学校が終わり、俺は桔梗のケアの為にLIMEを起動して連絡を送る、チャットは既読が着きそうにも無いが、桔梗の部屋に押し掛けるのもマズイので現状返信を待つしかない、というのがベターなのは分かるが、どうにも心のどこかで不安感が警鐘を鳴らしてくる。
本来ならば種子島をどうこうするべきなんだろうが生憎と俺には自分の評判より桔梗のが大事だった。それに種子島など何時でも煮るなり焼くなり二宮○也である。とはいえこのボロを出したタイミングで冷静な対応など種子島に出来るとも到底思えない。
「薮、ひより、あとは…アルベルトかな、ちょっといいか?」
種子島が動揺して噂を流している黒幕の元へと向かう可能性もある。種子島の身体能力は底辺レベルなので運動が対して得意でない女子二人でも何とかなるだろう。裏に居るのが坂柳だとするならば尚の事だ。アルベルトを念の為付けておくがあくまでも保険である。伊吹でもいいが鬼頭辺りに出てこられると面倒だからな。
「はいはい、どうされましたか?」
幸いにもひよりは読書中、薮とアルベルトもまだ帰ってはいなかったので助かった。石崎なんかダッシュして帰っちゃったしな……。俺は3人に近寄るように言う。種子島は帰ろうとしているし急いで伝えるべきだろう。
「3人には種子島の尾行をして貰いたい、運が良ければ噂を流している出処が分かるかもしれない。」
当事者なのもあるが、ざんねんながら今回の一件で俺に取れる対応はそう多くはない。こんな時にものを言うのは人脈だが、一之瀬は原作とは違いBクラス内で既に権力を失っている。櫛田は今はそれ所じゃない。完全に手詰まりである。少しでも情報が得られればいいが、相手が坂柳にしろ綿白神にしろそう簡単には行かないだろう。
大穴で木山の裏にいる黒幕Xだが、招待を掴もうにも難しいのでコチラは割り切ってしまうしかない。現状俺達から黒幕Xへの有効打は0である。やれる事があるなら綾小路に調査させるぐらいか…。
さて、俺は櫛田の所へ向かうべきだろう。俺はバックの中に荷物を詰めて教室を出る。ちなみに行くのは俺一人だ、他の人間がいると本性を晒そうにも晒せないだろうしな。
「てっきり種子島君を追うものと思っていましたが……どちらへ向かわれるのですか?」
教室を出ると坂柳に出会った。何故このタイミングで接触してくるのかは分からない。さらに言えばこちらの状況を何処まで読み取れているのかも不明瞭だ。下手にボロを出す訳にも行かないしさっさと桔梗の元へ行きたいが…こうしてアプローチをしてきた以上何かしらの思惑はあるように思える。
「坂柳か……何か用か?」
「これから何処へ向かわれるのですか?」
どうにも会話が噛み合わない。現状の桔梗を坂柳に合わせるメリットは0だ。こいつが噂を流した黒幕の可能性もある。
「要件はなんだと聞いている。」
そう考えるとなんか苛立ってきたな……。勿論確証もないので八つ当たりかもしれないが。
「……先にお伝えしておきますがあの噂を流したのは綿白神さんです。私ではありません。」
何処までが本当か怪しい所だ。話半分で聞いておくべきだろう。
「そうか…。」
「最近のAクラスの状況は存じ上げていますか?」
「いいや全く。」
どうせ綿白神派と坂柳派で揉めているのだろう。
「実は今若干坂柳派は劣勢なのです。少なくともほかのクラスに喧嘩を吹っかけたりする余裕は私達『には』ありませんよ。」
「私達『には』ねぇ.......。」
Aクラスにはではなく私達には、か。もし坂柳の発言が本当なら今回の首謀者は.......。いや、信じるに足るのかがそもそもにして怪しい所だな。
「えぇ、ここでは何ですし少し歩きながら話しませんか?私も貴方と同じく櫛田さんに用がありますし.......それに今回は『味方』と取ってもらって構いませんよ。」
「信じていいんだな?」
天才って奴は何処から何処までが本当なのか誤魔化すのが上手すぎて俺には分からなかった。
「もし私が敵対するつもりなら今回の件で仮面が外れてしまった所を見せてしまった櫛田さんはもうこの学校にいませんよ。それに私、貴方には感謝してるんです。」
「感謝?」
何か感謝されるような事をしただろうか?俺の記憶には生憎そんな事は.......そういや俺を殴った事で戸塚が消え去ったっけか。
「ええ、もしかしたら天野君は覚えていないかもしれませんが。それでも私は覚えています。忘れてしまったなら思い出させるまでです。」
ダメだ.......思い出せない。どうにも戸塚にハンマーで殴られた以前の記憶がぼやーっとしてるんだよな。
「.......本当に忘れてしまったのですか?天野君からしたらDクラスにいた時の事など忘れたい事なのかも知れませんが。もう一度よく思い出して見て下さい。」
.......分からん。けどなんかここでわからんと言ったらとてつもなく不味い気がする。坂柳.......坂柳.......坂柳.......。
「.......そういえば杖を拾ったな。」
ふと思い出したのは山内が暴走して杖をぶっ飛ばした時の事である。だがあの時櫛田は杖を拾わなかったからやっぱりコイツからしたら敵なんじゃあ.......。いや俺の駒だからいいのか?
「やっっっっっと思い出してくれましたか.......。このまま忘れられたら正直本当にどうしようかと思いましたよ。あの時に確かに言ったはずです、『この御恩は忘れません。』と。勿論この程度の事で借りを返そう等とは思っていませんが、微力ながら協力させてもらいます。」
確かにそんな事は言っていた、てっきり社交辞令か何かだと思っていたんだがどうやら本気だったらしい。まぁ最もそれだけじゃないのだろうが。
「綿白神派が衰退すれば坂柳派は強くなるからな。綿白神が主犯ならば協力するメリットもある。」
「あと少しで派閥など無意味になる事ぐらい私も気付いています。今ここで態々派閥を大きくするのはそこまでメリットには感じませんね。」
「なんだ気付いているのか。流石だな。」
まぁ父親から聞いただけなのかもしれないが。
「ええ、ここは人目に着きます。取り敢えず櫛田さんの部屋へと向かいながら話しましょう。お渡ししたいものもありますので。」
「.......お渡ししたいもの?」
爆弾じゃないよなそれ.......最悪武力制圧は出来るだろうがちょっと怖くなって来たぞ。
「ええ、まぁ詳しくは話しながら行きましょう。」
一体全体なんだって言うんだ。
「まぁいいや.......行くか。」
尾行は.......居ないか。綿白神は俺らに尾行を付けられないほどのバカな様だ。まぁそっちの方が助かる。俺たちは靴を履き替えて櫛田の元へと向かった。それにしても壁を使って上手いこと靴を履くものである。
「それでお渡ししたいものってのは?」
俺は周りに人が居ない事を確認して聞く。
「少しお待ちください.......天野君のLINEに送らせてもらいました。」
送られてきたのは.......音声か?
「その音声は綿白神さんが今回の噂を吹聴した原因である証拠です。櫛田さんと2人の時にでも確認してください。それを使えば綿白神さんを訴えるぐらいは出来ると思いますよ。」
「マジか.......こんな簡単に最後のピースが揃うとは.......。」
棚ぼたもいい所だな。綾小路や千秋達に必死で探させてたのが本当に馬鹿らしく感じてきた。こうなってしまっては種子島を問い詰める事すらせずに決着が着きそうだ。
「最後のピース.......ですか?」
「あぁいや、こちらの話だ忘れてくれ。それよりも俺は行くわ。そろそろ着くしな、色々助かった。ありがとう。」
「それはあまりにも逃げ方が下手すぎませんか.......。まぁ楽しみにして待たせて貰いますね。」
うーん.......食い付いてきてくれても良かったんだけどなぁ。まぁいいか。坂柳との駆け引きよりも今は桔梗のが大事だ。俺はそのまま桔梗の元へと向かう事にした。
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ピンポーーン!!
俺は桔梗の部屋のインターホンを押す。それにしても思っているよりも音が大きいな。
「.......聖.......君?.......どうして.......?」
桔梗は扉を開けるなり驚いた顔をする。インターホンなのだから顔は見えるはずなのだが.......まぁ出てくれたのは好都合だ。流石に女子の部屋のキーロックをプライベートポイントで買おうものなら管理人からどんな顔をされたか分かったものじゃ無いからな。
「取り敢えず、上がっていいか?あんまり人目につかない方がいいだろ?」
「うん.......分かった。ごめんね。」
一体何に対するごめんなのかは分からないが桔梗の顔は沈んでいる。だが謝るべきは俺の方な気がする。2000万プライベートポイントをドブに捨てる事になるかもしれないが最悪このタイミングでのクラス移動すら視野に入れるべきだろう。
それにしても櫛田の部屋は男子が思い描く女子の部屋まんまだな.......イメージ作りの大変さを改めて学んだ気がする。
「取り敢えず座って.......コーヒーとお茶と水どれがいい?」
「いや、気を遣わなくていいよ。」
心身ともに疲労困憊の桔梗にそんな事をさせるのは良くないだろう。
「いいから、どれがいい?」
なんだか物言わせぬ圧を感じた俺は大人しく好意に甘える事にした。男としての威厳は0である。ストロングゼロ飲みたくなってきたな。
「そうか、それならコーヒーで頼む。」
「うん.......。」
そこから数十秒、何も無い沈黙が進む。雨の日のような重苦しい空気だ。来といてこんな事を言うのもあれだが、面と向かって切り出すのは結構辛いものがあるな。
「聖くんが尋ねてきたのは.......私がDクラスで本性を出しちゃった事を心配してきてくれた.......んだよね?」
「まぁぶっちゃけで言うとそうだな。」
あっちに切り出させてしまった.......男としてはこの上なくダメダメである。グズノセイントである。
「それなら大丈夫だよ、千秋ちゃんからその後のDクラスで私がどうこう.......って事は無いって聞いてるし、それよりも.......。」
「それよりも?」
立ち直っている.......という風には見えないのだが.......別の懸念は俺には思いつきそうにも無い。
「その.......あの状態で言い返したりとかしなかったって事は何かしら作戦があったんだよね.......?私のせいでそれを台無しにしちゃって.......しかも私が言われた訳でも無いのに学校側にも訴えちゃったし.......。」
「ん?訴えた?」
訴えたって何ぞや、というかそれに足るだけの証拠があるとも思えないし何より本人以外が訴えられるんだろうか.......。
「うん、多分通らないと思うけど.......学校側が少しでも動く可能性があるなら.......って、ごめんね.......いつも助けて貰ってばっかりなのに.......私何も出来なくて.......っ.......!!」
俺は桔梗にハンカチを差し出す。さてさてどうしたものか、作戦が潰れたのは正直まぁなんとでもなるのでいいのだが、どうにも桔梗の奥底には俺に対する罪悪感のようなものがある気がする。このまま溜め込まれるとメンヘラになりそうで怖い。
悩んだ末、俺は一つの結論に達する事にした。貸し1を作ってしまう気もするが、俺にとっては桔梗のが何倍も大事なのでノープロブレム!!.......と自分に言って聞かせる事にしよう。
「大丈夫大丈夫、寧ろ助かったよ.......本当に何も打つ手なしだったからね.......桔梗が居なかったらどうなっていたか.......。」
世の中嘘も方便である。実際今まで桔梗にはさんざん助けられているのは紛れも無い事実だしな。
「でも.......でもっ.......!!」
「大丈夫、大丈夫だから。それに桔梗が訴えてくれたお陰で最後のピースが揃ったんだから大金星だよ。」
同じ台詞をさっき坂柳にも言った気がする.......どうにも自分がヒモみたく思えてきたな.......。
「最後の.......ピース.......?」
桔梗は訳が分からないと言わんばかりだが今大事なのは理論よりも感情、桔梗の心の蟠りを無くすことである。
「おう、お陰様で何とかなりそうだ、後は任せとけ。」
俺は桔梗の頭を撫でておく。これなら坂柳の動画を学校に提出して訴えて坂柳を口止めさせれば結果オーライじゃ無いか?俺が考えていた方法よりもずっと良い結果で終わりそうだな。
「本当に.......?」
「あぁ、綿白神の退学も近いだろうよ。」
「.......なら.......良かった。」
暫くすると桔梗は疲れて眠ってしまった。目の下のクマも酷いためロクに眠れて居なかったのだろう。
今回の件で俺が反省すべき事はただ一つ、俺が傷付いて辛い気持ちになるのは俺だけでは無いという事を知らなかった。それだけだ。他の反省点はもっと反省すべき奴に擦り付ける事にしよう。
俺は全てを終わらせる為に学校へと向かった。
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学校の先生はなるべく手が回って無さそうな人が良い。星ノ宮先生か真嶋先生が理想だ。坂上先生がいれば坂上先生でも良かったのだが.......兎に角茶柱は不味いのでパスだ。
放課後だが恐らくまだ居るだろう。俺は保健室の扉を開ける。
「失礼します。星ノ宮先生は.......ちょうどいい所に居るじゃないですか。」
「ん?ちょうどいい所.......?どうしたのかな?」
「ええ、ちょっとお話があるんですけど.......。」
「普段あんまり話した事無いのに珍しいね.......?他の子達も居るしここじゃ何だから別の場所で話そっか、着いてきてね〜。」
何やら他人行儀な話し方で星ノ宮先生じゃないみたいだ.......まさか.......偽物ッ!?.......な訳無いか。
星ノ宮先生は後ろのカーテンの閉じた3つのベットに1度だけ目配せした後、保健室の利用者名記入の板を机の中に仕舞い、俺を連れて保健室を出ていった。
それにしても何やら視線を感じた様な.......気の所為か?
「このまま黙りをしてたらどうしようかと思ったけど.......ボスの狙い通りようやく動き出してくれたらしい。態と証拠を残した甲斐があったってもんだぜ。」
「三輪、盗聴器の線もある、喋るのは盗聴器のスキャナーでスキャンを終えてからだ.......大丈夫そうだな。」
彼女らが去った後、ベットの中で『彼等』は密かに状況を確認する。
「相変わらず心配症だな、種子島.......いや、種子四摩はよォ.......。そういやボス、今回は何でまた種子島を動かしたたんだ?折角天野の懐に忍び込んだのに無駄骨じゃねぇか。」
種子島は本来種子四摩なのだが、この学校では種子島で名簿登録をされている。それもこれも一重に、綿白神財閥の権力をも新しく自らの手に加えたこの『ボス』の力の一端に過ぎないのだが。
「今年のうちは聖の手駒にあの綾小路さんの息子の綾小路清隆がいるから.......ですよね?
.......それに俺の行動は天野を吊って確実に綿白神に責任を負わせる為の保険としても必要だっただろう。天野があぁも動かないとなると尚更、な。どうせまた何処かしらで接触に来るはずだぞ、三輪。」
種子島も改めて確認をとる、彼らですらボスの思考の全てを理解できては居ないのだから。
「あぁ.......。」
「それに加えて天野の革命の事も.......ですね?クラスの垣根も無くなりますし.......『アイツら』を全員集めるつもりですかい?」
「さぁね.......。」
それだけ言い残してボスはその場を去って行く、そして彼ら二人も少し時間の差を開けて、保健室を出ていくのだった。
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俺がそのまま星ノ宮先生に連れてこられたのは何時ぞやの給油室.......意外と似た者同士な部分もあるのかもしれない。人としては天と地ほどに差があるのは間違えないのだが。
「それで、話って何かな.......?」
「そうですね.......俺は今から綿白神さんを訴えようと思います。」
「.......え?訴える.......?」
星ノ宮先生は驚いた顔をしていた。という事は櫛田が言ったのはもっと別の人間.......まさか茶柱か?Dクラスの担任はあのゴミだからな.......。
「ええ、それで櫛田さんにもし何か言われたら櫛田さんの訴えが通った、という風に学校側で対応を取ってくださいね。プライベートポイントはお支払いしますので。」
「えーと.......櫛田さんが天野君の為に訴えたってのは佐枝ちゃんから聞いてるけど.......なんで櫛田さんの訴えが通った事にする.......のかな?」
まぁそれが分からんのは仕方無いだろう。とはいえ態々説明してやる義理もない。
「それが櫛田さんのためだからです。プライベートかつデリケートな事なので申し訳ないんですけどあんまり話せないですね.......それよりも、こちらがその証拠の動画になります。訴えの内容は他人の悪評を吹聴したり、変な貼り紙をしたりとか色々やってたあの一連の事件の事についてですね。」
「まぁ確かにあれを故意にやってたなら訴えられると思うけど.......綿白神さんがやった証拠って言う動画を一先ず見て見ないことには何とも言えないかな。ちょっと見せてもらえる?」
俺は言われた通りに動画を見せる。その動画には、バッチリと綿白神が三輪に一連の流れを伝えている所が映っていた。ご丁寧に三輪が全部反復してくれているので綿白神は確実に何かしらの罰を受ける事になるだろう。
「これなら行けそうだねぇ.......学校側に提出しちゃうからこの動画のデータはこっちにも共有させて貰っちゃっとくね.......。櫛田さんの件も、特別に私が口聞きしといてあ・げ・るっ!」
「ありがとうございました。では失礼しますね。」
今時流行らないですよそんなの.......とも言えず、俺はそのままその場を後にした。.......そう言えばなんか保健室で感じた違和感に着いて聞き忘れたな。まぁいっか。
別に決して逃げた訳では無い。決して。
そして次の日、俺達の前に史上最恐の特別試験が訪れる事になる。
メタ的なお話ですが、残りはまた11巻部分と混ざっていく形になりますので、これにて一先ず9巻(本作では)10巻部分の章自体はここで区切ります。
明らかな未回収部分や、あまりにもな棚ぼた展開に着いてもそちらで伏線回収する予定です。(伏線が多すぎて何かしら回収し忘れたらごめんなさい。)
今後とも初心者の執筆を暖かい目で見て貰えると幸いです。それでは(´・ω・`)/~~ノシ
冤罪が無かった世界線がifルートとして
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みたい
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みたくない