「〜♪」
エレジアに来て早6年、17歳になった私は背中にカゴを背負って鼻歌を歌いながら砂浜をスキップしていた。
この島にはまともに航海できるほどの船はないし、もとより故郷へ戻ったとしても誰もいないのが当たり前なので、私はゴードンさんに甘えて今はエレジアに留まって生活している。
ウタとはすぐに打ち解けて色々なことを競い合った。「なんでこんなことが好きなの?」と過去に1度聞いてみると、彼女は幼馴染とこうして毎日競い合っていたそうな。
競い合いの他にも一緒に勉強したり歌ったり、時には星を見に行ったりした。こうしてみると友達って言うよりなんだか“家族”になった気分だ。
そうそう、彼女の不思議な力についても教えてもらった。“ウタウタの実”っていう悪魔の実シリーズを食べたのが原因らしい。今まで噂ばかりだと思ってたけど実際に存在したんだ!?とその時は驚いたなぁ。
もちろん私もタダで住んでいるわけじゃない。3人分の家事全般だったり島の木の実を取りに行ったりと、結構体を張った仕事をこなしている。今日だって木の実を取りに来ている最中だ。
働いてるおかげで体力や腕力は結構ついた方だと思う。今じゃあエレジアは私の庭だ。危険な動物がいないから、森で密かに特訓をしていることは2人には内緒にしている。
元王宮の中には図書館があって様々な本が置いてある。大体が歴史書や音楽に関する本だが、少しだけ武術書みたいなのが残っていたのでそれを参考に修行を重ねていた。
特に興味を惹かれたのは“覇気”と呼ばれる技だ。覇気にも種類があって覇王色の覇気、武装色の覇気、見聞色の覇気の3つがある。
この中で私が今習得中なのが、見聞色と武装色の覇気だ。覇王色の覇気?あれはムリムリ、だってあんなの才能の塊が覚醒して会得できるやつだよ?私なんかには無理だよ。
本読みながらであるから多少最初は苦労したものの、コツを掴んできている。完全に会得するのも時間の問題だ。
「〜〜♪ん?またなんか流れ着いてるな?何あれ……宝箱?」
砂浜を歩いていると、流されてきたであろう船の残骸や壊れた樽や木箱のゴミが散乱していた。エレジアって偶にこういったものが流れてくるから探す側にとってはお宝探しに等しい。
ただ今回は壊れていない宝箱が流れ着いていた。こういう流れ着いたのって大体が破壊され尽くしたあとだからここまで綺麗に残っているのは非常に珍しかった。
「ほ〜ん?鍵がかかってないとは不用心ですなぁ。さて、気になる中身は………果実?」
中に入っていたのは不気味な模様をした果実だった。毒のある果実とかじゃないよね?これ。前に見た毒物専門の本とかには書かれてなかったけど。
「少なくとも危ないものだったらこんな豪華な箱になんて入れないもんね」
果実を箱の中からヒョイっと持ち上げた。重さ的にはそこまで重くないね。ちょっと半分に割ってみよ。
果実を半分に割ってみると断面はほぼ白色だった。美味しいのかなこれ?最悪味がなくても付け合せくらいにはなる…のか?まぁ、試しに一齧りだけいってみようかな。
「味はどれほどものか………まっっっっず!?!?」
あまりの不味さに勢いで実を飲み込んでしまった。これはダメだ。こんなものをあの二人に食べさせれるわけが無い。……帰ってからこの実について図書館で調べるか。
ポイッとカゴの中にその実を入れて帰る準備を整えた。そろそろゴードンさんが夕飯を作ってる頃合だから、早めに帰らないとまたウタがうるさいんだよなぁ。早く帰ろっと。
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「ただいま〜」
「おかえり、フェリ!今日はどうだった!」
「結構取れたよ。バナナにいちごにヤシの実、あと変な果実なんかも拾ったんだよ」
「へぇ、フェリにそこまで言わせるなんてどんな果実なの?」
「これこれ」
興味津々なウタにさっき宝箱から見つけた変な果実を見せると、不思議そうに首を傾げた。どうやら彼女でもこの実の正体は分からないようだ。もしかしたらゴードンさんなら知ってるかも。
「2人ともどうしたんだそんな顔をして」
「あっ、ゴードンさん。ねぇねぇ、ゴードンさんってこれがどんな果実か知ってるの?」
「そ、それは!まさか!?」
驚愕と言わんばかりの顔をするゴードンさん。えっ、これそんなにまずい果実だったのかな?もしかして逝っちゃう?人生3回目の生死の狭間まで逝っちゃうの?
「悪魔の実じゃないか!?」
思考が停止した。ゴードンさんの放った一言に私の考えるのは彼方へと飛び出したが、ウタが肩を思いっきり揺さぶってくれたおかげで何とか生還した。
「もしかして、食べたのフェリ!?」
「う、うん。半分に割って一齧りだけ…」
「悪魔の実って言うのはね!海の秘宝って呼ばれるほどのお宝だけど、食べた人間は全員カナヅチになるんだよ!?」
「えぇ…それは困るなぁ。2年後くらいには海に出るつもりだったのに…」
「ま、まぁ悪魔の実を食べても航海できないわけじゃないさ。とりあえず、夕食が終わったらどんな能力を手に入れたか図書館にある悪魔の実図鑑でも見てきなさい」
「はーい」
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というわけでやって来ましたエリジア図書館。そして、何故か傍らにはウタ引っ付いてる。
「あの〜ウタ?何でついてきてるの?」
「だって気になるじゃないフェリの能力。それにウタウタの実のことももっと知りたいし」
「まぁそこまで言うんなら…」
ウタと一緒に悪魔の実図鑑を探すと案外簡単に見つかった。この図書館って蔵書数はかなりあるはずだったんだけどな。普通に目当ての本を探すだけでも結構時間がかかるのに…ウタって強運だったりする?
何はともあれ早速中身をを見ていく。書かれているのは実の外見や能力の詳細についてだったが、古いせいで文字がかすれている部分が目立っていた。その中で半分に割った悪魔の実と同じものを探す。
「え〜と…あった。なになに?『コピコピの実』“能力模倣人間”?」
「すごいじゃん!なんでもコピーできるって無敵ってことだよね?」
「そんな都合のいいじゃなさそうだよ。ほら、オリジナルに比べると効力は半分くらいになるって書いてあるし、発動するためには能力者に直接触るか能力を受け止めないと発動しないんだって」
表記された能力の詳細には『相手の悪魔の実をコピーするが効力は本来の半分程度である』としっかり記載されていた。
「悪魔の実の能力者相手じゃないと使えなくて効力も半減…つまりハズレ能力ってやつだね。まぁ、多少なりとも役には立ちそう」
「つまり、私のウタウタの実をコピーすればフェリも歌が上手くなるってこと?」
「多分そうじゃないかな?後でゴードンさんに聞いてもらおう。さて次はウタウタの実についてっと…」
その後、私たちはウタウタの実についても調べたが、ほとんどが事前に知っていた事ばかりだったのでウタは「つまんないの」と呟いていた。
調べ物を終えた後にウタに触ってゴードンさんの前で歌ってみたところ、以前聞いた歌声よりも洗礼された歌声になっていたそうな。少しでも役に立つなら食べて正解だったかな?
悪魔の実を食べた事について私は深く考えることなく、翌日には水場に気をつけながら普段通りに島中を駆け回っていた。
だが、その時の私はこの悪魔の実の真価をまだ知らなかった。世界政府が追いかけ続けても見つからなかった悪魔の実でありながら、全ての能力者の“天敵”となりうることを…。
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あれから2年、19歳になった私たちはついに赤髪のシャンクスを探す旅へと出る。
「寂しくなるね…」
エレジアの街を見渡しながら呟く。8年と随分長い間ここにお世話になったからか少し寂しさを感じていた。
「ホントにここに残るのゴードンさん?」
「ああ、滅びたとはいえ私はエレジアの国王だからな。それに全ての旅が終わったらまた帰ってくるんだろ?その時に出迎えるのが私の役目さ」
「そっか…」
ゴードンさんはここに残るらしい。昔、私たちが赤髪のシャンクスを探すために旅に出ると伝えた時に、1度だけ船に乗る提案したが断れた。
まぁ、無理やり連れてくつもりなど元々なかった。この航海は危険なものになると思うから、私たちを育ててくれたゴードンさんを危険に巻き込みたくないっていうのが本音だ。
「ちょうどいい時期だと思っていた。私の指導ではもう教えられることはない。あとは外の世界を知って、ウタ自身が成長していくはずだ」
「“世界一の歌姫”かぁ…。そう遠くない未来かもしれないね」
「フェリ!準備できたよ!」
しみじみとしていた私とゴードンさんだったが、船の甲板から飛び降りてこっちに突撃してきたウタを受け止める。外見は成長しても中身はいつまでもあの頃のままだな。
「行ってくるねゴードン。帰ってきたらここで飛びっきり大きなライブを開いてエレジアを復興してみせるから!」
「楽しみにしているよ、ウタ。無事にフェリと一緒に帰ってきてくれ」
「うん」
まるで父と娘だな。いや、第二の育て親だとしたらウタにとってはゴードンさんも父親なわけか。かくいう私もゴードンさんことは父親のように思っている。
「それじゃあ行ってきます!」
「行ってくるねゴードン!」
「ああ!君たちの旅の幸運を祈るよ!」
こうして私とウタを乗せた船はエレジアを出発した。遠くなっていくエレジアがあんなにも小さかったとは思わなかった。ウタはエレジアをが見えなくなるまで見つめていた。
エレジアが見えなくなって辺りが青い海しか見えなくなると、ウタは甲板に降りて地図とにらめっこしているわたしの元へと駆け寄ってきた。
「それで?どこ目指して船を動かすの?」
「ん〜まずは
「情報収集か。道は長そうだね」
「この海にいるならいつか会えるさ。私たちに必要なのはまず地道な努力からだ。頑張るぞ!」
「お〜!」
こうして、たった2人の旅が始まった。どれほど長く険しい旅でもウタと一緒なら乗り越えられると、私は笑う彼女を見てそう思った。
「あれ?それ何?」
「これ?配信電伝虫だよ?みんなに歌を届けるにはこれが必要だからね!」
「持ってきたんだそれ」
ちゃっかり持ってきていた映像電伝虫。なんでもライブで世界中に映像を発信できる最新式のものらしい。ウタは2ヶ月ほど前からこの電伝虫をつかってライブ配信なるものをしているみたいだ。
まぁ、彼女の歌が生きる希望になってる人もいるみたいだし、度が過ぎる行動にでさえしなければ問題にもならないから本人の好きにさせておこう。
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聖地マリージョアのとある一室にて、5人の老人が電伝虫から流れ出る映像を目にして難しい顔をしていた。
「どう思う?」
「うむ…。今のところ害はないようだが…」
「脅威になりうる可能性は十分あるうる。それこそ世界の破滅さえも」
世界政府の最高権力者である『五老星』はライブ配信で歌うウタを見て、危険分子ではあるものの害がない現状のせいで対処に困っていた。
「あのウタウタの実は『トットムジカ』を呼び出す兵器にもなりうる。それを個人の意思で出された後では取り返しがつかん事になるぞ」
「今は監視を続ける他あるまい。居場所さえ分かれば海軍大将でも動かして確保してしまえばいい」
「ですな。センゴクや大将たちだけでなく海軍全体にも通達しておいた方がいいだろう。そっちの方が発見率は上がる」
こうして纏まった結論に誰も異議はなかった。手が出せないのは事実ではあるが、海軍を動かせば確実にウタを確保できると確信していたからだろう。
しかし、その計画は根元からぶち壊させる結果として終わることになる。他ならぬそばで歌姫を守る“騎士”の手によって。
エレジアでの数年はバッサリカットさせて頂きました。書こうと思えば書けますけど、そうなると話が長くなるので切らせてもらいました。
昨日今日で少し筆が乗ってたせいで投稿できましたが、そろそろ忙しくなると思うので連続で投稿するのは今回だけです。
後、アンケート案件で皆さんに意見募るので、答えていただけると非常に助かります。ストーリーの分岐点的な感じのアンケートです。内容はアンケート内に書くので、どっちらか好きな方を選んでください。
フェリは男の娘?それとも女の子?
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女の子:ウタちゃん微ヤンデレルート
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男の娘:親バカシャンクス暴走ルート