ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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綾小路と協定を結んだ翌日、授業中は綾小路の考えについて分析していたが一切読めなかった。矢張り原作主人公にして学年最強は綾小路で間違いないだろう。

 

「おい、天野……黒幕Xの候補を見に行く、着いて来い。」

 

しかし龍園に呼び出しを食らってしまった。まさか昨日Xと休戦協定を結んだなど当然言える訳も無い。

 

「一体全体どこに見に行くんだよ。ていうかあと候補は誰が残ってるんだ。」

 

 

「ケヤキモールにあるカフェだ。そこにXの候補が3人いる。んで残ってる候補だがこの表を見てくれ。」

 

黒幕X候補者リスト

 

・綾小路清隆

 

 

 

・御門玲於

 

 

 

・高円寺六助

 

 

 

・平田洋介(駒)

 

 

 

・堀北鈴音

 

 

 

 

・軽井沢恵(駒)

 

 

 

・三宅明人

 

 

 

・南節也

 

 

 

・幸村輝彦

 

 

どうやらあれから自力で園田も消したらしい。それにしても見事にクラスの主要人物ばかりだな。

 

 

「それで、誰を見に行くんだ?」

 

 

 

「綾小路、幸村、三宅、堀北の4人だ。お前の話だと実力を隠しているらしい綾小路は特にきなくせぇな……体育祭でもしっかり結果を残してやがる。

 

幸村の線は薄いが実は協力者って可能性も十分にあるしな。何より学力がある以上、頭がキレても可笑しくはねぇな。

 

三宅は学力は大した事ねぇが頭の回転も早くて度胸もある。可能性としては十二分にあるだろうよ。

 

堀北は……性格がゴミだがそれでも身体能力、学力、観察眼はある。何より今回ペーパーシャッフルで裏切り者対策をしたのは堀北らしいからな。」

 

堀北の名前を聞いた瞬間行くモチベが2段階ぐらい下がった。死んでも話したくないぐらい嫌なんですがそれは……

 

「俺は堀北と関わるのは死んでもゴメンだ……後おそらく三宅は黒幕Xではない。あいつは確かに頭の回転は早いがそれは理解力の話だ。想像力は大した事無いからな。」

 

 

「ククク、ならば三宅は候補から消しておくぜ。正直黒幕X探しは全員どこまで行ってもグレーだからな。可能性の高い奴を一先ずXとしておくべきだろうな。」

 

 

ペーパーシャッフルで別に裏切り者が出ていなくても既に黒幕Xの存在が示唆……されてたのはこの時期からだったっけか、いや、原作では裏切りの動かぬ証拠が会ったからそんな事は無いな。原作より龍園の推察能力が上がっただけか。

 

 

「まぁいいけどさ……堀北の相手は俺はゴメンだぜ。」

 

 

 

「わかってるさ……お前が相手したくねぇであろう鈴音ときな臭い綾小路の選定は俺がやる。三宅と幸村をお前に任せるつもりだったが……まぁ幸村を見分けるのはお前に任せるぜ。

 

なんにせよ現状特に怪しいのは綾小路と御門だからな。次に可能性が高いのは高円寺だろうが……まぁ順番に潰すだけだ。」

 

 

「ちなみに何で綾小路と御門が最有力候補なのか聞いてもいいか?」

 

まぁ綾小路が黒幕Xだと分かってる俺からすれば無駄な考察なんだが……。

 

 

「綾小路については……最初は平田の腰巾着だと思っていたんだがな。体育祭で露呈したが須藤や高円寺、御門程じゃないにしてもあの腰巾着は今まで自分の身体能力の高さを隠していやがった。

 

現にお前の話じゃあ今回のテストでもテスト作成をする側に回ったらしいからな。学力も隠していた可能性が高いだろうな。

 

最近じゃあ、Dクラスで平田グループのNo.2として名実ともに認められつつある……あまりにもきな臭ぇ話だぜ……だがな、」

 

 

「だが、どうした?」

 

俺は思わずその読み全部合ってるよと言いかけたが言ってないのでセーフだろう。

 

 

「俺の見立てが正しければ黒幕Xは極力目立つ事を嫌った行動を取っている。それなのにこんなに目立つ行動を取り続け、隠れた実力を出し続けてるのは噛み合ってねぇからな。

 

黒幕Xの駒の1つの可能性のが高いかもしれねぇ……が、いずれにせよ叩いておくべき所だろうな。駒という意味では平田と軽井沢も駒だろうな。

 

隠れ蓑として平田を用意、そしてその彼女の軽井沢も駒って所か、後は須藤も平田に懐いてやがる。あいつは頭が猿だが身体能力は高いからな。使い所はある。あれも駒だろう。」

 

 「なるほどな……まぁ多分合っているだろうよ。」

 

因みに佐倉も駒である。龍園はニアピン賞だな。

 

「そして綾小路と高円寺と御門は無人島試験と干支試験をサボっていやがった。御門はちょっと例外にしても……まぁ、怪しいのには変わりねぇからな。」

 

 

 

御門については俺も詳しく知らないが、龍園とは友達だと思っていたので少々意外である。

 

 

「まぁ何はともあれ、だ。この目で確かめるのが1番近いだろうからな。」

 

 

 

「そうだな。まぁ俺も楽しく着いていくことにしようか。」

 

 

 

俺が肯定すると、龍園は歩を進める速度を上げた。

 

 

どうやらそのままケヤキモールのカフェへ向かうようだ。

 

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放課後のケヤキモールは普段時と比べて活気が少なかった。それもそうだろう。ここに出入りするのはどういう訳か1年生が多い、だが当の一年はペーパーシャッフル対策で図書館なんかで勉強している。必然的に数は減るだろう。

 

 

だがそれでも人がいないないわけではない。スタバでパソコンを弄っている大学生みたく、オシャレなカフェで勉強する高校生も存在するのだ。

 

目的地であるカフェに到着したが、店内にいる生徒数は満席に近かった。いつもはもっと行列ができてごった返しているので一応少なくはなっているのだろう。最も、図書室やパレット程人が多い訳では無いが。

 

 

ちなみに俺達は極限で勉強している。俺の年間パスを貸しているので全員鴨蕎麦が食べ放題である。店長は今頃悲鳴を上げているかもしれないが許して欲しい。

 

 

「さて、綾小路達を探すとするか。」

 

 

 

 カフェの中に入ると龍園は席を歩き回り綾小路達を探す。

 

ちなみに龍園と俺には視線が集まりまくっている。それもそのはず、龍園翔という男の特異性に加えてクラス移動をした上に冤罪で話題だった俺がいるのだから無理もない。

 

 

だが俺達が綾小路グループを見つけるまで時間はそうはかからなかった。彼らは……なんというかマイペースだった。こちらに視線を向ける生徒は8割程だったが彼らも……そして別席に座っている堀北と情報に無かった御門も残りの2割の人間だったからである、

 

 

 

「それじゃあ、私お代わり取ってくるね~ちょっと待ってて。」

 

 

龍園に皆が驚く中……長谷部は呑気にもお代りを持ってこようとしていた。まさか自分達のグループが狙いとは思わなかったのかもしれない。

 

「また砂糖マシマシか? あんな激甘よく飲むよな。」

 

幸村は……俺クラス中で断罪されたと聞いたんだがどうしてグループにいるのだろうか……綾小路が何とかしたんだろうが正直神業としか言えない。

 

 

「私からすればブラック飲むほうが理解に苦しむけどね。……うわぁっと……」

 

 

そのまま龍園はこちらを目掛けて進む。俺もそれについて行くとすぐに綾小路と視線が合う。そして彼を含め4名の生徒が会話を楽しんでいたが……他のメンバーは談笑に夢中なのかこちらに気づいていないらしい。なんともマイペースな事である。

 

長谷部が会話を中断させ、プラスチックカップを持って立ち上がろうとする。

 

しかし、足元に置いてある幸村の鞄に躓き、手に取りかけていたカップを床に落としてしまう。幸村はそれをなんとも言えない目線で見て……こちらに驚愕の表情を向けている。三宅も少し遅れてこちらに気付いたようだ。

 

コロコロと回転して転がるカップをなんとなしに目で追うと、不幸にもそのカップは龍園の足元に到着する。ちなみに長谷部はカップに目がいって未だに気付いていないらしい。

 

 

 

「あ、ごめ…………!?ん!?」

 

 

 

コケてプラスチックのカップを転がしてしまったは謝ろうとするが、言い終える前に龍園くんがカップを踏みつぶす。驚いたのか最後の『ん』だけ変な感じになってしまったようだ。

 

見るからに悪意があった行動に、謝罪の言葉は喉の奥深くに飲み込まれることになった。しかしそれも仕方ないだろう。目の前にいるのは歩く悪意の塊の様な人間だ。悪魔と蛇を足して2で割った鬼、それが龍園翔なのだから。

 

 

おっと、蛇に失礼か。

 

「おいおい長谷部、随分と楽しそうだな。オレらも交ぜてくれよ。お前みたいな女は嫌いじゃないぜ?」

 

 

 

「何よあんた……気持ち悪い。」

 

 

長谷部は警戒を一気に強め、俺達……では無く龍園を強く睨み付ける。俺を睨みつけないのは後ろめたさ故なのか、三宅も俺から目を逸らしているような気がする、幸村は俺達をしっかり睨みつけているが……綾小路?ポーカーフェイス過ぎて分かんねぇよ!

 

だがまぁ幸村の反応は自然だし、三宅と長谷部の反応も正しいだろう。相手がBクラスの中でも目を引く生徒二人と気付けば当然の反応。しかもその片方が自分達のクラスのイジメで出て行った男で、しかも今やBクラスのNo.2なのだから。

 

ちなみに周りは龍園に目をつけられたく無いのかこっちを見ないようにしている。

 

 

「ちょっとなんで私のカップ踏んじゃった訳? 事故じゃないよね?」

 

 

長谷部は龍園を睨み付けながら問い詰める。俺……目線合わせてすら貰えないよ。

 

「足元に転がってきたから捨てたと思ったんだよ。手間を省くために踏んでやったのさ。」

 

 

龍園相手に強気の意見をするあたり長谷部は気は強いらしいが……まぁ間違えなくあの環境のせいだろう。そういえば平田が山内の退学を防ぐ為にポイント寄越せって言ってた時も長谷部は抵抗していたっけか。

 

だが、そんな度胸ある一言を龍園は鼻で笑い返す。流石は野菜100%生活ならぬ悪意100%生活を毎日飲んでいそうな龍園。

 

 

ちなみに悪意100%生活というのは辛くて苦いと噂の炭酸だ。龍園は毎日好き好んで飲んでるようだが甘党の俺からすれば味覚が狂ってるとしか思えない。

 

 そんな行動を見てか、黙って見ていた不良上がりの筋金入りの度胸を持つ三宅が真剣な顔つきでゆっくりと立ち上がった。そういえば原作で長谷部が好きだったとか好きじゃなかったとかだった気がする。どうでもいいけどヒロアカの尾白に似てるなこいつ。

 

 

 

「おい龍園。前々から言いたかったけどな、そういう態度はいい加減やめろよ」

 

 

そう言えばなんかこいつ龍園についても詳しかった気がするな。

 

 

「オレはお前にもう用はない。そっちの2人に興味があるんだよ俺は。後あっちにいる鈴音と御門にな。さて、天野、幸村はお前に任せるぞ。」

 

 

龍園と俺はそう言って綾小路と幸村へ視線を向ける。

 

お互いに相手の表情を一挙一動見逃さない程にそれぞれ凝視する。まぁ俺は綾小路が黒幕Xって知っている以上喜劇でしかないが。

 

 

 

「ククク、必死に勉強しているようだな。それにしても幸村のような裏切り者を必要とするとはDクラスってのも大変だな。」

 

 

 

「確かに裏切ったが、それがどうした。お前も早く帰って勉強した方が良いんじゃないか、龍園? お前の成績は中の下程度だろ?勉強もできない雑魚に煽られる筋合いは無いな。」

 

 

幸村ってこんなドンパチ煽って開き直れるぐらいメンタルは強かったっけか……裏切り者として断罪された事でプライドを捨てられたのかもしれない。もしかしたら原作みたいな第2の堀北や櫛田になるのかもしれないな。

 

「ククク、確かに俺はお前にテストじゃ勝てないが、学力ってのはそんなに必要なものなのか?学力だけで勝ち上がれると……温ぃな。」

 

 

だがそんな成長この男の前では無意味、龍園翔はこの程度では動じないだろう。

 

 

「温いだと!?お前はこの学力社会をバカにしているのか!確かにお前の言う通り運動神経やコミュニケーション能力は大事だろう。それは勉強が出来るゆえの事だろ!そんなのは!」

 

 

 

「ククク、天野、お前が判別するまでもなく分かるぜ。こいつは学力こそが正義だと思ってるだけの頭の中がお花畑のカスだ。こんな奴がXな訳が無い。」

 

大正解だがそれなら俺はここに何をしに来た事になるんだ一体。

 

「……なんだと?ふざけるな!Xとやらが誰かは知らないが俺の頭の中はお花畑なんかじゃない!!」

 

幸村は怒り反論する。まぁ事実だと感じてしまうのは俺だけだろうか。

 

「お前は……勉強版須藤ってところだな。大した価値のないクズだな。」

 

「ふ、ふざけるな!!」

 

 

激高する幸村から興味を失くしたように龍園はすぐに視線のターゲットを綾小路に移行する。

 

 

 

「さて、大本命だ。オレはお前がXじゃないかと疑っているんだぜ……なぁ、綾小路、ちなみに次点で怪しいのが御門だな。ククク、楽しいなぁ、おい!」

 

 

 

 その表情はまるで誕生日プレゼントを渡された子供のように笑みを浮かべていた。

 

 心の底からこの状況を楽しんでいる龍園は周囲の視線すら気にせず綾小路の次の発言をまだかまだかとせわしなく待つ。

 

「待て!撤回しろ!」

 

ちなみに幸村はガン無視である、ただ性格が悪くなっただけだったのである意味退化である。

 

 

「X……? 何のことだ、俺にはよく分からないな。」

 

綾小路は惚けてる……ポーカーフェイスだからわからんけど多分そうだろう。

 

「クク、お前らのクラスを裏で操ってやがるのはお前か?綾小路。」

 

 

 

 惚けたふりをしている綾小路に対して、龍園は疑いの目線を向ける。そして今ある情報をぶつけて、そのまま会話を続けていく。コールドリーディングって奴だろうか、今度俺も教えて欲しいんだが。

 

 

 

「綾小路。体育祭での活躍と参加表をずらす事でのトリック、選択退学試験での足切りと退学を防いだ2000万プライベートポイント、それから体育祭に向けたAクラスとの契約に幸村の弾劾。

 

これだけの事をやって見せたのにオレも驚いたぜ。なにせ、目立った成績を取っていなかったはずの腰巾着が急に結果を出し始めたんだ。

 

なぁ……なぜだ?どう上手くやった?」

 

 

 

「なんの事か俺には分からないな。」

 

「待て!俺を無視して話を進めるな!」

 

綾小路は惚けた振りをする。幸村……お前は黙ってた方がいいと思うぞ。

 

 

 

「幸村、少し落ち着いてくれ。」

 

 

 

 綾小路は無表情で幸村を窘めて……いるのか?ポーカーフェイス過ぎてよく分からん。

 

 

 

 

「クク、見事なポーカーフェイスだな。掘れば掘るほど才能が見えてくるな。綾小路。そこで騒いでる雑魚とは大違いだ。」

 

雑魚と言われた幸村の顔は赤くなる。それと反対に綾小路の顔は一切動かない。

 

 

「ただ表情筋が死んでいるだけだ。」

 

 

「釣れねぇなぁ……もっと楽しませてくれよ!」

 

龍園が段々麻薬中毒者みたいになって来たせいでさらに視線が痛い。着いていくリーダーを間違えたんじゃないかとたまに思ってしまう。

 

 

 

「クク、もう一つ聞くぜ綾小路。お前、無人島試験でリタイアしたな。その結果Dクラスは大敗した、そこでお前はDクラスの力量を確認した。

 

次に干支試験、これは天野の和平に乗る事に損がないから乗った。

 

そしてそれからの試験で勝ちを取りに行っている。そんな所だろ?」

 

 

 

 龍園は再度綾小路を問いつめる。無駄な努力ですとは言えなかった。そして前半の予測は間違ってるんだよな多分。

 

 

 

「いや、違うぞ。全ての作戦を立てたのは平田だ。

 

負けたのは平田が居なかったからだ。オレじゃあない。」

 

 

 

 綾小路はその質問に対し用意された回答だと言わんばかりに即答した。

 

ちなみに幸村は騒いでいるが俺たちは最早ガン無視の構えである。Dクラスの面々も少し引いている。

 

 

「クク、ククク、確かに矛盾は見当たらないようだな。それは用意された回答なのか?

 

 

まぁ、今回はここまでにしてやる。俺はこれから鈴音と御門を確かめなきゃ行けねぇからな。また話そうぜ、綾小路。楽しみにしてろよ。」

 

 

「出来ればもう話しかけないで欲しい。目立ちたくないんだが……」

 

綾小路の言葉はガン無視して龍園は去っていった。プライドの高そうな幸村はそのまま文句を言うためか知らないが龍園について行った。なんの成長もしてないな。

 

龍園としてもここは人目の多いカフェであり、監視カメラがある場所だ。なのでいつものような暴力を用いたり、それを使って脅す等の交渉は出来ない。しかもこの中にはDクラスの生徒もいるだろう。確実に話させる場所としては悪手も握手、大悪手と言える。

 

 

ちなみに俺だが置いていかれた。長谷部が可哀想なのも含めて俺は長谷部の分のコーヒーを渡すためにプラスチックコップにコーヒーを入れ、大量のシュガースティックを持っていく事にした。

 

 

恐らく龍園は堀北達に絡んだ後は勉強会に行くのだろう……多分。

 

俺は右手にコーヒー入りのプラスチックコップを3つ入ったトレーと、その上に多量のシュガースティックを、左手に3人分のショートケーキを用意する。

 

ショートケーキの用意の理由は単純。龍園のイメージを下げないようにするため……なのだがもう手遅れな気がする。

 

龍園が去った店内は一瞬静寂に包まれた後、すぐに活気を取り戻した。だが中には俺の方を未だにチラチラ見てくるものがいるのも事実である。

 

「龍園がお騒がせ致しました。申し訳ありません。」

 

俺は店内に聞こえるぐらいの声で店員さんに謝っておく。店員さんはいえいえと言わんばかりに手を振っているようだ。

 

それを確認した周りはこちらから視線を霧散させる。

 

恐らくたった二人の来店だったが、その緊張感は一触即発の雰囲気を店内に張り巡らせていた事だろう。方や国家を揺るがす事件の冤罪者、方や暴力をモットーとする学年一の暴君だ。無理も無い。

 

 

「……何なのよあいつ、てか鈴音って誰。」

 

 

 龍園にカップを踏みつぶされた長谷部は機嫌が悪そうだ。まぁそりゃ気分が悪いなんてものじゃないだろうし仕方が無いが。とはいえ俺の接近にも綾小路以外は気付いていない様子だ。

 

勉強を再開しようにも教える役の幸村はどこかへ行ってしまったのだ。自習するにもなんともしづらい雰囲気なのは間違えないが。

 

 

「機嫌直せよ長谷部。そんな雰囲気じゃ、勉強しようにもできない。

 

 カップは俺が持ってきてやるからよ」

 

 

 

三宅はそんな状況を見かねてもう一度席を立った。原作では人と関わるのが好きではないが、長谷部に対しては違うのか、それとも他の人にも気を使えるのか……いまいち読み切れないな。まぁなんにせよ三宅はDクラスの中でも数少ない悪い印象の無い人間だ。ちなみにDクラスの約8割が悪い印象の人間なのだが……

 

ちなみに俺だが完全に出るタイミングを見失ってしまった。傍から見たらストーカーのそれである。

 

 

「……砂糖多めね。あと奢りで」

 

 

「わかったわかった、だから機嫌直してくれって。」

 

 

「綾小路も何かいるか?お前にも奢ってもいいぜ」

 

 

「俺は大丈夫だ。飲み物のお代わりは必要ない。強いて言うなら、小腹が空いたくらいだが、奢ってもらう気はない。」

 

 

綾小路は小腹が空いていたらしいので丁度いいんだけど……マジでコレいつ出ようか。腕の握力が死ぬ前に出たいんだけど。

 

 

 

とは言え、サラッとこの場から逃走して不機嫌な長谷部は綾小路に対処させたいと三宅は思っているのかもしれないな。現に綾小路は少しだるそうな顔してるし。

 

 

 

 

「なんでもいいけどさ、取ってきてくれるなら早く欲しいんだけど。……後、幸村君はなんか色々ダメそうだからこの3人が綾小路グループって事にしよう。」

 

「なんでオレの名前なんだ……」

 

長谷部は口を尖らせながら綾小路に言っている。どうやら拒否権は無さそうだ。

 

長谷部は怒っているようだが、それはあくまでも龍園に対して、綾小路達に理不尽な怒りをぶつける気はないようだ。……とはいえ俺は分からない所ではあるが、あまり恨みを買いたくはない。恨みを買った人間がどうなるかは俺が一番よく分かっている。

 

誰かの地雷を踏まないように言動には気を付けなければいけない。現に俺の恨みを買ってそれでDクラスからは何人も退学してる訳だしな。

 

そのまま長谷部の機嫌を損ねないように三宅が出て行くらしい。個人的には三宅の評価は高い。頭も回るし度胸もある。身体能力も悪くない上に学力も平均程度はある、そして察する力も高いため集団が苦手とはいえそこそこは対応出来るだろう。クラスのモブとしては及第点だ。

 

 

三宅がレジへ向かおうとしている……ここだ、ここしかない。乗るしかないんだ!このビッグウェーブに!!

 

 

 

「小腹が空いたんだってな、綾小路。それなら丁度良かったみたいだな。」

 

 

俺は最大限仲良しのような声を上げる。嘘です。ちょっと声色が震えていたかもしれません。はい。

 

俺を見る三宅と長谷部は……一瞬驚いたが目を逸らす。俺が嫌うならまだしも俺嫌われるようなことして……ないってことは気まずい感って事だろうな。

 

 

「龍園がプラスチックコップを踏み潰したから態々お詫びとして持ってきてくれたのか……すまないな。」

 

 

皆の代表と言わんばかりに三宅が謝罪をする。心做しか距離感が遠い。いやまぁよく良く考えれば当然なんだけどさ。

 

 

「綾小路、三宅、お前らの分もある。さっきは龍園がいきなりすまなかったな。」

 

 

俺は綾小路グループの机にプラスチックのトレーの上にある3つのプラスチックのコップと陶器製の皿を置いた。その上にはチョコレート味のショートケーキが乗っている。正直長谷部の甘々コーヒーと合うのかと言われるとなんとも言えないが、恐らく甘党だろうし問題は無い。長谷部の前には何本かシュガースティックも置いておく。これ以上必要だった時は大人しく叱られようそうしようそして俺が取りに行こう。

 

 

「……ごめん、ありがとう。こっちこそうるさくしちゃってごめん。」

 

 

 長谷部は俺が持ってきたコーヒーにシュガースティック4本分の砂糖を入れてコーヒーを喉に通す、糖尿病が心配になるレベルだが美味しそうに飲んでいる。

 

甘党なので気持ちはわかるが、綾小路と三宅はこいつ正気か?と言わんばかりの目線を向けている。コイツら体育祭の件があったのにどうも未だに罪の意識に囚われている感じがあるんだよな……見方によっては美徳だが……邪魔でもあるな。

 

「いやいや、あれは龍園……いや、俺達が悪いから気にしないでくれ。」

 

「このショートケーキはオレが小腹が減っていると言ったからか?」

 

綾小路が無表情でこちらを見ながら聞いてくる。無表情過ぎて考えていることがわからん。

 

「ああ、そうだ……と言いたいところだが全くの偶然だ、これはお詫びとして持ってきたつもりだったがタイミングが良かった様だな。」

 

 

俺の言葉を聞いた綾小路は何やら嬉しそうにショートケーキを食べ始めた。ポーカーフェイスもクソもない。こいつこんなキャラだったっけ……。

 

だが、長谷部と三宅の顔色は未だ沈んでいた。他のDクラスにもこれぐらい見習って欲しいものだ。

 

「これは……いくらしたんだ。」

 

三宅は額の事を気にしているのかもしれない。

 

「……ケーキとコーヒーを合わせて……そうだな、だいたい2000ポイントぐらいはするんじゃないか?」

 

「……天野……改めて本当にすまない。俺たちが恩を仇で返す……嫌、お前は俺たちに仇を恩で返して貰ったが……正直俺たちはお前に合わせる顔が無い。

 

須藤達はお前をクラスに戻せると思っているようだが……4000万を手放してわざわざDクラスなんかに戻ってくる事はないだろう。必要ならば俺から止めておく。」

 

まぁ実際迷惑なのだがここはそこそこ人のいるカフェである。俺達に向けられている視線も少なくない。ここでそれを否定するのは立場的に良くないだろう。それにしても須藤は一応成長しているようだが……まだ想像力は足らないか。

 

それに引替えやはり三宅の頭の回転は早い。俺がDクラス評価している数少ない人間の1人なだけはあるな。他のDクラスの大勢の雑魚とはやはり違う。

 

とはいえ勿論、Dクラスを許すつもりなんてサラサラないがな。成長しようと過去は消えないのだから。それは須藤も同様だ。綾小路に言われた以上一旦残しておくが。

 

そういう意味では合わせる顔が無いことを理解しているだけ三宅と長谷部はマトモだろう。まぁこいつらは性格的に他人の事情に関与はしないだろうし、虐めを止めるなんて事はしないだろうから恨んじゃいないけども。

 

 

「いや、それだとお前のクラス内での立場が悪くなるだろうし遠慮しとく。気持ちだけありがたく貰っておこう。それと俺はお前達を恨んでいる訳じゃない。

 

他のDクラスの大半の生徒はまだしも、お前らとは仲良くやっていきたいと思っている。だから普通に接してくれ。」

 

 

これは事実だ。まずは綾小路、綾小路は勿論敵対なんてしたら終わるので友好的にやっていくのが1番だろう。

 

 

次に三宅、仁義や道徳面でもしっかりしており、スペックとしても全体的に高い。加えて自分の信念を貫けるだけの度胸もあり、恨みも無い。仲良くやって行けるだろう。

 

長谷部も三宅程では無いが恨んでいる訳でもない上に、スペックも低くは無いのでまぁいいだろう。長谷部だけギリギリな気がしないでもないがまぁいいや。

 

幸村?この学校でマトモな生活が出来ると思うなよ、本当に。

 

 

「お前がそう言うなら……わかった。改めて宜しく頼む。天野。」

 

俺は3人と順々に和解、そして親交を深めるために握手をする。随分と古典的なやり方な気がするがまぁいいだろう。ていうか体育祭の時も似たような事をやったような。

 

 

「体育祭の時にも言った気がするがお前らとは仲良くやっていきたいと思っている。だが、言っておくが幸村は別だからな。」

 

「わかってる。私達もペーパーシャッフルが終わったら幸村君とは関わるつもりないから。

 

なんというか……プライドが無駄に高くて思考が短絡的だし。なんか裏切った事を開き直ってるし……クラスでは許そうみたいな雰囲気になってるけど私達は許してないからね。」

 

大方平田ら辺が許そうオーラに持っていったのだろう。後はスパイが多い方が動きやすい俺の可愛いスパイ達か。

 

 

 「そうなのか?」

 

 

「今のDクラスは御門君と平田君に洗脳された人か価値観と頭が残念な人が大半だからね……。」

 

 

まぁそれは間違えない。綾小路の足切りはやったらクラスメイトが半分以下になるだろうよ。

 

 

「間違って無いな。俺からしても同意見だ。そういえば……ここだけの話だが、龍園はお前の飲み物に下剤を仕込んで当日のペーパーシャッフルを優位に運ぶつもりだ。気を付けてくれ。……でも他のDクラスの奴らには言うなよ。」

 

 

俺は小声で伝えておく。全員了承したのか頷く。綾小路だけが不確定要素だがまぁ多分問題無いだろう。

 

そうこうしてるうちに幸村が戻ってきた様だ。俺は三宅達に会釈してその場を離れる。一応少しだけ盗み聞きしてから帰るか。俺は三人にバレないように近くの空いている机の下に隠れた。

 

 

「……綾小路、今のは何の話だ?」

 

 

この声は幸村だろう。機嫌が治ったのか声色は落ち着いている気がする。

 

 

「……さぁな。でも多分、天野もオレのことをXだと思っているんだろうな。いくつか質問をされた。」

 

綾小路は顔は見えないが今頃ポーカーフェイスで嘘を着いていることだろう。

 

「やっぱそういうことか。お前も大変だな。」

 

裏切り者が何を言っているんだと思ってしまったのは俺だけでは無いはずだ。実際後ろから怖い圧を感じる訳だしな。

 

「まぁ、オレが疑われれば疑われるほど、誰だか知らないがDクラスに貢献しているそのXへのヘイトが分散できる。そう思わなければ辛いのは事実だな。」

 

 

「そうか……天野は龍園の右腕になるような性格の悪いヤツだ。くれぐれも気を付けてくれ。」

 

 

「スパイだった幸村君が言うと説得力あるね。」

 

 

幸村に長谷部の綺麗なフルカウンターが入る。メリオダス長谷部に名前は改名するべきなのかもしれない。プロレスラーみたいだが。

 

 

「お、俺はもう許されたんだ。許してくれ。それにあの頃のDクラスじゃ勝ち目もないし仕方無かったって平田も言ってただろ。」

 

 

 

 

 

「ふーん……ま、なんでもいいけどさ。」

 

 

それ以上話す事も無いのか長谷部たちの会話が途切れてしまった。そろそろ潮時か?

 

 

 

「……まぁいい。それ食べ終えたら勉強再開だからな。」

 

 

「はーい」

 

 

どうやら本当にこれ以上の収穫は無さそうだ。俺は幸村達にバレないようにその場を後にした。

 

 




残っている黒幕X候補リストの面々

・綾小路清隆

・御門玲於

・高円寺六助

・堀北鈴音

・南節也

ちなみに綾小路グループwithout幸村&佐倉になりました。

佐倉は普通に平田が面倒を見ているため特に綾小路グループに入ることはありませんでした。佐倉の中での幸村の評価が池と同レベルなのも原因です。

幸村は裏切りやなんやかんややっているのに自分の非をプライドが邪魔して認められないのを見て幸村をハブって綾小路グループが結成されました。自業自得ってやつです。

優勢世代は

  • 本編にガッツリ出して欲しい
  • 天野兄の偉業を語る程度の登場でいい
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