ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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暴君の定義

前回のあらすじ!俺と綾小路の2人で35人の気絶した人達を起こしたよ!

 

「っく……」

 

「目が覚めたか」

 

「この問題が……これで終わったと思ってんのか、綾小路」

 

「終わりだ。まさか今から続きをやろうなんて言い出さないだろ?」

 

 

誰がどう見たって、今回の勝負に決着がついたのは明らかだ。

そりゃあ武道派クラスから35人出して負けたわけだからな。どうやっても勝てんだろうよ。それこそ戦車でも持ってこなきゃな。

 

 

「俺はどんな手段でも使う。勝つためならな。……ククク。」

 

 

そう言って、龍園はゆっくりと上半身を起こした。

 

 

「必要なら戦争だ…。」

 

「オレに殴られた、とでも言って訴えるか?」

 

「……クク。流石にそれはダセえな。だが、勝つためならそれも選択肢の一つだ。」

 

 勝つためならどれだけ無様でも何でもやるってか。

 

 

「一応、先に言っておくが、降りた先で元生徒会長が待ってる。詳細は知らなくても問題行動があったことはすぐにバレるぞ。

 

先に仕掛けたのが龍園であることは、屋上の監視カメラを潰した時間からも確実だ。オレはそれぞれ別の監視カメラがある施設にいたからアリバイも証明できる。尤も、少し細工をして天野もアリバイを作ったらしいがな。」

 

……ありゃりゃ…バレてたか。まぁいいや。

 

「……最初から部外者を目撃者にもできたのに、しなかったのか。そして天野はトイレと言って抜け出したあの短時間でアリバイを作った訳か……ククク、恐ろしいな。天野、お前はこの展開を読んでたのか?」

 

「まぁこうなるだろうとは思ってたけどな。」

 

原作主人公だからな。学年全部を制圧しかねない。こいつだけは。

 

「ククク…綾小路、お前はどうだ?」

 

「一度お前を叩いておかないと、攻撃を止めないだろうからな。」

 

「俺がこの敗北で納得するとでも?」

 

「少なくともオレはそう思ってる。お前の敗因はたった一つだ龍園。攻撃する順番を間違えた事だ。平田や一之瀬や坂柳たちと戦い、経験を積んでから木山や御門と戦って勝利をしていればもっとオレと近い位置で戦い合うこともできたはずだ。好奇心で動きすぎたな。」

 

「はっきり言いやがる……。」

 

「リベンジマッチはいつでも受け付けるといいたいところだが……オレは今後目立ったことをするつもりはない。Dクラスには不確定要素だが御門と高円寺も手を貸してくれてるからな、アイツらが機能すれば、お前が勝つのはまだ先になるだろうな。」

 

 

すぐに龍園から言葉が飛ぶと思っていたが、龍園は沈黙し考え込む。結局原作の流れはあれだけ頑張っても覆せなかった事になる。原作の修正力……とでも言えばいいのか?何はともあれ恐ろしい限りである。

 

 

 

「あえて目撃者に距離を取らせたことを深読みすれば、オレが今後もお前を執拗に狙えば、自分の正体とついでに軽井沢の過去を捨ててでも俺たちを追い込む算段、ってことか。」

 

「極力避けたいが、そうするしかないだろうな。」

 

「そして、俺だけじゃなくこの場にいた石崎や伊吹、アルベルト等、今回の件に関わったCクラスのほぼ全員も道連れか……軽くクラス崩壊だな。」

 

 まぁ、相当重たい処分になるのは避けられないだろうな。流石にクラス全員は無いと信じたいが……大丈夫か?

 

 

 

「つまり俺が存在し続ける限り、Dクラスは手負いのままってことか。」

 

「別にこっちに対して無茶しなければ、今回のことを道具に使うつもりはない。」

 

「そんな口約束を信じるほど俺は甘くねぇよ。もしもDクラスによってお前が窮地に追い込まれれば、今日のことを学校側に通告する。違うか?」

 

「かもな。」

 

 

絶対の約束にはならない。

 

それが分かっているからこそ、龍園は下手に動けないし、リーダーが動けなければCクラスはまともに機能しなくなる。俺はやりたい事を優先するので基本リーダーにはならないだろうからな。勿論仕切りたい時は仕切るけどさ。

 

 

 

「だがどうする? 怒った事実は取り消せないぞ龍園。」

 

「うるせえよ。お前との勝負は終わりだ。そして、俺自身の戦いもな。」

 

 

 

 龍園は伊吹たちを見渡すと、携帯を取り出し何かを入力した。

 

 そして、伊吹に携帯を投げ渡した。

 

 

 

「何よ……。」

 

 

それを受け取った伊吹は、龍園と綾小路を睨む。

 

 

 

「責任は全て俺が取る。その前に俺のポイントを全てお前に移行しろ。」

 

「は……? 龍園、あんた、何言ってんの……? 馬鹿なの?」

 

「そ、そうですよ龍園さん! ここでのことは口外しない訳ですし、責任なんか取る必要ないですよ!」

 

 

 今回の出来事は互いに公言できない。そう言う表向きの平等。だが実際はCクラスが圧倒的に優位であることに龍園は気付いた。それを帳消しにする方法はたった一つしかない。

 

 

「綾小路。この件は全て俺一人でやったことだ。退学になるのは俺だけで良いだろ。」

 

「随分と真面目なんだな。やったことに対する責任を取るなんて。」

 

 

 くだらねえと龍園は言葉を吐き捨て、同時に口の中に溜まった血も吐き出した。

 

 

「暴君が許されるのは、その権力が意味を成している間だけだ。ここまで負ければ、それに付き従う人間はいなくなる。」

 

 

 龍園のこれまでの態度や行動、こいつについて行けば勝てるのではないかというカリスマ性と暴力による支配によって生徒達はついて行った。

 

 他クラスを巻き込んでのX探しはそれだけ多くの波紋を生んでいった。

 

 ここまで強引な手法を取り敗れた自信に、その資格はないと悟ったのか。

 

 

 

「ふざけないでよ。何で私に託すわけ……」

 

「お前がオレを嫌っている。だからこそだ。残ってるプライベートポイントは全員で分け合え。俺が退学することで葛城と一之瀬は契約無効を突きつけてくるだろうが、あれの受取人は俺が退学した場合に備えて俺と天野のどちらかとなっている。アイツらには次回以降は天野に送るように言っておく。」

 

 

 

 無人島試験でA、Bクラスと交わした契約か。あの時点でそこまで読んでいた…という訳では無いだろうが多少慢心癖は治っていた訳だ。

 

 

「龍園さん、マジで言ってるんですかっ!?」

 

 

 石崎も立ち上がり、悲しそうな声でそう叫ぶ。おそらく石崎はただ一人心の底から龍園に着いていった生徒…だと思う。そんな気がする。

 

 

 

「うるせぇよ。叫ばなくても聞こえてる。」

 

 

 

 薄く笑う龍園。

 

 

 

「後はお前らでやれ。」

 

 

 

 本気で退学する決意を固めたのだろう、携帯に見向きもせず立ち上がる。

 

 

「じゃあな。お前ら、今まで悪かったな。」

 

 

 そう言い残し、屋上を去ろうとする龍園。

 

 その背中には伊吹の言葉や、石崎の言葉も届かない。

 

大半のCクラスのメンバーはこの状況に口出しが出来ないのか、何が起こってるのか理解出来ないのか、硬直していた。時任に至っては意識が飛んでいた。誰だよ起こすの忘れたやつ。

 

 

「良いのか? 本当に学校を辞めて。後悔することになると思うけどな。」

 

 

龍園を綾小路が呼び止めた。

 

 

 

「何でテメェがそんなことを気にすんだよ。」

 

「ここで負けたことの意味すら知ることなくここから去れば、お前の成長はそこで終わる。」

 

「あ?」

 

「何でオレに負けたのか、それを知らないままで良いのか? 他のクラスはに負けっぱなしで本当に良いのか?」

 

「……抜かせ。そもそも俺を助ける意味がどこにある?軽井沢のこと…はたいした価値はねぇかもしれねぇが、お前の存在を知ってる俺を残しても得はないだろ。いつこのことをバラすかも分からない。」

 

「そうだな……しいて理由を探すなら、お前が木山や坂柳、綿白神を潰してくれれば、Cクラスはもっと楽できる。それに葛城と交わした契約が残るのなら、A、Bクラスは少しずつダメージを受ける。何よりいきなり退学すれば、坂柳や綿白神、木山は、龍園がXにやられたと思うだろう。そうなれば後々面倒なんだ。」

 

龍園の表情も驚いているが、ケータイ端末を操作している伊吹の表情はもっと驚いていた。一体何を見つけたのやら。

 

 

 

「……龍園。幸いオレは人目のつく箇所はどこも怪我していない。軽井沢だって、水をかけられただけだ。それに幸か不幸か天野は殴られているしな。誰がどう見ても、内輪揉めしたようにしか見えないんじゃないか?」

 

「だったら筋書きはこうだ。働きの悪いお前らに制裁を加えようとしたが、逆に返り討ちにあい、俺は一線から退くことを決めた。そういうことにしておけ。」

 

 

 それなら綾小路にも俺にも迷惑はかからないってことか。

 

 

「あんた……そんなんでいいわけ?」

 

「ここにいるほぼ全員が綾小路に負けたんだ。今更見栄も何もねぇよ。それに俺一人消える方がダメージが少ないしな。」

 

「一つだけ追加で言わせてもらうが、オレは今回の件を誰かに言いふらすつもりはない。下で待機している元生徒会長にも、ここでのことは全て他言無用ってことで落ち着いている。つまり退学に値するようなことは何もなかったってことだ。その上で退学するなら止めはしないが……」

 

「だったら止めるな。俺は人を簡単に信じたりしない。」

 

「龍園、お前が居なくなると俺が困るんだわ。」

 

これは事実である。俺の復讐の隠れ蓑が消えるのは困る。

 

 「今後のことは天野が率いるだろ。綾小路が動かなければ可能性はかなりある。」

 

「待て、俺はリーダーをするつもりは無いぞ。勿論お前を返り討ちにした役もごめんだ。」

 

「……ならば石崎辺りにやられた事にしておけ、お前は知らぬ存ぜぬを突き通せばイメージは変わらねぇだろうよ。」

 

それならば俺にも迷惑はかからないという事か。

 

「え?天野さんも龍園さんも嘘ですよね!嘘って言ってください!」

 

「次のリーダーは石崎、お前だな。」

 

「まぁ俺には関係の無い事だ。それじゃあな。」

 

そう龍園は言い残し、屋上から姿を消した。

 

 残された石崎はもちろん、伊吹も龍園の行動に納得がいっていない様子だった。

 

俺達もそのちょっと後に屋上から姿を消した。後ろから石崎の魂の叫びが聞こえてきた気がした。

 

 

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早朝8時、寮を出て学校を目指すために外へと足を踏み出した。

 

冬休み初日だが、学校は部活の為に問題なく開放はされている。

 

校内に足を踏み入れるときは制服が原則なので、一応制服に着替えた。

 

 

 

「……っくしゅん。」

 

 

 

学校へと続く並木道の途中、一人の生徒が寒そうに体を震わせていた。

 

無視して歩みを進めていたが、横を通り過ぎるところで声をかけてきやがった。

 

 

 

「やっと来た。」

 

 

 

そんな声を聞き流して過ぎ去っていく。

 

 

 

「ちょっと待ちなさいよ。」

 

 

 

慌てて追いかけてくると、すぐに俺の肩を掴んできた。

 

 

 

「あ?何やってんだお前。気安く触ってんじゃねえよ。」

 

「私だって触りたかない。携帯押し付けてきたでしょ。それを返したかっただけ。」

 

 

 

そう言って、鼻を赤くした伊吹は携帯を俺につき返してきた。

 

 

 

「適当にしときゃいいのによ。いつから待ってやがった。」

 

「さあ……?」

 

 

 

覚えてないフリってことは、それなりに長い間だろう。

 

どうしてこう無駄なところで、コイツは細かいんだ。

 

受け取らず伊吹の横を抜けようとすると、今度は腕を掴まれる。

 

 

 

「あんた本当に辞めるわけ?」

 

「携帯を返すだけじゃなかったのか?」

 

 

 

短く答えると、伊吹は怒ったように睨みつけてきた。

 

 

 

「入学当初、石崎やアルベルト達と揉めた時あんた言ったよね?何度負けても最後に勝ってた奴が一番強いって。事実あんたは、アルベルト達に対してもそうだった。」

 

「だからなんだ。」

 

「綾小路に一度負けたからって、それで終わりにさせるわけ?」

 

「こっちの読み合いで先の手を封じたのさ。それに、もうどうでもよくなったんだよ。」

 

「なにそれ。すげーダサいんだけど。」

 

 

 

もうどうでもいい。

 

そう思わせたって意味では、本当に大したヤツだぜ綾小路は。

 

 

 

「かもな……。」

 

 

 

伊吹の問いかけに対しても、俺はあっけらかんと返した。

 

だが、伊吹は俺の肩を掴む腕を離さない。

 

 

「俺に辞めてほしかったんだろ。だったら丁度良いだろ。」

 

「Aクラスに引き上げるって話があったから、私は協力した。なのにこのザマ?」

 

 

日頃、適度のガス抜きしてるつもりだったが、伊吹の奴はすぐ溜まりやがる。

 

まだまだ言い足りないことがあるようで、言葉が止むことはなかった

 

 

「これまでのあんたの態度も、行動も、全部見逃してきた。最終目標だけは一緒だったから我慢してついてきた。

 

それでも周囲から不満が出なかったのは、最後にはAクラスに上がれると信じてたから。なのにあんたがここで退学?ダサすぎ!」

 

 

 

そして一呼吸置き、もう一つ付け加えた。

 

 

 

「こんな情けない話がある?」

 

「いつまでも都合のいい解釈してんじゃねぇよ伊吹」。

 

 

 

俺は一度足を止めた。

 

全身痛ぇんだから、余計なことをさせてほしくないもんだ。

 

 

 

「確かに俺はお前ら雑魚共に言った。ついてくれば楽にAクラスに引き上げてやるってな。暴力で支配して恐怖を植え付けながら飴を与えただけなんだよ。俺が交わしたBクラスとの契約は知ってるだろ。あれをお前らに還元するつもりは全くなかった。」

 

「一人でAクラスに上がるつもりだったってこと?」

 

「最後にはそうするつもりだった。俺がクラスメイトの面倒を本気で見るわけないだろ。」

 

 

 

こう言えば伊吹も納得せざるを得ない。

 

 

 

「もういいだろ。じゃあな…。」

 

「……8億ポイント。」

 

「……あ?」

 

「昨日携帯を渡された後、マジで一瞬ポイントを移すべきか悩んだ。それで、どうせならと思って色々携帯の中を見させてもらった」

 

 

俺の携帯を起動し、画面を向けてくる。

 

それは俺が立てていた3年間の作戦とポイントの推移だ。

 

 

「一人が勝ち上がるだけだったら、2000万ポイントだけで良い。なのにどうしてこんな計画立ててたわけ?8億ってDクラス全員がAクラスに行くために必要なポイントでしょ。まぁ、とても貯まる額とは思えないけど。」

 

「夢見てんなよ。ただの遊びで書いたメモだ。」

 

 

 

携帯を伊吹から強引に奪い取る。

 

 

 

「今後の事は天野に協力を求めれば可能性はある。頑張るんだな。」

 

「そういうこと言ってんじゃない。」

 

 

 

チッ、伊吹の奴……プライベートポイントは全く動かしてねぇ。

 

完全な死に金じゃねぇか。

 

面倒くせぇ。

 

 

 

「さっきから何を言わせたい。」

 

「もし辞めるって言うなら、私と勝負しろ。」

 

 

 

また突拍子もないことを提案してきやがって。

 

馬鹿は扱いやすいが、時々こうやって変に暴走しやがる。

 

 

 

「昨日やられた傷に加えて、寒さでまともに身体も動いてないだろ。」

 

 

 

袖を掴む腕にも、ろくに力が入っていないことはすぐに分かった。

 

強引に歩き出しその袖を掴む手を払うと、次の瞬間俺は殴り飛ばされていた。

 

石畳に身体を打ち付ける。

 

 

 

「……ってぇな。ろくに受け身も取れやしねえ。」

 

 

 

綾小路の野郎、徹底的に身体を壊していきやがって。

 

 

 

「あー……これでスッキリした。辞めるならさっさと辞めろ。」

 

 

 

伊吹は寮に向け歩き出す。

 

一体何時間、ここで待っていやがったんだか。

 

 

 

「酷いやられざまだな。龍園。」

 

 

 

伊吹にやられた俺の前に次は天野が現れやがった。コイツはコイツで何をしに来たんだか。

 

「何の用だ?」

 

「伊吹が回収しなかった死に金の回収だな。龍園、本当に辞めるつもりなのか?」

 

何故こいつまで俺を止めて来るんだ。相変わらず考えている事がよく分からねぇやつだ。

 

「死に金は持ってけ。……悪いが俺はもうどうでも良くなったんだよ。」

 

あーくそめんどくせぇ…どうしてどいつもこいつも俺を止める。メリットなんか無いはずだがな。

 

「……そうか、まぁ恐らくお前が辞めることは無いだろうがな。それじゃあな。」

 

天野は死に金だけを持ってそのまま帰路に着いた。まるで俺が退学しない事を確信しているかの様子だった。

 

「坂上。話がある。用件は昨日伝えたよな?」

 

 

学校に一人やって来た俺は担任教師の下を尋ねた。

 

事前に寮の固定電話から、この時間を指定しておいた。

 

あえて一日置いたのは、騒動直後の退学は何かと面倒を残すからだ。

 

監視カメラへの細工も踏まえれば問題になりやすい。

 

元生徒会長がこの事態を知っているなら、尚のこと。

 

それを切り離す狙いだ。

 

 

 

「分かっている。ここでの立ち話は避けたい。進路相談室まで付き合ってもらおうか。」

 

「ああ。」

 

「だがその前に一つ問題がある。」

 

「問題だと?」

 

「ちょっと来てくれ。」

 

 

 

そう言って坂上は職員室の中に声をかけ、生徒を呼び出した。

 

程なくして姿を見せる2人。

 

 

 

「龍園さん……」

 

「あ?」

 

 

 

石崎にアルベルトだ。

 

何で伊吹のバカに続いて、この2人までここにいる。

 

 

 

「お前が訪ねて来ていないかと朝からずっと待ち続けていた。直接連絡しろといっても聞かなくて困っていたところだ。まずはこの二人をどうにかしなさい。」

 

「何やってんだお前ら、さっさと失せろ殺すぞ。」

 

「俺たち……俺たち……」

 

 

余計なことを言おうとする石崎達を一睨みし遠ざける。そして回し蹴りを当てる。

 

 

「うっ……」

 

 

そんな俺の暴行と恫喝を聞いていた坂上は眼鏡を触りながら言った。

 

「今のはペナルティになるぞ!龍園。」

 

「うるせぇ……もうどうせ変わらねぇよ。」

 

「昨日の監視カメラが壊されていた件。石崎達も関係があるのか?」

 

「これは俺個人がやったことだ。さっさと行くぞ。」

 

 

ここでの不用意な接触は、こいつら自身の首を絞めることになるだけだ。

 

振り払い、坂上を無視して俺は進路指導室に歩き出す。

 

坂上は石崎達を怪しみながらも、帰るよう促し俺についてきた。

 

 

「お前から電話で説明を受け理解しているつもりだが、一つずつ解決させよう龍園。まず監視カメラをスプレーで汚損した件は認めるな?」

 

「ああ。俺が一人でやったことだ。」

 

「そしてもう一つ。石崎とアルベルト、伊吹等を筆頭にCクラスの面々と揉めた事実は?」

 

「認める。全部俺の責任だ。一方的に殴ろうとしたのさ。結果返り討ちにあったがな。」

 

 

 

こんな負け戦に、こいつらを絡める必要はない。

 

 

 

「理解しているのなら話は早い。」

 

「待ってくださいよ龍園さん!俺たちだって無関係じゃ……」

 

 

 

帰らず迫ってくる石崎に対して、俺はさらにもう1発真正面から蹴りを叩きこんだ。

 

今更一度や二度暴力を加えたところで、退学する人間には関係のないことだ。

 

 

 

「何をしている龍園!」

 

「何度言わせるつもりだ。昨日俺から殴られただけじゃ飽き足りないってのか?」

 

 

 

苦しそうに蹲る石崎から視線を外す。

 

 

 

「今のも俺のペナルティに加えとけ。」

 

「……どんな事情にせよ次に問題を起こせばお前だけでは済まないぞ。」

 

「うるせぇよ。どうせこれで終わりだ。」

 

 

 

進路相談室に通された俺は、すぐに本題を切り出した。

 

 

 

「さっさとしろよ坂上。退学処理を進めてくれ。」

 

「どうやら勘違いしているようだから訂正しておく。」

 

 

 

坂上はゆっくりと口を動かす。

 

 

 

「お前の発言には矛盾が確認された。」

 

「あ?ちょっと待て。矛盾だと?」

 

「こちらが把握している限りでは、Dクラスとの間に問題があったようだが?」

 

 

 

まさか綾小路が最後の最後でやってくれたな?

 

俺の提案を無視して軽井沢の件を含め学校に報告したとすれば、俺だけじゃなく伊吹や石崎の他Cクラスの面々も相当な罰を受ける。

 

プライベートポイントを失うだけじゃ終わらないだろう。

 

 

 

「俺たちに対して訴えでも起こしたかよ。」

 

「訴え?こちらが聞いた話では、監視カメラの破損にはお前だけじゃなくCクラスの生徒の一人も関わった、と聞かされている。」

 

「なんだと……?」

 

 

 

一瞬言葉の意味が理解できず、混乱する。

 

 

 

「Cクラス側にはすでに修理費としてプライベートポイントを払ってもらっている。私が確認したかったのは、過失の割合が均等で良かったのかどうか、その部分だ。」

 

「ふざけたことを……」

 

 

 

そんなことをして、俺が辞めないと思ったら大間違いだぜ綾小路。そしておそらく天野も噛んでやがるな?

 

 

 

「俺は退学する。」

 

「……何の問題もない。にもかかわらずか?」

 

 

 

昨日屋上で面倒なことが起こったことぐらい、状況から察しているはずだ。

 

 

 

「そうだ。この学校に残る意味を見出せなくなったんだよ。」

 

 

 

生徒個人の主張を尊重しない訳にはいかない。

 

 

 

「そうか。お前の意志が固いようなら、止められることではないな。」

 

 

 

そう言って坂上は、引き出しから紙を取り出した。

 

 

 

「ここに名前、学籍番号、退学理由を書くように。」

 

「少し待ってろ。」

 

 

 

ペンを手に取ったところで、坂上はもう二枚紙を取り出した。

 

 

 

「お前の退学処理が済んだ後で、この二枚を石崎と山田にも届けよう。」

 

「……なんだと?あいつらは無関係だろうが。」

 

「確かに無関係だ。だが、2人はそれを望まなかった。もしも龍園が退学を選んだ時には自分たちも辞めると口にして聞かなかったからな。」

 

 

 

綾小路と天野の奴め……あの馬鹿どもに入れ知恵しやがったな?

 

石崎とアルベルトを人質にすることで俺の退学を阻止しに来やがった。

 

俺がここで辞める選択を取れば共倒れ、退学することの意味がなくなる。本末転倒だ。

 

 

 

「クソが……」

 

「私としてもクラスから退学者を出すのは惜しい。そう思っている。」

 

 

 

坂上は俺の手元にある退学届けに視線を落とした。

 

 

 

「今ならただの器物破損だけで決着がつく。最初で最後のチャンスだろう。」

 

「天野はともかくとして…俺を残すことに何のメリットがあるんだかな。」

 

 

 

これ以上、坂柳たちとひと悶着を起こす気がないことくらいわかっているだろうに。

 

 

 

「退学は止めだ。」

 

 

 

紙とペンを突き返し、俺は席を立った。

 

 

 

 

 

程なくして、1年生の間には妙な噂が立つことになる。

 

龍園翔はDクラスリーダーであることを放棄したらしい、と。

 

石崎達と連れ歩くこともやめ、誰に対しても発言することも無くなった。

 

一人孤独な時間を繰り返す龍園。

 

これから先何かを見つける日が来るのだろうか。

 

オレには分からない。

 

ただ確かなことは……あいつとオレは似ている、ということ。

 

 

 

そして、まだ利用価値がある、ということだ。

 

 

優勢世代は

  • 本編にガッツリ出して欲しい
  • 天野兄の偉業を語る程度の登場でいい
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