こちらは【ex】シリーズです。このシリーズは感動系を中心に作るので、それが合わないな。と思う人は本編とヤンデレ編をお楽しみください。
大海賊時代の幕開けから幾年が経っていた。海賊たちがワンピースを求めて海へと飛び出していく。中でも近年は有力な海賊達が盛んに動き始め、時代の大きなうねりを生み始めていた。
そんな中、ワンピースを狙う海賊とは違い世界政府に反抗するべく立ち上げられた組織『革命軍』。その総本山であるここ“バルディゴ”では今日も全世界へ向けてへの活動が行われているのだが……。
「やああぁぁぁぁ!」
「はああぁぁぁぁ!」
外から聞こえてくる戦闘音につられてドラゴンが下を覗いてみると、人の波が円を書くようにして集まっていた。
その中心では革命軍内でも優秀な2人の若者が“対人格闘の訓練”と銘を打って喧嘩をしている。
1人は金髪で額の1部に火傷の跡が残っている革命軍の“参謀総長”サボ。そしてもう片方は長い銀色のロングヘアーが目立つ革命軍の“単独撃滅戦闘員”フェリだった。
「今日も仲が良さそうだな」
18と17という1歳差ではあるものの、ドラゴンの手によって救われたと同時に
「すみません……本部前であんなにドンパチしてしまって…」
「いや、別に気にしてなどいない。むしろ見ている奴らにはいい息抜きになるだろう」
申し訳なさそうに頭を下げてくるのは、あの二人とよく一緒にいるコアラだった。3人の中では最も良識的な感じではあるが、これでも魚人空手の使い手なので結構強い。
ただまぁ、外で喧嘩している2人ほどの化け物では無い。むしろ、振り下ろした拳を受け止めたら地面が数cm沈んだとか、掴むようにして伸ばした手を回避すると後ろの岩が粉砕する方がおかしいのである。
「はぁっ、はあっ……随分と疲れてるみたいだな」
「……それは、そっちもでしょ」
そりゃまぁあれだけ暴れてたら消費するよねぇ。と事の顛末を見守っていたコアラだったが、ある人物がそこへ向かっていくのを確認すると一安心するように息を吐いた。
「いい加減にしろ!2人とも!」
「ぐあっ!?」
「いった!?」
2人の頭に拳骨を落としたのは彼ら3人の“保護者”みたいな立ち位置に収まってしまった魚人のハックだった。一回2人のまじ喧嘩で本部がふっとぶそうになった時に止めた事からサボとフェリのお目付け役を押し付けられた可哀想な人でもある。
「で、今日はなんで喧嘩をしてたんだ?」
「だってよぉハックさん!フェリの奴『革命軍やめる』とか言うんだぜ!?」
「そうなのか?フェリ」
「もうちょっとしてからドラゴンさんを通して伝えるつもりだったですけどね」
周りにいた革命軍メンバーの人たちもどよめいている。本部のしかも実力的にはナンバー2のサボとも互角にやり合える戦闘員が組織をやめる……そんな話を聞いて動揺を隠せないのは仕方の無い事だった。
ちなみにこの話を知っているのはドラゴン、コアラ、イワンコフの3人だったりする。ドラゴンは前々から辞めるつもりだったフェリを止める気は無いし、相談を受けた残りの2人も特に引き止めるようなことはしなかった。
ていうか、革命軍に所属している人なら(そろそろかなぁ……)って思ってたくらいである。前々から『海に出る!』と公言してたし、記憶のない子が自分を取り戻そうしてるから引き留めようという考えは自然と浮かばなかった…………サボ以外は。
正直に言うとサボは若干フェリに惚れている。ただまぁ拗らせ方がえげつないのだ。喧嘩友達、境遇が似た仲間みたいな意識で接してきたぶん、点で恋愛に関しての気持ちを自覚できずにいた。
「これから世界のために戦うって言うのになんでだよ!?」
「私なんかじゃ世界の命運とかは背負えないかなぁ…って。それにここを離れても私は人を助けるために活動していくつもりだよ?」
「それじゃダメなんだ!それじゃ…ッ!」
(もうさっさと自覚しろよ……)とこの光景を見ていた全員の心が1つになった瞬間である。
サボのことはさておき、革命軍としても単独行動で軍隊を丸ごと潰してこれるフェリの戦闘力を失うのは痛手だったが、元より革命軍は『人民の自由を勝ち取るため』にできた組織なのだ。
その革命軍で育った彼女がここを離れたとしても民衆のために戦ってくれると言われたら、古参の奴らは涙を目に浮かべる。
「と、言うわけで今月中にはここを出ていくつもりだからそのつもりでね」
「絶対諦めないからな!俺が勝ったらここに残るって言う約束を忘れるなよ!」
「ふふん!それも私が出るまでに勝てたらって話だけどね♪まっ、せいぜい頑張ってみなよ!」
余裕綽々と言った様子で立ち去るフェリを睨みつけるサボ。その後何度もサボはフェリに勝負を挑むが、結局“勝利”という2文字を得ることは出来なかった。
そして、とうとうフェリは育ててくれた革命軍の皆に別れの挨拶を言って、自分の求めていた海の冒険へと旅立った。
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革命軍のドラゴンさんに拾われた私は、随分と頭に酷い損傷を受けていたらしい。何度も何度も目覚めたばかりの私に問いかけてくる人はいたが、目覚めた日は頭が回らず一日中ボーッと1点を眺めていた。
そして、完全に意識が戻ったのは次の日だった。私の中身は空っぽになり、記憶が全て抜け落ちて自分が今までどんな生活をしてきたのかを完全に忘れてしまっていた。
かろうじて名前と年齢を覚えていて、それと同時に強く頭の中で浮かんだ単語が『赤髪海賊団』だった。
当時は私の話を聞いていた人達は大慌てで情報収集をし、色々と質問してくれたが、それでも私の記憶が戻ることは無かった。
『赤髪海賊団』に何らかの繋がりがあると言う情報以外不明だった私を、ドラゴンさんは革命軍で引き取って育ててくれた。
そこからは17歳になるまではずっと鍛錬を続けてきた。自分の手に馴染む武器を極めたり、その他にも海の上で必要な教養は全て頭の中に突っ込んだ。
ハックさんから魚人空手を教えて貰ってほぼ1年ほどで会得したり、私と同じく記憶喪失のサボとよく喧嘩したり、コアラとは自分の夢を語り合ったりなんかもした。
とある日、革命軍の人から興味本位で教えてもらった『覇気』という力をちょこっと試してみたところ、私の体は3つの覇気全てに素質があると分かった。
『見聞色』に関しては前から少し使っているという感覚は感じていた。人の悪意とかを選択せずに読み取ってしまう力。ざっくり言うと『勘』の強い人になっていたという。
無意識下でも使ったことがあるなら容易に習得できると思うことなかれ。私が一番苦労したのは本当に後にも先にもこの覇気しかない。
とりあえず、手短に覇気を体感するために『見聞色』の覇気を自在に使えるよう何度も練習した。鍛えると少し先の未来すら見えるらしいが、そんなレベルまで達することは出来なかった。
次に習得したのは『武装色』だ。体の一部を硬化するのと、衝撃波を発して攻撃する二つのやり方を死に物狂いで会得した。これで物理攻撃の効かないロギアでも攻撃を当てられるようになる。
そして、最後の覇気『覇王色の覇気』。これに関しては鍛える段階に入る前から苦労した。この覇気は使える人が非常に限られる覇気であり、革命軍でも使える人は片手で数えられるほどしかいなかったので、使えるようになるまでがすっごく大変だった。
それでも実践を重ねるにつれて研ぎ澄まされていった。
国民に不当な罪を被せる悪代官のいる国、冒険家を語りながら民間人から略奪していく海賊紛いの悪党、正義を掲げながら守るべき市民を蔑ろにする海軍。
様々な相手と手合わせしているうちに私は革命軍の『単独撃滅戦闘員』などという物騒な2つ名を付けられるほどになっていた。
せめてもの救いが革命軍以外の組織に私の存在がバレていない点だ。敵対した奴は徹底的に叩き潰したし、助けた民間人の人も私のことに関して固く口を閉ざしたのが幸いした。
そうして革命軍の一員として過ごしていくうちに、私の中でひとつの願望が生まれていった。
「海に出たい」
そう何度も革命軍の皆に伝えていく。それでも拾ってもらった恩があるので、少なくとも17歳までは皆に恩返しを兼ねて活動を共にしていた。
そして、世界中で活動が活発的になってきた17歳のある日を境に、私は革命軍を離れることに関してドラゴンさんに伝えた。それほど反発されることなく「分かった」とだけ言って辞めることを許してくれた。
そして、出発日。革命軍のみんなは快く私の船出を見届けてくれた。私の子供時代から知ってる人達に関しては涙を流しながら手を振ってくれている。
サボは始終不貞腐れていたが、「……これ持っていけ」と大きめのパーカーをくれた。(ほんとツンデレだなぁ)と思いながらも頭を撫でてお礼を伝えると、耳を真っ赤にしていた。
「皆行ってきます!元気でねぇ!」
「頑張れよ!」
「怪我と病気には気をつけろよ!」
「彼氏なんて出来たら1発そいつを殴りに行くからな!」
手を振って海へと出れば皆から色んな言葉を送られた。最後のやつに関しては随分先になりそうだな。私は私より強い奴にしか付き合うつもりは無いから。
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「おい、女。そこを退きな」
半ギレの海賊の前に立つのはサボからもらった黒のパーカーを深く被る私。その後ろには震えながら海賊たちに怯えている街の人達が集まっていた。
数十人対私。多勢に無勢という言葉がピッタリ合いそうなこの状況でありながらも、私は飄々とした余裕を持って立ち塞がっていた。
「この先に進むなら私が相手だ」
「はっはっは!てめえみたいなガキが俺らの相手だと?バカも休み休み言うんだな!」
後ろの子分たちも釣られるように下品な笑いをあげるが、先頭の男だけは私の首にサーベルを突きつけてくる。
「お前らの運命は決まってんだよ。売られるか死ぬかだ。ごちゃごちゃと無駄なこと言ってねぇでさっさと降伏……がぺぇ!?!?」
一瞬でその姿をかき消した先頭の男。消えたと同時に隣の建物の壁に奇妙な人間の形をしたアートが出来上がっていた。
「さて、次は誰?」
「や、やっちまえ!!」
「「「「「う、うおおおおぉぉぉぉぉ!!」」」」」
各々が自分の武器を掲げて1人の少女に突撃しようとするが……。
「よっと」
ガシャンと私の片手に現れた武器をひと目見ると呆然とした様子になる。なぜなら、少女の身の丈に合わない巨大な斧を片手1本で楽々振り回しているからだ。
「んじゃ、やろっか?」
とてもいい笑顔を向ける少女に、海賊たちはただただ恐怖を覚えることしか出来なかった。
………………
………
…
「助けていて頂き、ありがとうこざいます!貴方様がいなければ私たちは抵抗することも出来ませんでした…」
「いいんですよ。私が好きでやってることなんですし。それと、数日は復興の方にも尽力させてもらいますね〜」
革命軍を飛び出した私は、こうして日々海賊たちに襲われている村や街を助けながら旅を続けている。特にこれといった最終目標は決めていない。
時々大きな町に行った時は支部の人たちと顔を合わせることがある。だが、近況を本部に伝えてもらってるくらいで、革命軍の活動には一切関与していない。
私にはこういった自由に冒険する方が好きなのだ。
〜♪
「ねぇねぇ!お姉ちゃんのそれなんて曲なの?」
「ん?これはね、私が覚えてる曲で『シナリオ』って言うんだよ。あなたも一緒に練習してみる?」
「する!」
こうやって助けた島の子達に草笛を一から指導してみるのも随分慣れてきた。“名前は覚えてるけど、何故作ったのか分からない曲”を教えてあげると皆すぐに上達していった。
こうして世界各地を旅していくうちに、皆が私のことを“
しかし、人というのは手を差し伸べてくれる人のことを余程特別に思うようで、いつになってもその呼び名が消えることは無かった。
衰えることの無い海賊達の略奪。そんな日々を過ごす人たちにとって私は“希望”そのものだったのだ。
「最近は四皇が暴れているから近海での漁業もあまり出来んのですわ」
「そう、なんですね…」
「私たちの隣にある島は珍しい食材があるからって言う理由だけで四皇の海賊に滅ぼされたんですよ!」
「ひどい…」
「私の息子は四皇の海賊に殺されたんですッ!変な実験の被検体にするって言って!」
「……」
悲痛に叫ぶ島の人々を見ていると、私にもそういう接点があることに気付かされた。海賊は悪だ。最近では国ひとつを丸ごと自分の手中に収めようとする輩もいる。この時代は海賊で腐りきっていた。
『赤髪のシャンクス』、奴もまた四皇の海賊だ。私が酷く奴らを覚えている理由が少しわかったのかもしれない。だからこそ、私みたいな人を増やさないためにも……
「私がッ!直接倒してやる!」
怒りの矛先は四皇の海賊団へと向いていった。
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「今日はこれくらいかな…」
「海賊から守っていただいただけでなく復興の支援もしてくださり、島民全員が心から感謝しております」
「お礼なんていりませんよ。自分の信念を貫いてるだけですから」
村を走っていく子供達を見ながらそう答える。村長さん曰く『この村にも随分と笑顔が戻りました』との報告を聞けば、少しだけ嬉しくなった。
こうして自分探しの旅を始めて約2年の月日が経ち、私は19歳になった。
相も変わらずその日も海賊たちを片付けて復興に力を注いでいると、遅れてくるように海軍の軍艦が街の港に着港した。
(今更来たの?私が来なかったらこの島は焼き尽くされていたんだよ?)
職務怠慢な海軍に向けてジト目を送っていると、村長さんがこっちに来て海軍の人が私を探してここに来たと言うことを伝えてくれた。海軍と関わるのは中々にリスキーだが、放っておいても後々めんどくさい事になりそうなのでそのまま案内してもらう。
案内された場所に行くと、『正義』の2文字を背負った1人の男の人が私を待ち構えていた。
「あなたが
「断じてそんな名前じゃないですけど、通り名で『
「そうか。まずはこの島を助けて頂き感謝を申し上げる」
「ん、何度も言うけど好きにやってる事だから気にしないで」
「寛大なのですね。それで今回あなたをお訪ねしたのは本部からの用件があっての事です」
この海兵の様子を見るに、私が革命軍だということバレていなさそうだ。という事は、今回の要件はメシア関連の用件ということになる。正直、非常にめんどくさい。
「で?わざわざ私を探してまでの用件とは?」
「はい、先日新聞でも報道されましたように『白ひげ海賊団2番隊隊長“火拳のエース”の公開処刑』で、あなたに協力を元帥であるセンゴクさんから要請されました。つきましては我々と一緒に本部までご同行頂きたいのです」
「…………………は?」
誰でもいいからここで思考を放棄しなかった私を褒めて欲しい。とそう強く願った。
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(懐かしい音が聞こえる…)と、シャンクスは停泊した島で耳にした音色に耳を傾けた。もう何年も聞いていない珍しい草笛の音、昔船に乗っていた愛しい愛娘が好んでいた音だ。
「ねぇ、シャンクス……」
「あぁ……」
袖をキュッと掴んで来るのは19歳になったウタだ。あの日から来る日も来る日もフェリの事を忘れないように歌い続けていたせいで、その音色にいち早く気がついた。
音のする方へ2人でゆっくり歩みを進めていくと、昔見た光景と重なるように草笛を引いている少女を見つけた。
シャンクスが近づくと少女は身をこわばらせたが、ウタが優しく「悪人じゃないよ〜」と伝えれば徐々に警戒心を解いてくれた。
「その音色と草笛って誰から教えてもらったの?」
「
その単語を聞いた瞬間、シャンクスとウタは顔を見合わせた。その名前は2年ほど前から聞き及んでいる。
どこからともなくふらりと島に姿を見せれば、悪い海賊たちを追い払ってくる正義の味方。なんて呼び方もされているが、一般的には少女と同じ呼び方をしている人の方が圧倒的に多い。
そんな彼女が何故自分たちの娘と同じ音色を知っているのかが、非常に気になる。叫び出してしまいそうな声を飲んで、ウタがもう一つだけ質問をする。
「その曲の名前は?」
「『シナリオ』だって!あの人のお気に入りを教えてもらったんだ!」
「「ッ!?」」
全く同じだった。音色も曲名もそして、赤髪海賊団をイメージして作ったということでお気に入りだった部分も含めて、全てが一致していた。
「シャンクス!」
「ああ!分かってる!」
2人は少女にお礼としてたっぷりのお菓子をあげると、急いでレッドフォース号に急ぐ。
12年もの間行方をくらましていた娘がまだ生きている。その希望を見つければ、いてもたっていられないのは仕方のない事だった。
シャンクスは船に戻ると、すぐに出港命令を出した。不審に思った船員達は多くいたが、「フェリが生きてる」と言えば古参の乗組員達は驚きながらも出港の準備を早めた。
こうして、どんな宝よりも貴重な情報を得た赤髪海賊団は、ただ真っ直ぐに“
はい、三連休大いに楽しんだ作者です。
次くらいでこのex:another編は一応完結するようにしますので、気長にお待ちください。後日談に関しては前作のexと織りまぜて作っていくので、そこら辺も考えて分けていきたいと思っています。
それでですね。以前からとっていた『if、ex用の箱を作る』件に関してなんですが、分けた方がいいという人が多かったので分けます。後日全ての話をそっちにお引越しさせておくので、私のプロフィールからご確認ください。