「さぁ!行ってくれ!ルフィくん!」
両手に大きなハサミを付けた男の人が叫ぶ。彼が地面をそのハサミで切ると、エースの処刑台までの一本道が出来上がった。その道をルフィくんはひたすら駆け上がる。
「行かせないよぉ」
黄猿が光線を放ってルフィくんの事を狙い撃ちしようとするが、放たれる前に白ひげさんが黄猿を攻撃する。薙刀を踏んで押さえつけると、黄猿はルフィくんに放つはずだった光線を白ひげに向ける。
貫かれることを覚悟する白ひげだったが、また放たれる前に横槍が入る。武装色を纏った蹴りがぶつかり、黄猿を少し離れた所まで吹き飛ばす。
「グララララ!また借りができちまったな!」
「はいはい、そんなのは後でいくらでも返してくれていいから今は処刑台の方に集中して。海軍は私が抑えるから」
その言葉によりいっそう大きくなる白ひげの笑い声。白ひげ海賊団がフェリを頼もしさを感じると同時に、海軍の方はたった1人に状況をひっくり返されているこの状況に腸が煮えくり返るほどの悔しさが顔に出ている。
「全軍!白ひげと歌姫の守り手を食い止めろ!元帥殿たちの邪魔をさせるな!」
中将らしき人が大将と元帥に変わって指示を出すと、一気にこちら側へ海兵がなだれ込んでくる。
「あの数いけるか?」
「問題なし!」
白ひげの前に立って剣を刀身を深く下に沈ませるよう構える。白ひげのグラグラの実は殲滅に関してはかなりの有効打であるが、その分周りへの被害が尋常じゃない。
だから、セーブできる武装色を使える私が前に出て将校以下の雑兵を蹴散らす必要がある。固める覇気のイメージはまるで全てを飲み込んでしまうような大波を想像する。
「
横薙ぎの一閃を繰り出すと、遅れるようにして膨れ上がる武装色の覇気を纏った斬撃。まるで飲み込まれるように押し返された海兵は後ろの方へ吹き飛ぶ。
中には耐えている者もいるが、覇気の纏った斬撃ゆえに能力者関係なしにもダメージは行き渡っていた。結局、残ったのは最初の2~3割ほどの海兵だけだった。
「グラララ!とんでもねぇ覇気だな!あの芸当が出来るのはそうそういねぇぞ!」
「これでも生きてきた時間の半分くらいつぎ込んでるからね!」
「なるほどな、つくづく面白野郎だ!邪魔な奴らを片付けてくれた礼だ……野郎ども!こいつの連れを全力で守りやがれ!傷1つつけるんじゃねぇぞ!」
船長命令に「「おおおおぉぉぉぉ!!」」と雄叫びをあげる白ひげ海賊団の面々。そして、ウタの周りには手厚い守りが出来上がっていた。
これで安心して目の前に集中できるな。大量の一般兵を倒したとはいえ、まだ立っているのは海軍の大佐とか中将くらいの実力を持った輩ばかりだ。
「ホワイトブロー!!」
「おっと」
最初に飛んできたのは煙の拳。見るからにロギアの能力なので、武装色を発動して受け止める。すると、拳が引くと同時に2人の海兵が急接近してくる。
「剃ッ!」
「指銃!」
1人はモモンガ中将、もう1人はダルメシアンのゾオン系能力者だった。高速で突っ込んできた刀は私の胴体を袈裟斬りにし、鋭い指はまるで銃弾のように私の胴体に3つの穴を開ける。だが……
「ハズレだよ!」
「なっ!?」
「ぬっ!?」
余裕の表情を浮かべながら、私の体に煙が集まって元の姿に戻る。明らかに味方の能力であることに私から目が離せないでいると、後ろからの強烈なプレッシャーを感じた2人はすぐにその場を離脱する。
「ぬぅん!」
「ぐっ!?」
「がっ!?」
私の後ろにいた白ひげの一撃を受けて2人は元の位置に吹っ飛んだ。
「随分と珍しい実を食ったんだな」
「最初はあんまりかなぁ…って思ったけど、こうしてみると結構便利なんだよね」
たった2人の防衛線、しかし突破するにはあまりにも固い壁だった。白ひげともかく、歌姫の守り手がここまで厄介になるとは誰が想像できただろう。
「能力者は歌姫の守り手に近づくな!能力を模倣されるぞ!武装色を使える海兵で一気に叩け!」
「ありゃ、もう対策されちゃったか」
そう、私の実の力は能力者の存在が絶対不可欠。故に能力を持たない普通の人間が相手になれば模倣される心配は無いが、そこら辺の弱点を補っていない私では無い。
ちゃんと生身も鍛えているに決まっているだろう。私は覇王色の覇気はないものの、武装色と見聞色に関してはほぼマスターしちゃってるので攻守ともにできるオールラウンダーなのだ。
「“アイス塊”「
飛んできた氷の槍を白ひげが能力を使って粉砕する。それと同時に白ひげの背中を狙って飛んできた光線を弾いく。空へ打ち上がった光線が爆発すると、ビリビリと空気が振動する。
「これ以上勝手な真似はしてもらっちゃ困るんだよねぇ」
「全くだ。娘っ子1人にここまで掻き回されるとは」
黄猿と青キジが私たちの前に立ちはだかった。ルフィくんの方も崩れかかっている“英雄”ガープを相手にしている模様。今はできるだけ時間稼ぎをするしか無かった。
「わっしは1戦やり合っているからねぇ。ここは私たちに任せて君たちはほかの部隊を援護してきなよぉ」
「「「「「はっ!」」」」」
それぞれ散り散りになるようにして、戦場へ戻っていく将校の海兵たち。いくらなんでも大将を相手取りながら引き止められるとは露ほど思っていない。
むしろ、海軍の主戦力を1人で抑えていることを褒めて欲しいものだ。
「グララ、1人でやれるか?」
「心配はご無用です。これくらい1人でこなせないと、あの子を守れませんからね」
「言うじゃねぇか。絶対に死ぬんじゃねぇぞ?」
ルフィくんがエースを助けるまでの少しの間。大将達の動きを止めるために私は、黄猿に挑みかかるのだった。
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「火拳のエースが!解放されたぁ〜〜〜!!」
「やったぞ!麦わら〜!!」
「ルフィ!!」
崩れ落ちていく処刑台から炎のトンネルができ、エースとルフィくんが戦場へと降り立った。海軍は慌て、白ひげ海賊団は歓喜し、ウタはぴょんぴょんと跳ねている。
「あらら〜、こりゃ大失態だねぇ。火拳のエースと白ひげ海賊団を取り逃したらどんな責任を取らされることやら〜」
「だからって、あの二人はやらせないよ!」
ルフィくんとエースの元へ飛ぼうとする黄猿を黒刀で切りつける。さすがに腕を切られると判断した黄猿は途中で能力を解除して、私から距離をとる。
表情は変わっていないものの、言葉の一つ一つに静かな怒気を含みながら殺気をぶつけてくる。邪魔されたのが余程苛立ったのだろう。
「まさか、ただの少女がここまでやるとは……この先、生かして帰す訳にもいかないだろうねぇ」
「やだね!私はウタを守らないと行けないの!だから死なない!」
「君の意見は聞いてないんだよぉ?」
再度交わる黒刀と光の剣。両者とも譲らない攻防を繰り広げながらも、フェイントとして何度も手や足での打撃が飛び交う。
近くで武器を手に取る海兵たちに『割って入る』という選択肢は無かった。邪魔しないように離れることだけを考えて白ひげ海賊団の元へと向かっていく。
白ひげの方も青キジ相手に引けを取っていなかった。時々味方からの援護はあるが、それをなしにしても青キジを追いつけているように見える。
エースの救出という目的が達成された今、私たちに残された行動はただ1つ……『撤退』だった。私たちだってエースを助けに来ただけで、海軍を潰すために来たわけじゃない。
目的を達成したら即退散。逃げるように帰るのは後味の悪い結果になってしまう感を否めないが、勝利であることに変わりない。
(そろそろ私も切りあげて……)
と、考えていた時だった。私の少し後ろの中央で白ひげ海賊団達がどよめく。数秒だけ間を空けると、炎とマグマがぶつかり合う。
「あ、赤犬だぁぁ!」
誰かがそう叫んだ。その名前を聞いた途端、私の見聞色が警告音を鳴らすがごとく激しく私に何かを伝えてきた。『この先でよからぬ事が起きる』と訴えかけてきた。
マグマと炎、同じ系統のロギアではあるが自然界に相性と言うものがある。ただの炎がそれよりも高温であるマグマに勝てるわけが無いのだ。そのまま飲み込まれるようにエースの腕が焼かれると、今度はそのマグマ矛先が“ルフィくん”へと向いた。
「「ルフィ!!?」」
ウタとエースの声が重なる。その時、私の視界は
それが
逃げ惑う人、焼き払われていく村、私を庇う母の背中……まるで10年前の写し絵だった。止まっている景色の中だが、思考が鈍ることを拒むようにどんどんと様々な言葉が頭の中を駆け巡る。
あのままではエースが死ぬ、ルフィくんが兄を失う、せっかく守り抜いものが自分の掌から溢れ落ちる、ウタが悲しむ………私はダレモマモレナイ?
……奪われる者の悲しみを、苦しむ者の怨嗟を、背を向ける者の恐怖を、失ってしまう悲しみを。もう味わいたくない……なら、ハイジョすればいい。
自分の望んだ結末を、苦しむことの無い世界を、満たさせる幸福を……それを邪魔するのなら何者であろうとも━━━━
喰ッテシマエバイイノダカラ…。
刹那、私の視界は闇に覆われるようにして閉ざされるのを、ただ呆然として受け入れることしか出来なかった。
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まず“それ”に気がついたのは、白ひげやセンゴクなどの歴戦の猛者たちだった。しかし、1拍置いて戦場を支配する“覇王色の覇気”が放たれる。
敵も味方関係なく無差別に倒れていく。その覇気に耐えれた者もあまりの
その姿は一瞬で消された。
続いて聞こえてくるのは城壁にぶつかる爆発のような轟音。誰も彼もが理解できない状況なのだが、この騒動の原因はすぐに分かった。
赤犬が元いた場所に少女が立っていた。先程まで大将黄猿と互角にやり合っていた“歌姫の守り手”が
すると、その少女の頭の上でドポッと黒いドロドロとした液体が生まれる。そのまま天蓋のように広がっていくと、まるで体全体を覆い隠すベールのような膜が出来上がっていた。
「悪魔だ……」
誰かがぽつりと呟いた。美しくも儚げな雰囲気を漂わせているのに、触れば地獄に引きずり込まれるような圧。“触れてはいけないもの”を見てしまったかのようだった。
しかし、そんな中でも即座に動いた影がふたつ……青キジと黄猿だった。
体の限界でその場に座り込んでしまった麦わらのルフィと、それを見下げる少女諸共、“八尺瓊勾玉”と“氷河時代”の広範囲の攻撃で消し去ろうとする。
しかし、攻撃が届く前に黒い膜から2本の手と思わしき触手が伸びると、飛んできた光と氷を全て飲み込んだ。そして、そのまま伸びた手は2人を掴むと、しなりをつけて地面に叩きつけた。
後に残されたのは攻撃する前と変わらない状況だけ…。今度こそ戦場そのものが凍りついた。
得体の知れない何かが生まれたことに白ひげとセンゴクも身構えるが、今度は少女を覆っていた膜がだんだんと溶けていく。
黒い膜が完全に消え去ると、少女はフラフラと何度か揺れた後に地面へと倒れ込んだ。誰も彼もが呆然としている中で、最初に動いたのは“歌姫”だった。
「フェリ!!?」
倒れたフェリをだき抱えると、涙を浮かべながら手を握る。あの姿は何だったのかなどウタにとっては些細なことだった。ただ、友達の無事を祈って手を握っていると、眠るように息をするフェリに安心して胸を撫で下ろす。
しかし、安心した瞬間に襲われた眠気にウタも抗うことが出来ずに、そのまま重なるように眠りの世界へと沈んでいった。
「ウ、ウタ!?」
ルフィが向かうとするが、何度も限界を迎えた体は言うことを聞かずにガクンと座り込んでしまう。そんなルフィを支えたのは他でもないエースだった。
「立てるか?」
「あ、あぁ…俺は大丈夫だ。けど、ウタ達が……」
「心配するな。眠っているだけで一つも傷は付いちゃいない」
前にルフィの海賊船に訪れた時には無かった2人。仲間ではないが、少なくとも赤と白のツートンカラーの少女はルフィにとって大切な人らしい。
それにその子を慕ってついてきている銀髪の少女も、白ひげ海賊団とってもエースにとっても大恩ができるほどの人物なのだ。ここで失ってしまうわけにはいかない。
「エースくん!無事じゃったか!」
「ジンベエ……済まないがこの2人を守ってやってくれ。ルフィの大切な奴らなんだ」
「分かった!それでエースくんとルフィくんはどうする?」
「俺達も船に戻る。ルフィはもう限界だ」
エースもあまり良好とは言えない状態ではないものの、立つ気力さえ失ってしまったルフィの方が渋滞だった。ろくに戦える状態じゃない。
今はまだ追っ手がないにしても、三大将含めて海軍本部の戦力はまだまだ衰えていない。むしろ、自分の勝手な行動で弟の命が危険にさらされたことに罪悪感を覚える。
「野郎ども!船長命令だ!」
白ひげや声が響き渡ると、呆然としていた傘下の海賊達はその言葉に身を引き締める。
「その恩人達を全力で守れ!死なせたら白ひげ海賊団の恥だぞ!」
「「「「「うおおおおぉぉぉ!!!」」」」」
「親父…!」
感極まる様子で後ろを振り返るエース。鬼の血を引く自分を助けに来るだけでなく、命をかけてまで己と弟達を助けてくれる家族に目からうっすらと涙がこぼれていた。
しかし、すぐにそれを腕で拭って走る。今はまだ泣く時ではない。皆が無事に海へ帰ったその時こそ、笑いあって泣くのだとエースは心のうちで強く決意する。
船長命令と共に白ひげ海賊団の面々が一斉に活路を開いていく。白ひげ海賊団の士気がたったひとつの命令で息を吹き返したた様子を、忌々しげに見つめていた。
「貴様……死ぬ気じゃなかったのか?」
「グラララ!すまねぇなセンゴク!どうやら俺ぁまだ死ねないらしい!」
いつもよりも楽しそうに笑う白ひげに、センゴク含めて海軍全体が覚悟を決める。世界最強の男の海賊団と海軍本部が生き残りをかけた……頂上決戦最後の攻防が始まった。
はい、前話で完結させるとか言いつつちょっと内容を入れきれられなかった作者です。
元々この話で頂上決戦編を完結させるつもりだったんですけど、内容がないようなので次話まで引っ張られせてもらいます。(後、文章構成とか適当ですんません)
if、exルートの別箱についてはもう分けることで決定しちゃったんで近日中に分けようと思います。一応、数日間は今残してあるやつはそのままにしておきますけど、全部移動した後に削除させてもらいますので、続きはそちらの方で楽しんでください。
【NEXT 予告】第二次プロフィール選手権です
2.物語を書く上での構成
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《過去と今を比較した構成》
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《おめぇの好きにしやがれ!》