ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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龍園、生徒会に入りたいってよ。

決行日当日、俺達Cクラスのプールグループは午後から行く事になった。理由はアリバイ作りである。盗撮用のカメラを取り出した時間にプールにいなければ初めからそもそも疑われる事もない。という訳だ。これならばアイツらがばらさない限りはバレる心配もないだろう。

 

ちなみにだが裁判なんかの騒動を揉み消すポイントは100万プライベートポイントらしい。本来なら多額の金なのだが俺にとっては端金だ。正規の使用方法はDクラスとかが問題を起こした時用なのだろうしそもそもこんなプライベートポイントを持っている人間は問題を起こさないと思っているのかもしれないな。

 

まぁ学校側の事情は分からないにせよ、万が一アイツらがばらせば俺は揉み消せるし、何倍にもなって俺には返ってくる筈だ。何も問題は無い。

 

そう思いながら俺は図書館へと向かった。俺は最近プロレベルのチェスのAIに負け続けている。前世では奨励会に居た事もあり将棋はかなり強い。チェスも決して弱くは無いし才能が無いわけでもないのだが..............まだまだ訓練が必要だろう。

 

という訳で俺は図書館でチェスの本を探すべく向かっている。俺が図書館に向かうべく歩いていると、目の前で何やら集団が話し込んでいる。仕方ないから迂回していくべきだろうか..............。

 

しかし目の前の集団は俺を迂回させてはくれなかった。

 

「お前が天野だな、お前の噂は俺達2年生の耳にも届いてるぜ?Cクラスの参謀らしいな。」

 

彼は軽薄な笑みを浮かべこちらに近付いてくる。

 

..............参ったな、こんなに早く接触するつもりは無かったんだが、俺は運命ってやつにどうも嫌われているらしい。

 

「俺の事は知ってるか?」

 

「2年Aクラス、南雲雅生徒会副会長ですね、存じ上げております。私のような日陰者に何か用でしょうか?」

 

俺がそう言うと南雲は肩を竦めてやれやれという表情を作る。どうやらそう簡単に逃がしてはくれなさそうだ。

 

「おいおい、お前が日陰者な訳ねぇだろ。まずは生徒会の一員として虐めを未然に防げなかったことは謝罪したい、悪かった。」

 

絶対に気持ちを籠ってないであろう謝罪だが、南雲を今敵に回すつもりは無い。それよりも後ろからキャーキャー言っている女子がうるさい。平均よりは可愛いがこの学校の中では顔面偏差値は下澄みだろう。俺も人の事を言えた義理はないが。

 

「いえいえ、南雲副会長は何も悪くありません。気になさらないでください。」

 

「謝罪は受け取ってくれ。それにしてもお前の噂は聞いてるぜ?」

 

「どんな風にですか?」

 

俺の噂、多分ろくでもないと思うんだけど..............。少なくとも良い思い出は無いんだが、マジで。

 

「冤罪で虐めの件については触れないが.......2000万ポイントを使ってCクラスに移籍、無人島試験では3クラスで同盟を結びDクラスを地獄に叩き落とした。その後干支試験では全クラスで和平を結び、選択投票試験ではクラスメイトを切ることで元Bクラスと300クラスポイントの差を縮めCクラスに昇格したらしいな。」

 

「.......全部龍園の指示です。俺は何もしてません。」

 

無理だろうが一応否定はしておきたい。まぁ当の本人は怪我して死んでたけどな。

 

「龍園か.......あいつの実力も認めるがお前も1枚噛んでるのは分かってんだ。誤魔化すだけ無駄だぜ。」

 

まぁそんな簡単にはいそうですかと逃げられる訳も無いか.......。

 

「まぁ少しだけですけどね、俺は大した事はしてませんよ。」

 

「謙遜に聞こえるけどな.......今お前らの世代は黄金世代って呼ばれてる事は知ってるか?」

 

「いや存じ上げ無いです。」

 

最悪の世代の間違いだと思う。これからまた二人犯罪者も出るしな。

 

「Aクラスの綿白神、三輪、葛城、坂柳、橋本、Bクラスの木山、一之瀬、神崎、八雲、Cクラスの龍園にお前、椎名、金田、Dクラスには御門、平田、高円寺、堀北、櫛田って所か。」

 

流石に綾小路と松下には気づけなかったらしい。まぁ知っていたらむしろ怖いまであるが。というかこの世界線の事を考えると堀北の場違い感は凄いしなんで椎名を知っているのかも気になるが.......深くは考えない事にするか。

 

「俺では役者不足ですよ。」

 

「そうか?そうは思えないがな、寧ろお前がこの世代の台風の目な気がするぜ?」

 

「台風の目は割と簡単に消えるものなんですが.......。」

 

俺はさっさと消滅しろって事なのかもしれない。

 

「その意図は無かったんだがな.......まぁともかくだ。お前らに俺は期待してるんだよ、三学期の頭には俺が提案した試験が行われる。俺が掲げる『強いものはとことん上へ、弱いものはとことん下へ、真の実力至上主義の学校』になるための第一歩って訳だ。きっとお前らは何が起こるかわからねぇだろうが、堀北生徒会長と学年を超えた勝負をする、当然お前ら1年も含めて、学年の枠を追っ払った試験になるだろうよ。」

 

「なるほど.......今までよりも実力至上主義という事は退学者も増えそうですね。」

 

Dクラス全員退学希望するんだが.......流石に無理か?

 

「そうだなぁ、確実に退学する試験なんかはねぇかもしれねぇが.......まぁ誰かしらは退学するだろうぜ。それは今回の試験だけじゃない。これからもずっとだ。」

 

「南雲、後輩にだる絡みをするのは辞めておけ。」

 

「ククク、生徒会の副会長様と仲良く話してるとはいいじゃねぇか。」

 

俺が南雲にダル絡みされていると後ろから堀北兄と橘、龍園が来た。てか珍しい組み合わせ過ぎないか?

 

「ククク、生徒会に入ろうとしたが断られたんだよ。」

 

エスパーかな?それにしても龍園が生徒会って.......。なんで入れると思ったんだ?

 

「南雲、後輩の時間を奪うな。」

 

「んじゃあ最後に一つだけ、天野、龍園、お前らは生徒会で誰を尊敬している?」

 

南雲の質問の意図は恐らく南雲と堀北の対立に関してどっちに着くか、という意味だろう。

 

だったら俺の答えは決まっている。

 

 

「生徒会書記の橘先輩ですね。」

 

橘先輩一択だろそんなの。八巻で自分を嵌めるために作られたグループだと分かっていながら真摯に行動して最後までクラスのために健気だった事をこの場で俺だけが知っている。南雲の真の実力至上主義は俺がこの先思い描いている事と似通っている部分も多いがそれはそれ、これはこれなのだ。

 

「ほう.......。」

 

それを聞いた堀北兄は俺を値踏みするような目で見てくる。辞めろ。俺はお前の伝統を守る方針には反対なんだ。品定めなんかせずに雑魚を見る目で見てくれ。ドMみたいな思考だけど俺はドSである事を俺の名誉のために残しておく。

 

「へぇ..............まさかな。」

 

南雲は俺がこれから起こる未来に気付いたのかと思っているのかもしれない。まぁ気付いて辞めてくれるなら全然儲けものなんだけどな。

 

「ククク、やっぱりお前は面白ぇな。」

 

龍園は俺を見て楽しそうに笑う。堀北兄とこいつは南雲降ろしのために手を結んだのだろうか?どうも見えてこないな。

 

「お前のがおもしれぇだろ。」

 

ちなみに当の本人橘先輩はと言うと.......

 

「えっ.......えっ.......わ、私ですか.......。」

 

無茶苦茶恥ずかしそうだった。真っ赤になった顔を手で隠しているが顔がニヤニヤして嬉しそうなのが伝わってくる。

 

「小動物みたいで可愛いな。」

 

あ、やべ、思わず声に出ちまったよ。でもまぁ、これはしゃーない。俺悪くない。可愛いは罪なんだよきっと。

 

「.....................っ。」

 

橘先輩は完全に機能停止した。ロボットみたいに口をパクパクさせている。なんかチョロインの匂いがした。

 

「あんまり橘をからかってくれるな。行くぞ橘。」

 

「ひゃい.......天野くん.......ありがとね。」

 

ゆでダコみたいにふにゃふにゃになった橘先輩を連れてそのまま堀北兄は何処かへ行ってしまった。

 

「それでは失礼します。この後用事もありますので。」

 

俺はこれを好機と言わんばかりに図書館へと向かった。

 

その後南雲は龍園と話しているようだったが、俺には知りえない事だろう。

 

兎に角、俺は図書館へ行くまでに多大なる心労を患う羽目になるのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ふぅ.......これだけでもだいぶメンタルゴリゴリ削られたぞ。」

 

俺はその10分後図書館に何とか着いた、着くまでになんスーパー炎獄スマッシュを食らった気がするがもう思い出さない事にしよう。

 

「貴方がこんな神聖な場所にいるなんて.......浄化されにでも来たのかしら、何れにしても不快だわ、直ぐに立ち去りなさい。」

 

だが一難去ってまた一難、目の前には堀北妹(無能)がいた。兄を見たあとだとやっぱり落差が凄い気がする。

 

「何かしらその目線は.......不愉快だわ。」

 

まぁ何にせよこいつの対処法は恐ろしく簡単だ。正論を突き付け返すとそれはそれで五月蝿くなるので相手しない事が一番、つまり無視が効果的だ。俺はこいつから目線を戻し、そのまま図書館へと入っていく。

 

「こら、待ちなさい!」

 

俺は堀北の叫びを無視してそのまま図書館へと行き、目当てのチェスの本を探す、それにしても広すぎる.......税金の無駄遣いでしかないだろう。

 

「人の話を聞きなさい!」

 

俺が図書館に入ったってのに堀北はまだ俺の後を付けて騒いでいる、邪魔でしかない。

 

「図書館では静かにする事だな。周りに迷惑になる。それじゃあな。」

 

原作の堀北は正論は聞ける人間だったはずだしまぁこれさえ言えば大丈夫な筈だ。原作の成長がない初期北でもこれは出来ていた。大幅な弱体化でもしてなきゃまァ問題ない。俺はそのまま堀北から目線を戻しチェスの本を探す。どうやら2階らしいな。

 

「Dクラスに迷惑をかけた事を謝りなさい!それと私を無視しないで頂戴!不良品の癖に生意気よ。」

 

悲しい事に原作より退化したらしい。何処かのカードゲームでは退化が環境を取っているがこの学校では退化はオワコンだ。まぁ幸いにも俺とは距離が離れている。無視して進めばいいだろう。これの知り合いと思われるのも嫌だしな。

 

 

「天野くんの言う通り図書館では静かにしてください。皆さんに迷惑になります。喋るなとまでは言いませんが貴方の声はあまりにも大きすぎます。」

 

俺が無視をしていると図書館の女神こと椎名ひよりが立ち上がった。堀北は生きて帰ってくる事は無いだろう。

 

「誰かしら貴方は、五月蝿いのはDクラスを裏切った裏切り者のクズのせいだわ。私のせいにしないで頂戴!」

 

いや明らかにお前のせいだろ。取り敢えず俺はチェスの本のエリアに辿り着いた.......が種類も多くどれが最適なのかは分からないな。ちなみにチェスの本棚の横には張り紙がしてある。そこの一文には図書館で騒ぎ過ぎると強制退室。酷い場合はプライベートポイントの没収と書いてある。つまりあのまま無視しとけば学校側が勝手に図書館から捨ててくれるだろう。燃えるゴミの日は明後日だが袋にでも縛って入れておけばいい。猿轡でも噛ませて置けばうるさくも無いだろう。

 

なんか少しサイコパスみたいな思考が出てきてしまったが落ち着こう。俺は堀北にイラつき過ぎている。俺は深呼吸をして自分を落ち着ける。そのうち殺人とかしそうで怖いな俺。

 

「Dクラスの裏切り者.......というのは天野くんの事でしょうか?そもそも彼がCクラスに来たのは貴方達が虐めていたからですので貴方達のせいでは?」

 

「ふざけないで頂戴!あんな不良品達と私は違うわ!」

 

深呼吸をしたのにまた頭に青筋が浮かんでいる事だろう。山内や戸塚の時もかなり頭に来てはいたがそれでもまだ頑張れば耐えられる範囲だったが.......堀北だけはちょっと怪しいな。

 

「貴方は自己分析から始めた方がいいと思います。司書さん、申し訳ありませんが彼女を追い出してください。」

 

ひよりの言葉通りに司書達が来て、そのまま堀北はプライベートポイントを3000ポイント没収されて追い出された。図書館には出禁らしく、これから堀北は図書館に入れないそうだ。まぁ何にせよこれで俺はチェスの本を探せるな。

 

「災難でしたね天野くん、Dクラスにいた頃は堀北さんみたいな方に毎日あんな酷い言われようだったのですか?」

 

否、探せなかった。まぁ椎名には堀北を追い返してもらった恩がデカすぎる。一生かけても返せるか怪しいぞ本当に。というか今更だけど堀北ってプールに行く予定じゃなかったのか?なんでここに居たんだあいつ。

 

「まぁあんなのはマシだろ.......イジメの内容はもっと酷かったからな。あんまり話したくないけどさ。」

 

思い出すだけでも辛い。綾小路とその配下には流石に手を出す訳にも行かないが他は数人を除きみんな退学させていいだろう。最終的にDクラスに残るのは10人とかでいいんだけどな。

 

「嫌な事を思い出させてしまったようですね.......ごめんなさい。天野くんは本はお好きなんですか?」

 

「まぁ暇があればちょくちょく読むかな。」

 

前世でも本はよく読んでいた。前世ではラノベが家に300冊ぐらいあった訳だし.......まぁセーフだろう。

 

「そうなんですか、Cクラスには本が好きなお友達は居なかったもので.......大変嬉しいです。天野くんは龍園君の代わりをしていらしたのもありまして色々大変そうだったので.......。」

 

「そうだなぁ.......まぁこれから先当分は休めるんじゃないか?」

 

俺はペーパーシャッフルはまだしも体育祭は高円寺とのガチバトル以外は基本的に休むつもりだ。てか休ませて欲しい。

 

「でしたら沢山お話したいですね.......そう言えばこの前送られていた今日の午後からのプールなのですが宜しければご一緒させてください。私も天野くんと楽しくお話話したいですし。」

 

 

「ありがとう。じゃあ一緒に行くとするか。」

 

ラッキーだが.......この信頼を裏切るような事を既に指示してあるのがとても辛い。良心が痛む。

 

「そうですね、まずはこちらは読まれましたか?ミステリーと言えば王道なのですが?」

 

そう言いながら椎名が取りだしてきたのはエラリー・クイーンの『Yの悲劇』だ。中々の名作だが実は俺読んだことは無かったりする。

 

「王道を避けて生きてきたマイナー厨には重い言葉だな。」

 

「でしたらこちら私の私物なのですがお貸しします。是非感想をお聞かせください、さぁ今から是非、是非!」

 

結局俺は椎名に監視されながらYの悲劇を読み、そのまま時間が来てしまった。チェスの本は借りたかったのだが.......まぁまた来るしかないか。仕方ない。それにたまにはこんな損得も考えない友情も悪くないのかもしれないな。

 

そう思いながら俺達はプールへ向かうのだった。




ぶっちゃけ本来ここで南雲を出す予定じゃ無かったんですけど.......なんかノリで出ちゃいました笑笑

戸塚弥彦を

  • 許すな!
  • 許してあげよう
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