ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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絶望は突然に

翌日、全てのクラスで全員投票の結果が出揃ったので、結果発表は今日となった。とは言え退学が決定した吉田は学校を休んでいる。喚き散らす、なんて事はまず無いと見ていいだろう。

 

「お前たち、席につけ。クラス内投票の結果発表をする。」

 

扉をガラガラと開けて三上先生が入ってくる。手には大きな紙を持っている。顔には特に表情は感じられない。退学者が出たところでなんのその、と言わんばかりだ。

 

「まずは最下位から発表するが……お前らも予想しての通り、最下位はマイナス38票で吉田攻節、お前だ。とは言え今日は休んでいるようだがな……吉田は今日を持って退学とする。退学に関する一連の所作は放課後寮に行き俺が連絡しておく。」

 

この結果に何人かは胸を撫で下ろしているようだが、大半の生徒には分かりきった事だろう。

 

「それでは次に上位3名を発表する。第3位は……プラス16票で椎名ひよりだ。」

 

ひよりか……まぁ実際そこまでの驚きはない。恐らくクラス内で入れた感じだろうが。

 

「それで第2位は…プラス29票で金田悟だ。」

 

彼もまたこのクラスに貢献してきた事は明白、龍園亡き後クラスを指揮している頭脳担当の1人だ。石崎が居ないのはマイナス10票がでかかったのだろう。

 

「そして栄えある第1位は……プラス88票で天野 聖だ。天野には3000万プライベートポイントが支給される。」

 

Cクラスが吉田以外全員入れたと仮定すると、Aクラスとの取引で得た38票+Cクラスのほぼ全員の称賛票38票+一之瀬グループの称賛票6票+櫛田たちの称賛票+6って所だろう。まぁ大体は予想通りの結果だな。

 

「皆のお陰で称賛票1位をとる事が出来た。皆、ありがとう。礼を言わせてくれ。」

 

クラス中からパチパチパチと拍手が起こる。これで俺はCクラス1位による3000万プライベートポイント+Aクラスとの取引で得た1000万プライベートポイントで合わせて4000万プライベートポイントが手持ちで増える事になる。

 

これにより元々1億2000万プライベートポイントあったのがざっと1億6000万プライベートポイントまで復活した。今までに稼いだ額を合わせてみるとだいたい3億2000万程、頭おかしいんじゃねぇの、これ。無人島試験での報酬も考えるとかなり額としてはおかしいのは間違えないだろう。

 

「そして他クラスはこのようになっている。」

 

そう言いながら三上先生は紙を貼りだす。

 

各クラス投票1位

 

Aクラス 神室真澄 41票

 

Bクラス 白波千尋 28票

 

Cクラス 天野 聖 88票

 

Dクラス 平田洋介 46票

 

どうやら学年トップは俺らしい。一之瀬の株が大暴落したお陰だろうが……あんまり素直に喜べないな。まぁ今回の試験で退学は有り得ないだろうけども。

 

「また、他クラスの最下位と、退学に対しての救済の有無はこちらの赤い紙の方だ。」

 

毎回思っているが悪い結果の時は赤い紙が多い気がする…気の所為か?

 

各クラス投票最下位

 

Aクラス 元土肥 千佳子 ▶救済

 

Bクラス 小橋 夢▶救済

 

Cクラス 吉田 攻節

 

Dクラス 菊池 救

 

ん?Dクラスって篠原じゃないのか?まるでどっかしらの集団がが篠原に票を入れまくったとしか考えられないんだが……それをやったのは木山派閥…なのか?よーけわからん奴らだな。

 

「よってクラスポイントはこのようになる。」

 

そうして三上先生はまた別の紙を貼る。もう全部纏めてくれねぇかな。いちいち小出しにするメリットも特に無いだろうよ。

 

Aクラス1981ポイント▶1681ポイント

 

 

Bクラス1804ポイント▶1504ポイント

 

 

Cクラス1566ポイント▶1566ポイント

 

 

Dクラス234ポイント▶234ポイント

 

「よって君達はBクラスに昇格した。おめでとう。」

 

そのアナウンスにクラス中が大喜びする。それにしてもBクラス…いやもうCクラスか、それとDクラスのポイントの差はついに1200を超えたようだ。茶柱は今頃頭を抱えている事だろう。ざまぁ見やがれ。

 

それにしてもうちのクラス以外は皆結局クラスポイントとプライベートポイントを失った結果となったな。その代わりうちはクラスメイトを失ってるが、裏切り者だし仲間では無いのでいいだろう。

 

それにしても…Aクラスは俺が、Bクラスは南雲がプライベートポイントを出したんだろうが、Dクラスは…なぜ救済されているのか…分からんな。千秋か桔梗にでも聞いてみるか。上の退学者一覧でDクラスの横に"▶救済"の表記がない

 

「それでは本日の午後のSTを終了とする。もう帰っても構わない。」

 

三上先生が教室を出るタイミングと時を同じくして、俺は自分の教室を出てDクラスへと向かおうとすると……松下と出会った。丁度いい所に来たなコイツ。

 

「松下、Dクラスは何があったのか教えてくれよ。」

 

「分かった。と言ってもわかってない事もあるけどね。」

 

そして松下はDクラスであった事を話し始めた。

 

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試験発表の直後、Dクラスは未だかつて無い程に荒れていた。まぁ無理もないけど。特にうるさかったのは篠原さんだ。間違えなく退学候補の筆頭なのだから無理もないだろう。

 

「皆、少し聞いてくれ、今回の試験はそのまま皆の思うままに投票させる訳には行かない。クラスに禍根を残しかねない。コントロールするべきだと思う。」

 

平田君が教壇の前でそう宣言する。だがDクラスには問題が山積みだ。どうするつもりなのだろうか。皆が続きを待ち望んでいる姿を1目してから、平田君は再度話し始める。

 

「今回の試験、まずは8人の『退学候補』を用意する。そしてその退学候補の8人の中から皆には好きに投票して貰っていい。」

 

「その退学候補ってのはどうやって決めるんだ?それが分からなきゃ皆判断のしようがねぇぞ?」

最近急成長を遂げる須藤君が質問する。学年随一だった身体能力に加え、前回のテストではクラスで15番にまで上昇した。以前とは異なり状況を理解、把握する力も着いた彼は今やクラスの戦力になってしまった。Dクラスが上に上がらないようにする為には邪魔な存在の1人だ。

 

「須藤君の言う通りだ……だから、僕が独断と偏見Dクラスの足を引っ張ってる生徒を8人用意させてもらう。」

 

「ふざけんじゃねぇぞ!お前らはいいよな、退学にならねぇから!」

 

菊池くんが大声で叫ぶ。Dクラスの大半はこんな感じだ。救いようの無い雑魚と言う他ない。

 

「…黙れよ菊池。8人の生徒にたとえお前が入ろうとも、クラスに貢献していれば退学になることは無い、違うか?」

 

平田君の暴君モードの圧力と正論に菊池くんは黙らされる。 最近のDクラスは民主主義だと言わんばかりの運び方を平田君がして、それが何かしらの悪影響を及ぼしそうなら暴君モードで黙らせる。その為うちのクラスは一部の生徒以外の発言権は無い。尤も、彼らは学習出来ないようだが。

 

「そもそも8人と言うが、全員がマイナス10票にならないように票を調整すればクールガールが退学になる。そしてプロテクトポイントを使い救済される。それでいいのでは無いかね?」

 

数少ないクラスで発言を許された高円寺君が名案をぶつける。大半のDクラスの生徒はそれを支持するだろう。実際Dクラスとしては悪くない一手だ。だが………

 

「確かにそうだけどね……今回は足切りも兼ねて居るんだ。悪いけどその手段は取らない。そして僕が指名する8人の中に君は居ない、それで満足かい?」

 

「ならばいいだろう。私は失礼するよ。」

 

そう言って高円寺と御門、堀北は教室を出て行く。騒がしい堀北さんが消えてくれたのは精神的に有難い所だ。

 

「それじゃあ、8人を発表する。メンバーは篠原さつき、池寛治、井の頭心、佐倉愛里、菊池救、園田千代、前園千咲、森寧々、計8人が今回の候補だ。」

 

「「はぁぁぁぁ!?」」

 

選ばれた8人が悲鳴をあげる。まぁ無理もないだろう。

 

「勿論退学にならないような作戦はある。とはいえ成功率は7割ってところだと思う。もし失敗した時は最下位の生徒には当然、退学してもらう。」

 

「おい待て平田!ふざけんじゃねぇよ!俺がなんでこんな、こんな下等生物共と並べられなきゃ行けないんだよ!」

 

菊池くんがまたもや叫ぶ。その発言を聞いた残りの7人は菊池くんを睨んでいる事に菊池くんは気づいてすら居ない。他のメンバーもいい感情を抱いては居ないだろう。

 

「ふざけないでよ!誰が下等生物よ!私あんたに批判票入れてやるからね!」

 

「そうだそうだ!俺だって入れてやる!」

 

その発言に真っ先に反応したのは篠原さん、そして池くんもそれに追従する。ほかの5人も乗りこそはしないが同じ気持ちのようだ。

 

「ま、待て……待ってくれよ。俺批判票7票も入れられたら退学しちまうよ俺……勘弁してくれよ、なぁおい!」

 

誰も菊池くんの言葉に耳を傾けるものはいない。何人かの生徒は既に誰が退学になるか予想が着いたようで教室を出ていった。

 

「あんな、あんな差別的な発言したやつが……許される訳ねぇだろ!お前は人の気持ちになった事はあるのかよ!」

 

池君が説教を始めたが残念ながら50歩100歩だろう。人の事を言えるほどでは無い。

 

「………うるせぇよ盗撮犯が、喋ってんじゃねぇ!!」

 

そう言い菊池くんは池君を殴ろうとするが、須藤君達数人に取り押さえられて、そのまま何処かへ連れていかれる。

 

「おい、離せ!離せ!離しやがれぇ!」

 

そのまま最後までいい所を残せずに菊池くんはどこかへ行ってしまった。

 

「でもよ、池は盗撮犯だし篠原も戦犯しまくってる疫病神だぜ?森なんか本来退学してるはずだったし、前園は漏らしたしよぉ……。」

 

菊池君の親友の鬼塚君が菊池君を庇うような発言をする。だがその言葉にはみんな思う所があったのだろう。

 

「確かに前園さんあの時臭かったよね……。」

 

「池君も外村君も盗撮してた、最低。」

 

「森さんがあの時助かってなければ今頃こんな困らなかったんじゃないの…?」

 

皆が口々に言い出すが、そもそも皆が天野くんを追い出さなければこんな事にはなっていない。それにすら気付けて居ないようだ。

 

「そうだ、だいたい天野がいればこんな事になんなかったのように!あの裏切り野郎!」

 

さらに篠原さんが爆弾を投げる。

 

「あんなやつ潰してやる!」

 

「本当に最低だわ、あいつ。」

 

クラスの7割は同じように天野くんをディスり始めた。その光景に嫌気が刺した3割、私と櫛田さんと佐藤さんと軽井沢さんと三宅君と長谷部さんと王君は席を退室する。無理もないだろう。こんな人達の言葉を聞いているだけ時間の無駄だ。聞いているだけでこちらにまで嫌気が刺してくる。櫛田さんに至っては目が殺人犯のそれと大差なかった。

 

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翌日、ガラガラと扉をゆっくり開けて、重たい面持ちの茶柱先生がやってくる。目の下にはクマが出来ていた。

 

 

 

「お前たち……席に着いているようだな。それでは投票を始めるぞ。」

 

茶柱先生は投げやり、といった様子で用紙を配っていく。

 

「皆……前に言った通りだ。くれぐれも頼んだよ?」

 

平田君は暴君の圧を出して、再度皆に確認をさせる。場の空気が更に殺伐とした空気になる。

 

私は菊池君、篠原さん、池君、前園さんの4人に批判票を入れる。

 

暫くすると、全員書き終わったのか、カキカキという音がしなくなった。

 

「……どうやら書き終わったようだな。それでは回収するぞ。書き直すなら今だぞ?」

 

茶柱先生が確認を取るが書き直す生徒はいない。茶柱先生はゾンビのように彷徨いながらも回収していき、そしてその場で票の開封を始める。Dクラスは時間帯が最後なのか、タブレット端末を使い、他クラスの票を確認しているようだ。

 

「……結果が出た。上から順に発表するぞ。第3位は29票で軽井沢恵、第2位は39票で櫛田桔梗、そして第1位は……46票で平田洋介だ。」

 

その言葉に安堵、或いは喜ぶものはいない。大事なのは最下位が誰なのか、それだけだ。

 

「……特別に…下からトップ3を全員教えてやろう。第3位はマイナス19票で前園千咲、第2位はマイナス21票で池寛治、そして第1位は……マイナス30票で菊池救、お前だ。菊池を救済はするか?」

 

「しません。クラスポイントとプライベートポイントの無駄だと思います。」

 

あまりにも平田君らしからぬ発言にクラスがぎょっとする。茶柱先生までもが目を見開いている。

 

「……そうか。ならば菊池は色々な書類の手続きのために放課後職員室に来るように。それでは解散だ。」

 

「ふ、ふざけるな!約束が、話が違うじゃねぇか!おい!平田てめぇ!!!」

 

菊池君が声高に叫ぶ、だが平田君は菊池くんに言葉すらかけずに場を去ろうとする。

 

「おいこっち向けや!おい!おい!俺を見ろよ!平田!てめぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

菊池くんは近くにあった椅子を平田君に投げつけようとして……高円寺君に止められた。

 

「君は……美しくないねぇ…今すぐにでもこの学園を去り給えよ。去らないのならば……!!」

 

「ヒ、ヒエェッ……グッ。」

 

菊池くんは高円寺君の圧力に怯えて、そのまま恐怖で失神してしまった。そのまま菊池君は茶柱先生に運ばれていき、Dクラスの試験は終了した。

 

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「って感じかな。」

 

「まぁ……相も変わらず救いようが無いな。でも安心してくれ。」

 

俺はDクラスの崩壊っぷりにある種の尊敬すら抱きながら話を聞く。もうそろそろダメそうだなあいつら。

 

「うん……革命もそろそろだね。」

 

松下が感慨深げに言う、周りには人は居ないようだ。

 

「そうだな……恐らく次の特別試験が終わったら俺が用意した特別試験で決まるだろうな。今回の優越者もたぶんそれ用の一端だろうしな……だがまずはその前の、学校側が用意した本来の最後の特別試験で『綿白神』を退学させる。」

 

俺がそう言うと松下は真剣な顔になる。

 

「そうだね…私達は指名相手をBクラスにするように調整しておくけど……綿白神さんを消そうにも試験の内容次第だよね?どうするつもりなの?」

 

「まぁやり口なんざ幾らでもあるさ。それに……最悪今回で消せなくても革命…いや、クラス替えの後で消せばいいからな。」

 

「それもそうだね。それじゃあ私はこれで……」

 

俺は松下と別れ、そのまま寮へと帰る。明日からはまた平和な毎日がやってくると、この時はそう信じていた。

 

 

 

 

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次の日、俺は下駄箱に入れられた1枚の紙を見て言葉を発する事も、動く事も出来なかった。その紙はあちこちに貼られている事にすら気付かないほどに。自分の心の奥隅にあるおぞましい『何か』が俺の心を蝕んで行くのを感じる。俺はその一行を何度も見るが、その文字が変わる訳も無い。目を向けるべきでは無いとわかっていても、目が離せずにいる。どれだけ離れたくても、心の中のドロドロした『何か』が離してくれそうにも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『天野 聖 は凶悪な犯罪者だ。』

 

冤罪が無かった世界線がifルートとして

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