ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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決着!ペーパーシャッフル

テスト当日の朝、伊集院退学の決行日である。松下曰く伊集院が来たらしいので、学生証端末を通話状態にしてもらって、音声を録音させて貰うとしよう。あと一応裏切りが無いとも限らないのでその確認である。

 

前日にうちのクラスの問題がDクラスに漏れてると櫛田から報告があったが、恐らく綾小路が山下を無事脅して得たのだろう。契約上これは放置だ。他の試験のがよっぽど大事だしな。それに伊集院の始末でこっちは忙しい。

 

さて伊集院についてだが、告らせる場所は浦原商店近くの監視カメラの無い裏道である。これは松下に目立たない場所がいいという事でそうするていで言わせた。坂柳からも近くに鬼頭をスタンバらせているとの連絡があったので、現在計画は順調なのだろう。

 

伊集院本人は前日に告るつもりだったが松下が用事がある体にして何とかさせてもらった。

 

ちなみに俺は勿論首謀者とバレないように自分の部屋で待機だ。浦原商店の近くの路地は迷宮と大差ない。迷う人によっては2時間近く迷う可能性すらある。加えて浦原店長には既にある程度の事情を説明してあるから問題は無いだろう。仮にもこの学校の卒業生だ。この手のやり口にも理解を示してくれた。

 

ちなみに伊集院には睡眠薬を飲ませて無理矢理眠らせるハラだ。最初は永遠に鬼頭に拘束してもらうつもりマンマンだったが、ペーパーシャッフルの日の学校にいる時間は6時間程度だったので、浦原店長作の12時間程度ぐっすり眠れる睡眠薬を飲ませて目と口と手足を封じてゴミ箱の中にでも入れて蓋をしとけば問題無いだろう。

 

中々手荒だが、監視カメラも無い以上バレることは無いし、立証も難しい。まさか12時間も寝かせられる睡眠薬があるとは知らなかったので勉強になった。

 

『ま、松下……今日は来てくれてありがとう。……その、大事な話があるんだ。』

 

お、どうやら始まったらしい。鬼頭の連絡だと周りに人は居ないらしい。一応坂柳派の人員に少し遠めの位置で人が来ないように見張ってもらっては居るので大丈夫だろうが。

 

『話って何かな。伊集院くん。』

 

松下には察していないよう装うことと、告白をされるまではなるべく優しい態度をしておくように言った。失恋による精神的ショックを増加させるためだ。

 

『そ、その……お、俺と……付き合ってくれないか!!』

 

伊集院は周りを見渡したのか少し余白の時間があった。残念ながら盗聴されているので丸聞こえだが。さて、ここからが見物だな。松下には事前に出来る限り酷い事を言いまくって相手を傷つけて振るように言ってあるがどうなる事やら……。

 

『まさか……伊集院くん……いや伊集院程度が私と釣り合うと本気で思ってるの?あんたみたいなクラスのお荷物が?』

 

松下は声のトーンを3段階ぐらい落として冷たい声色を出す。画面までは見えないが間違えなく冷たい目線を送っている事だろう。

 

『え……ちあ……松下?』

 

伊集院は困惑気味だ。まぁお前の人生はこれから先地獄真っ逆さまだがそれは他の奴らも同じだろうよ。思わずクククと笑みが零れる。どうも龍園に似てきた気がするな。

 

『名前で呼ばないでって言ったよね。あんたなんかに呼ばれると気持ち悪くて吐き気がするからってさ。正直さ……あんたなんか大嫌いなの、生理的に無理、吐き気がするから関わりたくないの、それなのに毎日話しかけて来て心の底からキモかった。』

 

『う、嘘……だよな!?』

 

松下の容赦ない毒舌を信じられないと言わんばかりの声で伊集院が現実逃避している。お前、もう脈無いよ。

 

『は?現実すら直視出来ないの?山内よりもあんた下だね……これからはゴキブリみたいに字面を這いつくばって生きていったら?社会の負け犬さん……?

 

それじゃああんたなんかを貶してる時間すら惜しいから私は行くけど、着いてこないでね。一緒に登校してると思われるだけで不快感と苦痛で吐きそうになるからさ。

 

私が見えなくなるまで動かないで……もし動いたら、あんたにレイプされそうになったって学年中に言いふらしてやる。』

 

そのセリフ原作の櫛田さんと被ってますよ!と思わず言いそうになったが我慢する。マジで裏櫛田が乗り移ってると思わんばかりの毒舌だった、女子って裏では皆こんなんなのだろうか……だとしたら怖すぎる。俺は少し女子が怖くなった。まぁそれはそれとして復讐はするけどね。

 

『あ、ぁぁぁぁ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

恐らく今失恋したショックで伊集院は泣き崩れているのだろうが心底うるさくて迷惑だ。

 

「ペーパーシャッフル頑張ろう!」

 

俺は学生証端末からこの件のために追加した鬼頭のチャットにそんなメッセージを送る。これならば仮にもメッセージが見られても何もおかしくはない。最も、見つかる事も無いとは思うが。まぁなんにせよ伊集院ももう終わりだな。

 

俺は、鬼頭から帰ってきたメッセージで無事成功した事を察する。失敗、成功の内容をスタンプで決めておいたのでこの履歴を見られても疑われる事は無いだろう。1種の暗号みたいなものだな。

 

今頃伊集院は意識を刈り取られ、睡眠薬を飲まされているが、目が覚めたら涙などの体液で剥がれないように、布式の猿轡と目隠し、何重にも拘束されているガムテープで手足を確実に固定された状態でゴミ箱のひとつの中だろう。一応耳に耳栓もしてあるらしいので、音も聞こえない。鼻は呼吸のために残してあるが、匂いはゴミ箱のゴミの匂いだ。最も伊集院にそれがわかったところでどうこうする術は無いだろうが。

 

ゴミ箱の蓋の上は周りには大量のゴミ入りのゴミ袋がある。生ゴミ多めのやつを選んだので彼の鼻は確実に死ぬだろう。

 

意識があれば嗅覚と触覚以外の五感を奪われ、手足を縛られ、嗅覚にゴミの匂いという拷問を受け、失恋のショックとペーパーシャッフルに行けずに退学になる不安と焦りに苛まれる事になる。虐めをする奴に帰ってくる。それだけの話だろう。自業自得だな。

 

最も、睡眠薬で意識を失っている事だろうが。副作用で頭が痛くなるらしいので思考もしにくい事だろう。あいつの頭程度でどうにかなるとは思えないが。

 

ちなみにあいつの学生証端末だが、1つ隣のゴミ箱に捨ててある。連絡も出来ないだろう。

 

俺は作戦の成功を確信しながら、学校へ行く用意をする。朝食としてネオバターロールを加え、制服に着替え学校へ向かう。勿論ペーパーシャッフルに向けてもしっかりと勉強はしているので問題は無いだろう。

 

問題用紙だが綾小路作の激ムズ数学と坂柳作の激ムズ古漢、そして俺作の古傷抉りまくり&激ムズ現代文である。提出は龍園に任せているが……はてさて1体何人退学者が出るか。正直10組ぐらい退学する可能性すら考えている。

 

 

俺が扉を開けてエレベーターに乗り込むとそこには龍園の姿があった。

 

「よぉ、伊集院の野郎をはめ殺せたか?」

 

龍園が軽快そうに笑ってくる。Dクラスから何人退学者が出るかは純粋にこいつにかかってると言ってもいいだろう。

 

「わからんなぁ……龍園、お前の方はどうだ?」

 

いくらDクラスが猿とは言えそう簡単に仕込めるものでは無いはずだ。下剤である以上個人差もあるだろう。

 

「4人は下剤入りの飲み物を飲んだのを確認したがあとは分からねぇな……個人差もあるだろうから期待出来るのは2人前後って所か。勿論お前に禁止された所はやってねぇよ。」

 

龍園の話の通り龍園の仕掛けで2組が退学するとしよう。俺の仕掛けで伊集院ペアは退学、そして王も入れるのに成功したとのお話なので前園ペアも退学、そして詳しくは知らないが坂柳が田所を退学にさせるように何かしら仕組んでいるので田所ペアも退学、合わせて10人の退学が決定する訳だ……我ながら中々えぐい気もするがさっさと消えてもらうに限るだろう。

 

さて、どうなる事やら……俺は楽しみにしながら学校へと向かった。

 

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俺達全員が教室に入り、席に着席して暫くすると坂上先生が問題用紙と思われるものを持ってやって来た。それを見た周りの顔色が改めて引き締まる。

 

 

「全員やる気があるようで何よりだ。Cクラスに勝つ事を祈っている……では期末テストを行う。1時間目は数学だ。開始の合図まで用紙を表に返す事は禁止する。勿論分かっているとは思うがカンニング行為も禁止だぞ?」

 

 

 

坂上先生は生徒1人1人にテスト用紙を配っていく。

 

 

 

「試験時間は50分。体調不良や手洗いは極力控えるように。我慢できない場合は挙手してから申告するように。それ以外の退出は認めない。それでは……チャイムがなったら自分の学年クラス番号氏名を記入するように、万が一書かれていない場合は点は0点扱いとする。」

 

 

 

お決まりの注意を聞き、俺達は重苦しい空気を背中に保ちながらチャイムを待つ。

 

 

 

「始めっ!!」

 

 

坂上先生の言葉に俺達は一斉に捲る。テストをやる時に同時に紙を捲るあのペラっと音だ。数学の担当は誰だか分からないが……かなりの難易度だった。

 

 

 

(俺やひよりみたいな上位層なら解けない問題じゃないな……ただ石崎辺りには厳しそうだな。)

 

 

問題の難易度としては1問目から面倒なひっかけの多い問題を主として、計算の多さや着眼点の珍しさのある問題が並んでいる。傍心に関する問題だけで25点分出ている事に何より驚いている。

 

 

前世では『傍心……奴は五心の中でも最弱!?』という発言で学年流行語アワードを高校で取った事があった傍心先輩だが、今回の試験では難敵としてしっかり活躍していらっしゃった。

 

 

俺はカンニングを疑われない程度に周りを見回すが、下位層の中にはペンが止まっているものもいた。一応退学は無いように多少救済のような問題は入っているが……まぁ大丈夫だろう。多分。

 

 

 

 

テストをとき始めて20分程だろうか……何やらDクラス……と思われる場所から悲鳴が聞こえてきたが……俺達には関係の無い事だろう。 

 

 

 

そのまま本日の科目である英語、理科の2科目も終えるが、それらはどちらも難しい内容だった。英語は仮定法と関係詞のオンパレードでとにかく長文が長かったし、理科二科目は見た事ない実験をしていた。一応補足説明こそあったものの平均点は低いだろう。

 

俺は家に帰った後、櫛田との通話でDクラスに何があったのかを聞くことにした。

 

ちなみに伊集院だが、目覚めはしたようだが30分程抵抗したら大人しくなったようだ。一応定期的に脱水にならない程度で、喉がカラカラになったタイミングで死なない程度の水を飲ませているようだが……仮に叫ばれてもあそこは人などほぼ通らない倉庫の抜け道だ。聞かれる心配はあまり無いだろう。それに水を飲んだとしても1日放置されている以上喉は枯れているだろうしな。

 

「もしもし、桔梗、Dクラスの様子はどうだった?」

 

「もしもし、そうだね……順番に行くね。まず伊集院君と池君が学校に来なかったかな。」

 

伊集院は俺の仕組み通りだ。そして池は……恐らく龍園に仕組んでやられたのだろう。

 

「伊集院君は菊池君がペアだし退学だろうけど、池君のペアは高円寺君だから普通に満点を取りかねないかな……前日にも言ったけど問題は漏れてるわけだし……池君が来ないと分かった瞬間に堀北さんに高円寺君も解答を見せて貰っていたから。」

 

大方どうにかなるとタカをくくっていたが、まさかのペアの不在で焦って過去問を暗記したのだろう。唯我独尊の高円寺も流石にペア無しでは退学の危険があるのだろう。大半の生徒は退学するものなんだが……やっぱり高円寺やべぇわ。そういう意味では池はとてつもなく幸運だったな。

 

「それで……その……大きな悲鳴が聞こえたと思うんだけど前園さんがテスト中に大きい方を漏らしちゃったせいでクラスがパニックになっちゃって、茶柱先生のおかげで誰もカンニング扱いとかにはならなかったけど前園さんは退学云々抜きにして終わりかな。」

 

どうやら王は成功したらしい。願わくばこのまま復讐心に取り憑かれて行って欲しいものだ。

 

「なるほど……大体予想通りだな。」

 

「後は……外村君と篠原さんと園田さんはテスト中に何回かトイレにいってたから、成績は芳しくないだろうね……あれが龍園くんの入れた下剤なのかな?」

 

「そうだろうな……4人ほど入れたとは言っていたがまさか4人全員綺麗にハマるとは。」

 

浦原商店は一体全体どうなっている事やら。

 

「でも篠原さんのペアは堀北さんだし……外村君は体育祭の負債の件もあってペアが平田君だから退学はなさそうかな……園田さんのペアは西村さんだけどこっちはもしかしたら……って感じ。」

 

龍園の策略上必然的に下の生徒を狙って上の人間を消すのが効果的だったんだがスパイのせいで全て台無しだろう。結局龍園の方はただ腹痛を増やしただけの結果で終わりそうだ。まぁまさか自分のクラスからあの荒れ果てたDクラスに着こうとするやつが出るのは読めんからシャーなしだろうが。

 

「わかった、2日目も連絡を頼む。」

 

「うん……それじゃあおやすみ。」

 

「おやすみ。」

 

明日の教科は俺特性のトラウマをえぐる現文と有栖直伝の難関古漢が待っている。恐らく田所は古漢でカンニングで訴えられるだろうが……まぁ強く生きて欲しい。

 

俺は明日を楽しみにしながら眠りにつくのだった。

 

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さて、待ちに待ったテスト2日目である。鬼頭から伊集院は大丈夫との報告もあったことだし、計画は万事順調だろう。前園は教室で漏らしたので最早クラスに居場所は無い、田所は退学。なかなかの成果だ。

 

そして俺たちは一日目と同様に席につき、坂上先生のテンプレートな説明を受け、テストに望む。1時間目は有栖が作った古漢を味わう事になるだろう。

 

ちなみにDクラスの問題は……なんというか、良くも悪くも正攻法で解けるストレートなものが多かった。古漢の担当の奴は大した事無さそうだし恐らく堀北だろう。皆もスラスラと解けている。この分なら問題無さそうだな。

 

「ま!待て……誤解だ!誤解なんだ!信じてくれ!!俺は坂柳に嵌められたんだァ!!だいたい幸村!なんで!なんでお前が!!!」

 

テスト回収時、Dクラスからそんな叫び声が聞こえてくる。恐らく田所がカンニングしていたと幸村が先生に言いつけたんだろう。これで田所とペアの南 伯夫の方は退学だろう。南は二人いたが確か伯夫の方だったはずだ。まぁ正直どっちでもいい。

 

そして社会二科目が過ぎる……こちらはまるで共通テストのような問題ばかりだった。これを作ったのは恐らく平田だろう。一日目よりは解けてはいたが、それでも古漢ほどでは無いだろう。そして最後はトラウマ抉りの現文だ。

 

内容は大問1に兄に憧れている妹が兄から妹が無能であるが故に絶縁を言い渡される小説文。これはお察しの通り堀北の事だ。

 

大問2はクラスで虐められていた主人公がただただ辛い心境を吐露し続ける小説文。これは俺の恨みと憎しみに加えて軽井沢にクリティカルヒットするだろう。一応綾小路の許可は貰ってある。

 

大問3は自由と規律についての評論である。なぜ犯罪はダメなのかみたいな話から入っており、今まで裁判を受けた人間で未だにこの学校に残っている篠原、須藤、池、外村に深く刺さる事だろう。まぁ後半2人は俺のせいだが。後はストーカー行為をされた佐倉も嫌な事を思い出してくれるかもしれない。

 

 

大問4は退学救済用として学校に用意するように言われた漢字問題だ。ここら辺は赤点回避用なので漢字の問題もそう難しくはない。全10問ある。これに関しては池程度でも半分は取れるだろう。こっちは他クラスにもダメージが入る様になっているのもあるしな。噂程度で聞いて勝手にダメージを受けてくれれば幸いだ。何度も言うが難易度としては楽な部類だ。

 

 

ちなみに俺らが受けたテストは現文も楽めだった。古漢と作成者は同じと見た。

 

「お疲れ様でした。2日間大変だったと思いますがよく頑張りました。今日のところは帰って休むことをおすすめします。それでは今日はここまでとします。」

 

 

坂上先生の帰りの挨拶を聞き、俺はDクラスへと向かう。少し遅れて、龍園もその光景を眺めに行きたいのか後ろを着いてくる。

 

俺達がDクラスへと向かう最中、生徒の顔色は2パターンに別れていた。

 

一つは恐らくスパイから貰った問題用紙のおかげで高得点が取れたのだろう。ルンルン気分で帰っているヤツら……とはいえこれはマイノリティー側の話である。

 

もう一つのマジョリティー側の人間、つまり顔色の悪い人間は多かったがひとえに顔色が悪いと言っても理由は様々だ。

 

或いは下痢のせいで体調の悪いもの、或いは自分の過去を抉られてトラウマを呼び起こしたもの、或いはペアがカンニングしたせいで退学が決定したもの。或いはペアがテストを受けずに欠席したものなど様々だろう。

 

うちのクラスのスパイから問題を仕入れたがそれでも勝ててるか不安が残る所だろう。まぁ流石にこっちの負けだろうが。

 

そんな事は露知らずの龍園は勝ちを確信したのか堀北をフルで煽っていた。ちなみに皆の予想通り堀北の顔は真っ青である。

 

「おいおい……鈴音、顔が真っ青じゃねぇか。どうしたんだ一体?生理か?」

 

「……貴方には……関係ないわ……」

 

「ククク、お前らの負けは確定だろうな。それにしても残念だったな。揃いも揃って偶然腹を下しちまってな。ペアは篠原だったな。」

 

「巫山戯ないで……貴方何かしたでしょう……それに部下の管理もしっかりと出来てない人に言われたくないわね。負けるのは貴方達よ。」

 

「……なんだと?」

 

堀北の爆弾発言に慌てて平田と御門が止めに入る。スパイの存在を自らばらすとか後先すら考えられないアホになったのか……それとも心の余裕が無いのか。どっちもだろう。

 

現に今余裕のないDクラスからですら余計な事を言うなと視線が注がれている。

 

「龍園君、話があるなら僕が代わりにするよ。何か用かな?」

 

「堀北!黙ってこっちに来い、いいな。」

 

「ヒッ……も、申し訳ございません……どうか……どうかお仕置だけは勘弁してください。」

 

より一層顔が青くなる堀北に、爆弾回収に向かう2人、そして何やら思案する龍園を尻目に、俺は櫛田と松下を連れてその場を立ち去った。恐らく龍園はスパイに気付くだろう。

 

堀北が綾小路の傀儡人形なのか、それとも単純に無能なのかは分からないが……まぁどっちでもいいか。

 

鬼頭から伊集院の拘束を解除した胸の連絡が暗号で送られてくる。伊集院はあと1時間もしたら目覚めて戻る事だろう。誰になんで嵌められたのか……松下だと思いそうなものだが松下に告る事をあちらこちらに言いふらし回っていたらしいので真相は闇の中である。

 

まぁ明日には全てが解決している事だろう。

 

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翌日、誰が退学したのかはあえて聞かず(まぁ大体の予想は着いているが)に俺は登校した。サプライズこそ楽しみという訳だ。確定ガチャを引く時の様なワクワク感がある。わくわくの実は特L確定だろう。

 

教室に着きしばらくすると坂上先生がやってくる。龍園も同じ気持ちなのかずっとニヤニヤしていた。

 

「皆さん席に着いているようですね……。それでは、ペーパーシャッフル試験の結果を発表します。」

 

 

 

「1年の全クラス結果は以下の通りです」

 

 

 

そう言って坂上先生が張り出した紙には平均点と合計点、その結果によるクラスポイントが書かれていた。

 

 

ちなみにペーパーシャッフル前のクラスポイントは

 

 

(旧)Aクラス……1772ポイント

 

 

 

 

(旧)Bクラス……1119ポイント

 

 

 

 

(旧)Cクラス……1269ポイント

 

 

 

(旧)Dクラス……819ポイント

 

だった。今回の試験は直接対決なので差額として600ものポイントが移動する事になる。勿論まずはテスト結果からだが。

 

 

【全8科目 合計点数】

 

 

 

 Aクラス:27074.2点

 

 Bクラス:27203.2点

 

 Cクラス:22279.9点

 

 Dクラス:24250.8点

 

 

 

 

 

【1科目あたりの平均点】

 

 

 

 Aクラス:89.06点

 

 Bクラス:85.01点

 

 Cクラス:71.41点

 

 Dクラス:86.61点

 

 

 

となり、うちはカンニングと欠席含めて5人いなかったDクラスに負けた形となる。まぁ目ざとい龍園の事だ。スパイの存在には既に気付いているんだろう。

 

それよりも驚きなのはAクラスとCクラスの方だ。平均点こそ負けているが結果だけ見ればAクラスに勝った形となる。Aクラスが2人切り捨てたのがまさかこんなところで効いてくるとはな……それ言い出したらかなり退学してるDクラスにうちは負けてるんだけどさ。

 

 

 

「平均点の掲示もされていますが今回の試験、合計点によって結果は決まります。」

 

 

確かに説明の時言っていた気がするがあの時は総合点だったような……まぁ言い方なんてどうでもいいか。

 

「よって、今回の勝負、AとCの対抗戦結果はCクラスの勝利。私達のクラスが負けですね。そしてBとDは、Dクラスの勝利となりました。結果、クラスポイントはこのようになりました。」

 

Aクラス……1772ポイント→1472ポイント

 

 

 

Cクラス……1119ポイント→1419ポイント

 

 

 

Bクラス……1269ポイント→969ポイント

 

 

Dクラス……819ポイント→1119ポイント

 

 

結局うちはまたDクラス行きである。というか別に龍園を責めるつもりは無いが龍園がリーダーになってから負け続き過ぎやしないか?まぁ綾小路が本気を出したタイミングと被ったせいだから龍園ガチでなんも悪くないけども。

 

それよりもやべぇのは旧Bクラスだ。木山がリーダーになってからメキメキと伸びている。このままではAクラスになる未来もそう遠くなさそうだ。

 

Aクラスは綿白神派の縮小は免れそうにもないな。それにしても……綿白神が弱いのか木山が強いのか、なんともわからんな。

 

 

「そして、赤点による退学者ですが……」

 

 

 

本題はこっちだ。Dクラスからどれだけ退学者が出たか。これだけが俺の楽しみなのだから。

 

 

「今年のペーパーシャッフル試験では、Dクラスからだけ退学者が出ました。まず田所君が古漢でカンニングをしたため、田所と南……南伯夫の方は問答無用で退学となります。

 

次に、ボーダーを超えられなかったため、伊集院、宮本ペアは退学となりました。よって退学者は系4名、いずれもDクラスからのみでました。今回の試験では退学者は1人出る事に-100クラスポイント引かれる計算ですので、退学者の処理もすると、クラスポイントはこのようになります。」

 

そう言って二枚目の紙を坂上先生が貼るが……そんな事なら始めからまとめて欲しかった。

 

Aクラス……1472ポイント

 

 

 

Bクラス……1419ポイント

 

 

 

Cクラス……969ポイント

 

 

Dクラス……1119ポイント→719ポイント

 

結局損をしたのはDクラスって訳だ。とはいえ俺たちはこれでCクラスに逆戻りなのだが。

 

「これでペーパーシャッフルの結果発表は終わりです。次の授業の準備をしてください。」

 

「ククク、おい、天野、アルベルト、石崎行くぞ!!Dクラスの所だ!」

 

十中八九煽りに行くつもりなのだろう。俺も煽る気はあるので着いていくことにしよう。地獄絵図になっているだろうしな。

 

Dクラスに行った結果予想通りの光景が待っていた。

 

「嘘だ……俺……俺が退学なんて……なんで。」

 

ブツブツ言いながら頭を抱えているのは宮本、伊集院が来なかったせいで退学だが、池とペアだった高円寺はスペックでゴリ押しで九死に一生を得ているだけに何も文句が言えないのが辛いところだ。

 

「巫山戯るなよ田所!お前!お前のせいで!なんで南が退学しなくちゃなんねぇんだよ!!」

 

そう言って田所の襟を掴むのは菊池。まぁこいつは被害者だろう。尤も俺からしたら加害者なのだが。

 

「坂柳……坂柳に嵌められたんだ俺は!」

 

坂柳に嵌められた以外の言葉を発せなくなっていたのは田所、まぁそうなんだが自業自得なのである。クラスからはゴミを見るような視線を向けられている。

 

櫛田の中学時代には売春、パパ活、教師と不倫、万引き、アイドルの握手会出禁、ストーカー、暴力事件、AVデビュー、暴走族、妊娠等色々あって学級崩壊をしたのでそれに比べればマシだろうがそれでも悲惨な光景である事に変わりはない。周りが暴れないのはクラスポイントを守るという大義名分のおかげか。

 

ちなみに伊集院だが最早魂の抜けた抜け殻、生きているかすら怪しい感じだった。彼ら4人は今日が最後の学校生活だろう。最後の1日ぐらい楽しく過ごして欲しいものだ。まぁ無理だろうけども。

 

勿論退学が決まった生徒だけが地獄という訳では無い。

 

現に今前園は避けられている。テスト中に大を漏らした彼女に待っているのは恐らくだがバレない所でのイジメだろう。クラスポイントを下げる訳にも行かない以上泣き寝入り以外の選択肢も無い。

 

現に軽井沢はなにかに怯えている。恐らくイジメだろう。表向きは取り繕えているだけ他よりマシか。

 

堀北は何かを考え込んでいるようだが……壊れちゃったのかもしれない。それならまた意識を戻して壊してを繰り返すだけだが。乾燥キクラゲの様に。

 

宥めている櫛田だが内心ニマニマしている事だろう。平田は……最早クラスメイトを切る事に躊躇が無いのか殺気で場を沈めている。

 

御門は田所に説教……?をしているようだ。もう退学確定なのに律儀な事だ。

 

いつも通り高円寺は手鏡で髪をセットしている。こいつは変わらねぇな。

 

王は復讐が成功したのかとても嬉しそうだった。綾小路はその光景を真顔で見つめ、佐藤と松下は櫛田の腰巾着をしている。三宅と長谷部は全てを見て呆れたような視線をしている。

 

そんな中場を冷静に収めようと頑張っている須藤の姿があったが、あいつの成長に一切の興味が沸かない。池や外村等下剤を盛られたが生き残った下位の奴らはペアに謝り倒していた。池なんか高円寺に土下座しているし……。

 

そんな中でも例外は篠原。彼女は堀北に謝る気は無いらしい。堀北が正気を失っているのは不幸中の幸いと言った所だろうか……。

 

総じて評するなら地獄絵図である。退学者4人が消えればある程度はマシになるだろうが、それでも過去のトラウマ等の弾丸はそれぞれ心に残るだろうし、漏らした前園は生き地獄が確定している。自主退学という選択もあるがクラスポイントが増えたことで皮肉にも退学すればクラスから後ろ指をさされてしまう。まぁ退学しなくてもさされるだろうが……。

 

綾小路……こっから逆転は……さすがにしないよな?まぁ契約もあるとはいえこの現状のクラスを立て直せるものなのだろうか。

 

「ククク、不良品共の在庫処分は地獄絵図だな。」

 

龍園が煽る……が、生徒は最早ほぼ誰も聞いていなかった。

 

「龍園……あまり褒められた発言では無いぞ。」

 

この声に反応した人物は2人しか居なかった。スルーした人間も一定数いるだろうが一先ず置いておこう。一人は茶柱、これ以上の地獄など作りたくないのだろう。何やら若干やつれた顔で言っているが……コイツは3年間のどっかでクビにしてやろうと思う。これに関しては綾小路とも手が組めそうだ。

 

「は!ふざけないで!あんたが下剤なんて仕込まなきゃ……こんな事になんなかったのよ!」

 

もうひとりは1番近くの席にいた篠原だ。こいつの頭は猿以下だろうな。

 

「いや、カンニングと欠席で退学らしいけど下剤とどう関係があるんだ、それは。」

 

今回龍園の作戦で退学したのは0である。前園を社会的に殺したのだって王だしな。龍園とかいう中国出身みたいな名前をしたヤンキーはガチの元中国人に撃破数で負けている事になる。まぁ内紛なのだが、敵の敵は味方とも言うし……味方でいいだろう。

 

「うるさい!あんたとは話してないの!」

 

篠原は怒りながら俺の胸倉を掴んでくるが……こいつは一切反省していないみたいだな。

 

「いや、俺もお前と話した覚えはない。ブスと話すと人生において得する事はひとつもないからな、今回もクラスの足、引っ張ったんだろ、そろそろ自主退学したらどうだ?」

 

茶柱は最早止める気力すら失ったのか死にそうな目線で綾小路を見ている。頼みの綱の綾小路はだるそうな顔をしていたのでこれを立て直すのだろう……頑張って欲しい所だ。

 

「ふざけないで!私はブスじゃない!ブスって言うな!Dクラスを裏切った卑怯者の雑魚のくせに!」

篠原はそう言って俺の胸倉を掴んで壁に押し当てる。あと一押しだな。

 

「悪い悪い……ブスどころかそもそも顔は豚だったな。頭は猿以下だけどな。体型も豚だな。豚足猿って所か?」

 

ちなみに大声で皆に聞こえるように言った龍園と違って、俺は煽っている声がバレないようにボリュームを落とし気味で言っているのだが、Dクラスの騒乱がうるさすぎて無意味なのかもしれない、まぁいいけどさ。

 

「巫山戯んな!このクズ!」

 

篠原はそう言って、空いていた扉のところから胸倉を掴み持っていく。無抵抗にしているとビンタを2発してそのまま廊下に投げ飛ばされた。その際俺はワザと大きく投げ飛ばされる。受け身も取らずに落ちたが……怪我はあんまり期待できなそうだった。

 

「何事ですか!」

 

廊下にいた坂上先生がこちらにやって来る。篠原も改めて終わりだな。

 

「ククク、聞いてくれよ坂上せんせぇ……この篠原がうちのクラスの天野の胸ぐらを掴んで壁に押し当て、3回ビンタして廊下に投げ飛ばしやがったんだ、それも暴言を吐きまくってな。」

 

龍園は茶化すように言う。茶柱は何やら死にそうな目をしていた。

 

「3回じゃなくて2回よ!それにそっちだって暴言は吐いたじゃない!だいたい天野は多額の金を持って逃げた裏切り者なんだから死ねばいいのよ!」

 

篠原の失言のオンパレードにクラス中から睨みが飛んで来る。篠原という最底辺により、退学が決まった生徒以外は団結を再びし直せたようだ……最早ここまで来ると綺麗なピエロだな、原作の山内より酷くないか?

 

それにしても最底辺のお陰で底辺達が団結とはまさに皮肉だな。ゴミにもプライドはあるって訳か。

 

「天野君の多額のポイントは賠償金によるものですし、特にDクラスにいた時に貴方がポイントを渡した経歴もありません。言い掛かりで暴言と暴力ですか……訴えられても文句は言えなさそうですね。」

 

「篠原……席に着け。授業を始めるぞ。」

 

ついに茶柱はぶっ壊れたのか授業を始めようとしている……いやそろそろ授業の時間だから正しいのか。

 

「ククク、俺達も戻るが……お前らは中々のクズの集まりだな。クハハ!!!」

 

龍園は高笑いしながら戻っていく。俺達もその後を追い授業を受ける。

 

ちなみにあの後篠原のせいでさらに30クラスポイントがDクラスからうちに来ることになり、

 

Cクラス……969ポイント→999ポイント

 

 

Dクラス……719ポイント→689ポイント

となった。ペーパーシャッフルで勝ったのはDクラスの筈なのになんとも悲惨な事である。

 

こうしてペーパーシャッフルは俺達の敗北で終わった……が、これは実質の勝利だろう。

 

だが対処すべき問題……スパイの存在も残っている。龍園も恐らくそれは理解しているだろう。龍園はどう対処するのか、そして綾小路はどう動くのか、分からない事は多いが頑張るしか無いだろう。

 

こうして……ペーパーシャッフルが終了した。




ペーパーシャッフル完結です。

優勢世代は

  • 本編にガッツリ出して欲しい
  • 天野兄の偉業を語る程度の登場でいい
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