ようこそ間違った教室へ   作:あもう

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9巻部分(本作では10巻)
起点


『天野 聖は凶悪な犯罪者だ。』

 

俺がその一文を把握するのにそう時間は掛からなかった。心臓の鼓動が早くなるのを感じる。過去のトラウマやなんやらが頭を過り、心の中に在るおぞましい『何か』が俺に這い寄って来るのを感じる。

 

「ねぇねぇ今日の掲示板見た?」

 

「見た見た!やばかったよね!!」

 

俺は聞こえた言葉を頼りに掲示板を開く。そこには色々な事が書かれていた。掲示板では俺が犯罪者だと言う噂が経っている。恐らくは複数人の犯行なのだろう。最後には今まで被害にあった方はこちらまでというURLが着いており、匿名のフリーアドレスに行き着くようになっているらしい。

 

複数人となると何処かしらの派閥がやったと考えるのが妥当だ。俺は必死に頭を働かせる。

 

まず真っ先にやりそうなのは綿白神派閥、とは言え仕掛けてくるタイミングが今なのはそれならば謎である。協力している可能性がゼロとは言いきれないが、それでも主犯とは思えない。ミスリードの可能性もあるが、綿白神の性格からして確率は低いだろう。三輪が裏で糸を引いていればまた話は変わってくるだろうが。

 

次に林間学校から謎の宣戦布告を受けている坂柳派閥……原作通りなら間違えなく坂柳派閥なのだろうが…兎にも角にも情報が少な過ぎるな。

 

後は御門、とは言え彼にやる動機は恐らくは無い。タイミングからしてもないと考えるべきだろう。

 

後は木山一行、林間学校で一之瀬の退学を阻まれた相手が俺だと気付いたならば可能性はある……か。

 

大穴で南雲だが、南雲ならばこんな事をしなくてもやり方は幾らでもあるように思われる。

 

誰が犯人が特定するには未だに情報が無さすぎる。

 

俺は足早にその場を去り、教室へと向かう事にした。

 

「おはよう聖君……その……大丈夫?」

 

教室へと向かう途中で一之瀬と会う。俺が早足で進んできたので追いついた形になるのだろう。

 

「……正直大丈夫では無いけどな…まぁ頑張ってみるさ。」

 

ここで強がっていても仕方が無い。周りからは半信半疑の目で見られるが、冤罪を被せられていたあの時に比べればいくらかマシだろう。この学校に期待出来るところは1ミリも無いのが悲しい所だ。

 

「何かあったらいつでも頼ってくれていいからね…?」

 

一之瀬が心配そうな視線をこちらへ向けてくる。冤罪を被せられていたあの時とは違って今は信じてくれる人がいる、その事実が俺の心を支える柱になっているのを改めて認識した。

 

「ありがとう……それなら一つ頼んで置くか。木山達が犯人じゃないか監視しといてくれ。頼んだぞ。」

 

「うん、わかった!」

 

一之瀬はそう言いながらガッツポーズをとる。癒しだな一之瀬って……。

 

俺は松下にチャットでDクラスの監視を依頼しておく。Aクラスと南雲を監視する手段は残念ながら無い。こっちは自力で調べる必要があるだろう。

 

俺が教室のドアを開けると、既に八割型の生徒は座っている。噂は既に広がっているようだがDクラスのような底辺では無いので、直接聞いてきたり、犯罪者と決めつけてくるような奴はいない。

 

「おはようございます天野さん、何やら変な噂が流れてるらしいですけどどうせ他クラスの撹乱です。気にする事はありませんよ。」

 

入ってきて早々に石崎が元気づけてくれる。クラスの八割型は俺を信じてくれているのか同情の視線を送ってくる。

 

 

とは言え残りの2割…諸藤の友達だった一部の女子と、種子島と金田を始めとする一部の男子、それと裏切り者山下は信じていない様子だった。種子島お前……どうしてだよ。

 

それにしても種子島の様子がおかしい。何かしらに怯えている様子だ。まるで原作の山内みたいな……そう言えば坂柳とぶつかっていたような……なんかデジャブ気味だな。

 

「それに例え聖君が本当に犯罪者で周りからどんな視線を送られようとも今まで通り仲良くしますよ。聖君は聖君です。」

 

マイペースな椎名の発言に再度心が救われる。

 

 

「それにしても一体誰がこんな噂を流したんだろうね……?」

 

マイ大天使木下の言う通りだ。こんなことをしても特にメリットがあるとは思えない。とは言え一之瀬と松下の監視が終わればある程度は特定出来る事は間違えないだろう。

 

「まぁ取り敢えず様子見をしよう。」

 

俺達は一先ず解散して席に戻った。その日は特にそれ以上何かが起きる事は無かった。

 

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翌週、さらに内容は酷くなっていた。中身の大半は言われのない誹謗中傷だったが、中には人間ダーツの一件や、屋上での一件を着色したもの、池の盗撮犯に仕立てあげた件などが載っていたのでどうにも否定しずらいものだ。大方池か外村と山下がチクったのだろう。

 

「おはよう……どんどん噂が酷くなってきてない?」

 

薮の言う通り噂が悪化している。とは言え松下も一之瀬も特にB、Dクラスが動いた感じは無いと言っていた。となるとAクラスが筆頭候補だろう。これ以上続いた所で俺にとって百害あって一利なしだ。早急に決着をつける必要性があるな。

 

「そうだなぁ……真鍋、お前は放課後学校側に噂の吹聴を禁止出来ないか聞いてみて欲しい。」

 

「分かった。」

 

とは言え正直対策方法に関しては大方の目処は着いている。俺としてはいつでも止められる状態だ。だが大事なのは『誰』が流したか。流した相手に復讐するのは必要な事だろう。その為にも今は泳がせておく。

 

それよりも怖いのは櫛田だ、一言『誰だか知らないけど許さない。』という言葉を残して以降既読は着くのに返信がつかなくなってしまった。アイツは大丈夫なんだろうか…。心配で仕方ない。

 

Cクラスの中にも俺を疑っていたりする人間は一定数いる、どうにも日増しで増えている気がしないでも無いが…気のせいだろうか?

 

取り敢えずは櫛田だな。俺は櫛田の様子を見に行かせつつ、ラスボスの起動をするためにDクラスに行く事にした。とは言え池のような最底辺メンバーが何やらイチャモンを言ってくることは容易に想像が着く話だ。

 

「アルベルト、Dクラスへと向かう。着いてきてくれ。」

 

 

「YES!BOSS!」

 

用心のためアルベルトを連れて圧力を出すことにしよう…てかそのキャラまだ続いてたのかよ。

 

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俺たちがDクラスに着くと、Dクラスはお通夜みたいになっていた。高円寺の爪切りの音だけが聞こえる。堀北は幸いにもいないようだがそれを差し引いてもあまりにも静か過ぎる。誰かしらが俺にだる絡みをしてくると思っていたんだが…何があったんだこいつら?

 

「聖君、ちょっとこっち来て。」

 

俺が来てから数十秒して松下が俺の所へ来た。周りは余計なことをするなど視線で訴えているのがわかる。どうやら俺に関することらしいが何があったんだ本当に。

 

「綾小路、お前も来い。」

 

俺は要件のある綾小路を呼出す。当の本人はとてつもなくダルそうな顔をしている。

 

「アルベルト、誰も来ないように見張っていてくれ。」

 

「YES!BOSS!!」

 

俺はアルベルトを見張りに着けて話を始める。

 

「それであれは…何があったらあんなんになるんだ?」

 

「お前の悪評が蔓延しているのは知っているな?」

 

「もちろん。たぶんAクラスだろうな。それがどうした?」

 

まぁそれが何かしら関わるのはわかるんだが…一向に想像がつかん。というか千秋ではなく綾小路が喋るのかよ。

 

「そうだな……ここ1週間ほど、Dクラスではお前への誹謗中傷が続いていた。と言っても全体の半分程だけだ。残りの半分はその噂など信じては居なかった。とは言え誹謗中傷を止める事もしなかった。止めたのは平田と櫛田ぐらいだったんだ……だが、」

 

「だが?」

 

綾小路は一呼吸置いてまた話し始める。

 

「ここ1週間の誹謗中傷の時間も内容も非常に多くてな。実際オレ達も辟易としていた。茶柱先生も最初は注意こそしていたが、途中で諦めたんだ。」

 

茶柱、何やってんだよお前!アイツはやっぱり教師失格だろうな。

 

「それに我慢出来なくなったみたいでね……櫛田さんがキレちゃったの、それも裏の顔全開で。」

松下が横から補足説明を入れる。

 

なるほど、大半の納得がいった。櫛田爆弾が綺麗に爆発したらしい。普段温厚な櫛田がブチ切れたとなればお通夜モードなのも納得が行くだろう。だがそれよりも大事な事がある。

 

「櫛田は……どうなってるんだ?」

 

心配なのは当然櫛田である。承認欲求を満たす自らのキャラをドブに捨ててまで俺の事を大事にしてくれているのはとても嬉しいのだが、そうなるとピンチになるのは俺ではなくて櫛田になるだろう。

 

「別にそんなに立場が悪くなったとかはないかな?元々誹謗中傷は本当に酷かったし、ついに我慢の限界になったなって感じ。とは言え櫛田さんがブチ切れた落差にみんな萎縮しちゃってお通夜モードになったけどね。」

 

まぁその絵面は大体は想像が着く。なんにせよ櫛田のケアはしっかりとやるべきだろうな。

 

「なるほどなァ……綾小路、千秋。Aクラスだと思うが噂の原因の出処を調べてくれ。」

 

「分かった。」

 

 

「了解」

 

 

千秋はまだしも、綾小路に任せておけば大丈夫だろう。綾小路を用いすぎて俺が腐敗してる気がしないでもないがまぁいいか。

 

「俺は……櫛田のケアだな。」

 

俺は櫛田に今日の放課後のアポイントメントをとるための連絡を入れる。気持ちは嬉しいが櫛田のためにも多少お灸は据えるべきだろう。とは言え助けられている俺ができる立場でも無いとは思うが。

 

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「俺はこの一年間天野とずっと仲良くしてたからこそ言える!アイツは酷く暴力的な人間だ!あんなやつ……あっ!」

 

俺が教室に戻ると、教卓前で何やら種子島が演説のような事をしていた。タイミングを狙っていたのか、椎名達、俺の仲良しメンバーと金田だけが綺麗に居なかった。

 

「おい種子島、どういう事だ?」

 

俺には全く状況が見えてこない、が種子島が俺にヘイトを集めようとしていることだけはよく分かる。だがそんな事をしてこいつになんの得があるのだろうか……いまいち見えてこないな。

 

「ち、違うんだこれは……これは…これは!!」

 

何が違うのかは全く分からないが、兎にも角にもクラスで日増しに俺を疑う人間が増えている原因だけはわかった。とは言えなぜ急に種子島がこんな事を言い出しているのかの理由は一つしか無い。

 

誰かに頼まれた、あるいは脅されている。で、あるならばその相手は誰か。綿白神と種子島に一切の面識はない。木山や御門も同様な筈だ。

 

だが坂柳、奴だけは林間学校の時に山内イベントをしっかりとこなしていた筈だ。そこから何をどう頑張って脅したのかは見えてこないので、恐らくは色仕掛けでの籠絡なんかだろう。なんにせよ犯人が坂柳である説が濃厚になって来たな。取り敢えずちゃっちゃと種子島を問い詰めるか。

 

「お前達席に着け、1時間目を始めるぞ。」

 

種子島を問い詰めよう、と言った所で三上先生が俺の邪魔をするように入ってきた。さすがに考えすぎか?

 

そのまま授業が終わるや否や、種子島は荷物をまとめてそのまま帰宅してしまった。表情は青ざめており、まるで誰かにやれと言われましたと言わんばかりだ。

 

 

俺は、自分の心の中に坂柳▶種子島の流れがあまりにもスムーズ過ぎる事に違和感を感じている。なんだか坂柳のやり口にしてはあまりにもわかり易すぎると言うか……うーん。

 

俺は暫く熟考するも特にいい考えは出てこないので一旦思考を後回しにする事にした。

 

 

 

 

暗躍するAクラスと読めない坂柳の一手に俺は思考を侍らせ続けるのだった。

冤罪が無かった世界線がifルートとして

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