ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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波乱の決着

次の日、集合場所で集まった俺たちCクラスの生徒の大半はザワつくことなく、冷静に物事を受け止めていた。

 

たった1人を除いて、全員が自分が助かる事を確信しているからなのか、それとも出来レースだと思っているからなのか、いずれにせよ大半の生徒は証拠である動画の提出を求める事も無く、諸藤の退学に賛同していた。

 

金田曰く「真鍋グループの面々はお互いが庇いあっていただけで真鍋グループから切られれば行先は無い。真鍋グループは割と嫌われている。」との事らしい。

 

大半の生徒からすれば真鍋グループそのものがクラスにとって足を引っ張っている訳だ。そして昨日それを真鍋達も自覚し、これから成長して行くのだろう。

 

下が下である事を自覚して上に行こうとする。上は下に落ちないように上で居ようとする。こうして集団のモチベーションは高く、良い速度で成長して行く。Cクラスはきっとこれからさらにいいクラスになるだろう。

 

尤も、退学になる諸藤を除いてだが、投票は今日の4時、それまで諸藤が気付こうが気付かなかろうが退学は決定だろう。俺は他の皆には今まで通りテストを行うから落ち着いて振る舞うことを伝えてある。クラス内の力を図ることにデメリットは無いしな。

 

「はい皆注目ー!!!今日は閃き問題を解いてもらいます。全員手を抜かずに最後まで頑張ってねー!!」

 

「はぁ?意味分かんないんですけど、なんでそんなことしなきゃ行けないわけ?」

 

諸藤は案の定突っかかってくる。俺の事が嫌いなのかもしれないな。

 

「やりたくないならやらなくてもいいよ、諸藤さん。」

 

これでやらないならそれはそれで退学の理由になるだろう。

 

「なら皆でボイコットしちゃおうよ、どうせ天野君がポイント払うんだしさ。」

 

諸藤は周りに呼び掛けるが誰も辞めようとする者はいない。

 

「え?志保.......やるの?」

 

「クラスのお荷物になりたくないし退学もしたくないから.......。」

 

真鍋は静かに.......それでいて決意の籠った返答を返す。薮と山下も同様なのか力強くペンを握る。

 

「え.......時任、アンタはやらないよね?」

 

「いや、やらせてもらう。この問題を解くことで今後の試験のためにクラスのデータを取ることは必要な事だと思う。」

 

「.......はぁ.......やるか。」

 

溜息をつく諸藤だったが渋々という表情でペンを握る。

 

 

さて、ここでネタバラシだ。この閃き問題はIQ150の人達でも50点前後しか解けないようになっている。そして俺は『表面の答え』(50点分)だけ、諸藤以外には教えている。

 

つまり実力を測りつつ諸藤が最下位になるように出来ている。という訳だ。

 

そして金田に帰ってきた閃き問題の点を採点させると、案の定最下位は諸藤、6点だった。ちなみに1位が椎名の81点、2位が金田の69点だ。そして以外にも3位はアルベルトで66点、4位が藪で61点だった。選択肢問題とはいえ9択なので多少上振れれば60点ぐらいは取れるだろう。とはいえ50点も取れていない生徒も割と多く、暗記を頑張ってきた証拠だろう。

 

とはいえ39位の近藤ですら19点だ。諸藤の6点は論外だろう。一応全部運で書いても平均11点ぐらいは取れるはずなんだけどなぁ.......。

 

「最下位は諸藤、お前だから退学はお前に決定だな。あ、そうそう、持ってるプライベートポイントは誰か他の奴に渡しておけよ、勿体ないからな。」

 

「は?ふざけないでよ!あんな問題解けるわけ無いでしょ!!なにか仕組んだんでしょ!!」

 

仕組んだのは大正解だが明確な方法までは分からないらしい。

 

「仕組んでいたなら近藤は19点なんて取っていない。要するにお前の実力って事だな。残念だったな。」

 

「志保!あんなやつの言うこと聞く必要ないって!」

 

大量の汗をかきながら引きつった顔で真鍋に呼びかけるが無駄だろう。

 

「前々から思ってたけどなんであんたそんなリーダーぶってんの?」

 

「え、.......いやいやいや、そんなつもり無いって!」

 

「さっさと退学すれば?」

 

真鍋はそれだけ言い残して諸藤から離れていく。それに続くように山下と薮も着いていく。

 

「え、嘘、嘘だよね?」

 

「残念ながら本当だな。それじゃあ残ってるプライベートポイントは移してもらおうか。」

 

俺は諸藤のケータイ端末と左手を持ち、指紋認証で諸藤のケータイの中を漁る。プライベートポイントは56910と表示されていた。

 

「うーん、しけてるなぁ……まぁないよりマシか、取り敢えずこのポイントは貰っといてやるよ。」

 

そう言いながら俺はポイントを自分の携帯へ移す、干支試験なりなんなりで沢山の人が俺の元にポイントを送っている以上、詐欺とは見られないだろう。

 

「嫌だ、嫌だ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁァ!!」

 

その場でクシャクシャな顔になって泣き崩れる諸藤の顔を俺は諸藤のケータイで取り、待ち受けにしとく。

 

「ほらこれ返してやるよ。いつもブサイクな顔してたけど今回のは特にひでぇからお前の待ち受けにしといてやったぞ、これからケータイを開く度に思い出してくれよ?」

 

他の奴にヘイトを向ける訳にも行かないから一手に俺が集中させるという話は昨日のうちにしてある。本当は心苦しいことこの上ないけどな.......。と言っておいたが実際は楽しむ気満々である。

 

 

「グゥぅぅぅぅ、ゆる、ゆるざなぁぁぁぁぃ、ごろずぅぅぅぅぅぅ。」

 

 

 

諸藤が今感じている感情は怒りか悲しみか、憎悪か絶望か、何にしても傍から見ていて面白いからいいか。

 

「はーい、ピースピース、写真撮るからこっち向かないとダメじゃんか。おい真鍋、こいつの髪引っ張って顔こっち向けろよ。」

 

「はい.......。」

 

真鍋は言われた通り向ける。俺が言う前に薮と山下が動いて両手にピースを作らせる。若干脅えてる気がするけど多分気のせいだろ。

 

俺は写真を何枚か取って龍園に送っておく。多分開いた瞬間大爆笑だろうな。

 

 

「いやぁ、俺としてもこんな事するのは心苦しいんだよ、平和主義だからね、でも龍園がやれって言うんだ。悪く思わないで欲しいなぁ。あ、お前ら離していいよ。」

 

俺達はそのまま崩れ去る諸藤から離れ、席に着く、そろそろ時間だろう。

 

「それでは投票に移ります。皆さんこの紙に退学になるべきだと思うクラスメイトの名前を書いてください。.......と言ってもどうやらもう決まったようなものみたいですがね。」

 

状況から坂上先生も諸藤が退学だと分かりきっているのだろう。諸藤は結局その場に項垂れて黙りこくってしまった。

 

全員が諸藤の名前を書く事だろう。それにしても他クラスは一体全体どうなってるんだろうか.......。

 

俺は壊れた玩具のようになった諸藤を見ながら他クラスに思いを馳せるのだった。

 

そして先生による回収が終わり、集計される。

 

「1位は117票で諸藤さんです。残念ながら諸藤さんは退学となります。2000万プライベートポイントは使いますか?」

 

「ぅぇ.......ひぐっ.......あま.......のくん.......いや.......あまの.......さま.......わたしが.......わたしがまぢがっでまじだ.......おねがいじます.......だずげで.......だずげでぐだざい.......うぇ.......。」

 

諸藤が最後に出来る事があるとするならば俺に縋って退学を取り消してもらう事だろう。だが一体この状況でどうして助ける可能性があると思えるのか、脳内がお花畑なのだろうか。少なくともプライドは無いな。

 

「うーん、坂上先生、取り敢えず学年合同の結果発表があるまで保留にさせて貰えませんか?今1度退学させるべきと判断した龍園君にチャットで掛け合ってみます。」

 

「ぁまの.......ざまぁ.......。」

諸藤が救いの神を見る視線で俺を見るがそんな訳ないだろ。キャラ作りだよキャラ作り。

 

 

「分かりました。それでは皆さん、デッキへと向かいましょう。大変申し訳無いのですが天野君、諸藤さんをお願いしてもいいですか?」

 

「分かりました。」

 

こうして、俺と諸藤以外は坂上先生の先導のもと去っていった。

 

「ぁりがどぅ.......ござぃまず.......もうざがらぃまぜぇん.......なまぃぎなぐぢぎぃでぇ.......ずぃまぜぇんでじだぁぁぁぁ!!!」

 

諸藤は俺に泣きながら土下座をする。だがこいつは大事な事をひとつ忘れている。

 

「俺は助けるとは言っていない。保留にすると言ったんだ。分かったら立て、デッキへ歩け。」

 

「え?」

 

何を言っているのか分からないと言わんばかりの顔でこっちを見てくる。こいつはアホなのか?

 

 

「だから、俺は一旦保留にしただけだ。それで俺はお前をやっぱり退学にすると決めた、というかお前を助けたとしても軽井沢の虐めの一件でお前はどうせ退学だから腹くくるこったな。」

 

「いやだぁぁぁぁぁ!!」

 

「恨むならいじめなんぞした自分を恨め。てかさっさと立てよ。」

 

俺はいつまでも立とうとしない諸藤に痺れを切らしてきた。さっさと来てさっさと退学してくんねぇかな。そんぐらいなら人生まだなんとでもなるだろ。俺の冤罪ん時よりよっぽどマシだろうに.......。俺は少し本気の威圧と殺気を放つ。

 

「おい、早くしろよ。立て、立たなきゃ.......わかるよな?」

 

諸藤は恐怖に負けたのかぐしゃぐしゃの顔で糸の切れた藁人形みたいにふにゃふにゃと立ち始めた。そしてその股間部分は濡れていた。漏らしたらしい。

 

「ちっ、漏らしやがって.......さっさと歩けよ。」

 

「ヒィ.......ごめんなさい.......。」

 

諸藤はショックのせいか恐怖のせいかは分からないが、漏らした後、両目から涙を大量に流しながらデッキへと進んだ勿論俺もだ。

 

そうして俺が来ると、俺が最後だったらしく、皆の視線が集まる。否、俺の少し前を歩く諸藤に視線が集まった。

 

坂柳と綿白神は下賎なものを見るような目線を向け、御門は玩具を見るような目線を向ける。葛城と一之瀬は目を逸らしていた。

 

「坂上先生、俺は救済はしません。」

 

「分かりました。」

 

坂上先生に救済の意思がないことを伝えると再度諸藤はその場に崩れ落ちた。既に制服も制服のスカートも涙やら汗やら様々な体液で濡れていた。周りの生徒は近づきたくないらしく距離を置く。おれもその一人だ。

 

 

 

『それではこれより試験の結果を発表する。』

 

真嶋先生が苦い顔をして放送を始めた。まぁ自分のクラスから退学者が二人も出ればそりゃあそうか。

 

『 Aクラスの退学者は戸塚弥彦、一条透也の2名

 

Bクラスの退学者は0、

 

Cクラスの退学者は諸藤リカの1名

 

Dクラスの退学者は沖谷拓人、本堂佳祐の2名だ。

 

今名前を呼ばれた5名はこの後私の元に来るように、また、戸塚がハンマーで天野を殴った傷害事件、一条が熊の着ぐるみを来て三輪、龍園を襲った傷害事件についての判決もその際に言い渡す事とする。』

 

 

その結果に対して騒ぐものは退学者以外ではいない。.......が、Dクラスは退学者が2名になっていた。つまり森菜奈は2000万プライベートポイントで助けられたか、あるいは俺の気づかない抜け道があってそれにより助かったかという事だろう。

 

「.......三輪、お前はめやがったな!!あの写真を用意したのはお前だろ!!俺が襲う前からお前は俺を裏切ってやがったんだな!」

 

退学が決定した一条が三輪の胸ぐらを掴む。顔は真っ青だったがまぁ当然っちゃ当然か。

 

「.......お前はいくつか勘違いをしている。一つ目に俺は裏切ってなどいない、初めからあの試験は御門と組んでお前を嵌めるために挑発し続けていた。ずっとお前の敵だった訳だ。そして2つ目、写真を撮ったのは確かに俺だ。だが暴力行為をしたのはお前だ。俺を責めるのはやめてもらおう。世間にはパパラッチって職業もあるしな。」

 

「ふざけんな!!なんでそんなAクラスの不利益になる事をした!!」

 

激高する一条、冷静な三輪、対象的な絵面だな。

 

「そもそもこれはAクラスのリーダーである綿白神さんの命令だ。お前がリーダーと仰ぐな。分かったら黙る事だ。みっともないぞ。」

 

その言葉に一条は崩れさる。自分が崇拝していた相手に裏切られた事の絶望感からだろう。やはり綿白神はクソだな。

 

 

「どういう事だ!三輪!綿白神!!」

 

それを聞いた葛城の頭には青筋が立っている。

 

「葛城.......いい事を教えてやるよ。俺は初めから綿白神派だ。お前の派閥を潰すためにスパイをしていたに過ぎない。そして戸塚の選民思想を強化したのも俺だ。戸塚が除名される様は見ていて面白かったよ。それでは改めまして、綿白神派閥ナンバー3、三輪護良だ。どうぞ宜しく。」

 

三輪はそれを言い残すと綿白神の元へ行く。15人程度が坂柳の周りに、別で15人程度が綿白神の周りにいる。葛城の周りは5人、それは葛城派の失墜を意味していた。

 

「ろくな死に方はせんぞ、三輪、綿白神!!」

 

葛城はそれを言い残し、残っていた五人と共に坂柳側に着く。どうやら葛城は坂柳の下に着くことを決めたらしい。

 

「品が無いですね、貴方。」

 

「相変わらず口が達者ですわね、三輪。」

 

坂柳だけでなく何故か綿白神からも口撃を飛ばされる三輪だがまぁ無理もない。なんか全部話しちゃってたしな。

 

「マジシャンはネタばらし大事だと思うんだが.......まぁボスがそういうなら黙りましょうかね。」

 

三輪はそのまま綿白神の後ろに戻る、どうやらAクラスの派閥争いが終わる日もそう遠くなさそうだ。

 

ちなみにBクラスは案山子と化していた。Dクラスにあるであろうプライベートポイントはおそらく1600万程度、残りの400万を用意したのは恐らくBクラスでは無いのだろう。そしてもちろんCクラスでもない.......つまり綿白神か坂柳だろう。果たしてどちらが使ったのかは定かでは無いが、十中八九間違えない。

 

とはいえクラスポイントは結局

 

坂柳クラス2012ポイント➛+200ポイント➛2212ポイント

 

一之瀬クラス1660ポイント➛-500ポイント➛1160ポイント

 

龍園クラス1532ポイント➛-200ポイント➛1332ポイント

 

平田クラス0ポイント➛+500ポイント➛500ポイント

 

となるだろう。うちのクラスと坂柳クラスとの差は900程もある。うちと一之瀬クラスとは150ポイント程、一之瀬クラスとDクラスの差は600ポイント程といった所か。

 

対するDクラスだが全員知っているのか驚いた様子はない。まぁ本堂と沖谷は地獄みたいな顔をしていたが.......俺は櫛田と松下と綾小路にメッセージで何があったのかを聞いてみるが、全員から『平田が2000万あるから救うと言い出した。どこから400万程が沸いたのかは分からない。』と言っていた。綾小路もマジで知らないらしい。

 

Bクラスの黒幕Z、御門、高円寺、坂柳派、綿白神派.......候補が多すぎて絞れない。上なら堀北兄や南雲もいるが.......とにかく誰かしらと取り引きして得たのは間違えなさそうだ。

 

こうして想定外の波乱を起こし続けながら、第三の特別試験は幕を閉じるのだった。

戸塚弥彦を

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