俺たちは昼飯を食べ終え、二人三脚に向かった。結果は……説明するまでも無いだろうが圧勝だ。
改めてルールを確認しよう。まずは全員参加競技の点数配分。
結果に応じて1位15点、2位12点、3位10点、4位8点が組に与えられる。5位以下は1点ずつ下がっていく。団体戦の場合は勝利した組に500点が与えられる。
団体戦の点は取り敢えずどうでもいい、大事なのは個人戦だが……まるで示し合わせたかのようにCクラスとDクラスの身体能力自慢はズレてるし、Aクラスの鬼頭、Bクラスの木山と柴田も特にCやDクラスの強いメンバーと被っている感じは無い。全員1位もありそうで怖いな……。そう言えば全員1位の場合はどうなるんだろうか。
続けて推薦参加競技の点数配分だ。
結果に応じて1位50点、2位30点、3位15点、4位10点が組に与えられる。5位以下は2点ずつ下がっていく(最終競技のリレーは3倍の点数が与えられる)
コレがあるから同点は無い……のか?逆に言えば全クラスがこれをポイゴットすれば1位は沢山出る訳だが……どうなる事やらだな。
続いて赤組対白組の結果が与える影響だ。
全学年の総合点で負けた組は全学年等しくクラスポイントが200引かれる。勝った組は全学年等しくクラスポイントが200増える。
これはおそらく俺たちBC連合が負けるっぽいのでBクラスCクラスはマイナス200、AクラスDクラスはプラス200だろう。
続いて歯学年別順位が与える影響……と言っても組対抗ほど大きくは動かないが。
各学年、総合点で1位を取ったクラスにはクラスポイントが100与えられる。
総合点で2位を取ったクラスのクラスポイントは50引かれる。
総合点で3位を取ったクラスはクラスポイントが200引かれる。
総合点で4位を取ったクラスはクラスポイントが300引かれる。
これに関しては現在はDクラス、Cクラス、Bクラス、Aクラスの順で並んでいる。やはりDクラスは筋肉に関しては恐ろしく強いな。高円寺とかいう天然チートが何故か協力しているのもあるしな。
そして個人競技報酬だが……まぁ俺に言わせれば何方も大した価値は無い。
各個人競技で1位を取った生徒には5000プライベートポイントの贈与もしくは筆記試験で3点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合他人への付与はできない)というものなのだがテストの点はある程度取れるしこの点は100を超過することは無い。5000プライベートポイントとか端金だしな。
各個人競技で2位を取った生徒には3000プライベートポイントの贈与もしくは筆記試験で2点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合他人への付与はできない)2位になると1位より悲惨だがまぁあるだけマシか。
各個人競技で3位を取った生徒には1000プライベートポイントの贈与もしくは筆記試験で1点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合他人への付与はできない)こちらについては最早言うまでもないだろうな。
各個人競技で最下位を取った生徒にはマイナス1000プライベートポイント。(所持するポイントが1000未満になった場合には筆記試験でマイナス1点を受ける)これは失格になった場合でも受けるらしいので、坂柳や篠原、伊集院なんかは大打撃だろう。
各競技のルールを熟読の上遵守すること。違反した者は失格同様の扱いを受ける。悪質な者については退場処分にする場合有。それまでの獲得点数の剥奪も検討される。
これだな。篠原と伊集院は失格になったって訳だ。全員の前で暴力を振るったんだ、退場になった二人とも猿以下のIQしか無かったと言う他無いな。
続いて、全競技でもっとも高得点を得た生徒には100万プライベートポイント、その生徒の所属しているクラスに100クラスポイントを付与する。だが、今回は堀北兄や高円寺が本気っぽいし俺も厳しいかもしれないな。
全競技でもっとも高得点を得た学年別生徒3名には各1万プライベートポイントを付与する。こちらも同様だ。高円寺には勝てる気がしない。
・全競技でもっとも高得点を得た学年別生徒の所属しているクラスに50クラスポイント、2番目に高得点を得た学年別生徒の所属しているクラスに40クラスポイント、3番目に高得点を得た学年別生徒の所属しているクラスに30クラスポイント、4番目に高得点を得た学年別生徒の所属しているクラスに20クラスポイント、5番目に高得点を得た学年別生徒の所属しているクラスに10クラスポイント、6~10番目に高得点を得た学年別生徒の所属しているクラスに5クラスポイントを付与する。
俺が狙っているのはこれだ。
Dクラスからは男子は高円寺、御門、須藤、バレないように一位を取り続けているヤベェ奴綾小路、原作以上に身体能力が上がっている平田が全部1位を取っている。女子は堀北、小野寺が今の所全部1位らしい。櫛田や松下は練習で手を抜いておいたらしいからまぁ妥当だろう。
Cクラスからは男子は俺、アルベルト、龍園の3人だ。お察しのメンバー達である。女子は伊吹、大天使木下、矢島の3人、大天使には是非とも頑張ってもらいたい。
Bクラスからは男子は柴田、木山、八雲、神崎の4人、女子は安藤1人らしい。神崎以外は全員木山派閥らしいので、一之瀬は大ピンチだな。
Aクラスからは男子は鬼頭、三輪、橋本の3人、女子は0だ。
合計21人でのサバイバルマッチとなりそうだな。
・全競技でもっとも低得点を得た学年別生徒の所属しているクラスから50クラスポイント、2番目に低得点を得た学年別生徒の所属しているクラスから40クラスポイント、3番目に低得点を得た学年別生徒の所属しているクラスから30クラスポイント、4番目に低得点を得た学年別生徒の所属しているクラスから20クラスポイント、5番目に低得点を得た学年別生徒の所属しているクラスから10クラスポイント、6~10番目に低得点を得た学年別生徒の所属しているクラスから5クラスポイントを剥奪する。(クラスポイントが0になる場合は負債としてカウントする。)
こちらだが……正直最下位はまず確定で坂柳だ。次いでドベ2からだが、失格になった篠原と伊集院を除くと、負傷したBクラス1名、Dクラス1名、うちからは何かしらで仕組みを頼まれているらしい小宮一人、Aクラスはなんと13人の負傷者がいるらしい。恐らく龍園はAクラスを狙い撃ちにしたのだろう。内紛なんかせずに仲良く出来ないからこうなる。綿白神派閥なんてさっさと畳むべきだな。やっぱり。
まぁ何はともあれ、次は騎馬戦だ。
そんな思考をしているうちに女子の騎馬戦は終わった、1年女子の騎馬戦が終わると、1年男子の部が始まるので俺達は用意をする。
ちなみに女子の部だが接戦でこそあったがBC連合が勝利。紙一重の勝負だったらしい。伊吹が頑張ったとか頑張ってないとか聞いた気がする。
その流れに乗るようにBC連合の男子もテンションを上げている。
「それじゃあ、天野氏……乗ってください。」
金田が少し脅えながら屈むが……コンタクトにしたせいで一瞬誰か分からなくなりかけてた。こいつは金田か。
その言葉に習い、金田だけでなく、時任と近藤が騎馬を組み、俺はその中心に体を下ろす。
ぶっちゃけ金田を押し付けられた感はあるが……まぁ問題は無いだろう。多分。
ちなみに龍園はアルベルト、石崎、園田というガチガチのメンバーで固めていた。独裁者め。
「おい、おめぇら!どんな手を使ってもテメェらは出来るだけ多く騎馬を潰せ。1人でも多く続行不能にしてやれ!この勝負勝つぞ!!」
普段より一層悪い顔している龍園。俺も借りたが、よく分からないヌルヌルした液体をハチマキに塗りこんだからだろう。うちのクラスは全員装着しているが……ちょっとキモイな。
「それじゃあ、用意はいいな、てめぇら?」
パァン!!!!!
試合開始の合図と共にどの組もまず守りの陣形を作り始める。……俺たちのクラスを除いては。
「行くぞオラァ!」
AD連合は守りの陣形を作り終えると、そのグループは8対1で順番に各個撃破する方向に取り掛かったている。Bクラスの騎馬が恐ろしい速さでふたつ落ちる。
8つの騎馬全てが集まっているAD連合はCクラスみたいな作戦で各個撃破しつつお互いがお互いを守るという攻めながらの守りに転じた。
「一度離れろ!固まれ!」
龍園の指示で俺達の騎馬が固まったのは、Bクラスの騎馬が全滅した後だった。大してあっちは2つの騎馬を失いこそしているが数ではあちらが有利だろう。
俺は鶴翼の陣を形成しているAD連合からから少し離れた後、ほかの騎馬と固まる。
AD連合が安定型とも言えるこの鶴翼の陣という戦略を取った理由はただ一つ。
全滅させるためだろう。うちの騎馬を、全て、
リーダーである平田の騎馬が先陣を切り、指示を出してどんどん前へと詰め寄っていく。Cクラスのふたつの騎馬が裏に行こうとするが……
「いい気になるなよCクラス!」
進行を阻むようにAクラスから2つの騎馬が現れる。結局あちらの騎馬は2つとも潰れたが、こちらは1つ残ってくれた。
「俺達は正面から行くぞ!天野!!!!!」
「了解!お前ら!頼んだ!」
僕が騎馬に指示すると、「はい」と息の合った3人の声が聞こえた。
これで相手の陣形は挟み撃ちの形になった。
そのまま騎馬はどんどん加速し、指示通り残った5つの騎馬に真正面から突撃する。刹那、俺はAクラスのハチマキを1つ潰しておく。
そして龍園達と須藤達が衝突。
何故かそれに目を奪われていたアホ過ぎるDクラスの菊池が騎手をやっている騎馬のハチマキも分捕る。これで残り4つ……いや3つか、裏取り部隊が1つ潰してくれたようだ。だがそこで裏取り部隊も敗れてしまった。
裏を警戒しなくて良くなったことと、2つの騎馬の脱落によって俺たちを目掛けて2つの騎馬が来た。
「後ろを警戒する必要はねぇ、前へ進め! まだ俺たちの方が有利だ!」
成長……したのかは分からないが周辺視野の広い須藤が指示を出してくる。
白熱した戦いが幕を開けた。ここが正念場だな。
俺は騎馬の下側のヤツらに指示を出して近くにいる騎馬へ片っ端から突撃し、素早くハチマキを回収しようとする。……だが目の前の騎馬は下に御門、上に高円寺のチート騎馬だった。俺たちの騎馬は高円寺から逃げつつ、残っていた三宅の騎馬を潰す。
改めて周囲を見渡すと、BC連合の騎馬は俺と龍園の2つだけ。Bクラスは弱すぎる。とはいえ、AD連合も2つ。
どうやら、予想以上に須藤の騎馬が奮闘しているようだ。心做しか龍園の挑発を無視して気丈に戦えているな……誰かなんかやったな?暫くすると高円寺達はこちらを追いかけてこなくなった。
「オラオラ2対1だぜ? この勝負はもらったぜ!」
須藤が大将騎である龍園の前で吼える。成長して居なかったかも……。
2人の騎馬に囲まれ、絶体絶命と言えるピンチが龍園を襲っていた。あっち行ったのか……
俺たちは慌てて素早くそちらへ駆けつける。それを見た高円寺達が掛かったとばかりにこっちへ来る。いつまでも逃げてる訳には行かないが……高円寺達にどうやっても勝てる気がしない。
AD連合はそれぞれが臨機応変に対応することで連携を成して有利に運んでいたのだろうが……ここまで来るとパワーとパワーのぶつかり合いにほかならない。
俺を止めることで龍園と1対1でやらせる。それでこいつらは勝てると思っているのかもしれない。勝ち筋は龍園との挟み撃ち、須藤達はさっさと倒してもらわなきゃ行けないな。
そのために時間稼ぎという損な立ち回りを進んで行うしか無さそうだ。どれだけ持つかね……本当に。
だがこれは龍園達が勝つ前提だ。それに高円寺がいる以上、ただの無意味と化す可能性だってある。
「須藤、お前みたいな猿が上に登らねぇとはな、ついに登る度胸すら無くなったのか?雑魚がよ。」
「平田!次はどうすればいい!」
「クク、無視してんじゃねぇよアホ猿が。お前の間抜け面を拝んでやる事にするよ。」
「挑発してきたって無駄だぜ?お前みたいな卑怯な手ばかり使う奴に負けるかってんだよ。ハチマキに何か塗りこんだから勝てると思ってるみたいだが……無駄だぜ?」
「なんの事だか知らねぇが、お前如きに負ける未来が見えねぇよ。」
「まぁせいぜい喚いてろよ、勝つのは俺たちだがな?」
「井の中の蛙大海を知らずって訳だ。せいぜい跳ねてろよカエル野郎が。」
煽り合いを終えると、2つの騎馬はぶつかり合う。須藤は一切挑発に乗っていなかったが。
さすがにここまで残った騎馬であるため、力の衝突は迫力満点だ。しかし須藤健の相手はアルベルト。
武田信玄も動かざること山の如しと残している。日本人離れした肉体を持つアルベルトを止めるのは容易ではないだろう。
正面衝突の結果、須藤健は力負けをした。否、わざと負けたように見せてアルベルトの押す力を利用して、横からハチマキを取ろうとしている。頭脳戦とかあいつは本当に須藤なのか?
「レッドヘアーボーイも成長したようだねぇ……それでは私も本気を出すとしようか。」
高円寺はご機嫌そうに言う。まぁこいつは全てを見透かしてそうだな。
「いくら高円寺でも俺と龍園との2対1ではどうしようもない筈だ。」
「だから時間を稼いでドラゴンボーイが平田ボーイを潰すのを待っているんだろ?最も、無駄な努力だと思うがねぇ……。」
「どっかのギャンブル中毒者は確率が低いほど燃えるらしいけどな。」
そういい高円寺は俺たちを追いかけてくる。俺達は当然走って逃げ出した。当たり前の判断だろう。
騎馬が逃げている間、須藤VS龍園を観戦する。
「おい平田! 早く鉢巻を取れよ!」
「もう少し──」
「頼むぜ。結構体力使ってるんだからよ!」
フェイントを織り交ぜながら伸ばす腕。その腕が靡く龍園くんのハチマキを掴む。
ただし掴んだのは先の数㎝程。それでも懸命に手元に手繰り寄せる。
「っ!?」
掴んだ手のひらから鉢巻がするりと抜けていく。いやあの雰囲気だと完全に対策したんじゃ無かったのかよ。なんだったんだあのセリフ、虚勢か?
「何してんだ平田!」
「ごめん手が滑って!」
ミスしてなお、果敢に攻め入るDクラス。
騎手も騎馬も息を上げ、疲労が目に見えている。
「もう一度っ!」
再度、手を伸ばす平田。
今度は鉢巻の根元を指が捕えた。そして掴むとそのまま力の限り腕を引いていく。
今度は、ハチマキが途中で手からするりと抜け落ちる……事はなく、しっかりと掴んでいる。だが結び目にも細工をしたのか軽い力では抜けることは無く、平田の右手が龍園のハチマキに固定される。
「甘いぜ。」
そのハチマキを取れなかった一瞬で平田の隙を突き、逆に龍園が平田のハチマキを掴んだ。カウンターの形で握りこんだ手の位置はハチマキの奥深く。そして力強い。引き抜くと呆気ないほどあっさりとハチマキは頭から外れる。だが、その勢いで龍園のハチマキも取られ、相打ちという形になってしまう。
「クソがッ!」
荒ぶる須藤くんは騎手を下ろすと、悔しさと怒りの混じった剣幕で龍園くんを睨む。
「惜しかったな。これで引き分けだぜ?」
騎馬に乗る彼は見下ろし、嘲笑う。
さて、高円寺と1体1か……どうしたもんかねぇ。
「やれやれ、君の期待は外れてしまったようだね、天野ボーイ。最も、2対1でも私には勝てないがねぇ。」
「確率が上がると言ったんだ。勝てると言った覚えはない。」
俺は高円寺に仕掛けるが当然上手い事跳ね除けられる。だからこそ俺は、予め金田に指示を出した作戦を決行させるため、合図を送る。
2度目の衝突で金田が、左側を補佐していた『外村の腕を掴む』事で遠心力を利用し、高円寺の裏を取り……刹那、反応が遅れた高円寺のハチマキの一端を掴む。位置的には騎馬と騎馬で挟まれていてバレない位置だろう。
「悪いが、負けてあげるつもりは無いのでねぇ……」
「勝つつもりしかねぇんだよこっちは。」
高円寺はハチマキが外れ切る前に、恐ろしい身体能力で俺のハチマキを掴んだ。人間、勝負が決まったと思った瞬間が1番の隙だからな。仕方が無いだろう。だが、高円寺の掴んだ手はヌルヌルとしたキセロゲルによってハチマキを掴む時に1度滑ってしまう。それに直ぐに気づいた高円寺は再度、今度は握力に物申して無理矢理ハチマキを取るが、彼の額からハチマキが落ちる方が早かった。初見だったのが聞いた形だな。
こうして一瞬の差ではあるが全てのハチマキを失ったAD連合はこれで敗北、競技は終了の号砲を鳴らした。
選手たちはそれぞれの待機場所へと戻っていく。
「何やってんだよ平田、2度も同じミスしやがって!」
「ごめん須藤くん。ハチマキが変に濡れていたせいで引っ張り切れなかったんだ。てっきり……」
平田と須藤からそんな会話が聞こえた。須藤のヤツ逆戻りしていないか?
須藤と平田はそのまま険悪なムードで帰って行った。
俺はそんなDクラスのドン底っぷりから目を逸らし、クラスの元へと戻った。
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〜綾小路side〜
「ふざけやがって!! あいつら、殺す!殺してやるよォ!」
騎馬戦が終わり、Dクラスの待機場所に戻るやいなや、須藤はひどく荒れた声を発する。集団競技ではやはりCクラスの手を防ぐ術は無い、か。赤組が勝つのはおそらく間違えないが、それでもこの敗北は痛いだろう。いつもなら平田がどうにかする所だが、今回やらかしたのがその平田である以上どうしようも無い、か。
須藤の怒気の含まれたその声は周りに恐怖をまき散らし、怯えさせ、クラス全体の士気を下げる結果となってしまう。オレが平田を介して須藤を成長させ、手駒にした事も合って暴走こそしていないが、かなりフラストレーションが溜まっているのだろう。
オレが『このクラスにいるであろう裏切り者』対策で偽物の参加表をクラスに見せた。予想通り裏切り者はAクラスとCクラスに偽物の参加表を見せた事は、今日の組み合わせを見れば明らかだ。そして、クラスには公開せず、平田を介して『Aクラスにだけ』偽物の参加表を見せて打ち合わせをする。
AクラスもCクラスもそれを見て最適解が組めない程馬鹿では無い。当然どちらのクラスもそれに対しての最適解な順番に編成する。そして、Aクラスと元Cクラスの組み合わせに対して最もウチが有利になるように組んだ。元Bクラスとも被らなかったのは運が良かったが、仮に多少被っても大きな問題は無いだろう。現に今、元Cクラスに狙い撃ちされ、ウチが組み合わせの有利を取り潰しているAクラスが最下位だが、その一個上にいるのは同じように組み合わせで有利を取った元Cクラスでは無く元Bクラス。素の実力の差というわけだ。
本当はこんな事はやりたくないのだが……『あの男』が学校に接触してきた以上動かない訳にも行かないだろう。
俺の駒である平田は今回は使えない。佐倉は不適任。となると……オレは軽井沢にアイコンタクトを送った。平田の代わりはかなりキツいとは思うが、俺がフォローを入れるしか無いだろう。目立ちたくは無いんだがな。
平田派閥以外の派閥である櫛田派閥は今回の体育祭はサポートに回っているため消極的、そして御門グループは高円寺も御門もほんらい自分勝手な人間なので当然の様に我関せずとしている。元々あまりグループに入らない人間が多かったしな。
そして崩壊した元篠原グループのリーダーである篠原はこの場には居ない。
「落ち着きなよ須藤君、組み合わせ自体は洋介君の作戦で有利になってるんだからさ、次勝てばいいじゃん。」
そんな須藤の前に軽井沢は平田を庇うように立ち、説得を試みる。
こう言う時に空気を読まず文句を言いそうな御門グループの堀北は居ないので事は早く進みそうだ。
「うるせえ!あんな卑怯な手の数々と反則を見逃せってのかよ!!洋介のお陰で勝ててるのはありがてぇけどよ……前の試合だって絶対アイツらハチマキになんか仕込んでやがったぜ!!」
須藤は平田を恨んでいる……というか怒っているわけでは無さそうだ。それならば平田も動かせるだろう。ここが須藤健という男の大きな分岐点になる。このプロセスを正しいものにすれば、このDクラスでも須藤健という男は、俺達の派閥の武器になるだろう。
それを察知したのか軽井沢を庇って平田が話を続けるようだ。
「反則の可能性は高いと思う。けど、おそらくその証拠はでてこないよ。卑怯な手段も多くて褒められたものでは無いけれど訴えられる程のものでもない。悔しいけど、そこに関しては事前に監視をして気をつけるぐらいしか出来ないと思う。」
龍園の嫌がらせといえる行いは全て故意だろう。しかし、その証拠がなくては事実を明らかにすることは出来ない。そして、例え龍園を止められたとしてもCクラスには天野が居る。
今あの男は何を思っているのだろうか……。
「この体育祭じゃ俺がリーダーだ。従えよ平田。一緒に龍園のもとに詰め寄るぞ。」
「確かに君はリーダーだ。この体育祭で君以上の適任はいないと思う。けど、周りを見て。いまの怒っている君を皆は認めていると思うかい?本当にリーダーだと言うなら、自分の怒りの感情に負けちゃいけないよ。」
諭すように告げる平田の言葉に周りを見る須藤。
頭に血が上っている状態とはいえ、リーダーとしての責任感も、最低限の理性も残っているようだ。これでもし須藤が誰かに惚れでもして、ソイツが集中狙いされでもしていたらこの時点で終わっていたかもな。
周囲の反応は酷いの一言。怯えるか腫物を見る目を向けられるか。
これが、Dクラスの現状だ。
突出した一部分の能力を持つ生徒は少なからず居るが、大半の生徒は何も無いかそれだけだ。烏合の衆である。
あるものは他人任せ、あるものは自分本位、あるものはエゴイスト。それが不良品としての証明を何よりもしているだろう。
櫛田はDクラス内での自分の株をあげるためにこそ努力はするが、クラス間の競走では基本的に消極的な姿勢を持っている。無人島試験まではテストだけ……と言った感じだったから見えてこなかった部分だろう。櫛田は自分さえ良ければいいのかもしれない。そういう意味では自分本位な人間なのかもしれないな。
御門と高円寺はスペックこそ1級品、堀北等個人主義だった生徒達をまとめあげているものの、本質は変わっていない。
そして元篠原グループはオロオロと怯えるだけの他人任せだ。
「俺は……クラスのために必死になっているだろうがぁ……」
そして、須藤健もまた、自己中心的な人間なのだろう。まずはそれを変える必要がある。須藤も、他の生徒も危機感は持っているはずだ。その為にも『この前の試験で足切りをしたのだから。』
「そんなものは今、周りから見たらただの自己満足だよ。君はクラスのリーダーとしてDクラスを勝たせたいと思っているかもしれない。でも今それはどれだけの人に伝わっているかな?
自分が活躍したい、自分の能力を誇示したいとしか周りには見えていないと思うよ。挙句の果てに、失敗すると感情のままにクラスメイトに八つ当たりをしている。
まだ君にリーダーとして自覚があるなら、今1度よく考えて欲しいんだ。どうしたら『クラスが』勝てるのか。そして、君じゃあ無くて『クラスの皆が』どう思っているのか、何をしたいのかを。」
「るせぇ……」
下唇を噛み締める須藤に平田はいつになく厳しい言葉を浴びせるが、その中には優しさも見える。
この場にいる者の代弁でもあるこの言葉を平田がクッション向きで投げることで、その場にいたもの達に対する須藤への溜飲を下げる狙いなのだろう。
体育祭で須藤は自分の気分のままに人を褒め、貶し、煽る。結果を残せていれば褒められるかもしれないが、褒める基準も須藤基準。
一般的な運動神経とは並外れている須藤の基準では、クラスメイトへマイナスの言葉しか出てこない。そんな暴君に人は付いていかない。それを黙らせる実力がない限り。その実力のある人間が御門や高円寺や龍園なのだが
だが、彼は体育祭で結果こそ残しているものの、リーダーとしては結果は残せていない。
本人もそれを自覚しているのか、握る手に力が籠りながらもその場を動けずにいる。
「君が今、クラスの為に自分の得意な運動で貢献したい事も皆分かってる、感謝もしている。けれどね、人には誰だって得手不得手がある。例えば勉強が得意な幸村君だけど、君が勉強が苦手なように彼もまた運動が苦手なんだ。
例えばさ、君が幸村君に勉強が出来ない事を言われたらどう思うかな?」
平田の投げかけは奇しくも今の幸村の気持ちだろう。最も、それは幸村が『Aクラスに情報を流したであろう裏切り者』でなければの話だったが。
「……そうだな。確かにイラつくな、俺がこの体育祭でやってたのはそれと同じってことか……。俺、クズじゃねぇか。皆、すまなかった。」
須藤は皆に頭を下げる。
「でも須藤君が頑張ってたのは事実だし、全部クラスのためだって分かってるから、ね、皆?」
櫛田が真っ先にフォローを入れるがなんとも言えない言い方だ。その言い方では1歩間違えれば須藤が逆戻りしてしまいかねない。クラスの雰囲気こそ治ったが……
「いや、だとしてもクラスに迷惑をかけちまったのは事実だ。俺は、改めて言うぞ。このクラスを勝たせたい。卑怯な手ばかり使ってる元Cクラスに勝ちたい。俺だけじゃねぇ。『クラスの皆』で勝ちたいんだ。どうか皆、こんな頼りない俺だけど……もう一度だけ信じて着いてきてくれないか?」
須藤は直角とも言える姿勢で頭を下げる。奇しくも暴力事件の時と同じような形だな。
「須藤君、頭を上げてくれ、みんな君の気持ちは十分に伝わったと思うんだ。そうだよね皆?」
平田の呼び掛けにその場にいたもの達が頷く。これならまだ戦えそうだ。オレの仕組みも無駄じゃなかったようだ。
「すまねぇ……いや、ここはありがとうって言うべきだな。
今回の体育祭も、これからの試験も、みんなで力を合わせて乗り越えていこうぜ!」
「あぁ、勿論だ!」
全員が須藤に向ける視線は恐怖ではなく信頼になりつつある、これならばあとは須藤の行動が良ければどうにかなるだろう。
「今ここで話す事じゃねぇとは思うけどよ、俺は……このクラスにいる『皆』で勝ちてぇんだ……だから行く行くは、天野を取り戻してぇ。俺達のせいなのは分かってる、だからこそちゃんと詫び入れて許してもらって、アイツにも戻ってきて貰って、みんなで勝ちてぇんだ。」
オレは須藤の心の成長振りに驚かされると共に、天野が戻ってくる可能性を思索する……が現状のままでは限りなくゼロに近いだろう。須藤の望みは叶わなさそうである。現にクラスからは不満の声が上がりつつある。
「僕もその意見には賛成だ、だけどその話はまた今度にしよう。そろそろ次の競技も始まるしね。」
「それもそうだな。皆も少し考えてくれ。」
こうして俺達は次の競技に向けて解散したが、クラスの6割程度は未だに天野を虐めた後ろめたさからか、反対の様だ。
オレに言わせれば…戻って来ないだろうし、戻って来たとしても和解する事は無いだろう。紙のように低い確率だと思う。
オレは、天野が『今のDクラス』に帰ってくる事を頭の中で諦めて、次の種目に向かった。
体育祭、勝つのは……?
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坂柳派閥だ!
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綿白神派閥だ!
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一之瀬派閥だ!
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木山派閥だ!
-
龍園達Cクラスだ!
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オリ主だ!
-
平田グループだ!
-
櫛田グループだ!
-
篠原グループだ!
-
御門グループだ!
-
高円寺だ!
-
今は亡き葛城だ!