1ヶ月後に開催される体育祭に向け本格的な準備が始まった。
週に一度設けられた2時間のSLTや、体育の授業なんかで練習をする事が許可されている。当然だが全クラスが練習、ないしは偵察など、自分達のクラスが勝つための戦略を取るだろう。
俺達はと言うと、話し合いの後に龍園と一之瀬の交渉は原作通りの決裂の仕方で決裂した。一之瀬達としても龍園は信用出来ないという評価は変わらないらしい。ちなみに俺はその場に居合わせていない。一之瀬達に龍園の駒だと思わせてもいい事は無いだろうしな。
といっても、龍園の独断と偏見で大方のことは決まるだろう。俺は今回全権を龍園に委ねている。つまるところ反対出来る人間はいない。
方針としては全員参加種目に出る順番や推薦競技で誰が出るかは体育の授業やSLT等で運動能力を見てから決めるらしい。
とは言え方向性は大きく2つに別れるだろう。実力至上主義にするか、それとも志願性にするかだ。Bクラスはおそらく志願性……だと思っていたんだが派閥争いって何があったんだよ一体……。黒幕Zの狙いがわからん。
まぁ何はともあれ、Cクラスは龍園の性格ならば、実力のある人のみを集める方針で固めていくだろう。独裁政権である以上クラスから不満が出る事はあっても結果は覆り得ない。
Aクラスは坂柳が不参加な以上綿白神派閥が指揮をするだろうからこちらも実力至上主義タイプだろう。まぁ坂柳でもそれは変わらないか。
問題はDクラス……これは俺には想像もつかない。平田が最早誰レベルだ。平等を重んじても、最効率を見定めてもおかしくは無い。
入学当初の彼だったら、クラスの調和を保つ為に利益を捨て、皆仲良く楽しくの方針で進めていただろう。やはり成長とは恐ろしいものだ。
「まずはお前らの握力を見せろ。四方綱引きのメンバーを決める。と言っても恐らくアルベルトは確定だろうがな。」
龍園は手に持った握力測定器を伊吹とアルベルトに渡した。最初に記録の高そうな人間に渡す事で周りを感化させる狙いがあるのかもしれない。ちなみに今日のメニューは握力と二人三脚と100メートル走だ。他の種目は日曜日に集めさせられて記録を集めさせられた。借り物競争とリレーだけはやってないが、リレーは100メートルの結果を参考に、借り物競争は頭の悪そうな奴を入れとけばいいだろう。
ちなみに体育祭までは学校側が基礎体力を計るための施設や器具を使えるようにしている。勿論占領なんかは出来ないが、それでも十分だろう。備品は壊したら弁償なので破壊して他クラスに回さない作戦も取れなさそうだ。勿論パクるのもアウト。こうしてみると俺もだいぶ思考が龍園してきたな。
まぁ何はともあれ俺たちCクラスの雑魚兵共は、龍園の指示で運動能力を計っている。それぞれが体操服である指定のジャージを着てグラウンドに出て来ている状態だ。ちなみにBクラスは運動公園、Aクラスはトレーニングジムで運動している。Dクラスはまさかの行方不明だ。偵察を恐れての隠蔽なのだろうか……イマイチ見えて来ないな。
皆が握力を計っている中、俺は集団から少し離れ、こちらを見ているジャージ姿の人間を観察する。そこに居たのははDクラスの堀北と平田と御門と軽井沢と綾小路というよく分からない謎のメンバーだ。更にBクラスの一之瀬と神崎と柴田がいるので尚更カオスなメンバーとなってしまっている。Aクラスは偵察は一先ず置いといて個人のレベルアップだろうか……?木山派も同様かもしれない。
「やべぇ……やべぇぞやっぱり!」
「これが国籍を超えた力なのかよ!」
俺が偵察部隊を分析しているとアルベルトが恐ろしい形相で握力機器を握…り潰していた。いやつぶれてる訳では無いが……表現はこれしか思いつかない。というか顔怖すぎだろ。
「アルベルト氏、92.6……!?」
言うまでもなく握力の記録だろう……だが、というかそれは人間なのか?金田は驚いた声を出しながら記入をする。
「これで残りは天野氏だけですね、ちなみに現在は男子が一位はアルベルト氏で92.6、二位は龍園氏で61.9、3位は石崎氏で56.6、4位は園田氏で50.1です。」
「おお、さすが龍園さん!」
石崎の声が聞こえてくる。とはいえ石崎も3位、なかなかのものだろう。女子の握力は分からないが伊吹は上位にいるだろうな。逆に椎名は低そうだ。
「おら、天野。お前で最後だ、ちゃっちゃとしろ。」
龍園は握力測定器を俺に投げ渡した……壊れそうだから投げるのは辞めろ。というかちゃっちゃととか言うのはやめろ、腹がよじれる。
俺は握力測定器のモニター側を自分の目で見えるように持つ。流石にアルベルト越えはきついな。
俺はレバーに手をかけ、瞬間的に力を込めた。どんどん力をブーストしていく、その後限界まで力を振り絞ったことにより同じ力で握られるので、記録は停滞する。
「ククク、クククク、やっぱり身体能力も一級品かよ天野!!」
龍園は高笑いする。アルベルト越えはやっぱり無理だったか。
俺の握った握力測定器のモニターには71.4㎏の数字。
これで四方綱引きのメンバーは俺、龍園、アルベルト、石崎に決定だろう。メンバーが野蛮すぎ無いか?
「ちょっと天野さん、頭だけじゃなくて身体も強いんですか!?やっぱすげぇ……」
先程の記録に興奮止まない石崎、その目には畏怖が混ざっている。というかこいつはいつから俺をさん付で呼ぶようになったんだっけか。考えるだけ無駄なのか?
ちなみに余談だが俺の身長は181センチメートル。体重は70キロ程だ。俗に言う細マッチョって奴だろう。葛城もちょっとは見習え。
「それで龍園氏、四方綱引きは上位4人で行くつもりですか?握力が19kgしかない自分としては嬉しいのですが、」
いやお前低すぎない?女子も含めて最低レベルだろ金田。
とはいえ綱引きは握力だけではなく、握る人間の体重や脚力の強さ、握り方やポジション取りなんかも関係してくる……とは言えアルベルトは問答無用で決めていいだろう。他のメンバーは俺も含めてまだ確定とまでは行かないがそれでも今後のためにこの記録は1つの大きな指標になるのは間違えない。
「そうだな、ある程度の目安にはする……がアルベルトと俺と天野までは確定にするつもりだ。」
「え!??俺もじゃないんですか龍園さん!?」
「黙ってろ石崎……。」
石崎悲痛な叫びは龍園によって遮られた。そしてその隙にと言わんばかりに金田が次の準備をする。ちなみに偵察部隊はこっちを凝視しているが正直推薦競技なんかはある程度予想もついているだろうし簡単に手に入る情報な気がするが……。まぁ龍園の場合は油断慢心の可能性もあるが俺は今回は全権を委ねた身だ、判断は任せるとしよう。
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その後俺達は100メートル走の記録を取った……が、俺が本気で走ったら大天使木下から陸上部の誘いを断らなきゃ行けないとかいう地獄より地獄な事案が発生したので記憶の奥底に封印しようと思う。
「今度は二人三脚だが、組む奴はこちらで決めている。安心しろ、適当にきめたわけじゃねぇ。さっきの100m走の記録を元にしている。組む相手次第じゃ無駄に揉めて時間を食うからな……あとは偵察部隊は無視して普通にやれ。」
龍園は金田から受け取った紙を見て、組み合わせを発表していく。あれに組み合わせ一覧みたいなのが乗っているのかもしれないな。プリントは折れ目ひとつ無さそうだ。金田らしいっちゃらしいな。
「近藤、足引っ張んなよ。俺はバスケ部なんだからな」
「小宮……急にどうしたんだよ。」
全員の発表が終わり、それぞれがパートナーを見つけていく。どうやら小宮は近藤とらしいが……急に傲慢発言するやんこいつどうした。
俺は呼ばれていたパートナーを探す。聞いていて分かったが、女子は女子と、男子は男子と、同性同士の組み合わせをしていた。原作では櫛田と綾小路、一之瀬と柴田がリア充オーラ満載で出していたが……なんだったのか。
「マジか……俺運動神経全然良くないのに……手加減してくれよ。」
ビクビク怯え、引き攣った笑みを浮かべながらこちらに近づいて来る男子が1人。
彼の名前は種子島十成。運動部に所属しているわけでも鍛えている訳でもない彼だが、一応将棋部に所属している……筈だ。勿論彼は、先程の100m走でもドベ3の記録を出していた。身体は鍛えていないのがヒョロヒョロで背も小さい。
「念のためだけど……本当にこの組み合わせなのか……なんで俺が?」
困惑している種子島だが俺は龍園の意図に気づいた。
「安心しろ。お前は走る必要は無い。俺に任せろ。」
「あ、あぁ……。ん?走る必要は無い?」
俺がそう言うと種子島は困惑気味に返事をした。
やはり種子島は俺や龍園の考えに気づけては無いらしい。まぁ気付かれたらダルそうだけど。そう考えながらも手を動かし、俺たちは足を結ぶ。ここでポイントなのが種子島の足より俺の足のが少し下に来るように結ぶ事だ。
「アルベルトとペアになったのは金田か……という事はやっぱりそういうことだよな。」
走る準備を終えた俺は周りの組み合わせを分析する。そして俺は自分の予想を改めて確信する。
俺やアルベルトのように、力もあり速さもある人間は自分よりある程度背の低い遅いものと組まされているようだ。そして平均に近い生徒は平均以下の生徒と組んでいる。これは遅い者同士で組ませたら、勝つ確率は絶望的。確実に5位以下になってポイントを失ってしまうからだろう。そして速いだけの生徒は平均以上と組んでいる。
「種子島……これから何があっても気にするなよ。」
「え……いや本当に何するつもりだよ。」
俺たちは念のため足にまいた紐を結び直し、スタートの合図を待った。種子島がさっきからプルプルしてるけどまぁどうでもいい。
合図がなると、俺達は……いや、俺は走り出した。
種子島はと言うと、浮いていた。俺は種子島の右肩を掴むことで、右手のだけで種子島を無理矢理浮かせ、二人三脚を自分のフルスピードで走っていた。もちろん種子島を抱えている分腕への負担はあるし、多少速度は落ちるが二人三脚である事を考えると充分だろう。俺にとっては。
「待って速い速い足ついてないやばぐへぇ!」
走ってる最中下を噛んだのかそれ以上は喋れなくなった種子島だった。
「お前は走らなくていいって言ったはずだ。後は身体が耐えればそれでいい。上手いこと足を合わせればバレんだろうな。」
俺がそう言うと種子島は頬に手を当て、痛そうな顔をする、やっぱり口の中を噛んだのかもしれない。
「このやり方に何か不満がある……なんて事は無いよな?」
「あ、ありませんともはい……出来ればはじめに言って欲しかったですけど…。」
いきなりやった訳だし確かにこれは戸惑うかもしれないな。
俺は推薦種目である男女混合二人三脚も出る。
今回は同性であったがためにこの程度で済んだが、異性になるともっと嫌な顔をされる未来が簡単に見える。そりゃあまぁ嫌だろうよ。
「女子にこれは厳しい分ここで稼いどきたいんだよな。なんなら脇の下から腕を通せばもっとコンパクトに持てるか?」
「アルベルト君も同じ方法で金田君を運んでるし……それでいいんだろうか?」
「当たり前だろ、ほら行くぞ。」
「勘弁……してください。」
歩いていたら、死にかけの声が聞こえたのでその方向を見る。しかし、視界には何もない……と言うよりは視界の下にそいつは居た。目の前のアルベルトが下を指してくれなかったら踏み潰すとこだったわ。
視線をもう少し下に落とすと、へばっている金田を見つけた。まるでランナーが10000メートルを走った直後みたいだ。
今日は暑さ控えめだが、恐らく暑いであろう本番からすれば汗まみれって訳か……やだな。
「私、今回の試験は貢献出来そうにありませんが……それでもあのやり方はどうなんですかアルベルト氏……。」
「Yes!BOSS!」
息も切れ、ゼェハァ言いながらも最後の抵抗を試みる金田だったが、反論しない所を見るに、これが有用な策であることは分かっているようだ。……アルベルト普通に返してやれよ。
「金田、お前はメガネを外した方がいいかもな。少しは軽量化できるだろ。」
「そうします……。」
死にかけている金田はポケットへと自分のメガネを入れてしまう。
ポケットに仕舞うだけで死にそうな表情と息遣い。運動が苦手なのもあるが、運動云々を差し引いても絶望的にスタミナが無さそうだ。
「身体が……死ぬぅ……。」
「Yes!BOSS!」
「まぁ頑張れ、一先ず休憩しな。」
「天野さん、龍園さんが呼んでましたよ。なんでも男女二人三脚のペアを決めるとか。」
俺が金田と話していると、調子に乗っていた小宮が報告する。その顔には怯えの表情が走り、少し頬も腫れているので制裁を受けたのだろう。自業自得だ。
俺は言われた通り龍園の元へ向かった。ちなみに種子島は金田と一緒に死んでいた。情けないヤツらだ。
そこには龍園ともう1人、大天使木下がいた。もしかして……まさか俺のペアは大天使か。
「来たな。今からやることは分かっているか?」
「推薦競技の男女混合二人三脚のペアは木下なのか?」
「その通りだ。そしてお前のペアはお前が望んでいたであろう木下にしてやった、感謝するんだな。」
「一生着いていくわ龍園さん。」
天使と言うよりは悪魔に近い龍園の優しさに俺は涙し、その天使に目を奪われてしまった……これが……マイエンジェル!!!
同じクラス……いやこの学校にたった一人しかいない大天使だ。なんで大天使なのかと言うと大天使だからだ。それ以外の理由は無い、つまり大天使だな。
「私のペア天野君なんだ!仲良い人で嬉しいな……。私陸上部だから足には自信あるよ!任せてね!」
天使は俺に微笑んだ、微笑んでくれたのだ。そして陸上部なのでお速く在られるようだ……あぁ……浄化されていく。なんだこれ……。
「おい、ちょっと戻ってこい。話を聞け、少なくとも男子ではアルベルトとお前にはこの体育祭トップ10を狙ってもらう必要がある。だからパートナーも最高の奴を用意した。木下の100m走の記録は女子の中でも3位。加えてお前は木下に弱ぇからな。お前が頑張らなきゃ木下と組むのは無しだ、わかるな?」
悪魔との契約だ。一緒に組むのは天使なのに悪魔との契約というのも失礼な話だが……その証明は悪魔の証明になりそうなのでやめて置く。天使と悪魔のカーニバルだな。何言ってんだろう俺、
「俺は今回1位を狙っている。高円寺やアルベルトと当たらん限りは負けるぞ……あれ、高円寺と競うなら無理じゃね?」
「だろうな、だからお前の位置は高円寺とはズラさせてもらった、あいつとは200メートル走でだけ勝負しろ、高円寺とも話は着いている。」
高円寺とやり合わなくて済んで良かったような……良くなかったような……。まぁいいや。
まぁ何はともあれ、それだけ言い残して龍園はアルベルトの元へと行ってしまった。
アルベルトのペアはこのクラスで一番小柄な女子の木隠って事はあっちは間違えなく浮かせる作戦だろう。
「龍園くんに任されたんだよね。『優勝して来い』って。いつもならやらなきゃ制裁だ!とか言いそうな感じだけど今回は言われなかったから気楽にやれそうだよ。」
大天使に羽が生えた。これで羽は8億本だろう。……いけないいけない。どうも木下の事になると周りが見えなくなる癖が着いてるな。
「多分木下だけだろうけどな……さっき小宮は頬を腫らしていたし……。」
現在、他の男女混合ペアを威圧し、制裁だなんだという物騒な単語を用いて脅迫して回っているようだし、スタイルは変わって無いだろう。だが、龍園という男はああ見えて我慢と忍耐を主とする緻密な戦略家だ、だからこそ今回もデータを集めて緻密なメンバーを組んでいる。……多分。
とはいえ制裁だなんだと言いながら割とクラスメイト思いなのは間違えない。クラスから退学者が出る時のクラスポイントのマイナスを気にしすぎてるだけなのかもしれないけどさ。
「さて、私たちも龍園君に褒められるように練習しよっか!」
「あいつが褒めるとは思えんけど……そうだな!」
大天使木下は天使のようなな口調と大天使のような雰囲気を見せる。聖歌という名のバックミュージックが流れて来ているような……気のせいか?
とは言え流石に大天使木下相手にアルベルト戦法など使えるわけも無いので、木下の全力疾走に俺が合わせる形にするしか無いだろう。これなら彼女の100mの時の全速力を二人三脚のままでも保てる。全力で走ってる木下が1番大天使だからな。本番まで何度か練習する機会もあるので、問題があれば練習の中で直していけばいいだろう。
スタートの合図とともに俺達はスタートを切る。陸上部と言うだけあって天使は足も早かった。大大大天使だった。とはいえ男と女、合わせられるのだが……。
そして俺達は恐ろしく驚異的なタイムでゴールした、100メートルの二人三脚で12秒台という偉業である。プロか何かなのか?いやまぁ左に大天使いるからそれはそうか。
……ちなみに種子島を持ち運んだ時は11秒台なのだが黙っておこう。
「無茶苦茶速いじゃん!私と一緒に陸上で世界を目指そうよ!!」
「……ごめんよ大天使、俺には使命があるんだ。」
大天使の頼みを断るとか涙が出そうだが仕方がない。俺は部活に入ったら死ぬ秒だ。
「だ、大天使って……照れちゃうよ。そっか……残念だな。」
しまった口を滑らせたうわぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!
この後、お互いに何とも言えない雰囲気になったまま体育祭の練習は終了しましたとさ
体育祭、勝つのは……?
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坂柳派閥だ!
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綿白神派閥だ!
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一之瀬派閥だ!
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木山派閥だ!
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龍園達Cクラスだ!
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オリ主だ!
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平田グループだ!
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櫛田グループだ!
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篠原グループだ!
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御門グループだ!
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高円寺だ!
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今は亡き葛城だ!