ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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第三の特別試験

豪華客船から学校に帰るまで残り6日、俺は龍園の病室に来ていた。結果報告の為である。端末を確認すると俺のプライベートポイントは新たに4150万プライベートポイント増えていた。Cクラスからは俺が龍園に全額渡すとの通達をして俺の懐に持っている。今俺の手持ちには2億2189万6948プライベートポイントあるという訳だ。実に退学回避11回分である。どこのバーサーカーだろうか。生憎と幼女に殺っちゃえと言われることもなければあんなごつくないけどな。

 

「それで、結果はどうだったんだ?」

 

安静になりつつある龍園から結果報告をするように言われる。話によると龍園は明日から歩ける様になるらしい。やっぱりこいつはタフな様だ。俺は学校から来た通知のスマホを見せる。

 

子(鼠)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 丑(牛)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 寅(虎)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 卯(兎)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 辰(竜)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 巳(蛇)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 午(馬)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 未(羊)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 申(猿)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 酉(鳥)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 戌(犬)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 亥(猪)──試験終了後グループ全員の正解により結果1とする

 

 

 

 

 以上の結果から本試験におけるクラス及びプライベートポイントの増減は以下とする。

 

 

 

 Aクラス……変動なし プラス2150万プライベートポイント

 

 Bクラス……変動なし プラス2150万プライベートポイント

 

 Cクラス……変動なし プラス2150万プライベートポイント

 

 Dクラス……変動無し プラス2150万プライベートポイント

 

これによりクラスポイントは以下のようになる

 

現在のポイント

 

 

 

 

 

Aクラス2012ポイント➛+0ポイント➛2012ポイント

 

 

 

 

 

 

Bクラス1660ポイント➛+0ポイント➛1660ポイント

 

 

 

 

 

 

Cクラス1532ポイント➛+0ポイント➛1532ポイント

 

 

 

 

 

Dクラス0ポイント➛+0ポイント➛0ポイント

 

「ククククク、和平って訳か。」

 

龍園が楽しそうに笑うが、弥彦の失態によりそんな事も無くなった。

 

「いや、戸塚弥彦ってやつがやらかしたおかげでこの契約書の内容になったんだよ。あいつはAクラスの鴨枠だな。」

 

俺はそう言いながら契約書の写真を見せる。それを見た龍園は高らかなる高笑いをしてむせていた。病人なんだから休めよな。

 

「なるほどな……状況に察しが着いたぜ……弥彦のバカのせいでAクラスの払う額が増えたってところか。」

 

「違うな、A、B、Dクラスがポイントを払うことになった上、Aクラスの払う額が増えたんだ。」

 

それを聞いた龍園は笑い過ぎて顎が外れかけていた。だから病人なんだから休めっての。

 

「あいつはDクラスと大差ねぇな。そう言えば堀北の一件についてあれから御門から聞いたんだが、堀北の心をボキボキに折って飼い慣らしたらしいぞ。メディカルチェックはプライベートポイントで揉み消したから暴行なんかもバレてないとよ。」

 

堀北の心ガ折られている……?とは一体どう言う事だ?いやバリバリ無人島の後訴えるとか言ってた気がしたんだが……御門の前だけ、ということかもしれない。まぁ堀北の事等どうでもいいか。

 

『一年生の生徒の皆様はただいま送られたメールを必ず今すぐ確認してください。』

 

船内にアナウンスが響き渡る。言われた通り俺はマナーモードにしてた携帯を開き確認する。病室でマナーモードは当然である。

 

「またもや特別試験だって!?流石に多すぎじゃね。」

 

それを聞いた龍園が必死で笑いを堪えているせいか、黙って笑顔で肩を震わせていた。ドクターストップで騒がないよう言われているらしいが龍園もマナーモードに入ったという事だろう。龍園にマナーなんてものは無いけどな。

 

メールの内容は以下の通りである。

 

本日4時までに、下記の集合場所に集まって下さい。Aクラス:4階 談話ホールBクラス:1階 図書館Cクラス:地下4階 蒸気室Dクラス:屋上 ヘリコプターの着陸場また、クラス内で代表者を一人決め、2時に2階の206号室に集まって下さい。誰も来なかった場合は、そのクラスのクラスポイントを0とします。また、4時の集合に怪我等以外で来なかった、或いは遅刻した人間1人につき、クラスポイントを100マイナスします。

 

つまるところこれはなんかしらの特別試験だろう。

 

「代表者は天野、お前が行け、クラスには俺が連絡しといてやるよ。」

 

「わかった。俺の独自判断で動いて構わんな?」

 

「あぁ、好きにしろ。」

 

龍園から許可を貰った俺は、病室を後にする。決して看護師が可愛くて惚れそうだったからでは無い。今の時刻は12時半、ちょうど昼飯を食べて、向かうぐらいがいいだろう。

 

俺は近くの江戸前寿司店に寄ることにした。やっぱり江戸っ子なら寿司は手だよな。手でガブリだ。昔手を洗う所だと間違えて熱湯で火傷した事なんか勿論決してない。俺は暖簾を潜る。

 

「へいらっしゃい!!何名様ですか?」

 

店内を見渡すがどうやら他に客は居なさそうだ。貸切とはまた乙だな。

 

「2名です!」

 

俺の後ろから声が聞こえて来た、俺の後ろにいたのは松下だった。いつの間に居たんだこいつ……

 

「いえ、3名です!」

 

俺の隣からそんな声が聞こえる。見ればそこに居たのは櫛田だった。少し様子を見たがこれ以上増える事は無かった。二人は別々に来たのだろうが、それにしても何処で俺を見つけたのか。

 

「3名ね!テーブル?それともカウンターで?」

 

The、寿司職人みたいな顔をした大将が聞いてくる。茶化すようなタイプじゃ無さそうで何よりだ。傍からこの絵面を見た男は可哀想だな。

 

「カウンターでお願いします。」

 

俺は2人を置いてカウンターに座る。そもそもこいつら二人で何しに来たんだよ。そして俺が座った直後に右の席に櫛田、左の席に松下が座ってきた。こいつら若干近くないか?

 

「あ、サーモン一つといくら一つお願いします。」

 

「私は穴子で!」

 

「じゃあ私はエビでお願いします!」

 

三者三様それぞれが寿司を頼む、というか初手サーモンは安定だと思っていたんだが、

 

「それで、お前らなんで着いてきたんだよ?」

 

櫛田はDクラスのスパイとして来たからまだわかる。松下はいっちゃんわからん。俺は一呼吸置くためにガリを大量に取り、お茶を飲む。お茶は蕎麦粉を使った蕎麦茶らしく、蕎麦の風味が鼻を突き抜ける。サイドメニューで蕎麦も出しているらしい。後で頼むとしよう。

 

「たまたま見かけてきただけだよ?迷惑だったかな?」

 

松下の前だからか櫛田は猫を被る。そこら辺の奴らならコロッと騙される事だろう。しかし松下はそうもいかなかった。

 

「私は……櫛田さんと一緒でDクラスから逃げるためにスパイになりに来た、かな。」

「へいお待ち!!」

 

どうやら松下は櫛田が俺のスパイである事に気付いたらしい。それにしても一体どこで気付けたんだろうか。

 

「なんの事かな…?」

 

櫛田はエビをむしゃむしゃしながらとぼける。櫛田は尻尾まで行く派のようだ。そういえばエビのしっぽとゴキブリって同じ成分らしい。つまりゴキブリの成分を今櫛田は口に含んでるわけで……

 

「何か失礼な事考えなかった?」

 

櫛田がジト目でこちらを見てくる。こいつ勘が鋭いな。

 

「いやいや、とぼけなくても私分かってるから……別に言わないから大丈夫だよ?今のDクラスなんかさっさと抜けた方がいいし、私もそのつもりだから。分かりやすく言うなら天野君の駒になりに来たって訳。」

 

松下はいつの間に頼んだのか分からないえんがわをむしゃむしゃしていた。それにしてもお寿司を素手で食べる女の子って可愛いな。

 

「大将!裏メニューよろしく!」

 

俺はその場のノリで裏メニューを要求してくる。これでそんなもの無いって言われたらどうしようか……。

 

「……お客さん、裏メニューを知っているんですか?もしかして江戸前寿司『極限』の本店に通われた事がおありで?」

 

極限……極限だと……どうして今まで俺は気付けなかったんだ。極限とはよく父親が冤罪をかけられる前、取引相手であったNewton工房の社長と足繁く通っていた名店だ。家の保険代理店の会社はそこまで大きな会社では無かった、と言っても全国には展開していたが……ともかくそこの社長だった俺の父親は綿白神社長に呼ばれる度大喜びしながら裏メニューの鴨蕎麦の話をしていたっけ。

 

あの時父親は綿白神社長の圧力に負けてしまったが、それでも会社の何千人もの社員を路頭に迷われる訳には行かなかったのだし仕方ない決断だっただろう。少なくとも俺は父も、父のあの決断も間違っていたとは思っていない。

 

悪かったのはNewton工房と俺のバカな弟だろう。

 

「俺はARM保険代理店の社長の息子なんです。極限さんには父が良く通っていらしたらしいので。」

 

それを聞いた松下と櫛田が驚いた目線でこちらを見てくる。だが残念ながら冤罪事件の事もあるし俺が会社に関わる事は出来ないだろう。跡取りになるであろう兄、会社を継げない俺、そして馬鹿で最低な弟。おそらく会社は兄が継いでくれるだろうが、それでも悪知恵だけは回るであろうあの弟が気がかりでしかたない。.......いや、考えても仕方ないか。

 

「なるほど.......という事は君が聖君か.......あの事はお父さんは気付いていたんだ。会社を守る為に君を犠牲にした事を君のお父さんは毎日悔やんでいた。君も今まで辛い思いをして来て大変だっただろう。この学校の外でもね、君の冤罪が正式に証明されたんだ。でもね、どうか君のお父さんを責めないでやって欲しい。いつか大人になったらわかる日が来る。」

 

どうやら最低限の生活は保証されているらしい。それにしてもこの大将さんは本店の大将さんだったのか.......。

 

「父の判断を責めるつもりも、父を責めるつもりも無いです。うちの家族で責められるべき人間がいるなら弟一人ですよ。」

 

俺の言葉に大将は何処か遠くを見るような目をしながら頷いた。この学校に入ってから虐めを喰らい、学校から見捨てられかけていた俺だったがそれでもこうやって俺の味方は何処かに居てくれるのだろう。

 

「聖君.......これ使って。」

 

そう言っていつの間にか名前呼びをされていた櫛田からピンクの可愛いハンカチを渡された。何故なのだろう。

 

「聖君.......そんなに泣かなくても大丈夫だよ。私は何があっても聖君の、聖君だけの味方だから。」

 

どうやら俺は泣いていたらしい。この言葉が櫛田が本気で思って言っているのか、それとも仮面を被った姿なのかは分からないが、それでも嬉しかった。心を開く訳にはいかないけれど、これが本心なんだと信じたかった。

 

俺は櫛田のハンカチを手で制して、自分のハンカチで涙を吹いた。

 

「いい彼女さんをもったみたいだね.......。」

 

「ただの友達です。鴨蕎麦お願いします。」

 

俺は彼女という言葉を否定しつつ鴨蕎麦の注文をする。

 

「ちょっと待ってね.......作ってくるよ。」

 

そう言って大将さんは裏の厨房へ向かっていった。

 

「松下正直スパイは櫛田1人で足りてるんだ。が、3年に入るまでに櫛田以上の成果を上げてきた時があったらCクラスに移動分のポイントは出してやる。」

 

正直櫛田がいるし必要性は薄いだろうが、それでも今日は気分がいい。おそらく櫛田以上の成果など上げられるとは思えないがまぁチャンスぐらいはくれてやる事にしよう。こうする事で入る情報も増えるだろうしな。

 

「うん、それでいいよ、本当にありがとう。」

 

自分でも予期せぬ手応えが嬉しかったのだろう。松下は小躍りでもするような気分で寿司屋を出ていった。

 

「もし松下さんがスパイとして使えるなら.......私は捨てちゃう.......のかな?」

 

櫛田が不安そうな目で見つめてくる。ここで否定してもメリットはないだろう。

 

「そんな事ないぞ、櫛田が最優先だ。」

 

「えへへ、嬉しいな。大将さん!私も鴨蕎麦お願いします!」

 

「あいよぉ!」

 

「そう言えば聖君、次の特別試験の代表者は私になったんだ。内容が発表されたら協力できる事があるかも.......。」

 

何故かいつの間にか名前呼びになっている櫛田だった。さっきは突っ込まなかったけどそろそろ突っ込んでいいよね?

 

「そうか、またチャットで連絡しよう。ところでなぜ名前呼びなんだ櫛田?」

 

「桔梗って呼んで欲しいな。」

 

「櫛田」

 

「桔梗」

 

「.......わかった、桔梗。」

 

「やった!えへへへ。」

 

結局根負けしてしまった。

 

「取り敢えず代表だがCクラスは俺だ。Bクラスは十中八九一之瀬だな。今回の試験坂柳が参加出来るかは分からないがAクラスは派閥のリーダーの誰かしらだろうな。」

 

「そうだね.......そう言えば干支試験の後、戸塚が聖君の事恨んでるらしいんだけど潰していいかな?」

 

櫛田が笑顔だが.......さりとて怒りに満ちた表情で聞いてくる。正直潰したい気持ちは山々だが.......

 

「もうちょい待とう。出来る限り長い間Aクラスには内部分裂しててもらいたい。」

 

「ちぇ、了解。」

 

まぁどっかで弥彦は潰そう。

 

「はい二人分鴨蕎麦お待ち!」

 

大将からカウンター席に置かれた鴨蕎麦は湯気から鴨と蕎麦のいい匂いがしてくる。俺は蕎麦の面を啜る。口の中に出汁の旨味と蕎麦の喉越しの良い食感、鴨の風味、裏メニューと名乗るだけある最高の旨味だった。この極限の鴨蕎麦は後に俺の五大旨いもんに名を連ねるのだがそれはまた別の話だ。

 

「これ美味しいです大将さん!」

 

隣にいた櫛田は頬を赤らめながら上機嫌で言った。完全に素なのがひと目でわかる。素の状態で天使の櫛田とか滅多に見られるもんじゃねぇぞおい!.......あれ?今なんか失礼な事考えなかった?って言われない?

 

「蕎麦が美味しいから許す。」

 

なんだよそれ、そう思いながらも俺も鴨蕎麦をこれでもかと味わうのだった。

 

食べ終わってふと時間を見ると1時半、そろそろかな。

 

「大将、そろそろ時間なんで行くわ、また世話になる事もあるかもしれん。」

 

「おう、俺はいねぇが裏メニューも含めてケヤキモールの逆側の道を進んでって左の所に極限はあるでな、寄ってってくれや!」

 

「高いからたまーにな。たまーに。」

 

「なーに、ちょっとプライベートポイントとやらは弾んどいてやるさ。」

 

そう言うと大将は俺に10万プライベートポイントを支給してくれた。

 

「いや大将貰えませんよこんな大金!」

 

隣で櫛田が大金のくだりで何言ってんだこいつという目線で見てたがスルーしておく。それにしても鴨蕎麦を頼めなかった松下は可哀想だな。

 

「いやいや、代わりにその金で極限に寄ってくれればええ。お前さんが来たら値引きするよう店に入っとく。」

 

大将の熱意に負けた俺はそのまま泣きながら店を後にしたとさ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「失礼します。」

 

俺と櫛田はそのまま一緒に206号室の扉を開ける。中には一之瀬と坂柳がいた。どうやら今回は坂柳の参加が認められたらしいな。それにしても葛城では無いのは弥彦のやらかしが響いているのかもな。

 

「よし、全員揃ったようだな。それでは第3回特別試験の内容について説明する。まずはここで聞いた内容は我々が許可した一部を除いてのクラスメイトなどへの通達を禁止する。後日詳細も含めた内容について説明する。」

 

茶柱が言っているのは4時に集まるってやつの事だろう。俺達は取り敢えず黙って話を聞く姿勢を取る。

 

「まず初めにだが、今回の試験のルールを記載した紙を配る。こちらは写真の撮影やメモをする事などはルールで禁止されている。」

 

俺は一之瀬から渡されたメモを見る。

 

第3回特別試験『取捨選択試験』ルール表

 

・各クラスのリーダーは

選択1『クラスメイトを一人も退学させない代わりに500クラスポイントを失う』、

選択2『クラスメイトを一人退学にさせる代わりに200クラスポイントを失う』

選択3『クラスメイトを二人退学にする代わりに200クラスポイントを得る』

選択4『クラスメイトを三人退学にする代わりに500クラスポイントを得る』

の中から何れかひとつを選択する。ただし、別のクラスが選択した選択肢は選ぶ事ができない。

 

・選択する順番においては、リーダー内で10分間の話し合いを設け、それでも決まらない場合、くじ引きとする。

 

・今回の試験で退学を避けるための2000万プライベートポイントを使用する場合を除き、学校側に対してPPの一切の使用を禁止する。

 

・退学にする生徒は、クラス内で2日間午前9時から午後4時まで話し合いをした後、3日目の12時に退学候補の名前を優先度順に1人1票、計三人の記入者が退学するべきだと思うクラスメイトの名前を上から優先順位順で書く。また、この際に誰の名前を誰が書いたか等は試験終了後、クラス内のみで公開される。

 

・退学の生徒を決める為に、豪華客船内にある施設は使用して構わない。また、各教科のテストやクジなど、施設に無いもので学校側に用意して欲しいものがある場合は申し出る事。

 

・また、マイナスとなるクラスポイントを所持していないクラスは、その選択をする事は出来ない。

 

・退学時のデメリットはこの試験においては発生しないものとする。

 

・退学候補の票数が同票の場合、どちらも退学とする。

 

・結果1以外で退学者がいない場合、クラスポイントをマイナス2000する。(仮に支払えない場合は、現状のポイントから負債としてマイナスする。)

 

どうやら原作で山内が退学した特別試験に近しいものがあるようだ。これはクラスの特色がよく出るな。最後のはDクラス対策だろう。これで最低二人は退学者が出る事が確定したな。

 

「確認出来たか?それでは今から10分間の話し合いを始める。」

 

こうして話し合いが始まった。

 

始まって10秒ほど、お互いは睨み合って動こうとしない。俺は櫛田に口火を切るようにアイコンタクトを送った。

 

「皆は、どの選択をしたいって思ってるかな?」

 

櫛田が周りを可愛くキョロキョロと見渡す。俺以外女だらけなのにあざとくする必要あるのか?

 

「私達Bクラスは絶対に退学者を出したくないの。例えどれだけクラスポイントを失ったとしてもこの先沢山の特別試験が待ってると思う。だから私達は選択1を選びたいと思っている。」

 

「俺達も選びたいのは選択1だな。クラスメイトは宝だ。」

恐らく誰もが予想していたであろう発言に俺も追従するような形を取る。

 

「私は.......選択3を選びたいですね。」

 

坂柳の発言、つまりは退学にしたい人物がクラスに二人いるという事だろう。それも退学にできる範囲で。

 

「退学にしたい人が二人いるって事かな.......なかなか物騒だね。」

 

一之瀬の発言も尤もだろう。暗にそう言っている風にしか聞こえない。

 

「そうですね。実際に直近で問題を起こした生徒が二人いまして.......彼等に責任を取ってもらいたいのですよ。」

 

「その二人って誰の事かな.......?」

 

俺がアイコンタクトを送る必要もなく櫛田が聞いてくれる。こういう所も含めてやはり櫛田以上の適任なスパイは居ないだろう。

 

「一人目は一条君です。彼は熊の事件を起こした偽物の熊の犯人なのですが.......その行動が問題となり学校に戻ったら裁判をする事になっています。茶柱先生、彼がこの試験で退学した場合、Aクラスへの訴えは無くなりますか?犯人がいない以上、Aクラスを訴える事もできないと思いますが。」

 

「例え一条が退学になったとしても訴えは取り下げられない。だが、そうだな.......当事者が居ない以上Aクラスの監督責任こそあるが、罰するべき一番の対象が居ない以上減刑はされるだろうな。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

なぜ減刑なのか俺には1ミリも理解できない。この学校はやっぱりクソなきがする。世の中クソだなって山内.......じゃなくて足立さんも言ってたしな。

 

とはいえ減刑が確定する以上他の生徒よりも一条が切られる確率は高いだろう。

 

「二人目は戸塚君です。彼は先日、Dクラスにまたもや差別的な発言をして葛城派閥を除名になりました。何度葛城君が言っても反省しないので葛城君も見捨てたのでしょう、私も綿白神さんも彼を派閥に入れるつもりはありませんので完全なAクラスのノイズです。退学してクラスにせめてもの貢献をしてもらうべきでしょう。」

 

まぁ弥彦に関しては俺も退学させるべきだと思っている。あんなやつ残しといてもいい事ねぇだろ絶対。

 

 

 

「天野君、物事は相談なんだけどさ、プライベートポイントを出すから選択1をBクラスに譲ってくれないかな?」

 

一之瀬は俺の方を見て提案してくる。つまりはそういう事だろう。

 

「え、でも今回の試験ってプライベートポイントは使えないんじゃ.......?」

 

櫛田は腕組みをしながら悩んだような表情を作る。それにしても一之瀬がルールの抜け穴のようなものに手を突っ込むとは少々意外だな。

 

「いえ櫛田さん、あくまでも学校側へプライベートポイントが使えないだけで個人間では問題ありません。」

 

坂柳の言う通りだ。個人間は学校では無いため問題は無い。

 

「ちなみにいくら出せる?」

 

「20万プライベートポイントってところかな?」

 

さすがに低すぎないか?500万巻き上げた事を気にしているんだろうか?

 

「30万でなら手を打ってもいい。」

 

「うんわかった、それじゃあ30万プライベートポイント送っておくね。」

 

俺は一之瀬の連絡先を追加し、30万プライベートポイントを受け取る。

 

「私も天野君の連絡先を頂きますね。」

 

ついでのように坂柳の連絡先も追加される。これで俺が持っている連絡先は平田綾小路松下龍園坂柳一之瀬櫛田金田アルベルトとなった。アルベルトは特別試験で仲良くなったから追加、金田はクラス間での連携を深めるために追加した。それにしても連絡先が物騒なメンバーすぎる。このメンバーでクラス作ったら敵無しだろ普通に。

 

「それじゃあ俺たちは結果2を貰う事にするか。」

 

これならば俺の小遣いを出す事も無い。一人退学になるのは残念だが、足でまといを切り捨てられると考えれば都合はいいだろう。そしてAクラスとは狙いがズレ、Dクラスには選択出来ないため自動的に決定する。そして一瞬櫛田がこちらに目線を向けてくる。

 

恐らく選択をどうすればいいかという所だろう。

 

「Dクラスはどっちを選ぶんだ。結果2か?3か?」

 

俺の問いかけに櫛田は少し悩んだ表情を浮かべる。やはり櫛田にリーダーは厳しい気がする。この場所に来るべきは平田だったと思うが.......なぜ櫛田になったのだろうか。後で聞いてみるか。

 

 

「うーん、正直迷ってる。出来る限りクラスの皆には退学して欲しくないけど.......このままじゃDクラスに勝ちの目がないのも事実なんだよね。」

 

櫛田は悩んだ末に俺からの連絡が来るまで時間を先延ばしを選んだらしい。完全に俺に飼い慣らされてないか?ちょっと弱体化してる気がする。

 

「私としては結果4をおすすめします。」

 

坂柳からしてみれば当然の主張だろう。

 

「私も結果4がいいと思うな、Aクラスとの点差は正直あんまり開かないで欲しいからね。」

 

一之瀬は今回の試験でマイナス500クラスポイントが半ば確定している。Aクラスとの差を詰めるためなら当然と見るべきか。

 

「うーん.......坂柳さん、50万プライベートポイントくれないかな?そしたら結果4にしようと思う。」

 

その直後櫛田は思わぬ提案をした。櫛田は決して弱体化等していない。寧ろ俺の真似をして強くなりつつある。先程の俺と一之瀬のやり取りを真似たという事だろう。それもまるで判断に困っているふりをして、俺の意見を待つ狙いも合ったかもしれないがそれにしても優秀だ。

 

「なるほど、先程のBクラスとCクラスのやり取りを見て閃いたようですね。前までの櫛田さんでしたらこのような発言はし無かった事でしょう.......櫛田さんもまたこの試験で成長されている様です。いいでしょう。50万プライベートポイントは支払いましょう。」

「なるほど、完全にやられたね。本当は元々結果4を狙うつもりであえて時間を稼いだのかな?」

 

一之瀬の読みが正しければ、櫛田の評価を俺の中でもう一段階あげる必要があるだろう。狙っていた選択4をプライベートポイントを儲けつつ、櫛田桔梗というキャラをある程度保ちながら獲得した事になる。

 

「正直.......うちのクラスは今のメンバーのままじゃ間違えなくCクラスには上がれないからね。一応私はくじ運が悪かった、って事にしといて貰えないかな?」

 

櫛田はあざと可愛く手を合わせる。これぐらいでは櫛田のイメージが揺らぐことは無いと判断したのか、それともこのメンバーなら大丈夫と判断したのか.......何れにしても凄まじい成長速度で成長しているのは間違えないだろう。堀北の食い扶持を食ってる気もするがまぁいいや。

 

「わかりました。プライベートポイントの事も内密にしておきましょう。」

 

「私も黙っておくよ。」

 

「俺も黙っておこう。」

 

俺達は黙る事に対して了承の返事をする。

 

「そろそろ10分だ。結果を聞かせてもらおうか。」

 

部屋に戻ってきた茶柱先生がドアを閉めながら聞く。

 

代表として1歩前に出たのか、坂柳が答えるようだ。

 

 

「Aクラスが選択3、Bクラスが選択1、Cクラスが選択2、Dクラスが選択4です。」

 

 

「了承した。それでは今日の事は試験の発表日まで内密にして、そのまま帰るがいい。」

 

茶柱先生の指示の元、一之瀬は立ち去った、櫛田もこちらに視線を送ってきたが、坂柳もいる以上バレる訳にも行かないので去るよう目線を送る。

 

 

「良ければですが、私をエスコートして頂けませんか?この足で一人というのは些か辛いものでして。」

 

「勿論だ。エスコートしよう。」

 

坂柳に対して俺が断れる権利などあるはずもない。俺は部屋の扉を開けて、坂柳が出たのを確認して扉を占め、そのまま自分達の部屋の方へと向かう。

 

「そう言えば無人島試験のAクラス、Bクラス、Cクラスの3クラス同盟に干支試験の和平作戦は天野君の発案だとお聞きしました。お見事です。」

 

坂柳への情報の周りは早いな。

 

「全部龍園の指示だけどな。」

 

取り敢えず全部龍園のせいにしておくが、それが通じるほど目の前の少女の頭は弱くない。だが俺は別の目的のためそれも少し声を大きめに言っておく。

 

「私の予想では全部天野君の独断でしょう.......Cクラスのリーダーは龍園君がやっている様ですが貴方の方が私には恐ろしいですね。」

 

坂柳も後ろから俺達を付けている人間に配慮してか小声で言ってくる。というか坂柳に恐ろしい認定されるほど強くないぞ、俺。

 

「坂柳の足元にも及ばないけどな.......それよりAクラスの派閥争いってどうなっているんだ?」

 

「そんな事は無いと思いますが.......Aクラスの派閥争いは戸塚君のやらかしのせいで葛城派閥が優勢からやや劣勢になりましたね。葛城君の堪忍袋の緒が切れたのか凄い圧をかけながら戸塚君を除名にしたのでこれ以上の被害は無いでしょうが.......綿白神派閥はナンバー2の一条君が今回の試験と熊の一件で失脚するのが確定しているので二学期には劣勢になっていることでしょう。」

 

坂柳の話を聞きながら俺は内心ほくそ笑む。ざまぁみろ綿白神。俺のこの心の喜びは文字では表現出来るものでは無い。だが俺の心の中のこの喜びは表さずとも伝わる事だろう。

 

「嬉しそうですね.......綿白神さんは私が退学にさせますのでご心配なく。」

 

坂柳VS綿白神か.......ちょっと見てみたいような.......自分で復讐したいような。綿白神の人生が破滅する事が最優先だが、俺が綿白神に勝てるかは怪しい所だ。やはり任せるべきなのかもしれないが.......葛藤してしまう。

 

「すいません、少し御手洗に行かせてもらってもいいでしょうか?」

 

 

「問題無い、ここで俺は待っていることにする。」

 

「ありがとうございます。」

 

坂柳は多目的トイレに入っていく。多目的、というのは足が不自由な人も含まれているのだろう。

 

俺は多目的トイレの方を見る。最近女優と結婚したある芸人が頭をよぎるが彼は結局どうなったんだろうか.......

 

「死ねぇぇぇぇ!!天野ぉぉぉぉ!!」

 

 

そんな事を考えていた俺の頭の後頭部に強い衝撃が走る。その直後、鈍いながらも戸塚の声が聞こえてきた気がする。まるでどんどん深い海の中に沈んでいくように声が遠くなっていく。何やら目の前が赤い気がする。そして俺はそのまま意識を失った。

山内に再登場

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