こちらは【ex】シリーズです。このシリーズは感動系を中心に作るので、それが合わないな。と思う人は本編とヤンデレ編をお楽しみください。
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赤髪海賊団の船首の上で、銀の長い髪をなびかせながら静かに草笛を吹く1人の少女。遠くの水平線を見つめながら吹いてる音色はどことなく気が抜けているようにも感じる。
「こら!フェリ〜!演奏してくれるって約束したでしょ!どこにいるの〜!?」
甲板の方から聞こえてくる声に私は草笛を吹くのをやめると、すぐさま船首から降りて声の主の元へ向かって歩く。ああなってから時間が経ちすぎると非常にめんどくさいので、すぐさま向かう。
「あっ!?こんなところにいた!?ほら、昨日続き!早く吹いてよ!」
「分かった分かったから!そんなにグイグイ引っ張らないで!?」
その光景を傍らでほのぼのとした様子で見守るのはシャンクス率いる赤髪海賊団の面々。「は〜や〜く〜!吹いてよ〜!」と駄々をこねるウタにフェリは困ったような笑顔を浮かべながら頭を撫でる。
「今日もうちの娘たちは元気なもんだな!」
「あれでもフェリの方が妹なんだがな……。なんでお転婆と落ち着きを真っ二つに割ったような双子に育っちまったんだ……」
「そりゃあ、ウタを育てたのが“船長”でフェリを育てたのが“副船長”だからだろ!」
「「「「「違いねぇ!!!」」」」」
「おい!?そりゃねぇだろう、お前ら!?」
わいのわいのと騒ぐシャンクス達を無視して、私は草笛を咥えると音色を奏でる。その音が聞こえた瞬間、静まり返ったシャンクス達は娘のステージに耳を傾ける。
ウタも私の近くに座って音色に合わせて体をゆらゆらさせている。
吹いているのは海と平穏をテーマにした音色。ゆったりとした音程から徐々に力強い音色へと変化してフィナーレを迎える。すると、ウタが立ち上がって今度は「海賊の歌を吹いて!私も歌うから!」とリクエストされた。
「おっし!お前ら!一緒に歌うぞぉ!」
「「「「「「「待ってましたぁ!!!」」」」」」」
そこからはどんちゃん騒ぎの宴になった。昼間から酒を飲むのはどうかと思ったが、幸せそうにしているシャンクス達を見ていると、止める気にはなれなかった。
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フーシャ村を拠点にして航海するのも随分と長くなっていた。ルフィなんかはよくウタと競い合いをしてるし、マキノさんはいつもシャンクス達に酒場を開いてくれる。のどかでいい場所だ。
この前のエレジアでは随分と大事になったけど、あの時ゴードンさんにボロボロの楽譜を渡しておいて良かった。ウタも“赤髪海賊団の音楽家”として残るって言ってたし、いつまでもこんな航海が続くんだろうなぁ。
「ウタ!勝負だ!」
「いいわ!いつものチキンレースでで勝負よ!今回も私が142連勝してあげるんだから!」
「違う!俺が142連勝中だ!それにこれからも俺の連勝が続くもんね!ゴムゴムの実を食ったし!」
「それは関係ないでしょ!?」
あの時は敵船から奪ってきた悪魔の実をデザート感覚で食べるとは誰も思わなかったからなぁ。手を引いた時手がビヨーンって伸びた時はほんとに驚いたのをよく覚えてる。
私たちがフーシャ村にいるのは、今回の航海には連れて行ってもらえなかったからだ。あのエレジアでの一件以降、過保護になったシャンクス達は「ちょっとした用事」ということで数日前にこの村から出航していた。
連れて行ってもらえないことにウタが駄々をこねて、私が不満そうにしているのを苦笑いでシャンクスは頭を撫でてくれる。「すぐ戻るさ、その間ゆっくり休んどけ」と言われれば納得する他なかった。
毎度勝負前のお約束みたいなやり取りをしながら、マキノさんのお店へと入っていく2人について行こうとしたが、私の頭の中でピリッと嫌な予感がよぎった。
「どうしたのフェリ?早くこっちおいでよ?」
「ごめんウタ、ちょっと用事を思い出したからそこで待ってて!」
そう言い残すと、私は違和感の方に向かって走り出した。こういう私の勘はよく当たる。今回の場合、ルフィ達とは合わせては行けないという予感が働いた。
(だいぶ近くなってきた…)
どんどんと近づいてくる嫌な気配を感じて慎重な足取りで進んでいくと、誰かと誰かが争っている音が聞こえて来る。
「す、すまない!わざとじゃないんだ!」
「はぁ?そんなの関係ねぇんだよ!お前は俺を不愉快にさせた。死ぬ理由はそれだけで十分だろ?」
「そ、そんな……」
片方は地面に土下座しながら許しを乞う村の人、もう一方はこの前の航海前にマキノの酒場にやってきた……名前は覚えてないけど山賊だったはず。
村の人が何をしたのかは分からないが、非常にまずい状況だった。あの山賊達の長は人の命を軽んじてる輩だ。おそらくあの人の首なんて簡単に切り捨てる。
ルフィを置いてきて良かった。あの子がいたらシャンクスをバカにするだけでなく、村の人を殺そうとしてる場面を目にしただけでつっかかっていくはずだ。
しかし、大人を呼ぶにもここからでは遠すぎる。ということは、私がどうにかしなしなくちゃいけないということだ。
「えい!」
「ぶっ!?誰だぁ!?この俺に泥団子をぶつけてきやがったのは!?」
「私だけど?」
「てめぇか!このガキィ!」
激昂してこっちを睨みつける山賊。私に注目している間に村人へ手でちょいちょいと『逃げろ』と指示すれば、すぐさま彼は村の方へと走っていった。
「舐めた真似しやがって!!ガキだからって容赦すると思うなよ!」
そう言いながら1人の山賊が武器を片手にこっちへ向かってくる。鉄製のショートソードを振り下ろそうとするが、その隙を狙ったかのように男の股下をくぐり抜けると、最大の弱点である場所に蹴りを入れる。
「はぐぅ!?」
「じゃ、これ貰うから」
あまりの痛さに大事なところを守って崩れ落ちた山賊から武器を奪う。ちなみにこれは“護身術”だ。ベックマン直伝の。
「ちっ、ただのガキと舐めてかかるんじゃねぇぞ!」
「「「おおおぉぉ!!」」」
たった1人の少女に複数にはどうかと思うが、こっちだって海賊だ。卑怯やなんのと言えるほどの立場は無いのだ。なので、普通に応戦するしかない。
「てりゃ!」
「うわぁっぷ!?なんだこれ、目がァァァァァ!?」
「こいつ、コショウをまきやがったな!」
腰のポーチからホンゴウさん特性のコショウ玉(護身用)を当てて目潰しすると、さっきの人と同じく丁寧に弱点を狙い打つ。コショウ玉1個につき怯ませられるのは数人だけ。
逃げることを想定して作られたコショウ玉だから数は少ない。ある程度場が混乱してきたら念の為にと持たされた煙玉で逃げるつもりだ。
「おまえら!ガキひとりに何やってやがる!?」
「す、すいません!?すぐに始末します!」
ボスに急かされて無鉄砲に突っ込んでくる山賊達を相手にする。何の策もない動きだったので仕留めやすかったが、数人倒すと既にコショウ玉の残弾が空になっていた。
しかも、時間が経って痛みが引いてきた者達からどんどん攻めてくるのでこれ以上の交戦は危険だと判断し、すぐさま煙玉を地面に投げた。
「こ、こいつ!煙玉なんかも持ってるぞ!」
「どこだ!?探せ!」
煙の中で右往左往している山賊たちを置いといて、すぐさま村の方へ戻ろと走り出したが……
「どこ行くんだ!?ガキィ!」
「がふっ!?」
煙を抜けた瞬間、横から腹に入る一撃をもらって体空気が抜けるような声とともに地面へ転がる。揺れる視界の中で目を向けると、私のことを蹴ったのは山賊ボスだった。
「ヒュッ!ゲッホゲホ!」
「俺に楯突いて逃げようとはいい度胸だな」
「イッ!?あっ!?」
髪を掴まれるとそのまま吊り下げられるように持ち上げられる。その時にポーチも一緒に地面へと落ちて、私が抵抗できる武器は手元に残らなかった。
「よく見りゃお前はあのヘタレ海賊のとこにいたガキじゃねぇか。あいつらガキの躾がなっちゃいねぇな」
「ッ!シャンクスをッ、バカにするな!この山猿!」
「ちっ、うるせぇガキだ。このまま売りもんにしても良かったが、こんな強気なガキはいらねぇな」
そのままそのボスは私の髪をつかみながらスタスタと海崖のほうへと歩いてく。私と何とか離れようと動くが、何度蹴ってもボスはビクともしなかった。
「海賊は海賊らしく海の藻屑になりな」
「シャンクス達が黙ってないんだからッ!」
瞳に涙を浮かべながら精一杯そう叫んだ。『私に手を出して、家族が黙っちゃいない』と。
「へっ、死ぬまでそうやって叫んでな。あばよ」
パッと手から離されると、真っ逆さまに海の中へと落ちていった。落ちていく瞬間、まるで走馬灯のように赤髪海賊団で過ごした皆との色んな記憶が見えた。
ごめんシャンクス、皆。あんなに皆のことをバカにし奴に一発と殴れなかったよ。ウタ、ごめんね。もう一緒に演奏するのは無理みたい。ルフィ、泣いちゃうかな?みんな悲しんじゃうかな?
グルグルと頭の内で謝罪に似た言葉が並ぶ。伝えたかったことが伝えられないことに酷く悲しみながら、私の意識はプツリと途切れるのだった。
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山賊に連れされたルフィを連れ戻してきたシャンクスは、ルフィを救う代わりに左腕を1本失っていた。誰もが信じられないと固まってしまったが、すぐさまホンゴウが止血を行う。
レッドフォース号を停めた港付近で治療を受けていたシャンクスはふと、あることを思い出してウタを呼ぶ。
「なぁ、ウタ。さっきから気になってたんだが、フェリはどうした?」
「フェリなら山賊達が来る前に『用事がある』って言ってどこかに走ってたけど……」
「ふむ…おい!誰かフェリを見てないか?」
集まってきた村の人達に向かって尋ねる。「おい、大声出すんじゃねぇ!お頭!」とホンゴウから叱咤が飛んで来るが、それよりも娘のことを優先する。
しかし、村の人達は全員顔を見合わせるばかりで誰も知らないようだった。もしかしたら、また山の方へ行ってしまったか?と思っていると、顔を真っ青にした青年がおずおずといった様子で前に出てきた。
「君、何か知ってるのか?」
「俺のせいなんだ……俺のせいであの子は!」
まともじゃない様子で叫ぶ青年にシャンクスたちの表情は険しくなる。しかし、青年が語っていく内にその顔が真っ青な表情へと変化した。
「その後落とされたんだ!海崖の下へ真っ逆さまに!」
「どこだ!?どこの海崖だ!」
「ここから真っ直ぐ東の方へ行ったところだ……」
全てを話終えると、青年は涙を流しながら「ごめんなさい……」と謝ってきた。だが、赤髪海賊団の船員たちはそれどころの話ではなかった。
全員が全員その話を信じられるず混乱。頭を抱えるものや、現実逃避するように頬をつねる者まで現れ始めた。
そして、ウタも妹が死んだなどと聞かされれば精神状態は不安定となり、すぐさま大声で泣き始めた。ルフィはシャンクスの左腕の件で涙を流しているのに、また大声でウタと一緒に泣き始める始末。
「てめぇら落ち着きやがれ!まだ死んだとは決まってない!すぐに捜索へ行くぞ!」
「「「「「ッ!?イエッサー!」」」」」
この中でまだ1番冷静だったベックマンの指示で、他の全員たちは冷静さを取り戻し、すぐさまその海崖の方へと走っていく。
「お頭落ち着け!その重体で行ってどうする!?」
「娘の一大事なんだ!行かせろホンゴウ!」
「ダメだ!あんたまで失血で死んじまったらウタはどうする!?1人にするつもりか!?」
「くっ……」
シャンクスは右手をまるで握り潰してしまそうなほどの力で拳を作る。そんな様子の船長にベックマンは「俺らに任せろ」とだけ伝えてみるが、シャンクスは「あぁ」とイラつきながら返事を返すだけだった。
この時ほど、自分の無力さを痛感したことは無い。と、後にシャンクスは語る。
赤髪海賊団の船員達は娘の無事を願って目撃現場を船まで出して調べたが、三日三晩たっても髪の毛1本どころか、姿形すら見つけることは出来なかった。
やりようのない怒りは徐々に全員の目を曇らせていく。特にシャンクスや実の娘のごとく可愛がっていたベックマンに関しては深度が酷かった。
ウタも悲しみとショックで長い間部屋に閉じこもり、毎日毎日妹の生存を祈って涙を流し続けた。
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とある海岸で一人の男が波打ち際に立って夜空を見上げていた。黒いローブを着こなし、フードを被って顔を見せないようにしている。
彼の名は“モンキー・D・ドラゴン”、世界に反旗を翻す『革命軍』を立ち上げた総司令官だった。少し間だけ暇ができたので、久方ぶりに1人でこうして夜空を見上げているのだ。
しかし、世界的に狙われている自分が長く1人になるのもまずいのでそそろ戻ろうかと思い、踵を返そうとしたその時だった。
「あれは……」
ぷかぷかと仰向けで頭から尋常じゃないほどの血を流している女の子だった。すぐさま彼女を拾い上げて見ると「ぅ…」と小さく呻き声を発す。まだ生きていると分かれば、そこからの行動早かった。
ドラゴンは急いで自分の乗ってきた船へと急ぐ。理由はどうであれ『民の自由』を望むドラゴンには怪我人に身分も歳も関係ない。
冷えきったしまった少女の体を一刻も早く船医に見せるべく、元来た道へと引き返すのだった。
はい、ここ2日寝不足で頭が回ってなかった作者っす。今回の話は事前にご提示していただいたストーリーを元に作っています。1話じゃさすがに完結しきれないんで数話区切りで投稿することにしました。(普通に書いてて楽しかったすね)
でね、ちょっと思ったんすよ。『このifルートとかexルートを本編の所に置いといたらぐちゃぐちゃにならね?』と、皆さんがそこまで気にしてないならいいんですけど、読みにくいって場合はそっち専用の箱は作ります。(アンケート案件)
これからもできるだけ定期的に更新してくんで応援よろしくお願いしますね!