「間もなく目的地に到着します。その後は屋内で再度説明とグループの作成に取り掛かってもらう事になります。詳しい日程については着いてからお知らせしますのでそちらで確かめてください。」
三上先生のアナウンスを目覚まし替わりに俺は揺れの酷いバスの中で目を覚ました。俺の隣では龍園が爆睡している。ちなみになんで俺の隣が龍園かと言うとお察しのとおりみんな嫌がったからだ。
「石崎、耳にこれ付けとけ、場合によっちゃ指示出すからよ。」
そう言って俺は黒色の目立たないタイプの無線機のようなのを渡す。こちらは聞くことしか出来ないが石崎にはそれで十分だろう。グループ決めで俺が表に立たずに場を動かせる用意はしておきたいしな。
「了解です天野さん。」
「それとあっちに着いたら俺と龍園は呼び捨てにして下っ端みたいに使え、いいな?」
「えぇと……はい。わかりました。」
石崎は少し脅えた表情にも見えるが……まぁ金田が上手い事フォローするか。
「バス内の事前説明で、各自、試験の内容は理解できていると判断させてもらう。よって、この場で改めての説明は行わない。ではこれより、小グループを作るための場、時間を設けさせて貰う。
各学年、話し合いの元6つの小グループを作るように、全小グループを作成の後、大グループを作成する。補足として、大小問わず大グループの取り決めに学校側は一切の関与をしないものとする。」
何故か未だに職の残っている松志田先生のアナウンスが終わって、各クラスが動く。ちなみに女子と男子ではそもそものグループ決めの場所から違うのでなにがおきているかは分からない。まさか1年内で橘先輩みたいになるやつは居ないだろうが。
とは言え今回の試験、圧倒的に人数の少ないDクラスは振れ幅が低いのが事実だろう。そして始まり数十秒が経ち、Aクラスがかたまりだした。それを見た俺たち3クラスは何事かとそちらを見る。三輪は……今回の試験は動く訳では無いらしい。今回の試験の指揮権は坂柳派にあるのだろう。
「みなさん!……僕たちAクラスは、見ての通りこのメンバーで1つのグループを構成するつもりです。この通り現在のグループ人数は13名で、あと1名が参加していただければ必要な人数が揃います。それでは参加してくださる方を募集します!!」
Aクラスの葛城でも、橋本でも、三輪でも無い優秀そうなモブが呼びかける。確かこいつの名前は的場だったか……原作に居たっけかこいつ。
「そんなの卑怯だぞ!Aクラス!」
それを聞いた池から非難の声が上がる。コイツの場合は内容の理解すら怪しい気がするが……
「卑怯と言うほど卑怯でしょうか?こちらの提案では1グループを構成する人間が、最大で2クラスまでにしかなりません。1位を取った時の倍率も低い。Aクラスにだけメリットのある強欲な提案だとは思いません。」
強欲な提案では無いと言うが人数自体は最大で取るつもりらしいので報酬は+にせよ-にせよ2倍される。尤も、Aクラス13人で構成された所に一人雑魚が入ったところで最下位になる事は無いだろう。恐らく4位以内は先ず間違えない。報酬の+分は貰えるはずだ。
「い、いやでも、13人ってのはずるいだろ?」
幸村が続く。コイツはこの学校の初期からどんどん学力は上がってもIQを代わりに失っている気がする。完全に発言の枠が本来なら6バカのポジションなんだよそれは……。
「そんなことはありませんよ。むしろ、平等です。残り3クラスで14人の枠を3つ使えるんですから、僕たちと同じように各クラスで似たようなグループを作ればいいじゃないですか。
……いや申し訳ありません。Dクラスは14人のグループを作れるほど人数は居ませんでした。煽っている訳では無いです。ごめんなさい。」
いや確実に煽ってるだろ。失念していたんだとしたらそれはそれで大問題なのだが……自らDクラスを敵に回す発言をするとかコイツは馬鹿なのか?
「そう、なのか?」
池が平田に確認の視線を送る。まぁ気持ちは理解できるが……。
「そういうことになるね。僕には煽っているように聞こえたけどね。」
平田がサラッと言葉のカウンターを入れる。的場は完全に1ミスしたな。少なくともDクラスからは承認されなさそうだ。
「分かって頂けたなら話は早そうですね。ちなみにAクラスで残った5人は、あなたがたのどのグループに、どんな配置でも喜んで参加する方針です。メンバーも好きに選んでいただいて構いません。」
的場の言う事を不満に思うものも多いだろうがどうせ誰かしらが乗る事になるだろう。早めにあの枠は取ってしまった方がいいな。
『石崎、種子島をあの枠に行かせろ。』
俺はバレないように石崎にインカムで指示を出す。一部の人間は気付いてるかもしれないがまぁ大衆に俺ではなく石崎や金田がリーダーだと思わせられればそれでいい。少なくとも遠目じゃ分かりずらいだろうし、俺もマスクを着用しているからバレないだろう。最近話題のウレタン製の黒マスクである。
「おい種子島!その枠に行け!」
石崎が乱雑そうに指示をする。その様子を見た他クラスは龍園では無い事に戸惑ってはいるものの、聞ける雰囲気でも無いので遠目で疑問の視線を送っている形だ。まぁ真相に気づける人間は居ないだろう。
「……わかりました。お願いします。Aクラスの皆さん。」
特に他クラスからも反対の声は上がらなさそうだ。罠の可能性もあるのにむざむざと飛び込む奴も居ないだろうしな。
「ありがとうございます2人とも、今回この試験でAクラスが道連れにするような事にはしないと約束します。また、Aクラスの中から5人選んでいただいて、そのメンバーが確定し次第僕達はグループを宣言しに行きたいと思います。」
あくまでも巻き込みはしない、Aクラスは後手に回るという宣言。尤も種子島程度とAクラスの一員が刺し違いでもなったり、種子島1人の犠牲で300クラスポイントと2000万プライベートポイントが犠牲になるような事があればそれは間違えなく棚ぼたの儲けなのだが。
俺もここら辺でいっちょ動くか。恐らくこの試験をやったらうちのクラスでは龍園が押付けあいになるだろう。それに高円寺とかいう不安要素は万が一にも欲しくないしな。
「それならば俺が責任者をやるグループを一つ作ろうと思う。来たい人は来てくれるか。とはいえ、うちのクラスからのメンバーは龍園とアルベルトだ。
勿論道連れにしない事は約束するがある程度勝てるメンバーで組みたいとは思っている。もちろん万が一にも俺が退学になる事は無いと思ってくれていいが……。道連れの権利も使わないと約束しよう。」
ぶっちゃけ三輪辺りなら道連れで消すのはありだが……まぁそもそもそんな優秀な人間が集まれば悪い成績を取ることは無いだろう。
しかしやはり龍園が問題なのか、人の集まりが悪い。Aクラスからの人間で最悪埋め合わせる事にするが、それを差し引いてもDクラスから三宅と綾小路が来てくれたぐらいだ。他には誰一人動こうとしてくれない。
「今回の試験、自分はAクラスが守りに入った以上チャンスだと思っています。ここは余りのAクラスに加えて自分たち3クラスで出来る限りメンバーを組むべきだと思います。」
金田の発言は恐らく誰もが思っている事だろう。しかしそれを良しとしない男がいた。
「その気持ちは分かる。でも僕としてはDクラスはDクラスのメンバーである程度固めたいと思っている。その上でBクラスとCクラスのメンバーを少しづつ招き入れる形にしたい。」
平田の発言にばがどよめく。平田としては出来る限り皆を守りたいのだろうか…?それとも綾小路の指示なのか?いや、綾小路がもう上のクラスを目指す理由も無いはずだが……全く魂胆が見えてこないな。
「平田、お前の意見を通すというのならば当然俺たちやCクラスも同じ方法を執ることになる。その場合一部のDクラスの生徒はこちらに貸してもらえる。ということで良いのか?」
「場合によっては仕方ないと思う……けど出来ればそうであって欲しくはないかな。」
どうも平田は綾小路のサポートが消えて弱体化してる気がしないでもない。綾小路は荒療治をした可能性があるな。やっぱ裏には綾小路が居たのだろう。
「フン、Dクラスは愚策を取るようだな。ならば仕方ない。俺と神崎、柴田に葉山は天野のグループに入る。幸いにも4クラス合同が作れそうなのはあのグループだけだしな。」
俺としても反対するつもりは無い。元より木山の見極めはしたかったしな。他のメンバーも葉山……は分からないが間違えなく優秀な人間の集まりだろう。1位も取れそうだな。とは言えBクラスの方が人数が多く有利なように見える。まぁ優待者も差し引けば問題は無いか。
「僕達は………方針を変えるつもりは無い。とは言え4クラスリスクがでかいこともわかっているつもりだよ。だから天野君のグループとAクラスのグループ以外は3クラスでグループを組むことを提案したい。」
よく言えばハイブリッド、悪く言えば中途半端な提案だろう。日本人としてはあるあるのやり口らしい。とは言えここで突っぱねれば平田は自分達のクラスの余った10人で固めたグループに誰かしらが来るのを待つ形を帰ることは無いだろう。ここら辺が折れどころか。
『石崎、賛成しろ。』
「俺は、いや、俺たちCクラスは賛成するぜ!」
石崎に賛成させた一番の理由はDクラスのアベレージは間違えなく低い事にある。Dクラスの面々…平田も含めて勘違いしているが決してアベレージがあがった訳では無い。綾小路のお陰でそう見えていただけだ。
そして今回そのまま綾小路が動くことは無い。CとB、ついでにAクラスからも人を送り込めばかなりのマイナスが見込めたはずだろう。だが残念ながら平田に4クラスをリスクを取るつもりはサラサラ無さそうなのでここらで妥協するべきだろう。
「自分としては……Dクラスの方針を動かす事は無理でしょうが、せめてBクラスとは人数をある程度合わせるべきかと思います。幸いにも天野氏と的場氏のグループを除き、余っているBクラスとCクラスの人数は同じな訳ですし。」
金田の意見には俺も賛成だ。CクラスもまたアベレージではBクラスに負けている。ここは差を離されないようにしたいのだろう。
「……認めなければBクラスを排斥してグループを作りかねないというわけか。分かった、それぐらいの妥協はしよう。」
木山としても受け入れるらしい。これは意外だ。どうにも最近の木山の動きは上を目指しているようには到底感じられないが…わからんな。
「それでは自分と木山氏、平田氏でグループを煮詰めていきましょう。」
そうして金田、平田、木山が何処かへ行き、そのまま話し合いをする。俺としては石崎に言ってもらいたかったのだが目立たない事が最優先だろう。
結局そのまま煮詰めていき6つの男子グループが決定した。
1つ目は葛城が責任者をするAクラス13人Cクラス1人のグループ。葛城グループとでも呼ぼうか。
そして2つ目は俺が責任者をする天野グループ。メンバーは
Aクラス 鬼頭 隼、橋本 正義 、司城 大河
Bクラス 神崎 隆二、木山 誠、柴田 颯、葉山 勇人
Cクラス 天野 聖 、山田 アルベルト、龍園 翔
Dクラス 綾小路 清隆 、 三宅 明人
という感じだ。
3つ目は平田が責任者のDクラス寄せ集め連合。B、Cクラスから2人ずつ、後は平田も含めて8人のDクラスの奴らがいる。池、外村なんかもいるので間違えなく最下位だろう。Cクラスからも戦力外の吉田と野村を送ったしな。
4つ目は高円寺がDクラスから単身ぶち込まれた石崎のグループ、内訳としてはBクラス6人、Cクラス6人、そしてDクラスからは高円寺1人だ。
5つ目はパッとしないABC連合軍。濱口が責任者らしいのだが、Aクラス2人、Bクラス4人、Cクラス4人という面白みにかけたグループだ。
6つ目はチーム没個性。モブの大船団である。唯一面白いところがあるとすれば裏切りまくった幸村の信頼度が0のせいでDクラスから見放された事ぐらいだ。責任者はうちのクラスの近藤がやっているらしいが特に興味はない。Bクラス5人、Cクラス5人、Dクラスは幸村1人と人数も少ない。とは言え幸村は筆記試験では有能だろうしまぁ最下位にはならんだろう。
女子の方も何処かしらで情報を仕入れる必要があるな。
俺は小グループ決定のお知らせを聞くと共にそんな事を思うのだった。
優勢世代は
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本編にガッツリ出して欲しい
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天野兄の偉業を語る程度の登場でいい