の得意な英語だろうが。なんでだよ。

 

 

 

「アルベルト、意味、分かるか?」

 

 

 

「YES!BOSS!」

 

絶対分かってないなこいつ……YES!BOSS!って言えばいいと思ってやがるな。

 

 

「つまりだ。思考力……考え抜く力とはある課題に対してそれを分析、解決するためのプロセスを考える力だ。想像力を働かせ、新しい価値や様々なやり方を生み出す力。それが今回は必要ってことだな。着いてこれてるか?」

 

アルベルトは首を縦に振った。大丈夫そうだな。

 

 

「察しているとは思うが、ここに居る2人は同じグループとなる。そして今この瞬間、別の部屋でも『きみたちと同じグループとなる』生徒たちに同じ説明がされている。」

 

 

 

アルベルトはまたも首を傾げるが、これから説明があるだろうからちょっと待ってろよ。取り敢えず干支ではあるらしいから安心した。

 

 

 

「先程の私の『きみたちと同じグループとなる』という発言。これは、他クラスの生徒が同じグループになる、ということだ。そして今回はA~D、全ての生徒が入り交じったうえで試験に臨むことになる。メンバーも厳正な判断の元決められている。」

 

 

アルベルトは納得のいった顔で頷いていた。それを見た真嶋先生は続けて問題ないと話したのか話を続ける。

 

 

「各グループは一つのクラスで構成されることなく、各クラスから2から4人ほどを集めて行われる。そして今回、きみたちの『仲間』になる。事前説明がなければ混乱するだろうからな。それでは試験が成立しない。なら、こちらの方が遥かに効率が良いという訳だ。加えてクラスが別れていた方が考えも纏めやすいという配慮もある。」

 

 

 それを聞いたアルベルトはブンブン頷いていた。俺もそれに関しては同意見だ。

 

 

 

 

「他クラスと仲間になる事については特に問題は無さそうだな。」

 

 

「無人島試験の時にも他クラスとは一応契約を結んでいましたので。それと同じ事ですよね?」

 

真嶋先生は首を縦に頷く。

 

 

俺たちCクラスは、無人島試験で一年Aクラス、Bクラスとと正式な同盟関係を結んでいる。今回の試験でもその同盟のように同盟を結べるかもしれない。

 

今回は規模こそ違うが、その延長上にある。各グループ事にはなるがクラス内で統率が取れてさえいれば多少のタイムラグがあるだけで本質は変わらないだろう。

 

 

 

「話を続けよう。今回、きみたちが配属されるのは『辰』のグループ。そしてここにメンバーリストがある。必要を感じるのであれば、メモをとってくれても構わない。退室時には返却してもらうので、そのつもりで。ただし写真を撮るのはNGだ。」

 

 

 

 言いながら、ハガキサイズの紙が渡される。そこにはグループ名である『辰』の文字と──『龍』とかっこで書かれていた。これからは馴染み深いこちらで表記した方が良いだろう。アルベルトにとってはドラゴンか?まぁいいや。そこにはメンバーの名前が記載されていた。

 

 

 

 一年A組──葛城康平(かつらぎこうへい)、戸塚弥彦(とづかやひこ)、綿白神姫華(わたしらがひめか)

 

 一年B組──一之瀬帆波(いちのせほなみ)、神崎隆二(かんざきりゅうじ)、葉山勇斗(はやまゆうと)

 

 一年C組──天野 聖(あまの セイント)、山田アルベルト(やまだアルベルト)、龍園翔(りゅうえんかける)

 

 一年D組──櫛田桔梗(くしだききょう)、佐藤麻耶(さとうまや)、平田洋介(ひらたようすけ)

 

 

 

 

 

 

「うわー。綿白神いんのかよ……」

 

 

 

思わず俺は憂鬱すぎてため息を吐いた。彼女との関係はとても複雑だ。かたや、冤罪をかけられた被害者、かたや、冤罪を被せた共犯者のようなものである。学校側は損害賠償で口止めとしたと茶柱によって伝えられている以上──本来ならこのような対応はありえないだろうが──綿白神にペナルティが課せられることはない。だからこそ、顔を合わせたくは無い。しかもこのグループディスカッションの試験で。しかし、坂柳理事長が話したように、そういった行動をしようにも冤罪だと分かった上で権力の名の元に押さえつけられている、そのままなのはどういうわけなのか……。気になるが、俺にはどうしようもない話なの首を突っ込んでも無駄だろう。やはりNewton工房が権力を握ったのはあの一件のせいだろうが、まぁ例え俺が冤罪だとわかったとしても真犯人は分からないだろうし無意味か。

 

 

 

 

だが今はそれよりも優先するべきことがある。

 

 真嶋先生が話を再開させるべく、喉を鳴らす。俺は思考を中断し、すぐに聞く姿勢をとった。

 

 

 

「今回の試験、クラスとしての枠組みは一度とっぱらって考える事をおすすめするをつまり、Dクラスではなく、龍グループとして行動をした方が賢明と言えよう。また、龍園、綿白神の両名は山内、熊のせいで不参加となっている。」

 

 

つまりクラスは抜きにして五十音順に並べろって事だな。隣ではアルベルトが理解が追いついてないらしいがスルーだ。

 

 

 

「特別試験の各グループにおける結果は四通りしかない。例外は存在せず、必ずどれかに当て嵌る。これはそういった試験だ。これを見なさい」

 

 

 言いながら、俺とアルベルトに次の資料が配布される。

 

 アルベルトの紙の端が若干しなっているのは、前のグループの生徒の所為だろう。つまり、この資料も生徒に持ち帰らせる気はないようだ。

 

 俺たちは命じられるがままにその資料に目を通す。俺の分はホッチキスでとめられていた、それも最近話題の芯なしで止められるやつだ。一枚捲ると、分かっていたことだが、特別試験の基本ルールについて記載されていた。

 

 

 

 

 

 ─夏季グループ別特別試験説明─

 

 

 

 本試験では各グループに割り当てられた『優待者』を基点とした課題となる。定められた方法で学校に答えを提出することで、四つの結果のうち一つを必ず得ることになる。

 

 基本的なルールは以下の通りである。

 

 

 

 ・試験開始当日、午前八時に学校から一学年全生徒に向けてメールを送る。『優待者』に選ばれた者には同時にその旨を伝える。

 

 

 

 ・試験の日程は明日から5日後の午後9時までとする。なお、一日の完全自由日を挟むとする。

 

 

 

 ・一日に2度、グループだけで所定の時間及び部屋に集まり、一時間の話し合いを行うこと。

 

 

 

 ・一時間の過ごし方は各グループの自由とする。話し合いが望ましいが、最悪、部屋から出なければそれで良い。

 

 

 

 ・試験の解答は試験終了後、午後9時30分から午後10時までの30分とする。

 

 

 

 ・解答は、一人につき一回までとする。2回以上行った場合、学校側は受け付けない。

 

 

 

 ・解答は自分の携帯端末を使い、貼られたメールアドレスに送信すること。それ以外は一切受け付けない。

 

 

 

 ・『優待者』にはメールにて答えを送る権利が無い。

 

 

 

 ・自分が所属するグループ以外への解答は無効とする。

 

 

 

 ・試験結果については、最終日の午後11時、第一学年全生徒に向けてメールにて知らせる。

 

 

 

 

 大まかなルールとしては以上の通りだが、さらにルールは細かく枝分かれし、禁則事項も多い。今回の特別試験、干支試験は先の特別試験よりも厳密に定められているようだ。

 

 

 

「アルベルト、これをメモれ。」

 

「YES!BOSS!」

 

 

元気よく返答をしたアルベルトは、ポケットから流暢にメモ帳を取りだし、メモを開始した。

 

ある程度メモが進んだのを確認してから、真嶋先生はページを捲るよう指示を出す。はたして、そこには特別試験の『結果』について記載されていた。

 

 

 

 

 

 

 ─試験結果─

 

 

 

 ・結果Ⅰ──グループ内で優待者及び優待者の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合。グループ全員に50万プライベートポイントを支給する。さらに、優待者にはその功績を称え、50万ポイントが追加で支給される。

 

 

 

 ・結果Ⅱ──優待者及び所属するクラスメイトを除く全員の答えで、一人でも未回答や不正解があった場合、優待者には50万プライベートポイントを支給し、優待者以外のクラスのクラスポイントを罰として50マイナスするものとする。(今回の試験のクラスポイントのマイナスは、クラスポイントが0になったクラスにも負債としてマイナスされるものとする。)

 

 

 

 

 

 

 

これを見たアルベルトの顔に驚愕の表情が走る。

 

 

 

無理もないだろう。

 

何せ、100万プライベートポイントすら獲得可能なのだから。はっきり言って破格すぎる。個人資産として約2億プライベートポイントを持っている俺とクラスの貯金箱役をやっている奴を除けばこれほどの額を持っている奴はいないだろう。

 

 そして試験の鍵を握るのは『優待者』の存在だ。

 

 

 

「それでは口頭で説明をする。まず今回の特別試験において、『優待者』は非常に大きなアドバンテージを持っている。これは分かるか?」

 

 

 

流石にこれはアルベルトも分かったようだった。俺達が理解している事を確認して真嶋先生は話を続ける。

 

 

 

「例えばそうだな……アルベルト、お前が『優待者』だとしよう。その場合、『龍』グループの全員が解答に『山田アルベルト』と記載したとすれば、おめでとう、きみたち全員に漏れなく50万プライベートポイントが入る。アルベルトはさらに50万プライベートポイントが追加される。逆に誰か一人でも解答を間違えた場合、その時はアルベルトだけが50万プライベートポイントを獲得出来るというわけだ。」

 

それを聞いたアルベルトは再び驚愕したようだ。持っていたペンを落としてしまい、カラカラと音が鳴る。

 

 

 

「──突然だが、きみたちは『人狼ゲーム』というものを知っているか?今回はそのようなものだと考えてもらっても差し支えない。」

 

 

俺はアルベルトの方を向く。アルベルトはどうやら人狼ゲームは知らないらしい。

 

 

 

 「人狼ゲームってのは、百均なんかでも売っているパーティーゲームの一種だ。これは、会話、そして自身の推理力が必要で、それらを武器にプレイヤーがゲームを自分の有利になるよう進めるんだよ。

 

 ルールはいたってシンプルだ。

 

 プレイヤーは、『村人』──、もしくは村人に成りすました『人狼』に分けられる。そして村人陣営対人狼陣営の戦いになる。村人の中には特定の人物を人狼か確認できる占い師とか、村人だけど人狼を勝たせたら勝ちになる裏切り者なんかが居る。

 

人狼は夜に村人を襲って殺すため、村人は殺されないために人狼を探し、投票して吊るす必要があるんだ。

 

んでこのゲームには二つの時間がある。プレイヤー側のターンである『昼』と人狼側のターンである『夜』だ。

 

『昼』の時間帯はプレイヤー間での話し合いになり、プレイヤーは村人に扮した人狼を探す。そして人狼だと思われるプレイヤーを絞り、処刑する。これで人狼を全部吊れれば勝ちだな。

 

『夜』の時間帯は人狼が村人を一人喰う。喰われた村人は死んだ扱いになるので、ゲームから強制的に脱落する。これで村人を食って村人を全滅させれりゃ勝ちだな。

 

 こうやってプレイヤーはゲームの進行とともに減っていき……どちらが生き残るのかを勝負するってわけだ。

 

理解出来たか?」

 

アルベルトは頷く。人狼ゲームなんてのは要はただの嘘つきを見破るゲームである。前世では毎回初日に吊られるか食われるかしてたからつまらなかったとかでは無い。

 

 

 

「それを理解したところで裏を捲りなさい。そこに試験結果ⅢとⅣが書かれている」

 

 

俺は紙を裏にめくる。アルベルトも俺を真似るように捲る。捲る際に俺は紙で指を切ってしまった。やっちまったぜ。

 

 

 

 ─試験結果─

 

 

 

 以下の二つの結果に関してのみ、試験中、二十四時間いつでも解答を受け付けるものとする。また試験終了後三十分間も解答を受け付けるが、どちらの時間帯でも間違えばペナルティが発生する。

 

 

 ・結果Ⅲ──優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ正解していた場合。答えた生徒の所属クラスは100clを得ると同時に、正解者に50万prを支給する。また、優待者を見抜かれたクラスは逆に100clのマイナスを罰として課す。及び、この時点でグループの試験は終了となる。なお、優待者と同じクラスメイトが正解していた場合、答えを無効とし、試験は続行する。(今回の試験のクラスポイントのマイナスは、クラスポイントが0になったクラスにも負債としてマイナスされるものとする。)

 

 

 ・結果Ⅳ──優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ不正解だった場合。答えを間違えた生徒が所属するクラスは100clを失うペナルティ。優待者は50万prを得ると同時に、優待者の所属クラスは100clを獲得するものとする。答えを間違えた時点でグループの試験は終了となる。なお、優待者と同じクラスメイトが不正解した場合、答えを無効とし受け付けない。

(今回の試験のクラスポイントのマイナスは、クラスポイントが0になったクラスにも負債としてマイナスされるものとする。)

 

 

 

 

 「これで試験の内容は全てだ。

 

もしも結果ⅠとⅡだけだったら、試験の内容はとても簡単だった。だろう。なんせマイナスとなるポイントはなかったからな。

 

しかしここで、結果ⅢとIV、その2つに記されている『裏切り者』がそれを許してくれないようになっている。

 

これだと誰も自分が『優待者』だと名乗ることはないだろう。『裏切り者』に裏切られてしまうからな。

 

プライベートポイントだけでなく、クラスポイントすらも獲得が可能なのだ、今後のクラス闘争のためにも、結果ⅠやⅡを待つ可能性は極めて低いだろう。

 

無論、『裏切り者』にも相当の覚悟が必要ではある。もし誤った解答をしてしまった場合、自分の所属するクラスの足を引っ張るだけでなく、『優待者』のクラスにはポイントを与えてしまう事になる。

 

だがもし『裏切り者』は優待者の確信を持ったら必ず裏切り、クラスポイントとプライベートポイントを取られてしまう。という訳だ。理解出来たか?」

 

 アルベルトと俺はそれを聞いて頷いた。それにしても変動するクラスポイントが倍になっているのはなんの影響だか。

 

「今回、学校側は匿名性についても充分に考慮している。

 

試験終了後の結果発表では、各グループの結果と、クラス単位でのポイントの増減のみ発表する。つまり、『優待者』や『裏切り者』の名前は一切公表しないということだ、

 

これは非常に扱いが難しいからな。虐めが生まれる危険性も孕んでいる以上、当然の措置だ。この学校は天野の件で一度権力に屈し、虐めを見て見ぬふりをして多額のプライベートポイントで口止めをした。俺としては学校としてあってはならない事だったと今でも思っている。大変すまなかった。もしなんかあれば脅されたとしても直ぐに私に言って欲しい。絶対に何とかすると約束しよう。逆に言ってくれなければどうしようも出来ない。この学校は被害者が訴えない限り動けないように出来ているからな……。」

 

 

真嶋先生は俺の方を見て悔しそうに言う。あながちこの学校の教師もゴミばかりでは無いのかもしれない。真嶋先生に星ノ宮先生、坂上先生はしっかりといい教師だった。茶柱?クソだな。

 

とはいえカラクリを知らない奴らからしたらこの特別試験、『優待者』を見付けるのが勝利に繋がるのは間違いないが、それは果てしなく至難だろう。

 

 

 

 「まぁ簡潔に起こりうる結果を言うならば、

 

・グループ全体で『優待者』が誰なのかを共有し、クリアする、『全員』の勝利。

 

 ・最後の解答を誰かが間違え『優待者』が勝利する。

 

 ・『裏切り者』が『優待者』を見付け出す。『裏切り者』及び、その者が属するクラスの勝利。

 

 ・『裏切り者』が判断を誤る。『優待者』及び、その者が属するクラスの勝利。

 

の4つだろうな。」

 

 

そしてクラスポイントが絡む以上、上手く運べば、Dクラスが900ポイントを得、A、B、Cクラスがそれぞれマイナス300ポイントなんてこともある。下克上をすることも不可能ではない。

 

 それだけの『可能性』がこの試験にはある。

 

 だからこそ禁則事項が細かくあるのだろう。

 

 

「この場で伝えておこう。きみたちにはプライベートポイントがある。原則的にはプライベートポイントで買えないものはない。それは事実だが、それでもこの禁則事項を変更することは出来ない。これは絶対だ。仮に2000万pr出されても学校側は認めない。他の特別試験は場合によるが、今回みたいな試験や、そもそもが成立しなくなるものはプライベートポイントでもどうしようも無いものとなっている。」

 

 

 

 先程真嶋先生はさらっと流していたが、万が一破った場合には退学と書かれている。退学処罰を受ける行為に該当するものとしては、他人の携帯を盗む、脅迫行為によって『優待者』の情報を入手する、勝手に携帯を操作して解答を学校に送るなどといったものだった。どれもこれも龍園のしそうなことである。

 

さらに、最終試験終了後はすぐに解散しなければならないようで、一定時間、他クラスとの生徒同士での話し合いは禁じられるらしい。いざこざを未然に防ぐためだろう。ここにも『退学』の二文字が、今回は無人島試験とは違いすぐ退学になりそうだ。それこそ2000万の退学取消分を持っている俺なんかが自爆特攻する以外の使い方は無いな。自爆特攻する気もないが。

 

 明日の午前八時に学校から送られてくるメールには『優待者』の情報がある。このメールのコピー、削除、転送、改変などの行為も禁じられている。これは『退学』とまではいかないようだが、それでもかなりの重い罰が課せられるクラスポイントがマイナス500、プライベートポイントは全額没収の1ヶ月停学らしい。逆に裏を返せば、このメールは絶対的な意味を持つ。情報の強奪は禁じられているが、許可する、あるいは、許可されれば何も問題ない。そういった共有の際には確実な信頼を得ることが出来るだろう。

 

言葉に意味を持たせるためか、怪しい行為があった場合は運営による徹底した調査が行われるという旨が、したに二重線引かれてを書かれていた。場合によっては、警察の介入もあるらしい。

 

そして特別試験の説明は最終段階に移っていく。

 

 

「きみたちは明日から、午後一時、午後八時の時間に、指定された部屋に向かって貰う。試験中は扉にグループの名前が印刷されたプリントが貼られている。間違った部屋に入ることはこれでないだろう。そして初日だけは、初顔合わせなので、自己紹介を必ずやって貰う。それさえ終われば、あとは好きにしてくれて構わない。どうするも君たちの自由だ。」

 

 

 

 真嶋先生は俺とアルベルトを見渡してから、おもむろに口を開けた。

 

 

 

「これで特別試験の説明を完了する。きみたちの健闘を祈る」

 

 

 

「YES!BOSS!」

 

 

 

 この部屋はあと三十分は好きに使って構わない、という言葉を残して、真嶋先生は部屋から出ていった。

 

 

 

「アルベルト、学校からメールが送られてくる。もしかしたら俺達のどっちが『優待者』に選ばれるかもしれない。その場合は俺に知らせろ。」

 

「YES!BOSS!」

 

俺はさらにアルベルトに言ったようなもし優待者になったら優待者を俺に知らせるようにという内容の知らせをクラスラインに添付しておく。また、俺の許可なしに裏切りは禁止とも書いておく。

 

 「アルベルト、ご苦労、戻っていいぞ。」

 

「YES!BOSS!」

 

そう言いながらアルベルトは部屋を出ていく。

 

まずは参加出来なかったが一応龍園に報告をするか。俺はチャットで試験の内容を送る。

 

 

 

今回の試験についてだが、まず狙いたいのは全グループでの結果1だ。成功するかは怪しい所だが、一応策はある。後は他の奴らが乗ってくれるかだが……。

 

そして、それが失敗した場合は9グループへの裏切り、残りのグループは携帯を変えて沈黙作戦か他クラスからプライベートポイントと交換で指名してもらうかだな。

 

いずれにせよ、誰よりも警戒すべきはBクラスの黒幕zであろう木山だろう。

 

俺がそのまま自室にもどった後、このまま考え込んでいるうちに意識を飛ばしてしまった。

 

 

大量のプライベートポイントが飛び交う試験が今、幕を開ける。

山内に再登場

  • して欲しい
  • して欲しくない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。