「どうなってるんだガープ!?お前の家族は!?」
海軍本部マリンフォードの一室で海軍元帥センゴクが叫ぶ。机にはひとつの手配書があり、そこには『モンキー・D・ルフィ』と言う名前と“1億”という懸賞金が記されていた。
「ぶわっはっは!さすが我が孫!やることがひと味もふた味も違うわい!」
「笑い事ではない!王下七武海の一人“クロコダイル”を落としたのがよりにもよってお前の孫なんだぞ!」
おかきを片手に大笑いするのは海軍の英雄“拳骨のガープ”。つい先日ガープの孫にあたるルフィがアラバスタにて王下七武海を一人を撃破し、この度1億の賞金首になった。
それだけではなくガープの息子であり、ルフィの父親にあたる『モンキー・D・ドラゴン』に至っては反政府組織である“革命軍”の総帥を務めている。
それだけの大罪人を2人も出してしまったのに首が飛ばされないのは、一重にガープが英雄と呼ばれるほどの貢献をしたからにほかならない。
「全く、五老星から厄介事を引き受けたばかりだと言うのに何故こうも問題ばかり起こる…」
「なんじゃ、それも今回呼ばれた要件に含まれるのか?」
「ああ、お前だけ本部を離れていたから連絡が遅くなっただけの事だ。既に大将達には通達済みで、お前に話した後は海軍全体に共有するつもりだ」
「あの老害どもがここまで必死になるとは余程面倒な案件みたいじゃな」
上を嫌うガープでも今回はいつもとは違うことを感じていた。奴らはほとんど口封じに近いガープとはそりの合わない汚いやり方を手段としている。
故にこのような海軍全体を巻き込んでまでの案件は稀だった。
「頼まれたのはある少女を見つけること。出来れば接触した後は対話を望みたいらしい。それを相手が応じなかった場合武力行使してでも連れてきて欲しいそうだ」
ガープはセンゴクから渡された1枚の写真を見て顔を顰めた。赤と白のツートンカラーの少女、年齢的には10代後半から20代前半といった感じだ。
「たった1人の少女にそこまでするのか?些かやりすぎやしないか?」
「指示なのだから仕方あるまい。どちらにせよこの少女を追わないと行けないのは確かだ。既に新世界にて有力な情報が多数挙がって、今は中将クラスも数人捜索にあたっている」
説明を終えたセンゴクはガープに資料を渡した。その中身は新世界でいくつもの海賊を潰して街を守っているという証言がほとんどだった。
気は乗らなかったが動かなければセンゴクに怒鳴られるのを知っているガープは流石に探しているフリだけでもしておかないと思いながら、資料に目を通す。
「件の少女に、もう1人の同行者か…」
全ての証言に出ているもう1人の存在。(面倒事にならなかったらいいんじゃがなぁ…)と思いながら、重たい腰を上げて部屋を後にするのだった。
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“この風は どこから来たのと〜♪”
“問いかけても 空は何も言わない♪”
船の船首からウタの声が聞こえてくる。相も変わらずいい歌声を披露するウタを邪魔しないように私はペンを片手に地図と睨めっこしていた。
ここ数ヶ月の間情報を頼りに南下している私達だが、行く先の島でウタが曲を披露し、時には略奪しに来た海賊を返り討ちにしたりしながらのんびりと航海を続けていた。
この地図や3つ付いたログポースに関しても海賊から助けた街の人達からお礼で貰ったものだ。まぁ、捕まえた海賊たちの賞金は受け取っていないのでその代わりとして物資を交換してもらっている。
賞金を受け取らないのは海軍などの政府機関にあまり接触しないようにしているからだ。もしウタのことがバレたら厄介事になること間違いないし、下手すれば懸賞金もかけられてしまうかもしれない。
彼女の配信を楽しみにしている人達を悲しませないために出来る限り不安要素を取り除いて行く島を決めている。
「よし、次に行くのはここかな。進む航路も決まった事だし、ウタ!そろそろ昼食にするよ!」
「は〜い!ちょっと待ってね!」
地図と道具をまとめて片ずけると、私はキッチンへと向かった。ちなみに今日のメニューは昨日作り置きしておいたカレーである。
船での生活になってからはウタと共同で家事を分担している。話し合いの結果、私が料理や物資の管理が担当で、ウタが洗濯や見張りを担当することになった。掃除に関してはその都度場所を決めて二人で掃除している。
「お待ちどうさま。フェリ特製のカレーですよ」
「いっただきまーす!」
ウキウキとしながらスプーンでカレーを食べていくウタに続いて私も食べてみる。うん、美味い美味い。我ながら会心のカレーができたな。コツコツ続けてきたおかげで料理の腕もだいぶ伸びたな。
カレーの味に納得しながら黙々と食べていると、船の近づいてくる音が聞こえてきた。
(人数的には海賊に見えるけど、結構統率が取れた動き……これはちょっとまずい)
私の見聞色の覇気で捉えた人数はおよそ数十名の人が乗った大型船。私の予想が正しければ、その船が目指しているのは私達の乗っているこの船だ。
「ウタ、今から外に行ってくるけど絶対に外には出てこないでね?」
「え?なんで?」
「ちょっとばかし面倒臭い来客が来てさ。あぁ、海賊じゃないから安心して、私がてきとうに対応して帰ってもらうから」
「わ、分かった」
できるだけ和やかな笑顔で伝えたつもりだったが、ピリピリとした雰囲気は伝わってしまってせいでウタが変に萎縮してしまっていた。
しかし、私はその変化をも気にしてられないくらい外の気配に気を取られていた。
扉を開けて外へ出ると船首の方へ向かい、前方を確認すると間違えようのない事実に深くため息を吐いてしまった。なんせ『MARINE』と帆に書かれた“海軍”の軍艦だったのだから。
「なんでこうも面倒事からこっちに近づいてくるかなぁ?」
一人愚痴っていると船の先頭に一人の男が立いるのが確認できた。背中には海軍将校がつける上着を羽織っているので、それなりの地位にある海兵だとひと目でわかる。
『そこの船、止まれ!私は海軍中将のモモンガ、貴殿らに用があって来た』
はい、やっぱり案の定この船が目的でしたよ…ちくしょうめが。しかも中将だって?なんでそんな大物が私たちを探してんだよ。まぁボヤいてても仕方ない……ここは穏便かつ丁寧にお引き取り願おう。
「なんでしょうか?天下の海軍様に捕まるようなことはしてないですよ?」
『そんなことは承知の上だ。貴殿らの噂はいまこの海域中に広まっているのだからな』
まぁ、そうなるよね。海賊を組織に属さず狩り続ける人なんて賞金稼ぎしかいないが、私たちはその賞金を受け取らずほとんど無償でやっている。
その代替案として物資を分けてもらっているが、それでも噂はいい方に流れてしまうようだ。やっぱりウタが歌っているのも関係しているのだろうか?
「じゃあ悪いことしてないんで行っていいですか?」
『勝手に行こうとするな!お前の他にももう1人船員がいるはずだ。その者を聖地マリージョアまで連れていくためにここへ来たのだ』
その話を聞いて私は無意識に殺気を放ってしまっていた。軍艦の甲板は緊張で震えるものが増えていくが、モモンガは私の殺気を受けても尚怯むことは無かった。
「そこから踏み入らない方がいいですよ?どうなってもいいって言うなら手加減は致しませんけど」
『話が通じ合わない場合は実力行使も許可されている。貴様ひとりで我らを相手取るつもりか?』
腰の剣を引き抜くモモンガと合わせるように私も剣を抜いた。互いに見つめ合い膠着状態が続く。甲板の海兵たちが固唾を飲んで見守る中、先に動いたのは私だった。
「ふっ!」
「ッ!」
強く踏み込んで一気に距離を縮めると横に一振するが、滑り込むように入ってきた剣に動きを止められてしまう。
「中々やるようだな」
「そりゃどうも!」
剣を弾いて床を滑りながら甲板へ着地する。一瞬の出来事で反応の遅れた近くの海兵達は私の方に武器を向けるが、次の瞬間には粉々に砕け散るか、へし曲がってることで到底武器として何の意味もなさない鉄くずに変わっていた。
動揺を隠せない海兵たちの首を順番にトントンして眠らせていく。多少なりとも抵抗してくるが、気絶させるにそれほど時間はかからなかった。
しかし、数があまりにも多い。中将さんを相手にしながらこの人数を捌くのは苦労しそうだなぁ…と思っていると、私の船の方から声が聞こえた。その瞬間に誰の声か分かった私はすぐさま耳を塞いだ。
「誰の声、だ……」
中将さんが警戒しようとするが、力が抜けたように膝をつくとそのまま地面に倒れ込んだ。
他にも1人、また1人と眠りについていくのを見て私の船の方を見下ろしてみると、ウタが満面の笑みでこちらに手を振っていた。耳から手を離して振り返れば“私を除く”海軍船の全員が眠っていた。
「ウタウタの実…味方ながら恐ろしいな……」
初見殺しにも程があるだろ。こんなの事前情報がないと防げないに決まってる。
それよりもさっさとここから離脱しなければならないので、私は船に飛び乗った。
「ウタ、それどれくらい持ちそう?」
「まだ余裕はあるよ!船を出して見えなくなるまでくらいには!」
「そっか、じゃあ直ぐに出航するよ!」
思いっきり舵を切って海軍船から全力疾走で逃げ出す。ウタウタの実の能力は強力だけれども持続するための体力消費が激しい。だから、ウタが眠って能力が切れる前に離れる必要がある。
進路は変わってしまったが、追いかけられる可能性を鑑みればそれも仕方の無いことだ。幸いウタが眠ってしまう前に海軍船は視界から消えていた。
「お疲れ様」
すぅ…すぅ…と眠りについたウタをお姫様抱っこしてあげると、自室のベットに寝かせてあげた。
正直あのまま戦っていれば負けていたかもしれない。ウタが危険を承知で歌ってくれたおかげで何とかなったものの、これから先はあれぐらいの実力を秘めた人達と戦わなければならない。
「もっと強くならなくちゃ…」
この旅路で仲間を探すことは出来ない。だから、私が守り抜かないといけないんだ。武装色の覇気、見聞色の覇気にはまだ上のステージがあるのは確認済みだから、そのレベルまでまだまだ鍛え続けないとな。
ウタの部屋を後にした私は、外へ出て再び船の舵を手に取った。
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とある新世界の海にて、赤髪のシャンクスとその一味は食料を調達するためある島に立ち寄っていたのだが……。
「ベック副船長……どうにかできないんですか?」
怯えた様子でベックに尋ねてくる新人に、聞かれた本人であるベックはどう答えるべきか言葉を詰まらせた。
2人の視線の先には赤髪海賊団船長のシャンクスが樽の上に座って海の方を見ているだけなのだが、その顔はとてつもなく機嫌の悪そうな顔だった。
「あれは無理だな。今日一日は戻んねぇぞ」
「そ、そんな…。俺たちいつあの覇気が出るかで怯えてるんですよ!?どうにかしてくださいよ!」
悲痛な叫びは最もだった。四皇であるシャンクスの覇王色の覇気は別格、海軍の中将クラスなら1部まで気絶させられるほどだ。そんなもんを新人はその身に受けたくないのは当然だろう。
だが、副船長のベックでさえどうにもできないものがある。そう、“二日酔い”だ。
「恨むんなら昨日のうちに酒を止めさせなかった船員全員を恨むんだな」
ベックの言葉に抗議していた新人は黙ってしまった。だって、昨日の宴で飲みすぎだって分かっていてもシャンクスを止めなかった自分たちが悪いからだ。
トボトボと船内へ引き返していく新人を見送ると、ベックは無言で「近づくな」オーラを放っている船長をどうすべきか考え始める。ベックとしてもこの居心地悪い雰囲気を変えたかったのだ。
が、ベックが動くよりも前に、島へ買い出しに行ったはずのライムジュースが大慌てで船に帰ってきたのだ。
「大変だお頭!これを見てくれ!」
目を細めてもう隠すことすらしなくなったシャンクスにライムジュースは手に持っていた新聞を手渡した。そこから数秒新聞を開いて中身を見ていたシャンクスが樽ごと後ろに倒れた。
「ッ!?!?な、なんだこれは!?!?どうなってんだ!?」
今にも引き裂いてしまそうなほどクシャクシャになった新聞をまじまじと見る船長に船員たちも「なんだなんだ?」と集まっていく。
機嫌が悪かったお頭がこれ程変わってしまうニュースに興味を引かれた野郎共が新聞を覗くと…
『“歌姫”ウタ《ONLY ALIVE》』
「「「「「ええええぇぇぇぇぇぇ!?!?」」」」」
と書かれた
まさか10年前に別れた自分たちの娘があの島を離れて、しかも世界政府から手配書まがいのものまで出されているのだ。驚かずにはいられない。
これには常に冷静沈着だったベックも驚いたが、文を読んでいけば何も悪いことは何一つ書いてなかった。やった事と言えば『近隣の島でライブ』だったり『海賊の殲滅』だったりと、島民からすればありがたいことばかりだった。
ならば、可能性があるとすれば…
「ウタウタの実か…」
小さく呟いた言葉にシャンクスが反応し、今ベックが考えていることに一瞬で思い至った。
「トットムジカを危険視してウタを消すつもりかッ!?」
「いや、それなら《ONLY ALIVE》じゃなくて《Dead or Alive》にするはずだ。これを見るに政府はまだウタのことを消すつもりじゃなさそうだが、時間はないみたいだぞ?」
「ああ、分かってる……野郎共!積荷を積んだら直ぐに出航だ!」
「「「「おおおおぉぉぉぉぉ!!」」」」
せっせと出港の準備をする奴らを見ながら、ベックは新聞を拾い上げるとウタの一面を広げる。
「大きくなりやがって…」
娘の成長を喜ぶ。10年前にわけアリとはいえ、島に置いてきてしまった罪悪感は今でもまだ胸を燻っていた。だが、手配書のおかげで笑顔を見れば元気にやっているのを確認することが出来た。今はそれで十分だった…。
「ん?」
ハラリと1枚の手配書が新聞から抜け落ちてきた。《歌姫の旅路を共にする同行者》と書かれた文字に「仲間がいたのか…」とベックは驚いていた。
「カミラ=フェリ、こいつも《ONLY ALIVE》か…」
ウタと同じく《ONLY ALIVE》の少女だが、ウタとは違って賞金がかけられていた。
“歌姫の守り手” カミラ=フェリ 《ONLY ALIVE》
ーー懸賞金“1億5000万ベリー”
ついに赤髪海賊団が動き出しましたね。
次回は少しだけ今回のことを続けて、そこから時を飛ばします。少なくともシャボンディ諸島編には早めに入るつもりです。※プロフィールを挟むので正確には次の次になります。
アンケートの結果『男の娘:シャンクス親バカ暴走ルート』に確定致しました!投票してくださった皆さん!本当にありがとうございました!
あっ、『女の子:ウタちゃん微ヤンデレルート』に関してはifを書く余裕があったら書きます。掲載する場合はタイトルの前に『if』と着けときますんでよろしくお願いします。
フェリは男の娘?それとも女の子?
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女の子:ウタちゃん微ヤンデレルート
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男の娘:親バカシャンクス暴走ルート