TS転生したから配信者になる   作:じぇいじぇい

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3年立ってるので文章変わってるかも。


小学生

翌日の夜、私は解放された。

 

「ごめんね、永久。辛かったと思うけど、これもあなたのためなの。あんなこともう言わないって、約束して頂戴。」

 

「うん。...ごめんね、ママ。」

 

「いい子ね。よく頑張ったわね永久。」

 

私を部屋から出した後、ママはすぐに抱きしめてくれた。ママの体温が、冷え切った私の体を温めてくれる。

丸一日、本も何もない部屋に放置されるのは苦痛だった。だが毎食しっかりご飯は出てくるし、解放するときはいつも抱きしめてくれる。お母さんは本当に私のことを大切に、愛してくれているんだなと実感する。

 

 

 

ああ、わたしはしあわせだ。

 

 

 

★★★

 

 

 

あの日から月日が経ち、私は6歳、小学生になった。

 

小学校入学後、私の日常は大きく変わった。多くの同年代の子供たちと出会い、今まで知らなかった世界が広がっていく。友達も何人かできた。放課後はみんなで遊ぶことも増え、充実した日々を送っている。英語教室とピアノ教室も順調で、先生には才能があると褒められることが多い。前世の記憶があるおかげもあるだろうが、何より新しいことを学べるのが楽しくて仕方がなかった。

 

しかし、学校生活の中で避けては通れないものがある。それは家庭についての話だ。給食の時間に今日の晩ご飯の話になったり、連休の過ごし方を聞いたり。そんな何気ない会話の中に「お父さん」という単語が頻繁に登場する。

 

「明日はパパが釣りに連れてってくれるんだ!」

 

「うちのお父さんね、土曜日に遊園地に連れて行ってくれるって!」

 

「僕のお父さん会社の偉い人なんだぜ!」

 

パパ、パパ、お父さん、お父さん、と友人たちが笑顔で語る家族の話。私もみんなと同じように「素敵なお父さんだね」などと相槌を打つけど、心の中はザワザワと落ち着かない。

 

「恵ちゃんのおうちは?お父さんどんな人?」

クラスメイトの純粋な質問が飛んでくる。私は笑顔を取り繕って答えた。

 

「……うん、優しいよ」

 

嘘ではない。嘘ではないけれど真実でもない。

 

「そっかー。いつか一緒に遊べるといいね!」

 

彼女は何も悪くない。ただ家族の話をしていただけだ。

だけど、私の背筋にはゾクリと寒気が走った。

あの日の夜を思い出す。

 

『あなたのお父さんはもういないの!』

 

お母さんの怒号が脳内で響く。

体が震えそうになるのを必死に堪えながら、私はぎこちなく笑い続けた。

どうしてお母さんはあんなにもお父さんの話を嫌がるのだろう。

 

家に帰るまでずっと考えていた。

ママがお父さんの話を嫌がるのはなぜ?

そもそもお父さんはどうしていないの?

昔の記憶を辿る。

ママはいつも忙しそうにしていて、ご飯を作ってくれるのも遅いことが多い。洗濯や掃除も全部一人でやっていて、「男手があれば楽なのにね」とこぼしていたことがある。それを聞くたびに「お手伝いする!」って言ってみるけれど、「永久はいいのよ。勉強が一番大事なんだから」と言われるばかりだった。

 

ママはお父さんのことを「いなくなった」って言うけど、それはどういう意味なのか。

亡くなった……わけじゃなさそうだよね?

それなら遺影とかあってもいいはずだし、ただ亡くなっただけならあんなお仕置きをする理由にならない。

事故とか事件……?いや、それならニュースになっててもおかしくない。ママが教えてくれなくても、私くらいの年の子供なら近所のおばちゃんとかから噂くらい聞こえてきてもいいはず。

単に離婚して出て行った……可能性もあるけど、それならそれで別に名前くらい出してもいいだろうに。ママの態度を見る限り「会いたくない」以上の何かがあるように感じる。

 

お父さんについて知っていること。

まず一つ目は「顔も見たことない」ってことだ。写真すら見た記憶がない。転生する前、現世の私が覚えている範囲でそういうものを見た記憶はない。

そして二つ目は「お父さんの話をするとママが怖くなる」っていうことだ。いつも優しいママが別人みたいになる。あれは本当にこわい。思い出すだけで体が震えそうになる。

そんな風になるくらいお父さんのことは禁句なのだ。それほどまでにお父さんについての話はタブーになっている。

 

最後のヒントは……私が幼稚園児の時に聞いたママと知らない女の人の会話だ。断片的にしか覚えていないけど「あの人とはもう……」「永久のためなんです……」みたいな内容だった気がする。誰と話してるかは分からないし、お父さん関係の話かどうか確証はないけど……なんか引っかかる。

 

でも、いくら考えても答えは見つからない。お父さんがなぜいないのか。ママがなぜそこまでお父さんについて触れられることを拒むのか。

今の私にできるのは、お父さんの話題を避け続けることだけだった。家でも学校でも。あの恐ろしいママの顔を見るのはもう嫌だ。あの部屋にまた閉じ込められるのはもうこりごりだった。私は自分の平和のために沈黙することを選んだ。

 

ある日の夕食の時のことだった。今日は珍しくママが早めに帰ってきていて、二人でゆっくり食卓を囲んでいた。

 

「永久、今日の学校はどうだった?」

 

「うん、楽しかったよ!算数のテストが満点だったの!」

 

「まあ、すごいわねぇ。さすが私の永久ね」

 

ママが嬉しそうに微笑む。私は胸が暖かくなるような感覚を覚えた。あんなにひどいことをされたのに褒められて嬉しくなるなんて、私は変なのかもしれない。

でもこの暖かい時間を、場所を、お母さんを、手放しくないと思ってしまった。

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