ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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残したモノ

翌日、今日は土曜日で学校は無い。クラスの体育祭の練習も月曜かららしい。セーフ。

 

俺は池と外村の裁判の結果も気になったので堀北生徒会長にメールで極限に来るよう連絡をする。この学校では極限は割と高い店だが、定期券なるものを俺が持っている事もあり、俺はほぼ毎日夜は世話になっている。大将は太っ腹である。俺はいつものお気に入りのファッションで極限へと向かう。

 

「あれ?天野君じゃない〜おひさー!」

 

なぜ極限へと向かう道に星ノ宮先生は居るのか。右手には酒もタバコもない事を確認して取り敢えず一安心した。

 

「何の用ですか…一体。」

 

人が少ない通りとはいえこんな所で絡んでこないで欲しい。

 

「いやー、さっき堀北生徒会長を見かけたんだよねぇ……この通りって滅多に人が通らないと思うんだけど……偶然なのかなぁ?」

 

大体を察した、運良く俺も堀北生徒会長も同じ方向へと行くから下克上に怯えてると言ったところか……いやまぁもう下克上された後なんだけどさ。

 

「偶然じゃないですかね。そう言えば星ノ宮先生、プライベートポイントで買いたいものがあるんですけど……。」

 

ちょうどいい機会なので前前から欲しかったものを仕入れてしまいたいのだ。。堀北生徒会長から収入も得たことだしな。

 

「そういうのは担任の坂上先生……は今体調崩して一週間の療養に入ってたっけ……うん、それで何かな?」

 

坂上先生に俺も初めは頼むつもりだったが音信不通だったので諦めた……まさか療養なうとは。

 

「えーと…3年前から5年前の3年間の先輩たちのクラスポイントの推移と、直近5年の裁判になった事件のデータが欲しいです。いくらですか?」

 

この世界線はあまりにも原作乖離要素が多すぎる。ここら辺は知っておくべきだろう。どうせプライベートポイント等腐るほどあるしな。

 

「うーん……500万って所でどうかな?天野君儲けてるみたいだし。」

 

「茶柱先生は100万って言ってましたけどね。」

 

大嘘である。茶柱は100万とも言ってないし、茶柱はそもそも先生かすら怪しい。その場で決めたのか、それとも元々決まっているのか……まずはそれを見極めるべきだろう。

 

「カマをかけようとしたって無駄よ、500万だって分かってるんだから……いやでもサエちゃんが下克上を……うーん。」

 

下克上を狙ってるのは正解だが……とはいえここで星ノ宮先生が『使える』かどうか試しておくのは悪くないだろう。

 

「流石に高いんでもう少しまけてくださいよ……その方が絶対後で先生にもいい事ありますよ。」

 

「どういう事かな?」

 

まぁそりゃそんな反応になるだろうが……俺の計画を今はまだ誰にも知られる訳には行かない。俺が起こそうとしている『革命』を知るのは、まだ早いだろう。良くも悪くも星ノ宮先生がどれほどの信頼度なのかは見えてこない。とはいえヒントぐらいは出しておくか。

 

「Aクラスの担任になりたいなら……ですかね。少なくとも茶柱先生よりはいい待遇になれるかもしれませんよ。」

 

「いまいち言ってる意味が分からないんだけど……なんか私の勘がここは乗るべきって言ってるんだよねーうーん。」

 

「そういえばいつもみたいにあざといキャラしなくていいんですか?」

 

「ちょっと黙っとこうか。」

 

あざといキャラしなくていいんですか?って言っただけなのに睨まれた……どうしてだよ。

 

「まぁ何はともあれ……俺も乗っておくべきだと思いますよ。」

 

『革命』を起こすのは堀北学でも南雲雅でも無い。俺なのだから。この革命を知っているのは坂柳理事長一人だ。革命の対価はその時に一億プライベートポイントと高くは無かったが……まぁそれでもかなり額は減らしてあるのだろう。

 

…まぁ、『この学校の根幹を揺るがしかねない』ものである事を考えたら一億程度で済むのはとてつもなく安い気がするのだが。

 

「分かった、400万に減らしてあげるね。だけどこれってかなーーーーーーり甘めにしてあげたからね?期待してるからね?」

 

なんか恐ろしい圧を感じるような……気の所為じゃないな。

とはいえ100万の負担か、確かにこれはバカにならないだろう。この人は感覚派なのか自分の勘に100万をベットした事になる訳だが……すごい度胸だな。

 

「まぁそうですね、これ俺の連絡先なんでそれに送ってください。」

 

「後で送っとくね。」

 

こうして俺は教師と連絡先を交換するという普通では無い高校生活の一歩を踏み出してしまった。もう200歩ぐらい踏み出した後だし今更なのだが。

 

「それではこの後約束している人がいるんで失礼します。」

 

「堀北生徒会長でしょ…?君も油断ならないよね本当に……うちのクラスに来て欲しかったよ。」

俺はその呼び掛けは無視してそのまま極限へと向かう。

 

だが、『その可能性は十分に有り得る』ものだろう。後は誠意の問題だ。

 

そして俺は極限に入ると既に堀北生徒会長がいた。一人で来たらしい。

 

「来たか、それで聞きたい事と言うのはなんだ。」

 

「池と外村がどんな判決を食らったのかを聞きたかったのと、あと一応『クラスの共有財産を強奪された』なんて寝言を言われないように……ですかね。」

 

ルンルン気分で交渉を結んだ俺だが強奪を訴えられる可能性は十分にある。原作ではそんな感じの人間ではなかったはずだが…原作とはちょっと違うからなこの世界線は。

 

「まず、池と外村だが、体育祭前日までの停学が確定した、全クラスが被害に遭っていることもあり、クラスポイントは移動しないが、池と外村は1年間プライベートポイントを受け取る事が出来なくなった。」

 

まぁ当然の処置だろう。むしろDクラスのポイントはよく減らなかったなってレベルだろうよ。

 

「そしてお前は一つ勘違いをしている、あの多額のプライベートポイントだが……クラスの共有財産では無い。一学期にあった試験で大幅にプライベートポイントを得られるものがあったからと、生徒会長しての報酬等で得たプライベートポイントだ。この学校でも歴代で3番目だったはずだ。」

 

おかしい……原作でも最高は詐欺った1300万プライベートポイントの奴じゃなかったっけか…。

 

「1番は俺でしょうが……2番は一体誰ですか?南雲ですか?」

 

「あいつ自身の端末には1000万程だろう。その気になれば何時でも回収できる以上あいつは必要な時以外は放置するはずだ。」

 

「まぁ足が着きかねませんからね。」

 

そういう意味では俺の行動は軽率だったな。

 

「3年前……正確には2年と6ヶ月前ぐらいか……俺達が1年だった時の3年の先輩が6500万というポイントを貯め、この学校の規則を変えたのだ。それ以降この学校の特別試験におけるクラスポイントやプライベートポイントのレートの増減は膨れ上がった。と言われている。」

 

凄い先輩もいたもんだが……と、言われているとはどういう事だろうか。

 

「言われている…?ですか。」

 

「学校側は変わった規則を正式に公表はしてくれなかった。だが、その後少しずつレートが上がって言ったことからそのように噂されている。歴代で最も優れた生徒会副会長だったのは間違えないだろう。」

 

まぁそれはそうだろう、にしてもそんな人物をもってしても副会長とは……。会長は何者だったんだ一体…。

 

「会長は何者だったんだという顔をしているな……会長は大したことは無かった、傀儡政治と言う奴だ。だが、生徒会だけではなく俺達の2個上の世代は優秀な人間が数多く居た。そのせいか『優勢世代』等と呼ばれていたな。」

 

何そのどっかの任侠漫画に居そうなヤツら。

 

「俺は今でこそ歴代最高の生徒会長などと呼ばれているが優勢世代の人間か生徒会長に居たとしたらどうなっていたかは分からないだろう。その副会長以外のリーダー達も含めてな。」

 

「なるほど……その世代の方々は今何処で何をなされてるんですか?」

 

優秀な人間の行く先はどこなのか……こればっかりは原作にも無かったしな。

 

「あるものは自分の会社を継ぐために社長になり、またあるものはこの学校の何処かにいると噂されていたりする。だがその副会長は……お前もよく知る人物だ。」

 

「3個上の先輩に知り合いなんていましたっけ俺…?」

 

この学校……ましてや3個上の先輩など兄貴とその友達ぐらいしか知らないんだけどな……。

 

「お前の兄だ、俺は生徒会にいたが詳しくは知らないがな。」

 

「え!??!兄貴はこの学校に居たんですか?」

 

俺聞いた事ないんだけどそんなの……確かに3年間会えなかったが数年会えない事もまぁざらでは無かったし……一緒に暮らしていた訳でも無いからな。兄貴は父親に社会勉強と言って色んなところに連れていかれることもあったから外国にでもいるのかと思っていたが……まさかここにいたとは。

 

「知らなかったのか……だとしたら少し話しすぎたかもな。お前の兄貴はAクラスでここを卒業している。」

 

「……知らなかった。」

 

自分の家族の事すら俺はよく知らない。うちの家族観は普通のそれとはだいぶ異なるものであるのは分かっているがここまでだとは思わなかったな……。

 

「だが兄は兄、お前はお前だ、俺はお前個人に期待している。お前が復讐を望むのなら止めはしない。だが、俺個人としてはお前がこの学校で何かを残してくれる事を期待している。」

 

それだけ言い残して堀北生徒会長はそのまま行ってしまった。

 

俺は鴨蕎麦を食べながら自分が残せるものを考える。

 

 

初めはただただ復讐したいだけだった。そこから目に入る全てを拒絶したくなった。何処に行っても蔓延るクズを一掃したいだけだった。全員纏めて潰したいだけだった。何処まで行っても自分の負の感情に囚われ、それの赴くままに動いていた。俺に残せるものがあるとすれば……『革命』はその1つかもしれない。

 

俺の復讐心の一端からやろうとしていた『革命』だった。だってその方が楽でやりやすいから。

 

だが、今はそれだけじゃない。兄貴を超えたい。兄貴以上の偉業を成し遂げたい。兄貴は俺とは違って2億プライベートポイントのハンデすらなかったけれど……それならせめて俺は兄貴の変えたこの学校で兄貴以上に何かを変えたかった。

 

そして奇しくも俺の思い描いた『革命』はそれを可能にし得るものだった。

 

兄貴がこの学校で何をしたのかは分からない。それを知る術も多くは無いだろう、決して。それでも超えたい。そう思ってしまった。

 

俺はこの学校に入って初めて、『復讐心』以外で目標を建てて目指している気がする。まぁ復讐は復讐でするんだけどな。というかまだ復讐心のが強い。

 

それでも少しだけ、ほんの少しだけ、心の奥底に芽生えたこの感情を大事にしたい。

 

 

俺は鴨蕎麦のスープに俺のワクワクした笑顔が写っている事も、写った顔がこの学校に入ってから初めて浮かべている『心の底からの』笑顔である事も…まだ知らない。




諸事情で前倒しで出してます……理由は察してください

体育祭、勝つのは……?

  • 坂柳派閥だ!
  • 綿白神派閥だ!
  • 一之瀬派閥だ!
  • 木山派閥だ!
  • 龍園達Cクラスだ!
  • オリ主だ!
  • 平田グループだ!
  • 櫛田グループだ!
  • 篠原グループだ!
  • 御門グループだ!
  • 高円寺だ!
  • 今は亡き葛城だ!
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