ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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始まりの終わり

『次の競技は綱引きです。一年生は準備をしてください。』

 

 

綱引きのルールはシンプル。綱を引きあって、2本先取の勝負だ。安全面からか男女は別れて行う。うちには俺とアルベルト、Dクラスには須藤と御門と綾小路と高円寺、Aクラスには鬼頭が居る。これに関してはこちらが不利だろう。前みたいな成長がなければ体育祭前に須藤を潰せたんだろうが…須藤は強くなっちまったな。

 

 

AクラスとDクラスは身長が小さい奴を前に、大きい奴を後ろに配置している。奇しくもBクラスとCクラスも同じ陣形だ。これのが力の伝達が早いのかもしれない。それぞれのクラスで綱を引く位置は固まっている。うちはBクラスが前だが、相手はAクラスが前にいる。ちなみに推薦には四方綱引きなんてのもあって綱を引いてばかりである。

 

 

 

「須藤に高円寺に御門に鬼頭か……陸上競技なら勝ちの目もあっただろうが、筋力勝負なんだから向こうの方が優位なはずだ。お前ら、俺がハチマキを整えるふりをしたところでで手を離せ。いいな。」

 

俺達は龍園の指示に頷く。こいつはどうやら綱を捨てて相手のクラスの生徒を潰すつもりらしい。

 

 

 

「みんな、頑張ろう!」

 

 

 

Dクラスでは平田がクラスを盛り上げようと元気に声を上げてる。……まぁお前らが頑張った所で無意味にしてやるさ、クズ共が。とはいえ無理なのだろうで怪我をさせる訳だが。Aクラスには敵ながら同情しちゃう…Dクラス?早く潰されろ。Cクラスの他の奴らには『さっさと終わって欲しい』っていう雰囲気もある訳だしボロボロになって欲しいものだ。

 

 

 

 

「1年、位置について。第1試合を始める。しゃがんだままロープを地面から持ち上げ、引っ張らないように。」

 

 

 

審判は学年主任、Aクラス担任の真嶋がやるみたいだ。競技用のピストル?あの合図するやつも持っている。おそらくは大きな音でスタートのタイミングを分かりやすくする為だろう。

 

 

 

「構えて。それでは綱引き、よーい……」

 

 

 

『パァン!』というピストルの破裂音が鳴り響き、一斉にみんな立ち上がりながら綱を引き合う!!

 

 

 

「オリャー!!潰せ!あのクズ共潰すぞ!」

 

 

 

「よっしゃ引けー!龍園なんか潰しちまえ!」

 

 

 

「勝つぞー!!!あんなゴミ共潰してやる!!」

 

 

 

前からDクラスの怒りの大声が聞こえたり、他の生徒もちらほら大声を出してる。

 

 

 

 

綱引きで馴染みの声とDクラスからの暴言がが響く中、その中でも人一倍声のデカい須藤の声がグラウンドに響き渡る。最初は拮抗したが、直ぐにこっちが不利となる。今回はちゃんとDクラスが足並みを揃えているからそうなればフィジカルがある生徒が多いあっちが有利だ。そして程なくして龍園がハチマキを直すふりをする。

 

ここか。俺達は一斉に手を離す。BC連合の釣り合っていた力が無くなるため、当然の様にAD連合は倒れる。

 

 

 

 

「ぐっ!痛ぇ!クソ…いてぇよ!」

 

 

 

「何やってんだよ、ふざけてんのか!てめぇら!」

 

 

須藤が激高する。池や外村等も後ろに詰め寄っているが…お前らが言いに来るのは違うだろ。6バカ集団め…。

 

 

「別にルール違反はしてないし、真面目だ。わかったら静かにしろよ盗撮野郎共と赤毛ザルが。」

 

龍園が煽り散らかす。俺も煽りてぇんだけどな……。

 

「テメェ!ふざけんじゃねぇ!!!!!クソ!クソ!」

 

 

 

龍園の挑発に須藤はブチ切れながら踵を返して行った。その様子を見た葛城や平田が感心していたが違う……そうじゃない。

 

 

 

「クソがっ!あいつらふざけやがって!」

 

 

あっちは須藤と高円寺と御門が居るから、本気でやっても負けるため怪我とフラストレーションを溜めさせる戦法だろう。いやそれだけではなく、『筋力勝負なら勝てる』と思わせておいてどこかしらで絶望の縁に叩き込むつもりかもしれない。こう見てみると龍園ってやっぱ恐ろしいな。アルベルトみたいな体デカくて筋肉あるタイプの奴もいるし、武闘派ナンバーワンクラスは間違えなくうちだろう。

 

 

 

「聞け。2戦目だが、1回戦同様に俺の合図で全員綱から手を離せ。俺達を騙しやがった。Aクラスを潰すぞ。」

 

 

 

楽しそう……でもなく少し苛立った様子の龍園。勝ちは放棄して怪我人を増やす作戦らしい。

 

 

 

「煽り散らすのは次は俺もやらせろ。アイツらうぜぇしな。」

 

「いいだろう。」

 

須藤を不参加にさせられるのが一番だけどなぁ…さすがにキツいか。

 

分かるのは、この上なく良い感じに自然な怪我を演出……は出来ていなくてもルールの範囲ギリギリとはいえこちらが失格とかになること無く相手の戦力を削れている事だろう。もし煽りすぎたりして俺達の方が簡単に停学とかになったらDクラスが喜んじゃうし、今そうすると篠原にビンタさせた意味が無くなってしまう。それを回避した上で、可能な最大限やるべきだろう。第二の篠原が出るならそれはそれなんだが無能代表みたいな奴らは割と退学しちまったしなぁ…。

 

 

 

……何も知らされてない一之瀬クラスの男子達には、巻き込む形で同じように怪我人が出るかもしれなくて申し訳ないがまぁ必要経費とさせてもらおう。

 

 

 

『1年、綱引き。男子の部。開始1分前です』

 

 

「龍園、俺はお前の非道さを許すつもりは無い。」

 

 

「ククク……クククク…クハハ!!!!!非道……非道かぁ…なんの事か分からねぇなぁ!」

 

 

「貴様には話すだけ無駄らしいな。」

 

怒った顔で葛城は踵を返していった。

 

 

相変わらず不吉な笑い方する龍園。他クラスから見れば間違えなく疫病神だろう。悪意という悪意を形として体現させたような笑い方をしている。これがただ楽しめるからってだけでこんな人としてやべぇ手段を選んでる辺りこいつはキチガイだろう。味方としては頼もしいけど、他クラスからしたら本当に迷惑な存在だろう。Dクラスは味方としても他クラスとしても迷惑なので退学してどうぞ。

 

「1年、位置について。第2試合を始める。しゃがんだままロープを地面から持ち上げ、引っ張らないように」

 

 

真嶋先生の合図により2戦目が始まる。

 

 

「オーエス!オーエス!引けぇ!」

 

 

 

「粘れよお前ら!この綱引きは絶対に勝つぞ!」

 

 

 

 

 

須藤の掛け声にAD連合は更に力を込める。結果、こちらが1回戦よりもさらに不利となる。

 

 

 

龍園がまたもハチマキに手を添える。それを聞いた龍園クラスは全員が一斉に手を離す。するとAD連合の男子は手応えが軽くなった為、その反動で一斉に倒れる。

 

 

 

「ぐっ!痛ぇ!クソ…いてぇよ!」

 

 

思っていたより結構酷い光景だ。こっち側に居た一之瀬クラスの男子達の被害も大きいかもしれない。申し訳なさすぎる。後ろに引っ張ってたのに、いきなり前に吹っ飛んで、手とか肩を痛そうにしてる。Aクラスは……とてつもなくボロボロだな。Dクラス…?ざまぁみやがれ。

 

 

 

「……第2試合、赤組の勝利」

 

 

 

苦い顔の真嶋が淡々と宣言した。そりゃ審判やってて目の前で軽い怪我人だらけになったら困るだろうね。反省文とか書くのかな?

 

 

 

「何やってんだよ、ふざけてんのか!てめぇら!」

 

 

須藤が激高する。池や外村等も後ろに詰め寄っているが…お前らが言いに来るのは違うだろ。6バカ集団め…。って1回戦も同じこと思ったし同じ事言ったような気がするんだが……Dクラス共なると不良品すぎてワンパンターンの事しか出来ないのかもしれない。

 

 

「別にルール違反はしてないし、真面目だ。わかったら静かにしろよ盗撮野郎共と赤毛ザルが。」

 

龍園の煽りセリフも全く一緒だ。時間が巻き戻ったのかと思い時計を見るがそんなことも無さそうだ。

 

 

「テメェ!ふざけんじゃねぇ!!!!!クソ!クソ!」

 

 

 

龍園の挑発に須藤はブチ切れながら踵を返して行った。その様子を見た葛城や平田が感心……はしていなかったのでループ説は否定された。それにしてもまさか現実でまるで文章をコピペしたような事が起きるとは……この世界を作った神様の手抜き感が見えるぞ。どこぞの水の女神様なのかもしれない。ちなみに俺はエリス教だ。

 

「ざけんな龍園!お前のせいだろ!」

 

 

 

Bクラスからもブチ切れまくりの、柴田だと思われるちょっと小柄でショタ系元気枠イケメンが龍園に詰め寄ってた。そういえばこいつはイケメンランキングにいたっけか。まぁ我慢の限界になったらしいが無駄だろうよ。

 

 

「ククク、手が滑ったんだろ」

 

「嘘つけ……お前最低だな。」

 

柴田の毒吐き攻撃を残してBクラスは去っていった。Aクラスは言うだけ無駄だと思っているのか既に居なかった。Dクラスはと言うと……。

 

「クソがっ!あいつらふざけやがって!」

 

 

 

須藤は喚くが、面と向かってではなく平田に愚痴っている当たりは成長なのかもしれない。だがまぁ負けたとはいえ、Aクラス男子も今の綱引きで何人か怪我をしている事から怪我人は多発しているだろう。

 

さて、そろそろ俺も煽りますかね。

 

 

「巫山戯てんのはお前だろ、須藤、その赤色の髪がまずふざけてるだろ。」

 

前々から思っていた。これが校則で許されてるのはどうなんだ…と。

 

「ふ、ふざけんじゃねぇ!!お前には関係ねぇだろ!!」

 

「須藤、落ち着け!」

 

須藤の怒りを伊集院…だったかが収める。だが須藤を落ち着かせたい…と言うよりは松下にええカッコしたいだけらしい。松下の方チラチラ見てるし……俺のスパイに手を出そうとは…潰すか。

 

 

「あー、お前らみたいな猿知恵のアホと話しても仕方ねぇしな、お前の愛しの千秋で遊んでくる事にするわ、じゃーな。顔も良いしエロいしナンパでもするわ。」

 

「テメェ……ふざけんじゃねぇぞ!!」

 

須藤を止めに入ったはずの伊集院がさらに切れる。俺は松下にアイコンタクトを送る。内容は俺が殴られたら伊集院を冷たくあしらうものなんだが……さすがにキツいか?

 

「安心しろよ、脅し方なんて幾らでもあるからなぁ……なんなら記念に送ってやろうか?お前にも。」

 

「てめぇぇぇぇぇぇ!!」

 

伊集院は限界に達したのか俺の頬を殴り飛ばした。それを見た真嶋先生が止めに入ろうとする。本日2度目である。

 

「やめろ伊集院!!!!!暴力行為は失格だ。」

 

「でも、こいつ、こいつがァァァァァァ!!」

 

真嶋先生の制止も聞かずに伊集院は再度俺を殴る。それを見ていた周りは俺が煽っていた事など露知らずなのでまたDクラスが俺を虐めているように映るので伊集院もゴミを見るような目線を向けられる。

 

「伊集院、お前は天野を制止しても尚殴り続けたため失格だ。クラスポイントについての影響は……後で堀北と話し合って決める。寮に戻れ。」

 

「違うんだ、俺は、俺は千秋のために!!千秋のために!!」

 

伊集院はブチ切れながら大声で千秋千秋連呼してた。佐倉の事件の時のストーカーと似た匂いを感じるんだけど……捕まらねぇかなこいつ。

 

「私に何か用なのかな?伊集院君。」

 

それを聞いた松下が来た。周りから松下は同情的な目線を向けられているが……まぁお察しの通りである。ちなみに松下は伊集院に心底嫌そうな目線を向けている。伊集院もそれがわかってか顔が真っ青だ。

 

「千秋、俺はお前を守るために……仕方無かったんだよ!」

 

何が仕方ないのか、なぜ名前呼びなのか、松下はなぜお前に守られなければいけないのか、色々支離滅裂である。

 

「まずさ……正直結構気持ち悪いから名前で呼ぶの辞めてくれないかな……。」

 

「ごめん……。」

 

「それから……何があったかは知らないけどどうせまた天野君を虐めようとしてただけなんでしょ、大体私伊集院君に守られる筋合いも無いよね……。」

 

「いや、それは……その……」

 

俺が挑発してきた……みたいな事も言わずにしどろもどろになる伊集院、お陰様で周りも虐めと確信をしたようで非難するような目線に変わる。

 

「それに、人を殴ったり、私の名前を大声で連呼するの……迷惑だから辞めてくれないかな?もう伊集院君とは話したくないかな。聖君……一緒に保健室行こう。」

 

「うわぁぁぁ!!!!!」

 

伊集院は再度大声を発し俺の方に殴ろうとするが真嶋先生やスタッフによって力づくで連れていかれた。

 

 

 

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「ありがとう、アイコンタクトを送った通りやってくれて助かった。それにしても結構エグイな。」

 

松下……恐ろしい子。

 

「まぁ…ぶっちゃけストレスだったからね。それで本当に保健室は行かなくて大丈夫?」

 

「あぁ……入賞したいしな。」

 

松下は俺に心配そうな目線を送っていたが、そのまま俺はそれを無視して競技へと向かう。

 

そしてそのまま俺は戻って続いての競技の準備をする。

 

 

 

競技は障害物競争で、用意されている障害物は、平均台、網潜り等等、難易度は高くないが、どれもスピードダウンを余儀なくされるものだ。だがこれにはちょっとしたコツがあるので俺は苦戦しないだろう。だがまたもや俺の周りは外村等の足の遅そうなデブばかりだった。これならば負けることは無い。

 

 

 

そして俺の番になり、スタートするが案の定他の奴らは遅く、俺が2個目平均台を渡った時点で網潜りに挑戦している。

 

 

 

俺の順位はぶっちぎりの1位でゴールする。まぁ説明は不要だろう。

 

 

 

 

この分なら入賞は余裕そうだと思いながらゴール地点にて待機して、他のレースを見続けるが、やはり各クラスの主力が1位を取っているようだ。

 

 

 

そして最後のレースとなるが……

 

 

 

「はぁぁっ!?アルベルトのヤツ、また幸村と南に森重じゃん!ズルっ!」

 

 

 

隣で近藤がそう喚く。今度の言うように最後のレースに参加する8人の中でDクラス南村と幸村、Aクラスの森重と田中は学年でも足が遅い方向に分類される生徒だ。不満を持つのは当然だろう。やはり参加表は漏れていたか……それとも参加表が漏れた場合のこちらの動きを予測して当ててきたか……犯人次第ではどちらも有り得るだろう。

 

 

 

そしてアルベルトが1位を取り、障害物競走が終わった。ネットの下をくぐったり、平均台の上を走ったり、タイヤを引きずって走るなど、体育祭をエンジョイできる作りにしてあって楽めるものだったのだろうが、雰囲気が最悪で何も楽しそうではなかった。そしてやはり競技としてはとにかく身体能力高い高円寺やアルベルトみたいなヤツが勝っていた。柴田は陸上短距離種目やってるタイプだろう。障害物以外は普通に速く走っていたわけだし。

 

 

 

 

という訳で、午前中の種目が終わり、待ち望んだ昼飯の時間になった。それぞれの教室に戻り、体育祭として特別に用意された弁当を受け取って自由に食べる事になってる。受け取ったあとは葛城を探さなきゃな。

 

 

 

ちなみに女子や上級生の午前種目を見学した感じだと、この時点で赤組の勝ちは殆ど決まった。1年だけなら俺達白組が勝ってるが、2年3年の赤組が強過ぎる。

 

 

もう200クラスポイント引かれるのは確定だ。またもやAクラスとの差が着いてしまう。

 

 

ちなみに昼飯は外で食うことが推奨されている。汚れた服で学校設備を使って欲しくないがゆえの方法なのかもしれない。掃除に費用を使いたくないのだろう。

 

こうして午前の部は終了した。

体育祭、勝つのは……?

  • 坂柳派閥だ!
  • 綿白神派閥だ!
  • 一之瀬派閥だ!
  • 木山派閥だ!
  • 龍園達Cクラスだ!
  • オリ主だ!
  • 平田グループだ!
  • 櫛田グループだ!
  • 篠原グループだ!
  • 御門グループだ!
  • 高円寺だ!
  • 今は亡き葛城だ!
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